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Marginal Man  作者: 志藤天音
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スポーツフェスティバル(2/2)

 学年ごとの競技、ダンスをそれぞれ行う。みんなクラスごとに色分けされた鉢巻をつけている。つまりクラス対抗なので、学年は違えど同じ色の鉢巻をつけている人を応援する。各クラスそれぞれ用意した応援グッズで、自由に応援している。

 

 昼休み。各自お弁当を食べたり、お互いに写真を撮ったりして生徒たちは遊んでいる。

 

 その時は突然来た。


 1-Bの席から悲鳴のような歓声が上がった。午後の最初は先生たちが参加する競技なので、準備の為にコートに出てきた先生たちの中に、ひときわ背の高い先生がいた。まさにその人が上田先生だった。

 他の先生たちと談笑しながら歩いてる姿から、キラキラした光が見えるようだ。本当に爽やかで、パッと見では教師だとは思えない。

 「あ……あれが噂の……上田先生だ……」「マジだ……本当に存在したんだ……」「写真撮ろう! ズームでどこまで撮れるかなあ。遠いなあ、下に降りちゃダメかなあ」「あ! 梨田先生に頼もう! と思ったら……出てるわー」

 先生たちが出場する最初の種目は障害物競走。その次はおたまリレー、その次は綱引き。実習生の先生たちも参加していた。だけど何故か上田先生は、体育の先生の補助に回っていた。

 「なんだろう……つまんない」

 生徒たちは競技ではなくて上田先生しか見てなかったようだ。


 そしていよいよラストのクラス対抗リレー。午前中に学年ごとのリレーはすでに終えていて、一年生は練習の甲斐があってB組が勝利を掴んだ。ラストは三学年のリレーメンバーが順にバトンをつなぐ長距離リレーだ。

 「この勢いで今度も一位になるよ!」

 気合いを入れてコートに向かった。


 そこでまた会場がどよめいた。


 リレーをするのは生徒だけでなく、先生の代表も出るようだ。しかも生徒たちが900mを18人で走るところを、先生たちは3人で走るというのだ。

 第一走者は一年生の体育を担当している地代じだい先生というおじさん先生。にしやんは「じー(爺)先生」と呼んでいる。生徒たちのお父さんよりちょっと歳上ぐらいの年齢だろうか。ダジャレが好きで、よく笑わせてくれる楽しい先生だ。やはり一人で300mはキツいのか、最下位でバトンタッチだった。

 第二走者は、ついに上田先生! この為に体力を温存していたのか。背が高いだけあって、足も長い。軽く走っているように見えて一歩が大きい。一周目で生徒たちに追いついた。後は最後尾の選手の後ろにピッタリ付いているという感じ。余裕があるように見えるが、決して追い抜かない。ワザとそのようにしているのか、実はついて行くだけで精一杯なのかはわからないが、またもや最下位でバトンタッチとなった。

 アンカーは新任の浜田進次郎先生だ。さすが、体育大学出身の若い体育教師。この先生もイケメンなので割と人気がある。若さの勢いで猛スピードで走る。出だしは上田先生と同じように軽く走って最後尾に付けていたが、二周目からは足の回転数が増した。2階席から見るとよくわかる。徐々に生徒を抜かし始めた。最後はトップの選手の後ろについていたが、ここは譲ったのか追い抜くことが出来なかったのか、2位で終わった。


 「ヤバい。上田先生ステキ過ぎる」「初めて見た。あの人が担任だったら授業どころじゃないわ」「ホント。梨田先生よく耐えられたな」「マジヤバいわ、どうしよう」

 初めて上田先生を見たB組の生徒たちは、興奮がおさまらない。何気にリレーの見せ場を作ったのは、こちらもイケメンの浜田先生なのに。残念ながら、今は上田先生以外は眼中に無いのだ。


 リレーの順位もあやふやなままスポーツフェスティバルは終わった。結果、総合優勝はA組だったが、そんなことはどうでも良かった。

 おそらく生徒たちの中では、スポーツフェスティバルの記憶は上田先生しかないのだろう。もはやMVPは上田先生以外考えられない。

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