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第九部 三章 快勝

 4月16日


 「ジュニア部門バトルアリーナトーナメント」当日、会場には、観客席には、30分前には満席になって、二階席も埋まりつつある。


 会場は東京ドームと同じ大きさではあるが、観客は10倍以上入ることが出来る、席は10階席まで用意されている。観客たちは手にポップコーンや、コーラを持って始まるのが今か今かと待ち望んでいる。


 View 美奈


 出場者である私達は、あらかじめ用意された控室で、今回のルールについて説明を受けている。既にあちら側が用意しているミスリル製の防具は装備済みだ。


 「…というわけだ。軽くおさらいをする。まず、トーナメント戦では1番から8番の赤か青の玉をこのマシーンの中から引いてもらう。同じ色、同じ番号を引いた人が対戦相手だ。一試合10分となる。その間、自分か相手の体力が無くなった時点で終了だ。

 自分の体力はそれぞれ3000点、右腕の部分にカウンターが設定してあるだろう。攻撃を受けたりすると、減っていく。タイムオーバーの場合は、互いの残り体力が多い方が勝ちとなる。以上だ」


 説明を終えると、控え室に選手入場準備のアナウンスが流れて、その後、説明者が先導して、入場口から会場へ行く。


 入場すると、周りから甲高い歓声や口笛の音を浴びる。あまり大舞台に出たことがないので、少しうるさい。


 全員が中央に集まるとスピーカーから声が聞こえてくる。


 『さぁ、やってまいりました「ジュニア部門バトルアリーナトーナメントinシャリア王国」今回は記念すべき第一回開幕です!司会実況はバトルアリーナトーナメント取締役員の王芳(ワンファン)解説は同じく文劉(ウェンリウ)さんがお送りします。文劉さんよろしくお願いします』


 『よろしくお願いします』


 『第一回ではなんと16人中6人が女性と大変珍しい出場者となっております』


 『女性としての長所であるものの一つに身の軽やかさと素早さがありますから、そのあたりが注目されそうですね』


 『なるほど、では出場者を見ていきましょう。まずは…』


 実況者が一人一人出場者の紹介をする。最初は男から呼ばれるから、呼ばれるのは後、50音で順番が呼ばれるので私はアイシャさんの後になる。


 『アルバート・ジャック、元王国軍親衛隊隊長の一人息子、二刀流ならぬ二槍流においては右に出る者はいないと謳われる父の背を見て育ってきた今大会の優勝候補の一人です』


 (っ!アルバートって…)


 アルバート・ジャック、女主人公の攻略対象の一人、黒髪の髪型オールバックであるランサー、パッシブスキル「二槍流」で一回の攻撃が二回分ヒットする。


 (道理で、見たことあると思った。他にも見たことある顔があるけど、もしかして…)


 『ウィルトン・ブーリン、今大会での一番大柄な体躯の持ち主、その巨腕から繰り出される打撃は大ダメージは免れないでしょう』


 (やっぱり、女主人公の攻略対象だ。じゃあ、他の2人も多分…)


 『クリプト・ランブルド、小柄な身体は俊敏な動きを極め、相手を翻弄出来る武器と言えるでしょう』


 (だけど、他の四人はモブって感じだな、正直言ってゲームでも一人一人顔グラや表情差別あって、主要人物かどうか分からないから、半信半疑だけど…)


 『ホーグス・キングストン、無属性の魔法を多く使えるダークホースと言えるでしょう。その実力は一体どのような戦いになるのでしょうか』


 他の6人もやはり、名前に覚えがない。モブだとは分かりつつも対戦相手になるのは明白だから、いざ対面しても真剣に挑もう。


 『それでは、女性の選手を紹介しましょう。』


 『艶やかで華のある試合にしてほしいですね』


 『アイシャ・ハーン、気孔を使うハーン家の一人娘であり、女性で初の気孔を扱えるミステリアスな少女、その気孔術にも注目されています』


 当たり前だけど、女性で気孔術を使える人なんて見ないんだよな、確か6作目の攻略対象の親族が学者の気孔専門家で日々研究しているらしいけど、男性しか使えないって断言してたなぁ、彼が知ったら、一歩進んで二歩下がるだろう。


 『千麟 美奈、魔法の天才少女、4つの属性魔法をすべて習得しており、その威力は計り知れない程の実力を有しています』


 自分の事ながら持ち上げられて紹介されると流石に恥ずかしいというか背中がむずかゆい。


 『リラ・エンジェルス、この国の姫君がまさかの参戦です。神采英抜と謳われるリヒト陛下の寵愛を受けている彼女はどの様な戦いを見せてくれるのでしょう』


 リラの紹介を聞いて会場全体がざわめく、それはそうだろう。姫の客観的印象はお淑やかさが一番に思い浮かぶ。この様な大会に出ること自体が姫として、おかしいのだろう。


 『レイラ・オーガスタ・キャロル、ギルドマスターとギルド指南役の間に生まれた才女と言えるでしょう。その身体にはどのような才を秘めているのでしょうか』


 そして、全ての出場者を紹介した後、空中に正方形のディスプレイが表示される。


 『では、皆様、ディスプレイをご覧下さい。出場者の中からランダムに振り分けてAブロックBブロックで試合を行います。では、ルーレット、スクリュード!!』


 ディスプレイでは自分達の顔写真が移り変わりながらトーナメント表に張り出されていく。


 私(美奈)とアイシャはAブロック、お互いがもし、戦うとすればそれは、2戦目になる。そして、レイラとリラはBブロックあちらの方は準決勝で戦う事になりそうだ。


 『決まりました。では10分の休憩時間を設けて終わり次第試合を始めさせていただきます。それまでに会場の皆様もお手洗いなどを済ませるようお願いします』


 控室


 「ふぅ…あんなに大勢の人に注目されるなんて、初めてで今も心臓が鳴りっぱなしよ」


 「そうだね、レイラもあの歓声を聞いただけでもう…あばばばばば」


 「そうか?確かに注目されて身体が強張るのは分かるけど、自分からなんか一言、意気込みとか、言わない分良かったとか思わないか」


 「ですね。私は皆さんよりも外に出る機会がないのでああいう場は新鮮でいいものだと思いますが…レイラさんには刺激が強すぎたようですね」


 View Change アイシャ


 「それにしても、この鎧はもう少しマシなのにできなかったのか?特にこの胸当て、苦しいんだけど」


 「あれ?アイシャはインナーで押さえつけてなかった?」


 「ダメージ計算の正確さ関係でブラやインナーは最低限の薄い奴しか着れなかったから、押さえつける普段の下着じゃなくって指定の服を買ったんだ」


 「まぁ、それは…お気の毒に」


 「本当にそう思うなら、もう少し心から言っている雰囲気を…ん?」


 話していると廊下を歩いている一人の女の子に目が行った。

 

 「アイシャ?どうしたの」


 「いや、あの子出場者じゃないよな…出てなかったし」


 「ひっ!だ、ダメ、隠れさせて美奈さん、レイラあの人見た事がある…!」


 「見たことあるって、知りあい?ってあの人確か…」


 View Change リラ


 アイシャさんが言った人の方へ目を向けると、その光景に口が勝手に開いてしまう。何故なら鬼灯家の令嬢である優菜さんがレースクイーンのようなコスチュームで歩いていた。


 自分たちが見ている事に気付いた彼女は向こうから小さく手を振って、ヒールを鳴らしながら近づいてきた。


 「ごきげんよう」


 「ご、ごきげんよう、優菜さんこの前は、どうも」


 「それを言うのはこちらですわ。お陰でこの様な事をする機会が出来たのですし、会えたのですし」


 「…」


 いや、それはやり過ぎじゃないのかな、ただこの大会の存在を教えたのは観客席で応援してあげたらっという意味であって…


 「優菜さん…?リラ、その方は?」


 「え、あぁ、ご紹介しますね。こちらは鬼灯家の令嬢の鬼灯 優菜さんです。見覚えのあるのはお茶会の時にみたからでしょうね」


 「お茶会…あっ、あのハンカチを落としたあの!思い出した」


 そう言うと美奈さんは手を取って握手をした。


 「お久しぶりです。その服とっても可愛くてセクシーですね!らうんどがーる、というものでしょうか?」


 握手された優菜さんは最初は思考が一瞬にして奪われたように、真顔のままフリーズしていたが、美奈さんが一方的に話していくうちに、目を丸くして頭から煙が出てきた。


 「美奈さん、ストップストップ!ブレーキ踏んで!いきなりの事でスペックがショートしてますから!」


 まぁ、確かに子供にレースクイーンの衣装は刺激が強いけれど、まぁ、何というか前世のおれがロリコンじゃなくて良かった…でも、目のやり場に困ることは変わりないんだよな。


 その後、呼びかけや精霊のささやきで冷静さを取り戻した美奈さんと優菜さんが一瞥して話を続ける。


 「この前、お城にお邪魔した時にこの大会の事を知りまして、出場できないのならば関係した何かがないか探してみたところ、ラウンドガールが不足しているという情報をやm…入手しましたの」


 「今、闇って言いかけてませんでした?」


 「ナンノコトデショウ?」


 「なぜ眼を逸らすんですか?」


 「コホンッ、それで、大会が近かったこともあり、ラウンドガール審査はあっさり通過して、色々コスチュームを着たんですのよ。ウサギの奴とか水着とかメイド服とかなんか紐とかもありましたけど」


 「その中でもマシだったのがそれだったと」


 「マシというか似合いますでしょう?体のラインにくびれ、ターンした時にちらりと見えるうなじ、これぞ鬼灯家の美を体現したエレガントな衣装というわけですわ」


 そう言いながらクルクル回ったりウインクを飛ばしてくる。


 「あっ、おーい優菜さん、そろそろ会場の方へ行ってくれ。それと君たちも、そろそろ準備をしておいてくれ」


 「あら、もうそんな時間ですわね。では皆さま健闘を、頑張って下さい」


 「ありがとうございます」


 会場では歓声をあげたり、旗を広げている観客たちで賑わっている。


 『さあ、いよいよ開幕です!まずはAブロック一番人気はウィルトン・ブーリン体躯を駆使して勝ち上がってほしいですね』


 『そうですね。しかし、他の人も注目されているアイシャさんも優勝候補と言えるでしょう』


 『なるほど、今回の注目カードはその二人という事になるという事ですね。ではまずは一回戦千麟 美奈VS―』


 View Change 美奈


 さて、休憩時間で緊張は晴れた。これで気楽に戦えるな。相手は8歳か…肉体的にもこっちが不利だけど…


 『今、ゴングです!!』


 ゴングの銅鑼の音が響くと同時に急に突進してくる。


 「…遅いし、単調的すぎるな。「ファイアウォール」からの「アースショット」!」


 炎の壁から火を纏った土の弾丸が現れ直線的に突進してきた相手は全弾面中すると同時にピピピピピピと鳴った後、ピー―――と長い音の後に機械的な声で「You Lose」と鎧の腕から聞こえた。


 その後、会場全体が一瞬、静寂に包まれるが、それは本当に一瞬で直ぐに歓声が上がる。


 『秒殺ーーー!!なんということでしょう。ゴングが鳴ってほぼ十秒で決着がついてしまうなんて!』


 『これは面白い、魔法を組み合わせただけでなく魔法の威力も十分だったためライフが恐ろしいほどの速さで減ったのだと思われます』


 『では、リプレイを見てみましょう。一直線に飛び込んでいく彼に美奈さんは、炎の壁でしょうか』


 『「ファイアウォール」ですね。普段なら同時に二つの壁を作って挟むのが主流ですが、一つにする事により持続することが出来るのでしょう。そこから追い打ちをかけるように「アースショット」が決まりましたね』


 『これは、もしかしたら彼女はこの大会に嵐を呼ぶ存在になるかもしれないですね』


 View Change レイラ


 「あぁ、忘れていたけれど、戦っている美奈さん、かっこかわいい…」


 「…魔法を組み合わせる…模擬戦では使用してなかった戦法ですね…」


 「そりゃそうだろ、模擬戦で手の内を見せるなんてしない。常に予想を上回ることしなきゃ、ダメだろ…っと次は僕だな」


 「ただいま戻りました」


 「おう、お疲れさん、バトンタッチだ」


 パンッとハイタッチを交わして、会場入りする。


 『一回戦から大波乱の今大会、まだまだ先の展開が読めません。次は文劉さんが注目するカードのアイシャさんがどのような戦闘を見せてくれるのか、二回戦が始まります』


 View Change アイシャ


 今気づいたが、解説の人って誠三郎の帰りにあった黒服さんじゃないか、この大会の取締役員だったのか。


 響き渡る、音と共に地面をけり、一息に目の前まで距離を詰めて、気孔術で足払いをかけて、体制を崩した相手に二度蹴りをお見舞いする。


 ピーーーーーーーー!!


 『二回戦も一瞬で決着!その差、僅か5秒!いったい誰がこのような波乱展開を予想していたでしょうかっ!!』


 『見の軽やかさを利用した見事な二連撃でしたね。タイミングも重心が崩れる所を狙ったようにも見えました』


 「ありがとうございました」


 控え室に戻るとリラとレイラがにこやかに迎えてくれた。しかし、美奈は何かを待ち遠しくしているような笑みを浮かべており、それは自分も感じていた。


 その後、一回戦はレイラもリラも快勝と言うべき勝利を飾ることが出来た。


 しかしそれは、他の4人の男性攻略対象も同じことだった。短期決戦で、誰もが15秒以内に勝負をつけていた。


 『では、初戦が終わった時点でトーナメント表を見てみましょう。なんと、最年少の5歳のみがこの初戦を勝ち抜きました。この展開はどの様に影響していくものでしょうか』


 『そうですね。残った8人の子らはチーム戦でも男女分かれての出場者であり、大の友人だそうです。次の戦いの注目戦は美奈さんとアイシャさんの戦いが気になりますね。友人だから、相手の手を読んでいるかそれが重要になるでしょう』


 『つまり、相手の手を読み合い、それに適した動きをするという事が大事だという事ですね。しかし、初戦を終えた後しばらくの休憩時間を取ります。出場者の方もお手洗いを済ませるようお願いします』


 ~一方、控室では~


 「あ、あば、あばばばばばっばばばばば」


 「戦っている時はあんなに勇ましかったのに、なんで終わった後、すぐにマナーモードになってしまったんですかレイラさん」


 「ほんとにねー、ほら、お手洗いに行って落ち着きなー、ツンツン」


 「全然、動かねーぞ、温かい飲み物でも持ってくるか?確かドリンクサーバーにココアがあったはず」


 「お願い出来ますか」


 「ばば、あばば、コココココォォォーーヒヒヒヒヒヒィィーーででおおおおねががががいいいいししししししまままままますすすすすすす」


 「そこは普通に喋るんかい」


 ~2分後~


 「落ち着いた?」


 「ごめんなさいレイラのせいでご迷惑を…」


 「戦っている時はすごかったじゃねぇか、一撃で相手を沈める姿とか」


 「あれは、戦っている時は何も考えられなくなるというか、目先の事に集中してしまうというか、それに勝ったという事は、まだまだあの大勢に見られてしまうという事を考えると…あっ、あ、あば、あばば」


 「コーヒーお変わり入りまーす」


 「お待たせしました。こちらご注文のエスプレッソになります。」


 それ超苦い奴じゃん

次回8月中旬予定

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