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「助けるって神様、具体的にどうやるんです?」
『どうってお前、勇斗ん家に乗り込んで、その木村って奴をやっつけりゃいいんじゃないのか?』
佐藤は今度は本当に大きなため息をついた。
「そんなことしたら、こっちが暴行傷害で逮捕されちゃいますよ」
『それじゃ、お前は何か考えあるのか?』
「僕がそれを考えるんですか?仕方ないなあ・・・」
佐藤は腕組みをしてしばし考え込んだ。
「そうですね、まず勇斗の母親が問題なんですよ。母親が警察に相談すれば、それが実績になって裁判所に接近禁止命令を出すように申し立てられます。手間と時間が少々かかりますが、これが一番良い方法です」
『佐藤、お前いろいろよく知っているな』
俺はかなり感心した。
「いちおう作家目指してますからね。ただ問題はあの母親にその気があるかどうかなんです。子供より男を選んじゃう母親って割と多いんですよ。別の言い方をするなら、母であることより女であることを優先するんですね。子供が虐待されている事実があるのに、男のために警察への相談を拒むようなら、後は根気よく児相を説得して、勇斗を母親からも引き離さなきゃならない。しかしこれは恐らくかなりハードル高いです」
『いろいろ面倒なんだな。それじゃ取りあえず、まずは母親に会って、意思を確認するしかあるまい』
「僕がそれをやるんですか?あまり気が進まないんですけど」
『心配するな。お前には今、神が憑依してるんだぜ。神と一心同体のお前に怖いものなんか無いだろう。おお、見ろちょうどいいところに勇斗が願掛けに来たぞ。声を掛けるんだ』
小さな鳥居をくぐり抜けた勇斗は、佐藤の姿を見て少し怯えたような顔をして立ち止まった。
「ああ驚かせてごめんね。おじさんは自治会の佐藤です。田代勇斗君だね」
佐藤は勇斗をできるだけ怯えさせないように朗らかな顔をして、優しく話しかけていた。
「ええと、勇斗君はここの神様にお願い事してたんだよね?僕は神様に勇斗君とお母さんを助けるよう言いつかったんだ」
勇斗は少しの間、きょとんとしていたが、やがて合点がいったように佐藤に近づいて言った。
「神様がお願いを聞いてくれるの?ママを助けてくれる?」
「うん、いちおう神様はそう言ってるんだな。だからまず最初に、おじさんをママに会わせてほしい。ママはいつならお家に居る?」
「今日はお仕事のお店がお休みだから、今お家に居るよ」
よし、これは話が早い。
俺は佐藤に早速、勇斗の家に向かうよう命じた。