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第七部 二章 家庭の天才料理人

 View 美奈


 あれから、私達はアリアさん指導の下、それぞれの武器を手に修行を始めたのだが…


 「はいはい、また持ち方が乱れているわよ。魔法はちゃんとした魔力伝達が伝わらないと上手く発動しないの、まずは常に杖を自分の身体の一部のように動かして見て、魔力の事は考えないで基礎から学ぶのが一番なんだから」


 「はいっ!」


 「うん、いい返事ね。またいい感じかもって思ったら呼んでね」


 「アリアさん、少しいいですかー?」


 「はいはい、今行くわー」


 この様にそれぞれに見合った指導をしてくれる。さすがはギルドマスターと言うべきだろう、飲み込みがスムーズになるのを自分でも実感できてる。


 (魔法が使える使えない時点で少し躓いている理由は主に、前世でも魔法の存在が無かったからだと思う、その理由として、杖の振り方だけ最初に比べたら大分、上達した)


 View Change アイシャ


 「そうそう、もう少し中指と薬指の間隔を縮めても大丈夫、それとね…少し足を踏み込んで」


 「こ、こうですか?」


 「うまいうまい、でも苦しそうね…柔軟体操もレッスンに取り組みましょうか、それと少し座学も、まずはその武具の事から」


 「は、はい」


 「ブレイブナックルのような格闘武具は片手専用の武器なの、理由は装着した部分を主軸に全体の力の伝達を行うための物なの、両手や両足にも同じようなものを付けると主軸がぶつかり合って効果が相殺されちゃうの、それが片手にしか取り付けない理由ね、つまり、片手にはめるだけでも装着した場所以外にもその効果は乗せられるという事、それを決めるためにも基礎は学びなさい」


 「あ、ありがとうございます。僕、頑張ります!」


 「はーい、次は…」


 View Change レイラ


 「ふっ、はぁっ!」


 「張り切っているわね」


 「そ、れはっもう!楽しみがっあるっからねっ!と」


 「…」


 「それで、どうだったかな?」


 (基礎は十分すぎる…だけど、他の人と比べると明らかに強すぎる、この子には剣の道だけでなく他の武器を試させて、他の子達と同じラインに立たせないと彼女たちのためにもならないわね)


 「ねぇ、今気づいたのだけど、ランスも試してみない?」


 「槍を?それは何で」


 「さっきの素振りの時に勢いが槍を使うとき特有の持ち方を見たからね、お試しという事でまずは一応ね、元々みんなに色んな武器を試させてあげるつもりだったから、ほらほら、ネルゲルとかどう?」


 アリアはグイグイと槍を押しつけてくる。


 「ひとまずはそれを使って基礎訓練をしていてね、それじゃあ」


 View Change リラ


 「やあ、どうだい?調子の方は」


 「旧友にあったような言い方ですね。それにしても、これはいいものですね、手になじみます」


 「チャクラムは投擲武器だけど、それは側面に付いている糸を引っ張ることで、いつでも手元に戻せるものだからね。ブーメランという武器を改良するように作られたらしいんだけど、何でも壊れやすかったんだって、対人戦で使うものではないっていうのも原因として上げられるの」


 「それにしては、随分と頑丈な見た目してますけど…」


 「うん、実はケルヌンノスは神の名をしていても取れるモンスターは牡牛と山羊のハイブリッドの獣、他種間の交尾が行われて奇跡的に順応したモンスター、今では分布が知られているけれど、その数は少なく絶滅危惧種指定、被害に遭ったとしても生け捕りを目的としている、だから、それは世界にある中でも数少ない一品」


 (まぁ、少し期待していたけれど、流石、あの子の娘といったところかな、潜在能力は遺伝したのかな?我が弟子の中でもあの子は一番出来がいい子だったから、もしこの子がこれからずっと指導を受けたら引き出せなかった力を引き出せるかもしれないわね…)


 「…あのー」


 「あっ…ごめんなさい、えっと、指導の話だったかしら?」


 「いえ、私たちがジュニアアリーナに参加する事、それぞれのご両親に許可を取らなくていいんでしょうか?」


 「あぁ、それなら心配しないで、後でわかるわ」


 「???」


 View Change レイラ


 時間がたつに連れて皆の顔には疲労が見え始めてそれに気づいたアリアはパンパンと手を鳴らし、昼食を兼ねて休憩に入る事を提案した、武器はそれぞれ元の位置に掛けて、地上階の階段に向かって歩く。


 「レイラ、今日のご飯は何?」


 普段から自分が三食のごはんを作ることになっているのでアリアから毎回のようにメニューを聞かれるのが日常になってしまった、前の時は料理本を買う前だったのでアリアが作っていてくれたが、今では家族の中では自分が料理係だ。

 

 しかし、今日は人数が人数だ。少しばかりアリアとエイラにも手伝ってもらおう。


 「あれ?そう言えばエイラはどの武器を使う事にしたの?あの時は自分の事で見てなかったけれど…」


 振り向くとエイラの手には手の甲から指先の方向にドリルがついているグローブを装着していた。どことなくうっとりとした笑みを浮かべているが、声をかけたことに気付いたら、ハッと我に返ったようにグローブを戻して、後に続く。


 (やだ、私の妹、怖すぎ…?)


 View Change アイシャ


 (ふう、実際の武器を取ったのは始めてだったけど、意外と何とかなるものだな、アリアさんも丁寧に教えてくれるし、優しい人で良かったな、(アイシャ)の父親とは大違いだ)


 台所から聞こえる包丁のトントンという音と料理の音にワクワクしながら、足をパタパタさせていると、玄関の方から話し声が聞こえてくる。声色はアリアさんのらしいが、気になって少しドアを半開きにして聞き耳を立てる。


 「…もしもし、久しぶり私です、オーガスタです…はい、お願いします……こんにちは、久しぶりですね…えぇ、半年くらいでしたか、実は美奈ちゃんをジュニア部門バトルアリーナトーナメントに参加させようと思って…え?ダメ?…あれ~?あの時、無茶なお願いしてこの借りは絶対に返すって言ったわよね?それに同じ様な借りは幾つかあったわよね、確か、1 2 3…えっ!いいの?やったぁ!ありがとう、聞き分けのいい人は好感が持てるわよ、それじゃあね」


 一回電話を切り、また受話器を持ち上げてどこかにかける。


 「もしもし?今時間いいよね、少し話があるんだけど…うん、あら察しがいい事、ダメ?気孔が禁止されていないのに?ふ~ん、あっ、そうそう、この前、友達が毛ガニやタラバガニ、ズワイガニとそれに違う友達から、松○牛もくれたのよ、冷凍にしてあるんだけど、量が多いのよね、でも時間をかけて食べるのも…あっ、いいの?じゃあ、お返しにいくつかあげるわ、バラムツもいる?あっそれは二匹程度でいい?分かったわ…はいは~い」


 まるで闇取引をしている人に思える、というか、バラムツって…人間が消化できない脂を持っている魚で二切れくらいにして押さえないとオイルが漏れだすやつじゃなかったっけ…採取以外の方法じゃ手に入らない奴だけど、二匹って…あぁ、気孔を使えるなら、それで消費できるか…あまりお世話にはなりたくないけれど、入手ルートはいつか聞きたいな…


 「もしもし、話があるんだけど、そっちのリラ姫の話で…うん、それでジュニア部門バトルアリーナトーナメントに参加させたくてね…そうだよ?断れないのは知ってるよね?いや、ありがとう!君のような人は一番好きだよ」


 ギルドマスター恐るべし…情報だけでなく人脈、話術、その他の技術が高い。この世界で生き抜くためには十分過ぎる程、腕も口も達者だ。


 「さてと…アイシャちゃん?盗み聞きはあまり関心しないな、百歩譲って盗み聞きはいいとしてもバレないようにする努力はした方がいいよ、諜報員なら、そのミスは首を切られちまう。どっちの首かは分からないけど、それも含めて一番重要なのは、人を選ぶことかもね…さて、冗談はこれくらいにして私もお料理を手伝わなきゃ」


 「あっ、お母さんどこ行ってたの?でも、丁度いいや、タイマーがなったらオーブンで焼いたドリア持って行って」


 「はーい」


 View Change 美奈&リラ


 「なんか申し訳ないなー、稽古をつけていただいただけでなく昼食を御馳走させていただくなんて、そう思わない?リラ」


 「ここはお言葉に甘えるのがいいんですよ。あまり遠慮し過ぎるのも、相手にとって失礼になります。たまにありがた迷惑という事もありますが…これは言わない方がいいでしょう」


 そう言うとリラはちらりとリエラと美奈の服の胸ポケットから顔を出しているカレンの方に目を向け「まだ、その事に慣れていない子もいるし、教育に良くないです」とひっそりと耳打ちする。


 「そう言うと弱いですね。では、料理ができるまでの間テレビでも見ましょうか」


 そう言うと美奈はテーブルの端においてあるリモコンを取り、チャンネルを回す。テレビはほとんどがニュース、旅記録、お昼バラエティが多くどれもが興味を引くものはなかった。


 『お願い!マジカル☆ステッキ、もう一度だけ私に力を貸して!』


 テレビから聞こえた声にピタリと手を止め、リモコンをテーブルにおいてその番組に目を止める。その番組は始まったばかりのようで、可愛い女の子の2人が踊りながら歌っている。


 (確か、これって前に話していた「マジカル☆ルミルミドリーム」だっけ、マジカルの後に星マーク付いていたんだ…)


 完成度高いなぁ…こんなに、綺麗なアニメなら子供も大人も楽しめそうだな。ただ、どこかで度を過ぎたどす黒い展開でトラウマ植えつけられそうな物もあるから、それだけは遠慮願いたいな。好みが分かれると言った方がいいんだろうけれど、悪い言い方だとそれこそ、ありがた迷惑だな。


 「お待たせしました、出来ましたよ」


 「少しだけ贅沢しちゃった。だけどレイラのお友達だから特別ってことで」


 テーブルの上に置かれた料理は、前菜のポテトサラダの他にも唐揚げ、ドリア、お刺身盛り合わせの他にもツナサンド、メインには豪快に蟹を丸ごと一匹を使ったカニ雑炊。置かれた料理は食欲を刺激して今すぐにでも食べたい気持ちが溢れてくる。


 「さて、稽古の後で普段よりもお腹がすいているでしょう、早速いただきましょう」


 『いただきまーす』


 取り皿に、それぞれの料理を入れて、まずはサラダを食べる。


 「どう?美味しい」


 「なにこれ超美味しいいいいいぃぃぃいぃっ!」


 「これ、本当に野菜なのか…?塩だけの単純な味付けじゃない、このドレッシングか…?白いからシーザードレッシングかと思ったけど違う…深みがありコクがある」


 「私のメイドも美味しい料理は作れるけど、ここまでの美味しさは再現できなさそう…美味しい」


 「良かったぁ、あまり、待たせるのも悪いから、味付けは少なめにしたり、いくつか飛ばしたんだけど、お口にあって何より」


 「でも、どうしましょうか?」


 「んー?何がだ?リラ、料理がおいしいし、稽古もつけてもらうことになったし、良いこと尽くめじゃないか」


 「いえ、そんな大きな事じゃなくて…」


 リラが指をさしたのは中央のカニ雑炊、ぐつぐつと煮えており、出汁を作り続けている。


 「これは最後に食べるんでしょ?スペース開けて置けばいいよ」


 「ですから、そうではなく、どう分ければ…」


 『…あ』


 蟹の肢はハサミ含めて8本、今いる人は攻略対象の4人+アリア、エイラ入れて6人つまり、二本残ってしまう。


 「…カレン」


 「…リエラ」


 「「この中の一本、食べれる?」」


 「ゑ?」


 「きゅい?」


 カレンはラーメンの麵を無理して一本食べきった。しかし、今回は、その身体の10倍以上はある大きな蟹の肢それだけでもカレンの身体の3人分はある。


 そして、リエラなら問題なく、食べられるだろうが、今までビーフジャーキーしか食べていないリエラにとっては未知の領域、新しい事にチャレンジすることはいい事だが、当然失敗するリスクはある。


 「…やります」


 「一本だけでいいなら」


 「わぁ!リエラちゃんが人間に!」


 「前に言いましたけどリエラはフェンリルですから、人化出来るんです。普段はこの姿でいる事を好みますがね、普段よりも美味しく食べられるって…イタッ、ごめんごめん、お膝乗っていいから、食べさせてあげるからポカポカ殴らないの」


 「やっぱり、おねぇちゃんの料理は世界一美味しい!」


 「ありがとう、エイラ」


 「でも、本当に美味しい、お抱え料理人に迎えたいくらい」


 「ありがとうございます。でも、盛り付けは普通の一般家庭レベルですから、前に行ったえいるるの船盛のような芸術は再現するのには結構な期間、必要になるんじゃないでしょうか、貴族の食卓に並ぶのは、味だけではないでしょう」


 「確かに、一理ありますね」


 「さて、そろそろ雑炊も食べごろになってきましたから、そっちの方もいただきましょう」


 「そうだな、いただ…ん?どうした?美奈」


 「んーー、ん、んんーーーーーっ!!」


 「あっ、それ当たり」


 そう言ってエイラが指をさした一つのサンドイッチ、その中には黄色い恐らく、からしだと思われる。


 美奈の顔には汗と涙が頬をつたい、それでも口から出さず、泣きながらも咀嚼を続ける。


 「あ、レイラのジュース飲みます?」


 「んん、んん!!」


 「どうぞ」


 渡されたジュースを一気飲みをしても汗は止まらず、その後、三杯目でようやく汗を拭くハンカチを取り出す余裕が出来た。


 「うーん、美味しいのに」


 エイラは食べかけのサンドイッチを顔色一つ変えずに平らげる。


 「コラコラ、自分が食べるならいいけどロシアンサンドは予め、言っておいてそれで了承をいただきなさい」


 「はぁい」


 そのようなやり取りをしていると、アリアが何かを思い出したように懐から、紙を取り出して配る。


 「忘れるところだった。これ、アリーナのエントリーシート食べ終わったら記入しておいて、あなた達チーム戦も個人戦も出るんだから、しっかりと稽古受けてもらうからね。ファイト!」


 「お手柔らかにお願いします」


 20分後


 「はぁ~、満腹です」


 「まさか、食後のデザートに杏仁プリンも出てくるなんてな」


 「それも、素晴らしく美味でした。少し食べ過ぎてしまうくらいに」


 「これからも稽古の後には色んな物作ってみますね。まだまだ、レパートリーはあるので、もし、リクエストがあったら遠慮せずに行ってみてください、食材があったら作ってみますんで」


 「ありがとう、でも、こんなに美味しいもん食い続けたら、太っちまいそうだな、俺は気孔を使えるからダイエットには困らねぇけど」


 「…アイシャ、それあまり言わない方がいいよ、口足らずで喧嘩売っていると思われるから、されたら面倒でしょう?」


 「ははっ、わりぃ、だけどアリーナの前にうまいもの食って英気養わねぇと、気分上がらないだろ、稽古も気合い入れて臨まねぇと身に入らないぜ」


 「…そうですね、それじゃあ休憩した後、演習試合でもする?」


 「おっ、いいね。望むところだ」


 「それはいいね、せっかくだからレイラもリラもやってみたら?」


 「「ええっ」」


 「アリーナの戦闘形式でやりましょう、みんなに身に付けてもらうのはミスリル製の防具、右腕に1000と表示された機械が埋め込まれている。これが0になると敗北それでいい?」


 「OK、それで行こう」


 「じゃあ、くじ引きで決めよっか、集まってー、いくよ」


 『せーのっ!』

次回三月末予定

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