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第十部 一章 陰湿

 

 『さぁ、この個人戦もいよいよ大詰めとなって参りました。準決勝戦、皆様中央のスクリーンをご覧ください。改めてここまで勝ち上がった4人の選手をご紹介しましょう』


 『一回戦、二回戦にその圧倒的な魔法の才を見せ付け、相手を圧倒させたその姿は狂乱の華、一天四海の適格者、千麟 美奈!!』


 ~控え室~


 「っっ……なに、この背中がむず痒くなってくる紹介…恥ずかしい」


 「これ、俺が紹介されていると思うと…うわっ鳥肌立ってきた」


 「アイシャさん、一人称変わってますよ」


 『巨躯の身体は恵まれた武の証、強大なパワー、怯まぬタフネス、見敵必殺のヘビーファイター、ウィルトン・ブーリン!!』


 『疾風迅雷の剣捌き、さながらそれは、天変地異さえも御す事も他愛もない、光陽の騎士レイラ・オーガスタ・キャロル!!』


 「言い過ぎだよ……あ、あぁ、コーヒー…コーヒーちょうだい……カフェインあったら…気持ち落ち着くから…」


 『王家の資格は強者である事、なればその身に宿すは天壌無窮の才能、氷雷の女王リラ・エンジェルス・シャリア!!』


 「なんか、リラだけ、かっこよくない?いや、身分として合っているからかな?」


 「女王っていうよりかは姫君だけどね。5歳だし」


 「皆様、私と同い年でしょう?」


 「えっ…!!」


 「え?」


 「あ、あぁ、そうだね!お…僕もだけどね、あ、あはは…」


 「そうそう、レイラも同い年…うん、同じだねー…」


 「うん、同じ、私、5歳…」


 「「「……」」」


 (((1人だけ20年生きている男でごめんなさい…)))


 そうしていると、準決勝戦が始まるブザーが鳴り響く。それを聞くと、アイシャ除く三人は別室へ移動した。


 View アイシャ


 …暇になっちゃったな。


 元々この控室には午後の部に予定しているチーム戦の選手も入るようになっている。昼食はテレビ局にあるようなロケ弁を出してくれるようだが…


 (正直足りないよなぁ…そもそも気孔を使うためにカロリーは多めに取らないと、肝心な時にガス欠になりがちだから、いくつか廃棄されるのがあったら、それも食べたいな)


 チーム戦では俺達は連携、つまり、協力して戦わなきゃいけない。当たり前のように相手のチームの一つに攻略対象の男性4人が入っている。もし、ブロックが別れたら…


 「まぁ、当たり前のことだけど…はぁ~」


 「なにが当たり前のことだって?」


 「うわあああああああああああっ!!」


 「わああああああああああああっ!?」


 「あああああああああああああっ!!」


 「あああああああああああああっ!?」


 「二人共なーにやってんだ。共鳴かよ」


 「あ、あぁ、あんたらか…びっくりしたよ」


 いつに間に後ろに回り込まれていたのか、アルバート含めた3人が急に話しかけてきた。


 「残念だったな、二回戦で負けてお互い暴れたりねーな」


 「それより先に驚かされた僕に謝罪もないのか?」


 「このアルバート家の長兄が?それに驚いたのはこっちだよ?」


 「いきなり後ろから話しかけるのはどうなんだよ」


 「二人共お互い様だろ」


 「五十歩百歩やで、草生えんやりとりでこっちがびっくりしたわ」


 アルバートの後ろに控えている2人、クリプトとホーグスがこっちにも聞こえるくらいの声でつぶやく。


 「ところでさっき言ってた当たり前ってなんだ?」


 「あぁ、聞こえていたのかい…なぁに、君たちがチーム戦でもエントリーしている事に気付いてね。もし、個人戦で僕たちが勝っても君たち四人と当たったら、流石に結果が変わるかもって思っただけさ」


 「あー、確かにな、リーダーは俺だけど、実力は俺よりも強い奴がいるし、てか全員けえすばいけいす?って言うんだっけ?場合によって相性が変わる奴だからな。お前らもそうじゃね?」


 (よく言うよ。私たちと決定的に違う所があるっていうのに)


 同じ、攻略対象だからといって、戦闘面の役割は全くの別物と言っても過言ではない。

 まず能力値、元々男の奴らはパワータイプしかいないからレベルアップで大幅に上昇するのがSTR(筋力)やHP対して俺達、女子組はテクニカル、知力、素早さが同じ値で大幅に上昇、知力はテクニカルと合わせて一定の値を超えたら新しい特技や魔法を覚える。


 実際、PLの趣向によるだろうけどね。女子はやっぱり、守ってもらいたいと思うし、男子は守りたい欲があるから、キャラクター性や設定があると掘り下げたり、考察とか色々してくれる人がいると、二周目とかまた違った育て方とかする人もいるだろうし。


 「で、お前らのリーダーは?やっぱ姫様?」


 「んんー、決めてなかったな、指示飛ばすのは誰も得意ってわけじゃないし…」


 俺は、高圧的な感じになって無理矢理やらされている気にしちゃうし、レイラは責任重大でフリーズするだろうし、リラも権力を使っている感があるから…実際、美奈がリーダーポジになるのかな?


 「で、アイシャ…さんは、チーム戦までスタンバイしていると」


 「アイシャでいいよ。堅苦しいのは面倒でしょう?一人で対戦見てても暇だしよかったらお隣どうぞ」


 そう言って、椅子の両脇をポンポン叩いたけれど…


 (…せ、狭い…)


 大人が5人座れるようなベンチに大人2人分しか使われていない。


 (男にこんなに詰め寄られるのって、こんな気持ちなのか…?いや、俺が小さいからこうなっているんだ、少し、いや割と怖いわ…)


 (いや、それよりも今はあの戦いを見届けることとしようか)


 ~会場~


 『さぁ、始まります。千麟美奈VSウィルトン・ブーリン、今、ゴングです』


 ViewChange 美奈


 ゴングが鳴ると同時に真上に向けて魔法を放った。


 『おや、これはどういう事でしょう?』


 『恐らく、カウンターの対策でしょう。何処に落ちるか分からないので、運が悪ければ自身にあたってしまうので、運の要素が絡みますが…彼女、4属性すべて使えるので、自身を覆える魔法が使えるので攻守盤石と言えるでしょう』

 (しかし、先程の戦いから魔力を使い過ぎている。杖で魔力の消費は多少抑えているとはいえ、普段ならもう空になってても可笑しくない…千麟美奈、とんでもない精神力の持ち主だな)


 「おわっとと!」


 やっぱり、カウンターだけじゃないよねー、攻撃力も半端ない。レイラちゃんの「一の太刀」には程遠いけど、単純な力比べならアイシャちゃんと互角…この時点でレベルどのくらいだ?こいつ。


 「まだなの…?まだ…」


 カウンターの恐れがあるから魔法は使えない。それなら使う技は一つ。


 「潜岩遊泳」


 地面が揺れて、ズズズッと地面が盛りあがり、フィールド全体を岩が覆った。それぞれの岩は高低差があり、移動するには一歩で登れる高さもあれば、よじ登るように手をかけないと行けない場所もある。


 (まぁ、このスキルがなければの話だけどね…)


 潜岩遊泳 一定時間、土属性を持つものに潜り相手の攻撃が当たらなくなる。


 (土属性という制限はある物の逆に言えば土属性であれば何でも潜れる。このフィールドは地面が元から土属性が付いているが、何が何でも時間を稼ぎたい俺は、岩場にいると思わせることが大切、しばらくこの岩でやり過ごさせてもらお…あれ?)


 そう思った時、ゴォン、ゴォンと重々しい音が聞こえる。岩の中にいるせいかその音が近いのか遠いのか判断できないが、この重々しい音が先程の試合で聞いたアイシャさんの打撃で地面が揺れた音に酷似していて、身体を震わせる。


 (噓…?噓でしょう?岩場にいると思わせて入るけれど…この音は…!)


 「どぉこ行きやがった、ごるぁっ!!!!」


 「っ!!」


 地面を震わせるような大音量、岩の中にいるのにその大声は心臓が震えるような感覚さえ感じるほどだった。

 それから近くの岩を手当たり次第に壊していく、ゴォン、ゴォンと最後には爆発音に似た音が聞こえた。


 (嘘だろう!?適当に弄ったとは言え精霊の力を使ったんだぞ、一番大きな岩に登って見渡すと思ったのに、普通壊すか!?)


 確かに手っ取り早いと言えば理解はできる。だが、壊したら隣接する岩が落ちてくる危険から壊す発想は頭のネジが一本飛んでいるか、緊迫した状況じゃないと出来ない。


 (潜岩遊泳は潜っている間、魔法も使えないし通常攻撃も出来ない。普段なら岩場にトラップを仕掛けるが、そんな暇がないから、時間稼ぎでしかない…いつこの岩が壊されるかもおかしくない…)


 「あっ」


 ~大会1週間前~


 『という事で、爆破テロと見て警備局員は調査を進めています』


 テレビのニュースは次のトピックに移る。


 「…最近こういうのばかりだな」


 「そうなの、爆破なんておかしいの、やるなら気づかれないようにするに限るの、ネジとか隙間に挟んでグリグリと…」


 ノースとライズがテレビを見ながら、話し合っている。


 「ねぇ、マスターあの二人黙らせてよ。全然内容が頭に入ってこない」


 「まぁまぁ、いいじゃなイ?ノーちゃんもラーちゃんモ、楽しそうじゃない」


 「みんな、集まって、せっかく久しぶりにゆったり過ごすって決めたんだから、気楽にしようよ」


 それを聞くとみんな肩にちょこんと座り、テレビは動物特集に移った。動物特集では飼い主がシャボン玉で犬の形を作って犬はそれと楽しそうに遊んでいる。


 「…犬かぁ、うちには動物アレルギーの人が多いからなぁ(特にメイド)一人暮らしでも始めたら、何匹か飼いたいな…あっ、でもリエラを借りたり…」


 「ご主人、これくらいだったら出来るの」


 ライズは水を変形させて水の犬を出した。


 「オイオイ!ソファーが水浸しになるだろ!おい、カレン、マーラこの犬が家汚さないようにコーティングしろ!」


 数分後


 『わぁ…』


 4人の精霊の手によって、その犬は本物と見間違えるほどのリアルなものになった。


 「可愛い~♡」


 その犬と屋敷で走り回ったりして、いつの間にかのんびり過ごすはずが、屋敷を走り回る日になっていた。


 ~現在~


 (よし、これなら!)


 声を潜めて、4人にお願いする。


 「出てこい、おどれこらぁ!!」


 関西のヤンキーが使いそうな言葉も交えながら、ウィルトンは周りの岩を破壊している。すると、岩の隙間から何かが出てくる。


 グルルルルと、牙を見せつけるように唸りながら、魔法で作った犬が一匹、また一匹と岩陰から出てくる。


 『あれは…犬、でしょうか?何故ここに?』


 『…いや、犬全体に魔力が帯びている。あれは、犬ではありません。魔法でこのような精工な作り物が…歳半ばも行かない子供にこれ程の物が作れるのか…?』


 「お待たせしました、ウィルトン様」


 岩の柱の上に立ち、見下ろす形で杖を向ける。


 「食み砕け、「踊り狂え(ダンス・マカブル)我が無心の軍隊犬(・アンマインドドッグ)」」


 オリジナルの魔法、カウンターの能力があろうと攻撃しているのは、術者ではなく、魔法自体、カウンターの対象が自分には来ない。


 「それに…タイミングがいいね」


 空を見上げて、土の柱を伸ばして更に上に行く。


 「その子達じゃ、とてもじゃないけれど、あんたを倒すほどの攻撃力は備わってない。だから今回のフィナーレは伝統の爆発で終わらすとしましょう」


 「グッ、クソッ、犬公共が、汚い牙を近づけるんじゃねぇ!!このアマが降りてこい!!」


 「さーて、ウィルトン様、最後に質問と問題でーす」


 口をにぃぃ、とゆがめて言う。


 「先程から、そのフィールド地面が熱いような気がしませんか?しかも、時間がたつにつれて熱さが増しているような、まるで熱したフライパンのように」


 ウィルトンは、ハッとした顔で地面を見る。


 「それでは問題です。熱したフライパンに水滴を垂らすとどうなるでしょう?そして、その現象は何というでしょう」


 「なっ…!この…卑怯者がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 空から多くの水が雨のように降り注ぐ。水は地面と接触するとパァン!とはじけ飛ぶ。空襲のように水は蒸発して体積を増大して爆発を起こす。


 「正解は水蒸気爆発でした」


 砂煙が全体を包む中でピーーーーーーーー!!と聞き慣れた音が聞こえた。


 『…勝者、千麟美奈!!』


 自分の名前が呼ばれると同時に歓声が上がる。


 『ワァァァァァァァァァァッッッ!!』


 歓声の中には口笛の音も聞こえて、悪い気持ちじゃない。


 会場の入り口にはリラが立っていた。


 「おめでとう、バトンタッチ」


 「はい、タッチ」


 パンと手を叩くと入れ替わるようにリラとレイラがまだ歓声が残っているフィールドに立つ。


 「おっと、忘れる所だった」


 指をパチンと鳴らすとフィールドに残った岩はバキンと砕けて、元通りになる。


 「私のせいだけど、フィールド散々ね。水浸しになったり凸凹になったり、でもそうしないと負けちゃうから仕方ないじゃないの」


 子供になったせいか、負けてもいいと思うより、勝ちたいと思う気持ちが圧倒的に勝るんだよな、精神が男のままだから、守りたいと言う気持ちがある、自分の身は自分で感もある。


 ~控え室~


 「お疲れ様です。アイシャさん、何か飲み物ありませんか?ジュースサーバーってここにしかないって…」


 「やっと来たなクソアマ!食らいやがれっ!!」


 控え室に顔を出した直後ウィルトンがいきなり頭突きをかましてきた。


 「うおっ!?」


 間一髪の時にアイシャが抱えて避けてくれた。その後、ウィルトンは他の三人によって押さえつけられた。


 「危なかったですね。お怪我はありませんか?」


 「は、はい。でも、あちらは…」


 「放せ!放しやがれ!!」


 「一時の気の迷いで大怪我させるもんじゃねぇって落ち着けよ」


 「死んで花実が咲くものか~、落ち着けブーリン」


 「うるせぇ!不意打ちでも何でもいいから勝ちぁいいんだよ!!」


 「もう、不意打ちは失敗したから、勝てへんよ、そんなんで勝っても草も生えんし、慰謝料や迷惑料払う事になるで」


 「あの三人、苦労人だな。ウィルトンは普段は大人しいらしいんだけど、熱が入るとああなるらしい。何とかセーブしてたらしいんだけど、陰湿な事したから、プッツンしたらしい」


 「えぇ…半分私の所為じゃん…」


 「まぁ、熱が冷めるまであいつらに任せるしかないな、それより、のど渇いたんだろ?早く行ったらどうだ?」


 「あ、アイシャさん、こいつ押さえつけるの手伝ってくれ!予想以上に熱が入ってやがるっ!」


 「…ぶん殴って気絶させていい?」


 「いや、それは後のチーム戦で響くから、出来れば無しで…」


 「注文(オーダー)受け付けましたー」


 後ろで吠える負け犬を横目にドリンクサーバーまで行く。


 「みんな、何飲みたいー?」


 「ホットココア!」


 「お冷、氷入りでお願いなの」


 「ミルクティー砂糖多め一択だ」


 「オレンジジュースのオ水割リ」


 (万が一の為にみんなのマグカップを用意していてよかった。みんな、体積が小さいから普通の奴が使えないのが不便だな。飲み物の好みも味覚も別々だし、唯一の共通している好みってハンバーグとシャンパンの組み合わせだっけ)


 最近、みんな食べたいものをリクエストするんだけど、食べられる量が少ないから、サリアちゃんが苦労して作るんだよな。

いつか労わって上げないとメンタルが持たないよね…うん、近々、遊んだり、休暇を与えよっと。


 それぞれの飲み物を取って決勝戦に向けて、深呼吸をしながら、レイラとリラの対戦を見る。


 

次回9月中旬予定

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