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第四部 一章 その後の変化 

 View 美奈

 「えっ?今度は姫様から?」


 お茶会の日から一週間後、また王家の紋章が入った手紙が届いた。しかし、送り主は王様ではなく姫であるリラ・エンジェルス・シャリア。


 手紙の内容を見ると、それはこの前のお茶会の事で、自分を含めた四人で改めて友好を築きたいというものだった。


 「前のお茶会で友好関係は十分築けたと思うんだけど…」


 しかし、齢5歳の一国の姫がパソコンなんて使いこなせるのか?大体、パソコンなんてうまく使いこなすなんて、年齢的に出来ないはずなのだが、王家の紋章は国王以外が使うだけで重罪となる。


 その為、これが偽造だとするなら、それはそれで自分の首を絞める事になる。わざわざそんな真似をする人はいないだろう。


 「よし、お返事を書く。日程調整の後、アイシャとレイラにも手紙を出すわ、馬車の手配も今のうちに済ませておいて」


 メイドに命じると体をこわばらせて、大急ぎで支度をする。


 (なにも、そこまで怖がらなくてもいいんじゃ…あっ5人足を引っかけ合ってこけた。ん、メイド長なにを…結束バンドで手を結んで連行して行ったんだけど、どういうこと?)


 「お嬢様~」


 サリアちゃんが紙束を持って帰ってきた。


 「ありがとう、万年筆はある?」


 「はい、こちらをお使い下さい」


 さて、三人にも送るんだから、それぞれ、別の文章の方がいいよね。畏まった文章は共通として…


 「大旦那様、お帰りなさいませ。お早いお帰りですね。荷物をお持ちします…えっ、お嬢様なら中庭におられますが…」


 屋敷に通じる扉からそのような声が聞こえると、千麟 篝がスタスタと歩いてきた。


 「御爺様お帰りなさいませ」


 そう挨拶をすると、篝は両腕を大きく振り上げる。そして、勢い良く振り下げる動作を見せた。


 訳も分からず、叩かれると思い目を閉じる。


 「美奈!!よくやった!!」


 パンと両肩を叩かれ、ワハハと笑い、更に背中をパシパシと叩かれる。


 「聞いたぞ、何でもお茶会で友達が出来てその友達が誘拐されそうな時、颯爽と助けに行き、見事、撃退したとな!!しかし、その晩、仕事が積み重なって、帰宅できなかった事を詫びよう」


 叩かれた場所の痛みをごまかしながら、苦笑いを浮かべてごまかす。


 「そこで、だ。聞いた話によると、姫様ともお友達になったようではないか、王家の血筋と友好関係を築いた事、諸々の褒美があるのだが、今からそれを買いに行くぞ、はじめての街に買い物だ!さぁ、行くぞ!おい、メイド長、御付きを何人か付けろ!」


 「クスッ、はい大旦那様、手配します」


 話を一方的に持ち掛けられ、書きかけの手紙をその場に残して、腕を引っ張られる。


 「ま、待って御爺様!せめて手紙、手紙全部書かせて~!」


 それから、約10分後


 なんとか、説得して、手紙を送った…それにしても、篝ってこんなに豪快な人だったんだ。力強い腕だったなぁ、随分マッチョな体型だったのもびっくりしたけど、祖父だからってまだまだ40代後半だからなぁ、スピード結婚社会怖い…


 「さぁて、まずは、ここだ」


 連れてこられた店の扉を開くとそこには、電子器具の山、整理整頓が行き届き辺りはブルーライトが目を刺激する。


 篝は手を引き、カウンターの方に歩いて、店員に幼い子でも扱えるようなデバイスを取り扱っているか尋ねると、しばらくしたら、店員が、色とりどりなデバイスをカウンターに並べる。


 「こちらで取り扱っている商品はこれらですね。一番容量が良いのはこちらの最新機種で七色の機体からお好きな色を決めていただけますが」


 「機体の色はどれでもよい、美奈が決めるが、スマホカバーもあるだろう、このモデルの専用カバーの色はどれくらいあるんだ?」


 「こちらの専用カバーでしたら42731色取り揃えておりますよ」


 なぜ、そんなに色があるんだろう。


 ん?42731…42731…死になさいじゃん!語呂悪いっていうか殺人予告じゃん!


 「さぁ、美奈、こっち来て、色を選びなさい」


 「う、うん」


 いや、色選べと言われても、機体モデル自体の色は12色合ってカバーが42731色って何を選べばいいのか分からないよ…


 散々色選びで悩んだモデル機体は白でカバーはスカイブルーに決めた。


 (流石にこんなに似た色があるなんて思わなかった、玉虫色のカバーもあったし、名状しがたい色もあったんだけどあれ何て言う色なんだろう)


 「うむ、いい色を選んだな、なくさないように首に下げるストラップも買うか、そうだな、美奈の服は薄い色が多いからなるべく白に近い色なんてどうだろう」


 「え、えっと…」


 さっきの時点で色を決めるだけでも疲労がたまっていたので一番端にある白に近い灰色を選んだ。


 「では、これらをもらおう、スマホ契約の事もオススメはあるか?」


 「使用方法にもよりますが、例えばゲームなどを多く使うようでしたら…」


 篝は店員と話し合う。その様子を見ながら、店内を見渡して、久しぶりに見る店の風景に心躍らせていた。


 あたりを見ていると、サリアちゃんが店の奥から何かを持って買い物カウンターでお金を出して、手に持っているそれを買った後、手渡してきた。


 「お嬢様、これはどうです?UVもブルーライトもカットしてここを捻るとメガネの淵の色が変わるんですって」


 「おお、サリア、君にしてはいいチョイスだ、確かに、美奈の瞳は美しいからな、それを濁させるような悪い光をなくそうとする忠誠心、敬意を表す」


 「ありがたき幸せ」


 軍隊で表すような、やり取りを横目に見ながら、試しに、メガネをかけてみる。


 「んー、うーん?」


 鏡がないから似合っているのかそうでないのか分からないが、感想を聞いてみたら、更に賢そうに見えると言っていた。


 それからしばらくして、スマホを無事に購入できた。


 「さて、次に必要なものは」


 「えっ?」


 「防犯グッズにGPSそれに撃退アイテムも必要だろうな、さてさて、まだまだ買うものはいっぱいあるぞ」


 結局その日の大半は買い物に費やすことになって、筋肉痛になりそうだった。


 View Change アイシャ

 朝起きて、歯を磨いて、寝ぼけて髪をセットすることを忘れながら、食堂で眠そうな顔をしたまま、パンを小さく手でちぎって口に運ぶ。


 「もぐもぐ…はむっ…んぐんぐ…」


 そこにジェシカがツカツカとヒールを鳴らして、近づいてくる。


 「はいはーい、アイシャちゃ~ん、髪を整えましょうね~」


 素早く後ろに回り込み、どこに隠し持っていたのかジェシカ特製身嗜み整えセットを取り出し、一切の迷いもなく、髪を整える。


 「最後に…はいっこれで完成~」


 自分から見て左の前髪にハートの音符が付いた髪留めをパチンと付けられた。


 「ママ、これは?」


 「ママからのプレゼント…というのは半分で、なんか、えーっと、じーぴーえふ?っていうのがついていて、アイシャちゃんがどこにいるか、これで分かるみたいよ」


 ジェシカがスマホを持って画面を見せびらかすように近づけてくる。


 「自分の能力を過信し過ぎずに物にだって頼る、それが安全に暮らすため、おともだちを守るのも物だったりするのよ~それを、忘れないでね?」


 指を眉間にトントンと二回たたいて、隣の席に着く。


 『次のニュースです。五日前、奴隷商人らしき人物がいるということ王城で突き止め兵士が張り込みを続けたところ、奴隷商人らしき人物が港近くの倉庫で見かけ、取引相手との会話を聞いたところ、多くの児童誘拐事件と関与があることが判明し、その場にいた全員を逮捕しました』


 「あら~?この事件って…」


 一週間前のあの誘拐犯二人組のグループの事件か…この件は口外しないようにって言われてたのに…ん?


 確かに口外しないように、とは言っていたがその件はこの事件の事ではなくお茶会でレイラが攫われかけた事だということで、この様な、尾ひれをつけた事がニュースになっているのか。


 実際、誘拐グループは大人たちにボコボコにされていたし。


 『なお、この人身売買のグループはマハトマであることが判明しており、他のグループがいる事を踏まえて取り調べを進めています』


 「マハトマ?」


 「マハトマとは様々多くの国から人を集めた、違法な商売をしている。言わば寄せ集め集団の犯罪組織です。

 昔、そのような、違法商売を主とした一族が、今言ったような多くの人を使って商売をしていた事から、その一族、マハトマ一族の名で呼んでマハトマという名になったようです。もう、マハトマ一族は終身刑になってますけどね」


 ランクが厨房からエプロンを脱ぎながら話しかけてくる。


 「ランク、料理はもういいの?」


 「後は、盛り付けだけだからって、追い出されました」


 「ウフフ、ランクが盛り付けをすると、直立したお肉のタワーだったり、机いっぱいに広がるサラダとかあるものね~」


 「味は問題ないと言われてるのですがどうも、それだけが…」


 怖いもの見たさで少し興味があるが、後悔しかしなさそうなので、その言葉を静かに飲み込んだ。


 「さっきから、無意識にパンを頬張っていたけれど、これ以上はいるかなぁ?」


 「気孔でも使って無理矢理入れる事ってできませんか?」


 気孔はそれほど万能ではないし、食事に使用できる気孔なんていうものは聞いたことない。


 あるにはあるかもしれないのだが、需要がないだろう。


 「軽めでも栄養は取った方がいいわよ~プチトマトくらいなら摘まめる大きさでしょう?」


 「う、うん」


 小さな相槌をうちながら、運ばれてきた小さなサラダの上に置いてある二つのプチトマトに箸を伸ばす。


 つるりと滑って箸が外れる。再び箸を伸ばすが、また外れる、三度伸ばすが、また外れた。


 イラッときて、プチトマトに箸を突き刺した。


 「…スプーン、持ってきますね」


 「別に怒ってないし」


 「ごめんなさい、ランク~今日は~ちょっと早く出なきゃいけないの~、これ食べたらすぐに行くから~量を少なめにするように~言っておいて~」


 「ママ、何か急用?」


 「ん~、それが、詳しいことは教えてもらってないの~他言無用だから、向こうに着かなきゃ教えてもらえないって~、でも~アイシャちゃんには関係ないことだから~気にしなくていいよ~」


 気にしないでって言われると余計気になってしまうのが人としての性、だけど、知らない方がいい事があるし、巻き込まれることもある。


 前のお茶会の件もあるし、ここは、帰ってきても、その話題を振るのは、控えよう。


 そう思っている間、ジェシカの前にサンドイッチが三つ置かれて、ジェシカはパクパクと食事を進める。


 サンドイッチをぺろりと平らげた後、小さくありがとう、と行った後扉の前に置いていたカバンを持って小走りで玄関に向かった。


 「用事ってそんなに重要な事なのかな?そもそもママがあっちで何をやっているのか知らないし」


 それを聞いてランクが口を開く。


 「奥様は色んな所で働いていますよ、トラブルシューターとか言われています。

 学会の元責任者でもあり、割と何でもこなせるけれど、話し方とか性格に少々問題…というかマイペースな感じがあるのですが、それを差し引いても、実力は確かなので、頼りにされているんですよ」


 色んな所、かぁ、そういえば、この前も王宮に行っていたな、そんなところまで行っていると思うと、その実力は本物なのだろうと分かる。


 View Change レイラ

 一週間前のお茶会の日から二日後、再び模擬戦の再戦を約束した少年、柊 純平との戦いをやった結果、前回で、相手のパターンなどを大方把握していたので、自分でも驚くぐらい圧勝した。


 「そこまで、勝者 レイラ・オーガスタ!」


 アリアが、審判としてその声を上げた後、自分は歩み寄り、純平に話しかける。


 「約束、覚えてるよね?」


 純平は悔しそうな、諦めたような顔を浮かべて顔をそらす。


 「まぁ、そこのベンチで座りましょう、今回の言うことを聞くっていうのは、座ってからでいいし」


 アリアは空気を読んだのか、依頼主を家の中に誘導する。因みに場所はレイラの家の庭、それなりに大きい庭で一般家庭以上低級貴族未満の4メートル×10メートルの長方形の庭にキャンプ地に見るベンチが隅に二台置かれている。


 そこにストンと腰を下ろして、話しかける。


 「ねぇ、何でお父さんに稽古をつけてほしいの?」


 「……」


 純平は少し躊躇うような顔をして、言葉を濁す。


 「普通、剣を習うなら、わざわざ、ギルドに来ることもないし、それこそ、剣術道場とかに通ったほうがいいと思うよ、それなのに、わざわざ、依頼として出すっていう事は、何か理由があるんでしょう?」


 それを聞いた純平は、何かを決意したような瞳で話し始める。


 「お、俺は…ただ、あの人に憧れを持って、いつか、一緒に仲間として旅に出たいんだ」


 「あの人?」


 「知ってるか、エンブリオっていう冒険者、銀色の腕章をつけている、深い青色の髪の…」


 「うーん、ごめんなさい、知らないわ、テレビは見る方だけど、冒険者の番組でもあまりそのような人は」


 「…一か月前、俺の母さんが病にかかったんだ。それの治療薬の材料を取ろうとして、一人で朝早くから山に入って人から聞いた群生地を地図頼りに探していたら、奥の茂みから熊が出てきて、俺はびっくりしてその場にへたりこんで、その時、颯爽と現れたのが」


 「エンブリオっていう冒険者だったと」


 銀色の腕章はシルバーエンブレムの証だ。危険度6のデスハイドラを倒せる実力を持っている。


 モンスターにはそれぞれに危険度が1~10更に危険度を超える脅威度を持っているモンスターもいる。


 脅威度を持っているモンスターはダイヤ、オリハルコンエンブレムを主力とした4~6人パーティーを3部隊以上で戦うことを義務付けられている。


 「銀色の腕章ってことは相当な手練れね、熊の種類にもよるけど、ハングリーベア辺りならそのエンブリオさんは朝飯前だったでしょうに」


 「あぁ、涼しい顔で、一刀に切り伏せていたから、それで、憧れたんだ」


 「それで、あの人に会いたいから、ギルドに依頼を?」


 「父さんも、あの人に感謝していたからな、感謝を込めて家に招いて軽く食事をしたら、次の依頼に向かうって言ったっきり会えなくて」


 そこまで、言うと、後ろの窓が開いてアリアが顔を出す。


 「エンブリオなら、この前、海を渡って違う大陸に言ってたわよ、魔の暗雲を無くすためって、各地の冒険者も集うからギルドとしても緊急の依頼としてね」


 「っ聞いてたの」


 「ごめんなさい、聞く気はなかったんだけど、飲み物を持ってこようとしたら偶然…でも、そういうことならなおの事、剣術道場に通った方がいいと思うけれど?

 今までの戦いで見てきても、基礎も技もなく、ただ力任せに振り回すだけ、粗削りがとても目立つわ。やり方を知っていても基礎がしっかりしていなくちゃ、ただの素人、冒険者だって16歳で冒険者になろうっていう人は少ないの。

 ただ、お金に余程困っているから、仕方なくっていう人いるけれど、憧れですぐになろうっていう人は少ないのよ」


 そこで、アリアはそうね、と考えた後、こう切り出す。


 「ゲンブは無理だろうけど、レイラに稽古をつけてもらったら?二度も負けた相手で少し気が引けるだろうけど、自分より強い相手なら、そこらの剣術道場よりも十分な相手だと思うけど」


 その言葉を聞いた純平は少し迷った仕草を見せた後、自分の前に立ち、頭を下げた。


 自分としては教える才能があるのか、不安があるが、日時などを指定して、定期的に教えることにした。

次回9月中旬予定

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