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第一部 一章 千麟美奈

 鏡に映る自分を見る。


 「うん、可愛い、とても…美少女です」


 しかも、この姿は見覚えがある。ストアドのメインヒロイン4人中の一人である千麟家のご令嬢、千麟 美奈、PVでは真っ先にでたヒロインだったな、ゲームで言えば攻略本やサイトを見なくても気が付いたら好感度MAXになっているキャラだ。


 「それが、この美奈ちゃんの客観的な印象なんだけど…」


 自分の身体を改めて見てみる。

 明らかに、幼い、ストアドの舞台は学園ものだったはずだ。体験版では、それぞれの攻略対象の顔合わせで、オマケにクエストに攻略対象の一人を選びその娘とクエストをこなすまでが体験版までのプレイ可能な所だった。


 「おかしい、明らかにおかしい、これ小学生どころか、幼稚園児ぐらいじゃないのか?」


 手を合わせてみると柔らかいぷにぷにとした感触が癖になりそうで、少し顔がにやけてしまう。


 「っ!違う違う、何を自分にときめいているんだよ」


 まあ、確かに俺はかっこかわいいには憧れているが恋愛対象に対してはノーマルだ、可愛いけどロリコンではないし、二十代で結婚したいとも思っていたからな、でも、幼すぎるでしょ、PVでは小、中、高のキャラデは出ていたけど、もし、幼稚園もあったら、こんな姿だろうな。


 サラサラな髪、くるりと回ると茶髪がなびく、落ち着いた色の服が似合う綺麗な顔、透き通るような声、うん、メイン中のメインヒロインですね。


 フリフリの服も来ていたような気がするけど、こんなきれいな娘なら何でも似合いそう。


 「っ……はっ!だ、だーかーらーっ!自分にときめいてどーすんのー!!」


 はぁっはぁっ何勝手に暴れて疲れているんだ俺はっ、そんなことしている場合じゃないだろ、いや、何をするわけではないけど


 「けれど、何か騙している感じがして悪いな」


 メイドの話によると、専属のメイドと一緒に階段を降りる時足を滑らせて、転げ落ちてしまったと言っていたが、咄嗟の事で記憶が無いと言ってしまって、家族の両親はもちろん使用人のメイド達にも心配されている。


 「しかし、それだけならともかく今日も騒がしい」


 階段から落ちた日からもう三日、外のカーテンを少し開いてみるとこの世界の記者やマスコミが門の前で使用人達が必死に対応している。


 ご令嬢が階段を誤って落ちてしまっただけではそんなに騒ぎにはならない、そもそもこの世界では令嬢はそこら中にいるようなもので御曹司も多い。


 それも、男性女性用に主人公が用意されているからだろう、ではなぜこんなに記者たちが家の前にいるのかというと、他の場所で同じ日、同じ時間に他のご令嬢が二人そしてこの国の姫が同じく階段から落ちて大きな怪我もなく無事ではあったという事故があった、それを見逃すような記者ではないのだろう、災厄の予兆かとも言われたりして騒がしい毎日が続いている。


 「パパはこればっかりは時間が解決するか、新しい餌に食いつくのを待つしかないって言っていたけど、流石にこうも騒がしいと安眠も出来ないな、やれやれ」


 しかし、うかうかしていられない今日は、それぞれのヒロインの情報を整理しなくては、いけない。


 できれば、攻略対象を他の三人に押し付ければいいだけ、だが、それだけではだめだ、体は女でもかっこかわいいに憧れているのは変わらん、主人公の動向を観察し、そして、そのかっこかわいさを盗む、これが当面の目標だ。


 その為にも自分を含めたヒロインの情報をノートに書き留めておかなければ、さてと、敵を知るにはまずは味方からだな、えーっと、千麟 美奈 誕生日は3月7日 趣味は甘い物の食べ歩き、特技は魔法、主に火炎魔法…っと後はプロフィールの文字でもそのまま、書けばいいかな、ふふっ、こういう時にこそ俺の暗記が役に立つんだぜ。


 「しまった…自分の事だけではまだわからん、記憶喪失と言う事で両親の事は分かると思うが、メイド達にいきなり個人情報を聞くのは不自然だと思われるよな…名前は教えてもらえるだろうけど」


 名前だけでも教えてもらおう、詳細は分かったらノートに書き留めていくとして…っとこのノートポケットに案外すんなり入るんだな、子供の手だと手に収まらないくらいなのに、でも、この服、社交界見たいなときに使うような服だよな。


 「ふぅ、今はただただ学ランが愛しく思います、はい」


 廊下を歩いていると突き当りでメイド達が何かを囲っているように集まっている。


 「貴方がいながら美奈お嬢様が…っ!いったい何のための専属メイドだと思っているのですか!?」


 「ひぃっ!ご、ごめんなさい、ごめんなさい!!」


 「貴方のせいで先輩方がマスコミの対応もしているんですよ、あなた自身がそれをやるべきなのに、このポンコツ!」


 「ごめんなさいごめんなさい!い、今からでも、マスコミ達の対応を…!」


 「いらないわよ、そんなことやっている暇があるなら、もう少し謝罪の姿勢を」


 メイド達が囲んでいるのは、この姿よりは少し年上だろうメイドの姿だった、涙を流してメイド服に涙じみを作ってしまっている。


 ん、あれ?このメイドってどこかで見たような、どこだっけ…えーっと、あっ違う違う止めなきゃ、偶然通りかかるふりをして…


 「どうかしたのですか?」


 その言葉を聞いてメイドたちが体をビクリと震わせ振り返る。


 うっ、なんだろう、こんなに背の高い人たちに見られるのってこんなに怖かったっけ、いや、俺が小さいんだけど…


 「美奈お嬢様!?お、お疲れ様ですっ!!」


 『お疲れ様ですっ!お嬢様!!』


 …なんか統率のとれた軍隊みたいなんだけど、これどういう反応が正解なんだろう…ってまた余計な事考えるところだった。


 「その娘に何をしているの?」


 「はっはい!お嬢様の専属のメイドでありながらお嬢様の身を守れなかったので少し説教を」


 「へぇ…それにしては、埃や汚れが目立つけど…?」


 「あっ、え…えと…そ、れは…」


 「あらまぁ、それに何も見てないと思っているのかしら?じゃあ、その汚れがどういうわけか、室内用の靴の裏の形に見える理由とそのサイズがそれぞれ違う理由も言えるのかしら?」


 「お、じょう、さ…」


 「そ・れ・に・この娘のお仕置きをするって理由でもお父様やお母様、私にすら許可がもらえていないのに無断で、汚れが残っている状態で、自分の掃除場所や業務をほっぽって、日頃の鬱憤とかを晴らしている…とか?」


 「あ…あ……」


 「この事はお父様やお母様にはもちろん、メイド長にも話させてもらうわね、それが嫌なら速やかに持ち場に戻りなさい」


 『す、すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』


 メイドたちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行って残ったのはイジメられていた、メイドのみ


 「…大丈夫?」


 「あっ…はい、サリアは大丈夫です」


 サリア?サリアサリア…あっ、そうだこの子、たしか、体験版で見たことある!モブのようにたった一メッセージウィンドウしか登場しなかったから、忘れていた、もしかして何気に美奈ルートでの重要キャラだったりするのかな、なら、利用活用して主人公の動向を探ったりさせれば、クククッ


 「ひっ!お、お嬢様も私をいじめるんですか…?」


 「えっ!?いやいや、しない、しないよ!ほーら、怖くない怖くなーい」


 「あっ、よかった、私の見間違いでした、一瞬、物語に出てくる裏で糸を引いている黒幕みたいな顔をしたように見えて…」


 うん、サリアさん、それ、見間違いじゃないです本当に自分がそういう顔をしたんです、と言いたいけど言えない。


 「サリアさんちょっと来て」


 「えっ?お嬢様、私はメイドでお嬢様は貴族なので、呼び捨てで…それに、私は専属のメイドでありながら、お嬢様の身を…」


 「いいからいいから、入って」


 多少強引に部屋に引き込む。


 「お、お嬢様、こんなところ見られたら怒られてしまいます~」


 うぅん、なんだろう、体験版で見た時とは全くキャラが違う、確か選択肢で[さっきのメイドは?]って聞いたらボディーガード兼使用人でとっても強いとか言っていたような気がするんだけど。

 

 「サリアちゃん、貴方、悔しくないの?」


 「ほえ?」


 「あなた、イジメられているのに抵抗しなかったじゃない、ただただ、頭を抱えて蹴られそうになった時も頭を抱えるばかり、悔しくないの?」


 「で、でも、サリアはお嬢様を守れなかったんです、だから、サリアは罰を受けなきゃダメなんですぅ」


 「サリアちゃん、あなたは間違っているわ、私を守れなかったから何?私は今こうやって一人で二本の足で立っているのよ、一回くらい守れなくたって私は貴方を見捨てたりしないわ、だから、これからはもっと強くなりなさい、貴方が勇気を出せるように願っているわ、そしていつか、いざという時に私を守って、サリアちゃん、貴方にしかできないの」


 …自分で言っておいてなんだけど、少しキザっぽかったかな、普通は俺が守ってやるぜ見たいなことを言うんだろうけど、状況が状況だし、こう言えばいいのかなって思ったんだけど、同性だとこういうのはどうなんだろう。


 「お嬢様…サリアは今まで通りにお嬢様の専属のメイドでいていいんですか?お嬢様のお傍に置いていただけるんですか?」


 …ふふっ、意外に効果てきめんみたいだな。うーんもう少しサービスしちゃおうかな、えっと、こうやって抱きかかえるようにして耳元で


 「ええ、貴方にしかできないの、あなた以外に代わりは務まらないわ」


 最後にひっそりと…


 「私に仕えて」


 「お、お嬢様…」


 うわぁ、うっとりしちゃって…あぁ、こういうメイドも付き合いたかったと言えば付き合いたかった。あっちの世界では本物のメイドなんて外国以外にいないだろうけど。


 さて、一先ずサリアちゃんを持ち場に戻らせたけど、もうちょっと、サリアちゃんの事を聞いておけばよかった、後で、また呼び出して聞いておくか、その前に両親に引き続きサリアちゃんを専属のメイドでいさせるように頼んでみるかな。


 「お願い!お父様、お母様、私こんなことでサリアちゃんと距離を置かれたくないの(うるうる)」


 「ようし!いいだろう、私たちの天使の頼みなら断るなんてしないさっ!!」


 「ええ、ええっ引き続きサリアには美奈ちゃんの専属のメイドでいさせてあげるわ!!」


 「あ、ありがとうっお父様、お母様!」


 意外とあっけなかった、というか、ちょろすぎる、涙を浮かべたり、見上げるだけで、あっけなく許可もらえるなんて…それに、両親の事も大体分かった、こっそりとメモをとったけど隠しながらだから筆跡が少し乱れている。仕方ない、後で書き直そう。


 次は、サリアちゃん…は後でいいか専属なんだし、他のメイド達にでも聞こうかな


 「ねえ」


 「す、すみませんすみません!!ちゃんと埃一つ残しませんからぁぁぁぁぁぁ!!」


 「あの」


 「ひぃっ!!すいません!!つ、次は下の階をしますのでっ!!そ、それでは!!」


 「そ———」


 「ご、ごべんなざいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


 話が出来やしない、というか、そんなにあれが怖いの?


 いや、そういえば、昨日メイド長がミスをしたメイドをお仕置き部屋に引きずり込んで出てきたメイドがまるでロボットみたいな口調になってたな…なにをされたんだろう。


 しかし、困ったな、全然情報が集まらない、このまま追いかけても逃げられる一方だろうし、しばらく時間を置くかなそれとも…


 「美奈お嬢?おられますか?」


 迷っていると扉をノックされたこの声や丁寧さは確かメイド長の声だ。


 「ええ、いるわ、入ってどうぞ」


 「失礼します」


 メイド長はどちらかというと服装がメイドに見えないというか、軽装で太ももにナイフを忍ばせているんだが、もしかして…いや、知らない方が吉と見た。


 「それで、何か用なの?」


 「その事なんですが、まだ、記憶が戻らないのですよね、お医者様が言うには階段から落ちたショックが精神に異常をきたしてと言っていたので、少しでも記憶が取り戻すのならと思い、お生まれになった時の写真や遊ばれた時の写真をお持ちしました」


 「あ、ありがと」


 「いえいえ、これも戦うメイドである私の仕事ですから、私を拾ってくださった大旦那さまには感謝しています。お家族様の言う事なら何でもする覚悟です。身の回りの世話から万の暗殺まで」


 「う、うん、でも、殺さないでね」


 「分かりました、では、酷くても手足の一本にします」


 何このメイド怖い、そもそも万の暗殺って誰をターゲットにする気なの?それに戦うメイドって初めて聞いたんだけど、生粋のアサシンとかじゃないよね。


 「じ、じゃあ、お掃除頑張ってね」


 「はい、お休みの所失礼しました」


 パタリと扉が閉まり足音が遠ざかるのを確認した後、持ってきてくれたアルバムを確認する。


 「うん、鏡を見れば分かるけど、やっぱり面影あるなぁ」


 成長した姿を知っているからか、なんだか、なごむと言うか、昔はこんな子だったんだと自分の知らない自分に不思議な気持ちが溢れてくる。


 「よし、今までの知識をフルに活用してこの世界で一番かっこかわいさを身に着けて見せるぞ!」


 と、意気込んでみたはいいとして、この身体でできる事はなんだろう。

 

 「情報は時間を改めるとして、ゲームで出来たことを試してみる?いや、魔法では炎系が主だったから無しだな、魔法系全般使える相手が魔法耐性が弱点だったら、使えるんだけど、攻撃魔法は物を壊しかねないし、外はマスコミ達でごった返している、先延ばしにするしかないかな」


 しかし、そうすると、やることが他にあるかどうか、アルバムは流し読みだったけど、写真だけで両親が書いた文も二行くらいだ。


 だとすると…次はこのシリーズでは必ずあったメインの引き立たせ役、つまりサブキャラだ。


 他のシリーズ同様、ストアドはメインと付き合う前にその娘と関わりが多いサブキャラと親交を交わす事で、攻略対象と近づく事が出来る正に将を射んとする者はまず馬を射よ理論だ。


 まぁ、その候補が今のところは二人、サリアちゃんとメイド長、専属メイドのサリアちゃんが特にサブキャラの線が濃いメイド長もあるにしてはあるが、あくまでもサポートしている立場だろう。


 その証拠がさっきの発言「大旦那様には感謝しています」大旦那とは多分祖父の事だ。確かこの世界では貴族はスピード結婚つまり、10代後半で結婚相手を決め20歳に結婚という現代社会もびっくりの少子高齢化社会の強引な解決方法の為まだ、祖父は40代それは、どのメインキャラもさほど変わらなかったと思う。


 「だからって思う人もいるけど、初代から続けている人からすると、馬鹿に出来ないんだよなぁ」


 正直攻略されたくない人にすれば、良いことだ、メイン対象に接触する機会が減る事を意味するからだ、可愛い孫娘、愛しい娘をどこの馬の骨かも分からない奴に渡すっていうのも絶対許さないだろうからね。


 実際、前の両親もそうだったらしいからね、中学生の時に聞かされたっけ、最終的に父親はお祖父ちゃんとお祖母ちゃんの事をパパママって呼ぶ事になって若干引いたけど


 ともかく、主人公のかっこかわいさを盗むためには友人以上恋人未満を目標だ。もし、他の攻略対象より親愛度が上がりそうなら、わざと押し付ければいいからな。


 ガードを固くし過ぎず柔らかくし過ぎず、曖昧なラインをキープする。それが狙いだ。


 そのために、どうにか、今のサブキャラ候補である二人…サリアちゃんは、臆病な性格らしいし、メイド長を少し崩す方向で行こうかな、予定通りに進む感じにはいかない事もあるし、違うプランも考えて置きたいけど…


 うん、眠い。


 幼い身体だからと言って、少し考えるだけで、こんなに疲れるなんて、知恵熱でも起こしそうだ。


 「お嬢様ぁ、夕飯の準備が出来ましたよぉ」


 「あっ、サリアちゃんありがとう、一緒に行こっ♪」


 「はっはい」


 サリアちゃんと手をつなぎぐいぐいと引っ張りながら食堂へ向かう、その途中で階段を通る時にメイド長とサリアちゃんが担架に乗せて階段を降りたけど、過保護が増したというか、前の保護加減が分からないけど、多分増したと考えるのだろう。


 食堂へ移動すると小さな椅子に座らせられてメイド長含めメイド達は食事を運んだり手持ち無沙汰になったメイドは部屋の脇に並んだ。


 因みに専属メイド権限でサリアちゃんは、隣に立っている。

 

 対面にはママがいて隣にはパパが不安そうにチラチラと様子を見ている。


 それぞれの席には叔父や叔母、祖父母にその親族十数名が座っている、もちろん、全員モブのような顔に影があったり、シルエットだけじゃなく、グラフィックが用意されていたり、名前も用意されて声優も豪華だったりする。


 最後にティーセットが目の前に置かれると祖父である大旦那が立ち上がり、美奈の不幸な事故があった事によって記憶が無くなってしまったが、こうして再び、同じ食事を楽しめる事を嬉しく思うなどと、スピーチを暫くした後、グラスを持ち上げ乾杯をする。


 グラスは人数分用意されているが、入っているのはアルコールの為乾杯したら未成年は、隣の席の大人に渡す。


 乾杯をした後、グラスを父親に渡して、食事に手を付ける。


 (…身体が覚えているのかフォークやナイフの扱いが丁寧だ、さすがは貴族様だな)


 貴族の振る舞いなんてゲームで見たが自分でやろうとは思わなかった、それに、歩き方とかも、足音を鳴らしたり、鳴らさなかったり状況などによって使い分けろとか、三作目の作品で貴族ルートで言われたような、あれ、正直覚えゲーだったような…

 

 ティーカップを片手で持ちカップの持ち手に指を入れず人差し指と中指を合わせ親指と一緒に摘まむようにカップを持つ。


 力が無いのか、カップが震え零しそうになる。


 それを見かねた父親がフォローに入ろうとする前にサリアちゃんが片手に持っていたティーカップを奪うように取り零して服にかかる前にしずくを受け止める。


 少しカチャカチャとカップを鳴らしながらも服が汚れる事はなかった。


 食事中、パパとママが物欲しそうにしていたのに気づき、二人にあーんしてあげたが、サリアちゃんにも、専属メイドだから、と適当に理由をつけてあーんしてあげた。


 そして、その翌日また、屋敷を歩き回っていると、どうやら、また、サリアちゃんが多くのメイドに囲まれているようだ。


 (ずっと助けるにはいかないけど、見捨てるのはダメだね)


 「ねぇ、そこのめいd」


 声をかけようとした時周りにいたメイドの何人かが突然気絶したように倒れた。


 自分を含め何が起きたのか分からないように、怯んでいる間にも他のメイドも倒れていく。


 最後にそこに立っていたのは紛れもないサリアちゃんだった。


 「…えっ?…あっ…」


 しかし、そこにいたのは昨日みたいに臆病な感じではなく、華麗にあしらうような表情で冷たい目を倒れ伏したメイド達に向けていた。


 「あっ、お嬢様ぁ♪見ていたんですかぁ?」


 「こっこれは何という事だろう」


 「私、分かったんです昨日お嬢様に言われた事、お嬢様を守るためにまずは自分が強くならないといけないと思い、徹夜でメイド長に護身術などを目一杯頭と体に叩きこんだんです。これでお嬢様を少しでも守れるようになりましたかね?」


 「なんという…」


 「お嬢様?」


 「なんという、私にかける情熱…最高っ!最高よサリアちゃん!」


 この場にはツッコミという重要な役割がいないため、ある意味悪い方向のサイドに合わせた方が吉と見たため、ムードを変えたと同時にこれが、ゲームでみたサリアちゃんがこうなった理由を理解した瞬間だった。

次回12月末予定

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