真夜中の君と解けない魔法
未来へと続く道のり探して
月までの距離を測る
あなたの瞳の中の
暗がりに浮かぶ満月
いつの間にか 消えて
欠けゆく あなたへ
魔法をかけた
時間さえ止めて
呼吸さえ止めて
世界は光さえも色彩ることを止めた
あなたの言葉の裏側で
そこから数秒先に横たわる
あなたの世界 知りたくて
何度でも あなたへと出会う
真っ白なこの薄命の世界で
真っ黒な闇夜の中で生まれ変わる
私
と
あなた──
どこからやって来たの?
ありのままの姿さえ
誰かへと入れ変わる
100万回以上も生まれ変わり続けた億年の日々。
星の生まれる時間が風にのる
満月を覆う雲の隙間を横切る
いつか欠けた三日月の影に
あなたのいた場所
そこ
今は誰もいない
あなたの言葉の裏側に秘められた
いつかの誰かがかけた魔法
あなた自身さえ気づかなくて──
口に出すのさえ躊躇う
星にも月にもなれない闇夜
ただ空を彷徨う雲にまぎれる
あなたにさえ見えないように
寂しく灯る古びた外灯
夜の風吹かれるまま
どこへ行くの?
立ち尽くして
光を求める
夜の蝶は
刹那だけの時間
闇夜にまぎれて
身体をあずけたまま
時を終える
水たまりが光る
夜の星を映す
あなたの心──と、あなたの瞳の中のように
どこまでも願うなら
解けない魔法さえ
月の明かりに滲ませて
雨上がりの夜空
モノトーンの暗がり
剥がれ落ちて
海辺の波の音
さざ波の泡が──砂浜に消えないようにして
月が見つめている
いつまでもあなたを抱きしめた
口唇──幽かに残るのは
あなたの言葉
耳もとを通り過ぎてゆく
「──忘れない……」
握られた手が
力無く落ちる
闇夜
流星が消えた一瞬
あなたの魔法が解けて
世界が私だけを残した
夜空をのぼれば
あなたと指先で描いた世界
星を結ぶように
言葉を交わした日々
いつかのあなたといた高台の公園の東屋
あなたのいた日々を
変わらない日常を
朝日に溶け込ませて
海の音
気づけば、ひとり
やっぱり、夜の砂浜を歩いていて
いくつもの街の灯り
夜空の下
あなたを想う