花火
今年も夏がやって来た。
高台で、最愛の人を私は待つ。
「カナ、待たせた。」
「もぉー!遅いよ、ケンちゃん!」
夜空に花火が打ち上げられる。
「綺麗だな・・。」
「ホント、綺麗。」
「やっぱ此処、穴場だな。」
花火大会の会場から、大分離れた高台には、自分とケンちゃん以外誰もいない。
迫力は無いが、その分静かに、じっくりと花火を楽しむ事が出来る。
「お、柳だ。俺、アレ好き。」
「最後、なんか切ないよね。」
・・・・。
「ねぇ。私、もう怒ってないからね?」
「そろそろ最後かな。」
クライマックスのスターマインが打ち上げられる。
「今年は、最後まで見れたな。」
「ははっ。去年は、途中で喧嘩して駄目になっちゃったもんね。」
花火の消えた夜空は、シンとして寂しい。
「カナ。来年も来るか。」
「ケンちゃん。・・もう来なくていいよ。」
去年、私達は終わったのだ。
ケンちゃんが花火大会に遅刻して、大喧嘩をしたあの日に。
「あれ?見て!あのお兄ちゃん、泣いてる!」
「こら、人を指差しちゃいけません!ごめんなさいね。」
「あぁ、いいですよ。」
自分の他にも人がいたのか。
バイバイと小さな男の子が、父親と母親に手を引かれ、こちらを見る。
仲の良さそうな家族だ。
もし、あの日。
俺が遅刻をしなければ、カナと俺は結婚してたんだろうか。
車の中にいつまでもあげる予定のない指輪が眠る。
後ろ座席から花束を取り出し、脇を通る道路の隅に献花した。
これは悲しい夏の物語。