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第一話「贋茶碗」  作者: 和泉和佐
1/16

贋茶碗1

再掲載です。今一つ使い方がわかっていません。

ご迷惑をお掛けします(>_<)



*元号の漢字は意図的です








 雪之丞は女形(おやま)でございます


 女形といえばおなごのニセモノ


 贋物屋(にせものや)に御用とあれば


 この雪之丞が承りましょう!











第一話「贋茶碗(ちゃわん)






 ――――― 1 ―――――


 元緑(げんろく)六年、江戸。


 とある商家の蔵の中で、短い悲鳴が起こった。

 それは短くはあるが深刻であり、切実な、聞きようによっては悲痛な響きさえ伴っていた。

「―――」

 しばらくの静寂の後、

 ガタ、ガタガタ

 土蔵の内戸が引き開けられ、中年の男が姿を見せた。男は外へ出て、ガタガタと再び重い内戸を閉め、ギィィィ~と観音開きになった外扉を閉めた上に、ガシャンとかんぬきを下ろし、さらにはカチャリと南京錠を掛けた。

 それらの作業をほとんど無意識のうちにやってのけた男は、この大きな商家の主人(あるじ)であった。

「………」

「…おとっつぁん、おとっつぁんったら!」

「?!」

 不意の呼び声に男は跳びあがらんばかりに驚いて振り向いた。

「どうしたの? さっきから呼んでるのに」

 娘が訝しげに問うが、

「ああ…いや、その、何の用だね」

 男は歯切れ悪く答え、曖昧に頷いて聞き返す。

上総屋(かずさや)の小父さまがいらしたのよ」

「上総屋さんが?」

「?…ええ…だって、お約束がおありになるんでしょう? お珍しいことに今日は小父さま、大層にご機嫌がよろしくてよ」

 と娘が付け加えたのは、上総屋の主人は家庭内のいざこざに悩まされ、数日来()せっていると聞き及んでいたからである。

「…ああ、そうか。そうかい…今、行くよ」

 父親は変わらず気のない様子で答えた。

「おとっつぁん? どうかし…あらっ、お顔の色が真っ青よ、おとっつぁん!」

 娘の驚く声にも男は、

「何でもない。何でもありゃしないよ」

 強情に言い張った。

 母親が亡くなって以来、父親の《小さな妻女》として働いてきた娘は中々引き下がらなかったが、

「本当に何でもありゃしないんだ。大丈夫…おいと、おまえには何の関わりもありゃしないんだ」

 男は三度そう繰り返してから、表の方へフラフラと歩き去った。






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