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第一部 三章 レイラ・オーガスタ

 二人の綺麗な姉妹が大きな樹をくるくる回っている。


 「待て待て~♪」


 「アハハ、わー、捕まる~♪」


 追いかけていた娘の手がもう一人の肩に置かれる。


 「はい、タッチ」


 「わ~捕まっちゃった♪」


 「ふふふ、お姉ちゃんから逃げきれるなんて思わない事ね、エイラ」


 まぁ、実は妹より二十年くらい生きてるから、追いかけっこなんて、すごい久しぶりなんだよな、今の歳でやるのは客観的にはあっているんだろうけど。


 そう、俺、五十嵐響也はこの女の子すごくきれいな少女、自分でもいいと思わず言ってしまうくらい綺麗な少女、名前はレイラ・オーガスタ・キャロル俺が前世で死ぬ前に買ったゲームの男性主人公を選んだ時の攻略対象キャラの一人、それが、このレイラというキャラだ。


 このキャラの親は父親、母親共に元冒険者、現ギルドマスター&新米冒険者指南役、因みに父親が指南役で母親がギルマスだ、たまに一緒に指南役に回ったり一緒にギルマスの仕事をしているらしいが…


 「二人共、お昼ご飯できたわよ」


 最近は冒険者が、受ける依頼が遠方らしいので母親が、ギルマスの仕事を家でやりながら、ご飯を作ってくれる。


 (とは言っても、週に5回くらい、ギルドに行かなきゃいけないからその間、妹の世話をしなきゃいけないんだよね)


 妹、エイラ・オーガスタ・キャロル、攻略対象であるレイラのサブキャラシスコンが代名詞と言うが如く姉にべったりな姉激ラブの少女、年相応な内面と姉であるレイラとほんの1∼2センチしか違わないので双子と勘違いされがち、実際は2歳違いつまり、今エイラは三歳なんだ。


 「わ~い♪ね、ね、今日っのごっはんっはっなっにかなっ♪」


 机の上に置かれた食器からバターの香ばしい香りが食欲を刺激する。


 「はいっ今日はバターライスと焼肉の盛り合わせ~召し上がれ」


 「「いっただっきまーす」」


 カチャカチャとフォークとスプーンを使って食事を口に運ぶ。


 「この、ご飯はね、あの人と出会って半年に一緒に食べたご飯なの、その時はね…」


 レイラたちの母、アリア・オーガスタ・キャロル、ギルマスを務めながら、剣術、槍術、弓術、武術含めて全てにおいて天才的な戦術に流通している才女、ウェポンマスターの称号を持ち、彼女一人で国の兵士半数以上の戦力を有していると言われている、そして、その肩に並べられる一人の男が。


 「遅いっ!!」


 「はっはい!」


 「肩に力を入れ過ぎだ、隙を見逃さずに打ち込む剣術三連撃は、360度どの角度からも力を同じ威力を込める、お前は段々と威力が落ちている、素早いモンスターなら、一撃で落とせても、耐久性が高い敵ならすぐにカウンターを許してしまうぞ!!もう一回だ、来いっ!!」


 「はいっ!!」


 レイラたちの父、ゲンブ・オーガスタ・キャロル、新米冒険者の指南役を引き受けている大柄な男、アリアとは違い戦術ではなく剣一本の戦略でアリアと互角以上の強さを誇る、戦略の秀才、彼に掛かれば新米冒険者に一週間稽古をつけてもらえば、上級兵士と戦えるほどの力を手に入れられると言われている。


 「バターなんてどこに持っていたんだよって言ってたんだけどその時私のバッグは魔法でね―」


 母親の冒険者時代の話はとにかく長い、作る料理はだいたい、冒険者時代の二人で何年を記念した時の料理や、強敵をギルド全員で力を合わせて勝利の美酒として食べた料理とかが多い、空腹の時に食べるという戦闘糧食の話で、インパクトがありすぎて味が分からなくなることも多々ある。


 「で、あの後ね、ギルドの扉が急に開かれて若い青年が声を切らしながら…」


 「「ごちそうさまでしたっ!」」


 同じタイミングで食べ終えて母親の冒険譚を終わらせるために、食後の合言葉で話を無理矢理終わらせた。


 「あら、そう、じゃあ、自動食器洗い乾燥機に置いておいてね、そうそう、レイラちょっといい?」


 「ん、うん、分かった」


 食器を片づけて母さんの膝にちょこんと座ると母さんは内ポケットから一通の手紙が入っていた。

手紙には家紋と綺麗なサインが書かれている。


 「国王陛下からね、近々、侯爵令嬢たちのお茶会があるの、うちにはお呼びがかからないと思ったのだけど、ギルドの関係者として、是非とも他の貴族と親睦を深めてギルドの仕組みなどをアピールして資金を増やした方がこちらとしても、ありがたいです。って、まぁ、魔物や猛獣と戦うんだから、それなら、って思ったんだけど、流石に私や父さんの話を長々しても、聞いてくれなくなるし、それなら、と思って…」


 つまり、国王陛下からのお誘いだから、私を通じて冒険者の資金を上げ国の被害などを抑えるために令嬢や貴族からも依頼を回してくれるようにしてくれ、それが可能なのは同い年の私が適任と考えている。


 「でも、私も令嬢の数としてカウントされているんじゃないの?…まぁ、一応それは脇に置いて…ゴコンッ、構わないけれど、令嬢の集まりだと服は?馬車なら使わなくても大丈夫だとは思うけど…」


 「何も潜入ではないの服はエイラの服で大丈夫よ、それに、説明上手なあなただから出来るし、上手く出来たら特待生として、ヴェルスター学園に入学もボーナスしてくれるでしょう」


 ヴェルスター学園、ストアドの世界で幾つもの大陸に姉妹校が存在している学園、文武両道で戦闘科、研究科、魔法科など幾つも学科が分かれている為、将来有望な人材が入学出来る学校、ゲームでも主人公は生まれながらの才能で外部生でありながら入学する。そこで攻略対象と繋がる。


 つまり、ここで断ったら主人公とは縁が無くなるということになる。


 (しかし、それはノー!断じてノー!主人公のかっこかわいさを見れないなんて恋愛対象としての攻略をさせて、今のように冒険者のギルドマスターの娘と才能に恵まれた主人公、そして、あわよくば結婚したら…客観的だけど、毎日あの憧れのかっこかわいさを見れる…はぁ、はぁ、これだっ!)


 「国王陛下のお誘いなら頑張らずにはいられないかな、うん、準備はしておくとして、お茶会で令嬢たちの話の輪に入って、ギルドの仕事や役割に興味を示してもらい、依頼を増やす事を目的にすればいいんだね」


 「ええ、そうよ、引き受けてくれる?」


 「うん、だけど、親同伴だったり、令嬢なら、大勢のメイドや使用人、強面のスーツ姿の男性とか…そういうの居ると…」


 「だ、大分マンガのイメージが強いようだけど、令嬢のお茶会だから同伴者は一名か二名だけよ、大人が多いと、緊張してお話しできないでしょう」


 「それなら…」


 「うちの同伴者は父さんね」


 そもそも、ギルマスをやっているならヴェルスター学園には普通に入れそうな気もするけどそこはこの世界ではそう言うものなのかな?前作辿ってみても姉妹校には普通に入れたような気がするんだけど、やっぱり別大陸だと、色々と制度が緩いとかあるのかな?


 「さて、母さんは書類まとめて一回ギルドにいくわね、帰りにスーパーに寄っていくけどなにか欲しいものある?」


 欲しいものか、個人的にはないけど、主人公と結婚するなら家事全般は出来ないとなぁ、でも、自動食器洗いとかあるから、家事で必要な物は…


 「えっとね、お料理本とね、お洗濯の仕方の本とねお家のお手伝いの本」


 「あらあら、レイラったら、花嫁修業?スーパーの中に本屋あったかしら?見つけたら買っておくわね、でも…」


 「なあに?」


 「あなたの未来の旦那さん、私と父さんを納得させるくらいに強くないとお嫁に行かせないからね」


 ドスの効いた声でそういうとエイラが走って抱き着いてきた。


 「お姉ちゃんがお嫁にいくなんてやだぁぁぁぁぁぁぁ、うわあぁぁぁぁぁぁん!!お姉ちゃんと一緒がいいよぉ~」


 「あぁ、違うよエイラ、お姉ちゃんもっともっとおうちのお手伝いをしたいだけだから、大丈夫、エイラを一人になんてしないよ」


 「…ホント?」


 「本当」


 「…ホントのホント?」


 「本当の本当」


 「……ホントのホントにホント?」


 「…ほ、本当の本当に本当」


 「……ホントのホントにホントのなかにホント?」


 (いつまで続くんだろうこれ)


 結局10分以上も付き合わされた。


 あれだけ姉の事で心配するなんて、やっぱりゲームやマンガでシスコンやブラコンさらにロリコンとかは度が過ぎているんだろうなぁ…元の世界ではいないよこんな、病気レベルの独占という名の未練がましい愛。


 さてと、自分の事をさらに分かるという事で、[アレ]が出来るか試してみた。


 「ステータス!」


 口に出すとスクリーンの画面みたいに自分の名前が表示された。


 「…あれ?名前だけ?能力値は分からないのかな…」


 スクリーンの画面には自分の名前しか出てないもう少し正確な情報が出来ないかと無意識にスクリーンの画面に触れると自分の名前を押した後に画面が切り替わる。


 「おわっ、ん?これは能力値?」


 切り替わった画面は詳細画面でゲームのステータス確認画面と同じだった。


 「うーん、分かっていたけれど、どれも低い、でも、職業、ギルドマスターの娘かぁ、これはただ生まれが関係しているのかな」


 能力値が分かるなら魔法も使えると思いゲームの使用魔法確認のようにステータスを長押しすると使用魔法が表示された。


 「えーっと、探知魔法だけ、かぁ…魔法の詳細は…」


 探知魔法 使用中自分の半径10メートルの生物、植物などの探知、レーダー探知機のように表示されるレーダーが一周するごとに半径が10メートルずつ広がる。


 「半径10メートルの生物に植物かぁ、ギルドのクエストでは納品クエストで使えそうだな、今の年齢じゃあ登録できないけど…」


 この世界では高校生つまり、16歳にならないとクエストを受けられない、ストアドの世界では16歳で冒険者登録の後ヒロインか仲間キャラを集めてクエストを受ける。


 ヒロインの場合連れて行くと主人公への好感度が上がる、ただし、メインヒロインの場合三人以上のメインヒロインを連れて行くと上がらず一回くらいなら大丈夫だが何回も同じチームだと好感度は下がる。


 主人公がクエストとヒロイン攻略を両立したいというなら、出来るだけ、パーティーを考えなきゃいけない、好感度が下がると命令を聞いてくれなかったり、ステータスが弱体化する。


 まぁ、俺は主人公と結婚するつもりだし?絶対攻略対象とされている以上、他の奴らには邪魔させない。


 でも、確か、体験版では強いとは言えないんだよなぁ、いや、誰かと組み合わせたら滅茶苦茶強い、タイムラグなしで攻撃力アップ防御力アップ、一ターンランダムで2~3回行動付与など、支援魔法以外にも中級魔法も使える。


 だけど、探知魔法だけか、たしかに支援魔法が先に習得したし、中級魔法覚えるのはレベル15くらいだったかな?他のヒロインならすでに上級魔法習得するレベルだし、中級魔法はいわゆるオマケなんだよな、好感度ではなくレベルMaxにしたいなら結構時間がかかりそうなんだが。


 「どちらにせよ、レベリングは今じゃ無理か、ゲームの世界で初めにやるのがレベリングだからか、時間がたたないとレベリングできないのがすごく嫌な感じになる、これが、子供のころ早く大人になりたい理由なのかな、親からの束縛の解放的な?」


 今できる事は少ない、という事だが、逆に言えばできる事をすぐに消費できるというわけだ。ただ、何もせずにできる事が増えるのを待つよりも、今できる事を無くす方がいい。


 「さて、レベリングがダメとなると、お茶会の説明文を書く事かな、長すぎず短すぎずで考えると…三分がいいかな。だとすると、まず、ギルドの説明を細かく書いて端折れるところは端折ってそこから、音読をして、スマホで時間計るか」


 細かい微調整や、分かりやすく尚且つ興味を持ってもらえる文を作る。


 「読書感想文書いている時も似たようなものあったなぁ、あれ、途中でどこまで読んだっけってなって結局最初から見る羽目になったから、苦手だったなぁ、栞の存在が頭からフライアウェイしていたのが悔しい」


 分を作りながらも音読すると簡潔にまとめると一分足らずで終わったり長くすると三分どころか二分オーバーになったりしてしまう。


 「むむむ…」


 試行錯誤しながら音読しているとエイラがとてとてと足音を鳴らしながら近づいてきた。


 「お姉ちゃん、それ、母さんのお仕事の紹介?」


 「そうだよ、お嬢様達のお茶会でみんなに紹介するんだけど、イマイチピンと来なくてね」


 「…お姉ちゃん、一回読んでみて」


 言われるがまま、エイラの前で読んで読み終わるとエイラが箇所を指定して、そこにあった分の言い方を分かりやすく、もう少し、砕けた表現をするように、して、再度読んでみたら、ピッタリ三分で読み終わった。


 「す、すごい…」


 「回りくどい言い回しよりも少しフレンドリーに話した方が、話に入りやすいし、質問時間も設けるなら、これくらいにした方が、良いと思うよ」


 エイラの指定した箇所を言い方というアレンジだけでこれだけ、変わる事に感動して、ニコニコ笑って、ありがとうと頭を優しくなでる。


 「えへへ…」


 照れくさいような顔をして頭を撫でさせるエイラに感謝をしながら、次にできる事の目星をつける。


 親は共働きで余り構ってはもらえないけど、ないがしろにされているわけではない、肉親の関係からサブキャラはエイラで決定かな、後から、友人や近所の人が挨拶に来ない限りは、その路線で行くと主人公がエイラに接触する機会を多くする、直球に気になる、と言ったら火に油を注ぐような効果だろうな、さっきの反応を見るに、ではどうするか…


 そもそも、メインヒロインにこだわる必要もないんだよな、サブキャラを通じて親密になるのではなくサブキャラを中心に仲良くなるって言う事もある。


 サブキャラにとって、メインヒロインは保護、執着などの強い意志または、感情を示している。その為、主人公が誰とも好感度を上げず仲間キャラと冒険するルートが一番手っ取り早い攻略ルート、つまりヒロインと会うにはサブキャラと打ち解ける、親密になるなどをして、ヒロインと仲良くなるから、親愛度を上げるのが、鉄板だ、しかし、そのほかにもう一つ関わりを持つことが条件だったりする。


 それは、私とあなたは友達だけど私の主人とあなたは友達ではない理論…!


 関わりをもってメインヒロインとの壁を崩す以外に遠距離として壁を少しづつ削っていくと言うものだ、実際そういうものは前作で幾つかあった、その場合そのメインヒロインは主人公を見ると一目惚れをして親愛度がみるみるうちに最大になる。


 あぁ、もう、漫画とかだとプレイ済みのゲームで悪役令嬢に転生なんて話はいくつかあったけど、攻略対象になって主人公と結ぶために未プレイのゲームで思考を巡らせるなんて、どんなハードストーリーだよ!!新しい、だが、惹かれない!!


 ハードゲームで最難関ステージをSSSランクでクリアしないとご褒美がもらえないような分かりそうで分からないと思っていたが一部には痛いほどよくわかる例えだ。


 「一手、二手、何千里も先の事を先手を打たないと、他のヒロインに取られてしまう」


 その事を考えると次の手は…


 「仲間キャラの足止めだ…!」

次回二月末予定


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