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第二十一部 三章 アイシャの小さく大きい持つ者事情

8月5日


View アイシャ


「えっ…うそっ…そんなはずは無いのに…」


 腕に力を思いきり入れるがそれでも全く事態が収まることはない。それに焦りを覚えつつも力を入れ続ける。


 「ぐっ…ぐぎぎっ…」


 目的地までおよそ5㎝ほどだろうか、目では測れないので指を合わせるようにして大体の距離を測ってほんの少しでも近づくように更に力を入れる。


 「こ、こうなったら…」


 最後の手段として気功を解放して筋力を上げる。加減を考えつつも何とか残りの距離の半分まで行った所でブチリと音がした。


 「ああっ!」


 すぐに手を放して音の出所を見たが案の定底には見事に真っ二つになったブラジャーがあった。


 「あああぁ………」


 数分後


 「…………………(むっす~~~~)」


 朝食の昨日の残りのカレーを食べながら今朝の出来事を引きずり滲み出る怒りを抑えきれずに重い空気を流してしまう。


 「あの…何かあったんですか?」


 「お嬢のブラが逝ったらしいぞ」


 「えっ…またですか?先月に届いたばっかりだったんじゃ…」


 「あれでしょう?採寸した時よりも何故かサイズアップしていたんでしょ。まるでつる植物…いや、この場合はなんていうんでしょう…スイカ?メロン?というかすぐに大きくなる果物ってありましたっけ?」


 使用人達の話し声が特に抑えられているわけでもなく聞こえる。その目は確実に俺の胸まわりを見て言われている。俺の胸は病気かと思われるほどに大きい。ネットでは二次創作でしか有り得ないロリ巨乳と言うべきなんだがその代償を実感している。


 「でも、実際どうなんでしょう?やっぱり肩凝りとかひどいんでしょうか?」


 「知るか、寝るときに仰向けやうつ伏せで寝られるかどうかって男の俺らが知ろうとしてもな…奥様に聞くのが一番だろうけど…無理だろ?」


 「ですね…2時間往復びんたコースにわざわざされに行く勇気はありませんよ」


 俺が今までやってきたブラはほとんどがオーダーメイド、ママの昔なじみの店に何度も頼みに行って高いお金を払って作ってもらうのだが出来た頃には更に大きくなっている為すぐにダメになっているらしい。


 この前ママに聞いてみた時に同じことになった事がよくあり、友人とであって二言目が「その服サイズあってないぞ?」からキレて往復びんたの刑がおなじみのパターンになっていたらしい。


 結局、新しいブラが出来るまでは机の上に置いたり手を組んで支えるようにしなければ落ち着かない。よくブラジャーは胸の形が崩れないようにする為にやるものだ、というが実際はやると結構安心する…締め付けがきついのは当たり前だけど何よりも動きやすいのが一番の利点だろう。


 それがない今やたら落ち着かなくてソワソワする。その感覚がどうも心地悪くさっきからイライラするというか何かに当たり散らしたい気分で無意識に健康ゆすりをしてしまう。


 健康ゆすりは一般的に貧乏ゆすりと言われていたがそれは昔の言い方でゆする事で足に刺激を与えることで血流が良くなる事からそれは良いことで無意識にそれが出来るならその人は健康に良いことをしている証明になるらしい。


 しかし、それをやってもストレスはたまる一方で何よりも使用人達の視線が何度も刺さるのがストレスの一番の原因だ。


 「ごちそうさまぁっ!!」


 乱暴にスプーンを置いて足音をわざと響かせながら自分の部屋に向かう、その途中にパパとママにすれ違うが挨拶をする気にもなれないほど落ち着かなくてそそくさと部屋にむかっていく。


 「……ふっ、懐かしいな。学生の頃を思い出すよ。ジェシーも同じようなことになった事あったよな、あの時は俺が毎日宥めてた日々が昨日のことのように覚えているよ」


 「それって~私がまるでぇ~手のかかる子だったってこと~?」


 「実際そうだったしゼミの教授にもイライラをぶつけてたじゃないか、後で謝っていたのは結構大変だったんだぞ、三日間謝り続けて聖遺物や魔道具の実験に突き合わされたり薬の実験に投薬されたり色々大変だったんだからな?」


 「え~、覚えてな~い」


 「そうか、それならあの時の話しをゆっくりと事細かに覚えている俺が思い出させてやるよ」


~10年前 当時ガルド・ハーン14歳~


 あれは…そう、俺たちがまだヴェルスター学園の中等部だった頃、俺がジェシーに告白して数日経った時だったか、今でもそうだが毎週金曜日はみんながざわついていたな。


 カチカチと時計の音に生徒たちは耳を傾けて先生が配った問題集に目を向けながらも聴覚を研ぎ澄まさせたり、腕時計をチラチラ見てあと何分何秒何マイクロ秒だとソワソワしていた。そしてその時が来る。学校の昼休みを告げるチャイムがなると先生が発言する前に学園全体の生徒が一斉に立ち上がり、廊下を全速力で走り抜ける。押されて転倒したり足をわざと引掛けながらも踏ん張りこけなかった人物に舌打ちをしながらも全校生徒は同じ場所に向かっていた。


 その先にあったのは購買部、先頭の生徒はその中の1つを取ると店員の前に一目散に行こうとするが後続の生徒たちにタックルされたり殴る蹴るなどの暴力行為を受けながら購買部では大乱闘が始まる。


 それは男性女性関係なくレジに置くまでは誰も安心できない時だった。ヴェルスター学園の金曜はプレミアムデーで学生全員が虜になるという絶品パンが数量限定で売られる。しかもそれは一口食べると一生忘れられない味と同時に生徒以外は例え卒業生でも二度と口にできないものだった。


 中でも特に人気なのが男性陣なら焼きそばパン、女子の間ではロールケーキだった。ロールケーキはパンではないのでは?と疑問を抱くものもいるが、プレミアムデーで売られている以上、それを狙って生徒たちが争奪戦を開始するのだ。後続で店内に入れない学生も他の人を足蹴にして購買部内を跳ねまくったり地面に伏せ絶好の機会に飛び出す猛者もいる。


 そんな中誰よりも速くレジに焼きそばパンとロールケーキをほぼ同時に置く男子生徒と女子生徒が1人、その人たちを見て店員が苦笑いを浮かべる。


 「今日も絶好調ですね。分かっていても息を吞んでしまいますよ」


 「それは光栄だな。あっ、いつも通りにコロッケもお願い、今週は結構形が崩れなかったから2つ」


 「はい、カードのポイント使います?」


 「ああ、頼む」


 「それでは…500円になります。袋はお付けしますか?」


 「いや、結構だ。コロッケの容器はいつも通りで」


 「ありがとうございました」


 未だに宙を舞う焼きそばパンやロールケーキを取り合う生徒たちを再び踏みつけて退店をする。そして向かったのは中庭、昼休みの間、晴れの日に彼らはそこで昼食を取る。


 彼よりも速く彼女は既に席についていてパリッという袋を破いた音が小さく鳴る。


 「おっす、今日はジェシーが速かったか」


 「お疲れ~今日「も」の間違いじゃない?」


 「チッ…分かった、負けだよ。そらっ」


 そう言ってガルドは500円を投げ渡す。


 「まいど~♪」


 ジェシカはそう言って財布の中に500円玉を入れて上機嫌になる。二人は隣に座って肩を並べて戦利品を頬張る。


 焼きそばパンは柔らかいパンにモチモチした麺がソースをよく染み込ませながらも噛みきりやすく、べたつきもないパンとよく合う。まさに絶品だ。一方、ロールケーキはふんわりしたスポンジにくちどけがまろやかな生クリームとよく合うの一言に尽きる。それに追い打ちをかけるようにフルーツを包み込んで酸味と甘味が合わさって口の中で多幸感があふれ出て留まることを知らない。


 金曜日の昼は大乱闘であると同時に何千人に数人が多幸感をその手に掴み笑顔を浮かべる日でもあった。


 「くぁ~…ん…なんだ、お前らか……どうしたんだ?こんな所で早弁なんてして、あれか?ラブラブを見せつけてヘイト集めかい?」


 中庭の扉からあくびをしながら入ってきたリヒトを見ながらガルドは少し眉をひそめる。


 「おかしいな、今は昼休みのはずなんだが…今日は何月何日か分かるか?」


 「ん~、暑いから梅雨明けだとすると…7月1日?金曜まで、まだまだだな」


 「残念、金曜日は今日でした。このプレミアム商品がその証拠、それと今日は8月5日」


 「そうか、一ヶ月ちょっとずれてたか、惜しかったな」


 リヒトはそう言いながらも口を抑えてあくびをかきながら対面にある椅子に座るとそのまま横になろうとする。するとまるでタイミングを見計らっ多様に女子生徒がリヒトが下半身を椅子に乗せたタイミングで座り膝枕をするようにした。


 「今日は耳かきをしてくれないか?両方とも昨日風呂に入ってからおかしいんだよ」


 「はいはい、クリクリしてあげるからもう少し膝を曲げて、顔も少し…そうそうそんな感じ」


 二人は対面している二人に興味を示したのはほんのひと時で、そこからは自分たちの世界に入るように軽い会話をしながらイチャイチャし始めた。


 他人の目を気にせずに関わりを持てるのは一途な想いを抱いている人にとっては美徳ではあるのだろうが、それをよく思わない人もいる。傍から見ればそれはただ耳かきをしているようにしか見えないがそれが美男美女の絵になる人であれば、多少の嫉妬は生まれるだろう。ガルドとジェシカは一刻も早くその場から去りたかったが、これを食べ終えるまでこの場を離れるつもりは無かった。


 それは天秤にうるさい教室の中で1人でプレミアムを食べるか勝利を感じながら目の前のあつい2人を見ながら恋人とプレミアムを食べるかで後者のほうに傾いたからだ。


 それでも目の前の光景はあまり見たくないので少し食べるペースを上げる。最後の一口を食べるとすぐに離れるようにビニール袋を近くのゴミ箱に投げ捨ててその場を後にする。


 「そうだな、委員会もないし今日はどこか外食でも行くか?」


 「でもでも、どこも儲かることしか考えてない微妙な所しかないでしょ?」


 「だったら経営状況がまだまだ未熟なところはどうだ?ほら、最近出来たあの和食店、だよ。えいるる」


 「あの海産物が美味しいところ?ん-、ちょっと遠いし絡まれそうだけど…」


 「そんなに考えることかな?俺たちなら外のやつらに負けることなんてほとんどないし、せっかくの二人きりになれる時に行きたいところに行きたいだろ?次に都合がよくなる時が分からない今、2人で話し合いたいんだよ」


 「……もうっ、そんなこと言われたらいやとは言えないじゃないの、そこまで言うんだったら、それでいいわよ。でも一回寮に行って財布を持ってくるから、この前のお金だって返さなくちゃいけないし…」

 

 「そこは、譲らないんだな、まぁ、そこに惹かれるから好きになれたんだけど」


 「なにか?」


 「ううん、なーんにも」


 廊下に出てから放課後の予定について話し合っている男女がいる。片方はよく知っている。長い期間同級生としての付き合いで何かと悩みを打ち明けられる存在だ。最初はクラスの課題をこなすために勉強会をする時の相談的な関わりしか無かったがそこから割と打ち解けてしまった。


 実際の所、ジェシカと会うまではこいつと恋人になってもいいかなぁと思ったけどジェシーは本当に可愛い。キョトンとして首を傾げる仕草に胸と頭が同時に撃ち抜かれたような衝撃を受ける。と同時にこいつ…千麟 蘭とは友人兼相談役として関係を維持しようと決めた。


 思い返すようにジェシーに顔を向けると少し違和感を感じた。


 「…?ジェシー、なんかおかしくないか?カーディガンが少しいつもよりも伸びている感じがするんだが」


 「へっ?」


 俺の言葉を受けてカーディガンをグイっと後ろの方に伸ばすがすぐに戻ってしまう、その次の瞬間にジェシーの顔色がサァッと青くなって自分の背中を触って目を白黒させて急に周りの目を気にするようにキョロキョロすると物陰に隠れて手招きをする。


 「ごめん、うちの先生に少し…いや、もう替えがないから午後は休むって言っておいて…!」


 それだけを言うともじもじしながら腕に胸を乗せるようにしてその場から走り去ってしまった。明らかな挙動不審と走り方に察したもののそれが大変だと分かるのは同じ女子としての悩みなのだろうとその話題をするのはやめておいた。


ジェシカが街道を歩いきながらソワソワしている。本人は平静を装っているが誰から見ても表情を隠しきれてない。


 「へっへっへ、きみぃその服ってあの名門校の制服だろぉ?おじさんちょっとお金がなくてねぇ、少し痛くしちゃうけれど悪く思わないでね。きみが悪いんだよそんな無防備で町中を歩くなんて襲ってくれって言ってるもんじゃないか」


 「…まれ」


 「ん?どうしたのかな?お金を出してくれるの?でも、きみを脅すよりもお金になる方法をおじさんは知ってるんだよ。ごめんねぇ?」


 男の手がジェシカに触れようとしたときにジェシカの唇が少し震えると、先程まで立っていた男が急に地面にたたきつけられる。ダァン!という音と共にタイルにひびが割れてジェシカがそのまま男の腹に乗りながら顔面に何度も殴る。


 「今はっ!とっても!気分がっ!悪いっ!んっ!だよっ!寝言っ!でもっ!言いっ!たいっ!ならっ!黙れっ!てっ!言ったっ!んっ!だよっ!」


 殴られた男は苦しみの声を上げるだけだがそれでもジェシカの追撃は止まることは無かった。


 「黙れっ!黙れっ!黙れっ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!」


 その一方的な暴力は男が一言も発せられなくなるまで止まることは無かった。既に男の顎は外れてまともな会話すら出来ない状態になっていた。ジェシカは顔に不愉快だと浮かばせて再び街道を歩く、しばらくして裏道に入って奥の扉に入る。


 裏道の薄暗いところとは全く違い、その中は煌びやかな装飾で彩られた場所だった。どうやら裏道のあった扉はその場所…店の従業員が入るための裏口だったらしい。そこにもじもじしながら店内に声を掛ける。


 「ご、ごめんくださぁい…」


 弱弱しい声だったがその声が聞えたのか表の方からパタパタと足音が聞こえてくる。廊下の方からひょっこりと顔を出した店員らしい人は一瞬ジェシカの服を見ると少し怪訝な表情をした。


 「いらっしゃいませ……あの、そこは従業員専用のところでしてお客様の扉はあちら側でお手数ですがそちら側の街道からの入店はご遠慮を…」


 そこまで言うと店員の顔と目が合う。すると何かを察したのか、近寄ってきてレジの近くにある試着室にジェシカとともに入る。


 「あらあら、ジェシーちゃんじゃないの、やだわぁ来るってわかっていたらもっとおめかししてきたのにぃ」


 いきなり丁寧な対応からフレンドリーに話してきた店員はジェシカと顔なじみで昔から姉のように世話をしてくれた人だった。


 「んもうっ、もう少しで開店だったから少し急ぎでやっちゃうわよぉ。今日はなあに?流行ファッション?クールコーデ?少し先を目指してもこもこコート?」


 ジェシカは少しだけはだけて店員の手を背中に当てる。


 「あらやだ、また壊れちゃったの?少し失礼するわね」


 店員は慣れた手つきで手を後ろに回すとするりとジェシカの服の袖から下着を取る。


 「これは…またひどい壊れっぷりねぇ、ホックが留め具から壊れているわぁ。流石にこれは変えるしかないわねぇ。でも、もううちでこれ以上のサイズのブラは取り扱ってないのよ。と言ってもほかのところもないだろうし」


 「ど、どうにかならない。制服からチクチクしてて落ち着かないの~彼氏に気づかれる前に何とかしてぇ~」


 「あらあら、落ち着いて泣かないの泣かないの~分かったわぁ、少しこれを応急的に処置してもう少し着られるようにしておくわ、それと特注で大きいサイズも作っておくから、でも激しい運動は控えたほうがいいかもね。あくまで応急処置なんだから。そうね……これ以上のサイズとなると4日…いいえ、他ならぬジェシーちゃんのためですもの3日で作って見せるわ!より頑丈でよりサイズ調整が出来るものを作ってあげる!」


 「あ、ありがと~お姉ちゃ~ん」


 「はいはい、さぁさぁとりあえず応急処置はしておくわね、それと今回はデザインとかは簡素なものにしちゃうけど、もうちょっと凝ったものにしたかったら予めにうちに連絡頂戴ね」


~現在~


 「そうやって、今も繋がりがあるのよ~」


 「…ほう、中々面白い出会いだったんだな」


 「とりあえず~アイシャちゃんの為に~なるはやで出来るように~TELしてみましょ~、デバイス取り出しぽぱぴぷぺー」


 『デートしてくれますか?』


 「盗聴でもしてるのか?この電話相手」

次回4月中旬予定

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