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第二十六部 二章 不安の払拭

 View アイシャ


 「もしもし?」


 『もしもしアイシャ?よかった繋がった、というかビデオ通話だから耳がドアップで映されているよ』


 「っとと…悪い悪い」


 日曜日の朝に電話がかかってきて出てみるとそれはレイラからの電話だった。何かと思っていたらビデオ通話で、画面には3分割になっていつもの3人が映っていた。


 「てか、どうしたの?食事の事は前に話したし…別件?」


 『そうですね。今日から毎週のこの曜日以外ではご一緒できるのがお夕飯ですし、それと別の件かと思いますが…』


 『あぁ…こっちが言いたいこと全部言われちゃった』


 『そんなに大した要件じゃないんだけど、実家ではどんなことをしたのかなーって思って、ほら明日には先生との模擬戦があるでしょ?だから、昨日別れた後どんなことをしているのかなーって修業とか色々あるでしょう?レイラ、そういうのをしなかったから…』


 「あぁ、そういう事…その気持ちは少し分かるかも、僕は筋トレ以外には何も変わった事もしてないかな、ソシャゲで育成素材が枯渇して高レアと低レアのレベルに差が出来すぎちゃったくらい」


 それで、低レアがレベル高くて純粋な戦力の合計値が低レベル高レアチームと互角になっちゃったんだよな。逆にこの高レアのレベル上げたらどんな化け物級の強さになるのか知りたいけど…


 『私はそうですね…明日に備えることという意味でしたら英気を養う、でしょうか。家族と一緒に過ごすことで明日からまた頑張る事が出来るという気持ちが湧いてくるんです』


 『いいね!私の場合は少しだけ違うかな、英気を養うのは変わりないけどそれは、自分にとってのご褒美というかお疲れ様ですって自分を褒める事で好きなことをするのが私にとっての労いだと思っています。昨日は少し違うことがあったのですが、少し考えたらあれも労いになったのかもしれないけどね』


 『皆さん、それぞれの過ごし方そされているんですね…模擬戦の事ばかり気にしてこんな事を聞いたレイラが恥ずかしい…』


 「…えっと、その言葉に賛同すればいいのか否定すればいいのか、僕には分からないけどさ、悩んでいるということは試行錯誤を繰り返しているのも悪くないと思うよ。そういう考えをしているから、明日の事に備えられているって言えることだし、ほらアリアさんも同じようなことを言っていたでしょ確か「最悪の事態を想定していることでその対処を考えることができる」みたいな、言い方は少し違うかも知れないけど似たような事じゃないのかな?というか、レイラの方はどうなのさ?僕たちの事も言ったんだからそっちのも聞かせてよ」


 『レイラは…いつも通りに家事を……あぁ、1つだけ違うことがあったんだ。妹のエイラが私のご飯が恋しいって言って日持ちするご飯をいくつか作ったんですよね。エイラってインスタントの食品が嫌いで既製品は思った食感や味じゃないとか、温めた時間の通りでも中まで温かくなっていないとか、失敗が多いんです。私が作るのはわざわざレンジで時間を設定しなくても温めスタートを押すだけで丁度いい温かさになるので作り置きの料理で冷蔵庫のスペースが後小さい缶2個分程度しかなくなって…どうしようこれ…』


 『お弁当用にいくつか学園に持ってきたら?』


 『朝とお昼にいくつか消費するとか…』


 「大きい器に盛り付けて疑似満漢全席みたいにしたり」


 『どうして段々とハードル上げるの?それにこれらは一週間分の量を考えて作ってるんだ。エイラって割と大食いなんだよ。みんなが来た時はある程度遠慮する気持ちがあるから想像できないと思うけど…』


 「へぇ、僕も自分で言うのもなんだけど大食漢だから、どれくらい食べるのか少し興味があるな」


 『どうだろう…エイラって大食いであるにも関わらず食事中は一切お腹いっぱいって表情を見せずにずっと笑顔だから、姉である私でもどれくらいで満腹になるのか分からなくて』


 (いや、あの美味しさだと満腹感よりも幸福感が大差をつけて圧勝するから自然と言えば自然だと思うんだが…)


 『……』


 『……』


 (あぁ、2人も同じ考えているんだろうな…)


 『……少し思ったんだけどレイラって一人称「私」じゃなかったっけ?初対面の時は「レイラ」って言ってたけど…度々「私」って言ってたような…?』


 「あっ、そう思った?僕も少しそこは気になってたんだ。誰も気づいてないような反応してたから気のせいかと思ってたんだけど、何か心境の変化でもあった?」


 『ふぇ!?そ、それは…そのぉ……レイラ、元々一人称は自分の名前だったんだけど、人見知りが激しいからその時は相手の機嫌を損ねちゃうって考えると名前を言うよりみんなと同じ「私」を使えばいいのかなって…それに子供っぽいって思われてからかわれるって思うと…何というか……や、やっぱりおかしいかな!?今からでも一人称は「私」にした方がいいかな!?』


 「ちょちょちょ、待って待って待って、責めているわけじゃないんだ!ただ純粋に疑問に思っただけでそんなにネガティブな考えをしなくていいから!というか結構自分で気になるところがあると饒舌になるんだね、意外と…」


 『…話を戻しましょう。私達は明日、先生方2人との模擬戦を執り行う事になっておりますが、正直な話しをすると勝つ負けるは気にしなくてもいいかと思います。気になる所はいくつかありますが、それを説明するならまずこの質問に答える必要が出てくる事態になるのでまずは話しを一通りさせていただきます』


 リラはそう言ってみんな聞く姿勢を取る。俺だけは机にスマホを置いて、スマホカバーで画面を斜めに立て掛ける。


 『先日、先生方は私達の実力を確認の為に模擬戦を行うと言っておりました。つまりただの力試しをしているのではないかと思います。後は後のチーム分けを考えているのではないですか?戦闘力が均等に分かれるようにするか、もしくは1人だけ強いとその人に頼りっぱなしになってしまうから強いチーム弱いチームにきっぱりと分けるという風に個々の力でどのようなチーム編成をすればいいのかという2つの理由があると思います。その理由として少し不自然は残りますがここは難しく考えてないのではないでしょうか、模擬戦も生徒同士ではなく実践経験がある自分たちの方が体力も持続しやすいし、全力を受けてもそれほど大したダメージにはならないとか、仮説はいくつか思いつきますがそういうのは明日に本人達から聞くのが一番手っ取り早いのでそちらの方法をおすすめします。とりあえず、今日は明日の為にキチンと体調を整えて備えるのが最優先事項です。レイラさん、お夕飯に力が湧くようなものを頂けますか?』


 『リラは食が細いからあまり多く食べられないから、一品料理じゃなくて餃子とか唐揚げとか複数個の料理がいいかな、一応そういうレパートリーも最近作ったりしていたし、せっかくだから、美奈とアイシャにも好物の料理を作ってあげるよ』


 『おお!いいね!私は甘いのが好きだから、デザートにイチゴパフェとかがいいかな』


 「僕は揚げ物が好きだから、そっち系をお願いしたいね。タルタルソースをかけてくれれば尚良し」


 お夕飯の話でみんなの顔には笑顔が浮かんでいるけれど、どこかぎこちなさというか愛想笑いに見えて心の底から笑えていない事が伝わってくるようだった。


 個人的には先生との模擬戦で勝てる可能性は多くて3割程度だと思う。レベルの差はもちろん他にも魔法や体術が1つも分からない完全初見として対応することになる。というのも特待生クラスとはいえ、相手は軽くあしらう程度の実力しか出さないだろう。


 俺たちは最後の4人として戦う、1対2としての数的有利だけでなく、相手の身長や体重を利用した戦術を取られたら、勝つ可能性は限りなく低くなる。実力を見るならあっちはわざとこっちの攻撃を待つだろう。でも俺の戦術は多分あっちは把握していると思う。


 俺の戦術は体術を主としたパワーとスピードを活かした短期決戦タイプ幻獣のサポートがあったとしてもそれはバフとしての性能が高い。加速を逆手に取られる可能性も考慮すると勝てる可能性は1割がいい程度だ。


 あの二人がどのようなタイプなのかが分からないだけでこんなにも緊張感が違ってくると理解すると心臓が鷲掴みされたような気分になる。


 恐らく相手は俺たち4人を警戒をしているものの戦術を見抜いているだろう。美奈は魔法を中心とした遠距離パワー型、自身でバリアを貼りつつ解除された時に自身のバフをかけられる「知られざる七色の宝玉」は強力だが、本体の身体能力がそれほど高くない為バフ解除の対策を取られるといくら手数が多くとも、追いつかないだろう。


 レイラは剣術だけでなく、多くの武器の扱いに長けている、中でもやはり剣術は強く、作中最強技の「究極奥義」の壱~参の太刀まで使える。もしかしたら肆の太刀や伍の太刀も使えるかもしれないが、何の武器を使うかで対処が変わる。一応多くの武器を使える事を考えたら俺や美奈よりも有利に思えるかもしれないが、相手がその対処を考えていたら、一気に形成を逆転されることも十分にあり得る。剣は槍よりリーチが短く槍は斧で叩き割られリーチを無くす斧は剣に沿わせて剣の軌道を逸らせるのがほぼ不可能、レイラが何の武器を使うかによってその相性を相手も考えるだろう。もし、武器を複数持ち込めたとしてもせいぜい3つ程度、短剣や小さいものを持ち込んだとしても5つ程度が限界だろう。


 リラは亜種魔法で4人の中では唯一勝ちの可能性が濃いと思う。氷魔法も雷魔法も応用によっては戦術を変えたり、一発逆転の方法も思いついてはいるが、これは正直言って博打でもある。そして、リラはバトルアリーナで見せたステージとヒットナンバーでフィールドを自分の庭として使える。並みの人間はもちろん、熟練者でもそれを攻略するのは難しいだろう。これは実際に戦ったレイラなら分かると思う。ただリラの亜種魔法は応用が効きやすいのが逆に弱点となっている。そのような事をすれば当然精密な魔力操作と多くの魔力量が必要になる。リラの魔力量と精密操作性は美奈と比べても天と地程の差がある。今までの攻守万能キャラと同じ特化キャラとどうしても比べられてしまうのだ。特化だから、ナンバー2と比べてどの程度優位なのかとステータスを調べた結果1.5倍以上もあれば2番目だからと言って燃費も変わらないとはいえ、高威力だったり時間短縮を視野に入れて特化キャラを入れた方がいいという結果になることが多い。


 それらを踏まえて俺が考える作戦は1つだけ、成功する可能性も高いとは言えないし、問題点も多すぎる。ハイリスクハイリターンだ。一応このイベントバトルは負けても問題ないとは思うが、どうしても勝ちたいという気持ちが勝ってしまってその危険性を理解しつつも試して見たいとは思う。


 俺たち4人は序盤にしてはレベルが高い、だが、ダンジョンも迷宮にも潜れない以上、これ以上のレベルアップはあまり望めない、つまり今から鍛える事は不可能で今のステータスのままボス戦を行うということになる。


 「とりあえず、これからの事をズルズルと考えるよりも前向きに考えて気楽にやればいいと思うよ。俺たちが後に回されたということは前半の模擬戦を見ることで先生達の実力を一つでも見れたら突破口が見えるかもしれないし」


 『アイシャ、また一人称が変わっているよ。安心させてくれているつもりでも結構熱が入っているか緊張しているんだよね。一応、言って置くけどアイシャって興奮して熱が入ったり、感情が昂ると一人称が「俺」に代わるんだよね。だから大体の感情が読み取りやすいんだけど』


 (美奈、それは少し違うんだ…!前世の記憶と経験から俺を使うのが多くて、その影響なんだ……と言いたいけど言えない…!俺の意気地なし!)


 今とか昔とか言う人種で前世人なんて呼ばれたりしているのが何年か前にプチブレイクしていたが痛いと見られてすぐに人の目が離れた出来事があったが、実際に体験しているかどうかでその評価が大きく見え方が違ってくるのが身をもって実感できる。


 『すいません。そろそろ学園に戻り日課の乗馬練習をしたいので一足先に学園に戻るため切りたいのですがよろしいでしょうか?』


 『あぁ、そうだったね…ごめん、1人で抱え込むと頭が痛くなりそうだから、少しでも気が紛れてよかったよ。うんうん、やっぱり何かあったらみんなに話すのが一番だね』


 『そう?それじゃあ、何かお礼でも貰おうかな』


 『そこで欲を出すから、不運に付きまとわせるんじゃないの?…でもそうね。今日の夕飯のデザートは少しいつもより腕によりをかけて作る…それでどう?』


 『仕方ないわね。それで手を打ちましょう』


 「さて、2人の取引も終わったところでここらでお開きと行こうか、僕も軽く筋トレしてからストレッチで身体をほぐしてランニングで学園に戻るとするよ」


 そう言ってスマホを持った手を下にだらりと下げて小さくなっていく声を遮断するように通話ボタンを切る。


 (何かあったらみんなに話すのが一番…か、今でもあいつの事を思い出すのは、未練が残っているのか或いは唯一の親友だからなのか…昔俺が女だったら惚れてただろうってなんかのついでに言ってたっけ…でもやっぱり友情以上の感情は持てなかったな)


 考えを振り払うように首を振って今日の筋トレを開始する。毎日やっているおかげで慣れた日課は身体に程よい刺激を与えてくれる。

次回7月中旬予定

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