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第十五部 一章 即発即行

 4月18日 


 View リラ


 「まさかお付き決めた直後に出発することになるなんて…」


 地下高速道路で助手席の窓からトンネルの先を見ながら呟く。あの後、イザベラ(変装)を指名した直後に使者として世界の中央の帝都である「カンカルディア」別名 第一極中帝都絶対管理国へ向かう事になった。


 シャリア王国からはその距離は地球のほぼ半周、つまり日本からのブラジルまでの距離と同等の時間が掛かる。だが、シャリア王国には飛行機やヘリコプターが離着陸出来る滑走路がない為、地下高速道路から隣国へ行き、そこで飛行機に乗り込む事になる。


 普段なら既に寝ている時間だけど、時計は0時を少し回っている。遠足前の園児のようにやたらソワソワしてしまいアドレナリンが働いている。


 「なんか憂鬱になるよね」


 運転席のシーラはヘラヘラ笑いながらそう言う、既に変装は済ましており城で見かける姿とは性格が違いすぎる、いつも仕事を頑張っている様子とは打って変わってどこか余裕を持っている彼女は双子の姉妹が入れ替わっていると言われたら間違いなく騙されていただろうと思う。それほどまでシーラさんの変装は一目置く程、完璧と言わざるを得ない。


 先程から話題を持ちなさなければ眠ってしまいそうな激しい睡魔と戦いを繰り返しながら、深夜のテンションで頭が働かない事を無視して何か新しい話題はないかとグルグル目を回しながら考える。


 「そう言えば…シーラさん」


 「イザベラ」


 「…イザベラの元の職業ではさ…どういう仕事をしていたのですか…?」


 それを聞くとイザベラ…いや、シーラは「あぁ、それはシーラに聞かないとね」と呟きながらも返答する。


 「それは企業秘密よ。私の仕事は人に言えないものだからね」


 それを聞くと俺の口は勝手に動きその答えにこう返していた。


 「まぁ、人殺しなんて言えないしね、秘密にしたい気持ちは分からなくもない…です」


 そう返した直後、空気が凍り付く、シーラは驚いた顔で一瞬だけこちらに顔を向けたが、すぐに運転に集中する。


 「…なんで、分かったの?」


 その答えも口が勝手に動き言葉を紡ぐ。


 「言えない仕事っていうのは大抵が法に触れるやつかいかがわしいものでしょう。でもシーラさんの技術で考えればその答えは一つしかない、変装はただの特技それを有効活用して仕事をするとなれば答えに直結できるのは大体絞れる。その中で最有力候補を考えれば知れた事です」


 「……ほんと、つくづくあなたがターゲットじゃない事を嬉しく思うわ」


 「…そういうって事は今回の同行も誰かをサクッとやっちゃうつもりなのですか?」


 「これでも私はプロでしてね。依頼は完遂するのがプロってものです。子どもに仕事の事を教えるのには心得を三つ言えば納得してもらえると教わったのでそれを言いましょう」


 そう言うとシーラは昔話を話すように語る。


 「プロの仕事の心得その一、焦らず急がず確実に、その二、自分の弱点を隠し相手の弱点を暴けそしてその三…」


 シーラはそこまで言うと一呼吸置いて言う。


 「準備が一番実力は二番…ってね」


 それを言ったシーラの表情は穏やかなもので仕事内容がばれた時の驚愕の表情は欠片も残ってなかった。


 「さあさあ、よい子は寝る時間だよ!どうせ寝不足なんでしょう。ちゃんと着いたら起こしてあげるから、王族だってバレない為に一般乗用車に平民服で来ているんだし任せて頂戴」


 既に睡魔の誘惑に負けかけているのもあってその言葉を最後にカクンと背もたれに身体を落として舟をこぎ始める。


 そうしながらも城に置いてきたリエラの事を心配しながら眠りにつく。


 ~数時間前 シャリア城~


 「えっ、リエラは連れていけないの?」


 「そうみたいよ。カンカルディアは世界の中央に位置する帝国、そこには歴戦の冒険者や英雄の称号を持っている人もうじゃうじゃいる。そんな所にフェンリルを連れている人がいたら討伐対象になる恐れもあるし、神獣を手懐ける人間をあっち側の人間が野放しにしておくとは思えないし」


 確かに未だにフェンリルをリラが飼っているとは城の中でも一部の人のみ、それ以外で知っている人は現在最も信頼できる友人の三人だけ、外部に話が漏れてしまっては大パニックになるだろう。


 「それで、リエラちゃんは連れて行かない…というか、あなたの不在の代わりである影武者として姫の代わりをして貰うって陛下が」


 「お父様…寂しがりなリエラになんて事を…」


 クレもいるから多少の寂しさは薄れるだろうけど、一日でいじけてネガティブムードになるのがめにみえているからなぁ、絶対夜にベッドに寝ながら「お姉ちゃあん早く帰ってきてぇ…リエラ、寂しいの…」って言うかもしれない。


 「あぁ、それと今回の使者としての仕事と持ち物が幾つかあるよ」


 そう言うとシーラはどこに持っていたのかアタッシュケースと懐から四つ折りにされたA4サイズの紙を広げる。


 「まずは、目的地は第一きょ…いや、この名称じゃ難しいわね。カンカルディア帝国の定期報告会議の出席、これはお互いの技術や文明の発展を話し合ったり、資金の援助などを議論して世界のバランスを…ってなってるけど、それは表向き本質は技術を盗んで応用すると同時に他国にプレッシャーを与えてドヤ顔したいってだけの様ね」


 どの世界でも小競り合いや威張る事をやめられない大人っているんだなぁ…そもそも競い合うこと自体虚しいって事に気づかずにいるのが、また…


 「それで、リラ姫様にはこれを」


 シーラはアタッシュケースの留め具をかちりと開けると中をゴソゴソと探りながら封筒を1つ取り出すとそれを手渡してきた。


 「これは使者にだけ渡すもので私にも読むことは出来ないわ、読むなら一人の時にしてね。あぁ、中身は定期報告会議の資料だから出席する時には絶対持って行ってね。管理が面倒ならアタッシュケースにしまっておくけれどどうする?」


 「いえ、私が持っておきます。では出かける準備をしてきますので少々お待ちを、それで、出発時刻はいつ頃で…」


 「あっ、今よ」


 「…………」


 「…今よ」


 「聞こえてない訳じゃないです」


 ~現在~


 「…ま……めさま………姫様、起きてください姫様…!」


 体の揺れと声をかけられたことで目を覚ます。のそりと体を起こすと窓から見える風景は今では結構前に思えるある風景、それは…


 「…くうこう?」


 寝ぼけまなこをこすりながらポツリとこぼす。そこはどう見ても空港、暗くてよく見えないが、遠くでは飛行機がゆっくりと動いているのが弱弱しいライトで分かる。


 「はい、着きましたよ」


 ここへ行く時の夢を見ているうちに到着したようだ。時間を確認してみると午前2時を過ぎたばかりだという事が分かる。


 ストアドシリーズの飛行機は最終便というものが存在しない。無休というわけではないが飛行機のパイロットやキャビンアテンダントの職業が多く、ゲームだから細かい設定が多く省かれているが、こういう時は考えても分からないのに時間を割くわけにもいかない。



 車から降りて、空港の中へ向かう。その途中にシーラさんからチケットを貰って手をつなぎながら搭乗口へ行く。


 日本では日本からブラジルまでのフライト時間は短くて25時間長くて34時間だが、それはアメリカやヨーロッパを経由しての時間であり、観光客が最も多いとされるカンカルディアへの便は直行便がどの空港でもある。その為カンカルディアの空港は世界最大規模の敷地面積だと言われている。


 実際、カンカルディアは記念すべきストアドシリーズの第一作目のメインステージとして二作からも当時の様子が詳しく描かれている。何人かの同人小説や同人誌による二次創作が描かれていたがそれは当時の様子からの解釈によって左右されているため統一性は無い。


 フライト時間は20時間、経由を無視してでも5時間しか短縮できないが、少しでも速く到着できるのならそれに越したことはない。

次回9月中旬予定

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