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第二十四部 四章 特待生の朝

3月23日 


View アイシャ


 翌日、就寝時間がいつもより早かったのもあり、朝日が昇るより少し前の時刻に起きてしまった。しかし、微睡んでベッドから中々出られないで肌が温度に慣れるまで仰向けで天井を見上げる。


 いつもと違う天井、いつもと違うベッド、微睡みながらも新しい生活の第一歩踏み出したんだと改めて実感する。隣には昨日の疲労が余程大きかったのか、美奈はすやすやと熟睡している。


 徐々に肌が気温に慣れてきて、軽くベッドの上でもできる筋トレをして身体を温める。軽いストレッチも挟んで十分身体が温まってきたら、そのまま洗面台に向かう。


 学生寮の設備はとても充実していて、洗顔フォームも歯磨き粉も用意してくれている。大浴場もあるが、部屋にもシャワールームが常備されておまけにシャンプーやボディウォッシュも備えてある。


 ここまでくると最近建てられた近代的なホテルと言われても納得してしまいそうだ。出窓の近くに酒を飲みながらゆったりできるあの、スペース…名前なんだろう……ドラマでよくある…あの……優雅っぽい…なに?なんだろう。正式名称があるはずなのにそれに全く触れないと、もやもやする。


 昨日は美奈がすぐに寝たから美奈は制服のままだ。入学二日目というのもあり、今日も昨日と同じで午前で自己紹介や、授業内容の説明で終わる予定だ。それを考えると特に制服のシワに注目されることはないと思うが…


 (特待生クラスの制服は一応何着か替えを持っているけど、美奈は持っているのかな?俺のを貸してもいいけど、一部のサイズがなぁ……アイロンがけだけなら5分もかからないだろうし、出来ればもう少し寝かせて…1時間前になるまでに起きなかったらこっちから起こすか)


 昨日買ったタブレット端末を肩掛けポケットに入れて時間までに何かないかと部屋を見渡すが、昨日の時点で大体やる事は終わらせていた。クローゼットには防寒着やカーディガンなど厚手の服、替えの制服もこのクローゼットにある。因みにクローゼットは二つあってそれぞれ自分用の物はここにまとめて置いてある。タンスの上の三段には私の下の三段には皆の私服がたたんである。


 ただ一つだけ片付いていないものがあるとすれば荷物を入れてあった段ボールくらい…とはいえいろんな荷物をいっぺんに運ぶときに役立つかもしれないって自分から言ってそのままにしていた。


 台車か大きめのバッグで代用できるから今考えれば有効活用があまり思いつかない。


 (今日の放課後も買い物になるかな)


 やれやれと首を振って、テーブルに座るとうすぼんやりと外が明るくなっている事に気付いた。太陽が昇ってきていた。だが、日は開拓が進んでいない森林に遮られて空の一部を照らしているだけだった。


 「んん…んぅ…?」


 寝ぼけた声の方向に顔を向けると美奈が薄目になりながら頭を傾けて外に向けていた。


 「おはよう、美奈。まだ時間があるからもう少し寝ててもいいけど」


 「ん…後5分…いや、30…1時間くやい…」


 お嬢様なら「いや、起きるわ」と言って朝の支度を始めるものだと思うが、やはり子供なのかそう言うと昨日かけずにいた掛布団に枕を抱えながら潜り込む。


 とりあえず、今は何かをして時間を潰そうと、スマホでこの学園の地図を調べる。どうやらこの学園は前に理事長が案内した所はほんの一部分で、全部を見るには流し見でも一週間程度必要らしい。初等部中等部高等部それぞれが大きく、東京ドームよりも大きいシャリア城全エリアが10個分の大きさだということが分かる。


 前にパパとママがこの国の大部分を統治していたのが城側ではなく学園側だと言ってた理由が分かった気がする。


 そもそも、この国で一番最初に作られた大型施設がこの学園と言う噂もあったが、その規模を考えるとその噂は本当なのかもしれないと納得してしまう。


 途中でそんな考えを無くしてスマホのソシャゲでログボの報酬のついでにストーリーを進めていく。ストーリーは現段階のアプデで追加された所まで一気に進めてシナリオは後からアーカイブで一気見をする。というか、一々シナリオを見ていたら、中途半端にスタミナが回復してあと1足りないとか、プレイヤーレベルの上がりかけているところで上限値までスタミナが溜まる苦汁を飲まされた経験を生かして、そのようなプレイスタイルをしている。


 最近はプレイヤーレベルが上がったら上限突破して溜まるのもあるが、上限を突破したらどれだけ時間が経ってもその数値を越えないのが少し腹が立つ。


 (新庄がそういうのに詳しいから同じプレイスタイルを取るようにしたんだっけ…?スタミナ回復アイテムは新庄の方が圧倒的に多かったけど、流石に1000個はため過ぎだと思ったな…10時間ぶっ通しでも使いきれないだろう、アレ)


 丁度スタミナが無くなった時に時間を確認すると、美奈が言っていた1時間を超えていたので、一応起こすことにした。


 「美奈、そろそろ時間だぞ。レイラとリラを待たせちゃ悪いだろ、ほらほら起きて」


 「んやぁ…分かった分かった起きるかりゃ、お布団返してぇ…しゃむいよぉ…」


 「返したらまた寝ちゃうでしょ、それとも軽くシャワーでも浴びる?」


 「……顔洗う」


 美奈は頭をブンブンと振って、フラフラと洗面台の方へ向かって行った。


 (睡眠時間は俺と変わりはほとんどないはずなんだけどな…)


 美奈が顔を洗ってる時に制服に着替える。袖を通すとさっきまで少し肌寒いと思ってた気温が常温程度に変わったように感じる。


 特待生の服は特殊で長袖だが、寒さと暑さに強く春夏秋冬どの季節にも対応出来る、その設定は第一作品からあったが、それを体験できて何の素材を使ってるのか気になる。


 姿見を見て身だしなみチェックをして問題ない事を確認していると部屋の扉がノックされている。軽く返事をして扉を開けるとレイラとリラが立っていた。


 「おはよう、アイシャ」


 「おはようございます」


 2人はランドセルを背負っていて手にはバスケットを下げていて、その中からはパンのいい香りが漂ってくる。


 そのバスケットに目をやっているのに気がついたようで、レイラが少し照れながら頬を人差し指でポリポリと掻く。


 「レイラさんが早起きして作ってくれたので、せっかくならお二人もご一緒にどうかと思いまして」


 「まあ、リラだけじゃ、これは食べきれないと思って朝はこれから一緒に食べないかなって昨日寝る前に話していたんだ」


 「お恥ずかしい話ですが昨日は疲れていたので、そんな話をしている事が耳に入っておらず、適当な返事をしていたようで朝その事を知った次第です」


 その会話が美奈にも聞こえていたようで、洗面所の方から「上がってもらって」と声がするとそのままリビングまで通す。


 「…椅子4つもあるんですね」


 「まぁ、お客さん用にね。この部屋ってキッチンとかテーブルは元々あるのに椅子とかは無いんだもの、一応そのことはパパとママが知っていて、荷物はほとんど全部が2人が用意してくれたもの」


 「重ね重ねお恥ずかしい。私たちの方は自分用の日用品や必需品しかなくて、椅子も自分のしか…」


 「恥ずかしいと思うならそういうのを自分から墓穴を掘って全自動みたいに、さらけ出すのをやめたほうがいいんじゃない?まぁ、それがリラらしいと言えることだけど」


 美奈が顔を洗って制服に着替えた後に席につくと、バスケットをそれぞれ2人の間に置く。テーブルに置かれたバスケットの中はサンドイッチや食パン、朝の軽食にピッタリのラインナップだった。当然レイラが一手間加えて味は最高だった。


 「でも本当にこれから一緒でいいの?毎朝って事は…料理は全部レイラに任せることになるかもしれないのに…」


 「料理は好きだし、今日はたまたま早起きしたから焼きたてを持って来ただけで、普段はもっと簡単な、すぐ出来るものを作っているから問題なしなし」


 「好きなら、特にいいんじゃないか?僕たちはレイラの作る料理は好きだし、なんにせよ美味しいから毎日食べたいくらいだし」


 ((プロポーズじゃん…))


 「お望みなら何時でも作りますよ」


 ((プロポーズの返事じゃん…))


 そのことに気づいて顔を見合わせて顔を赤くして慌てて弁明する。


 「あぁ、そ、そんな気は無くて本当に美味しかったからつい口にでちゃっただけで!」


 「レイラの方からもごめんね!勘違いさせるような事を言っちゃって!」


 「分かってる!分かっているから、誤解だって知ってるしそういうのは私も考えてないから微塵もそういうのは!」


 「そ、それはそれで残念な気持ちなんだけど……」


 「ええええぇぇぇぇぇ!?」


 「少しくらい意識してくれたらよかったくらいかなぁ…なんて…」


 「ぇぇぇぇぇえええ!?」


 「ふぅ…見せつけてくれちゃってなぁ……まぁ、パンチあってパンが進む進む」


 「私ももう一個食べましょう。もぐもぐ…あっ、これスパイシーなやつです」


 個人的にレズは二次元だからめっちゃ心がシャッフルされてキュンキュンする気持ちがいい派閥の人間だからこういうのは米が進む、実際に手に持っているのはパンだけど原材料は同じだからもとをただせば米を食っていると言っても過言ではない…過言かな…?


 正直な話し、レイラをお嫁に欲しいと思う気持ちは分かる。俺も嫁にはレイラのような人がいいと思うからな、めっちゃ可愛いからタイプだし…リアルでこんな女性に出会えなかったのが残念…いや、リアルと言うか前世というか、やべっこの身体だと男と結ばれると思ったら鳥肌が立ってきた。


 まあ、とりあえずこの展開している部屋に俺たちがいる事が自分でも嫌だが、それはそれとしてこんな関係になっているのは祝福しよう、それが必要だ。


 とはいえ、こんな熱が続いているといつまで経っても収まらなさそうなので冷蔵庫から、冷たい飲み物を人数分取り出してそれぞれの前にコップを出す。それで中身を一気飲みした2人は冷静さを取り戻したのか、頭を振りいつものように振る舞う。


 「今、思い出したんですが、レイラさんに聞きたいことがあって、昨日の事なんですが…」


 昨日の事と言っているが、昨日は色々ありすぎて何のことか聞かれていない自分でも何のことか分からなかったが、レイラは緊張が常に限界突破していたからもっと分からないという風に首を傾げている。


 「アナスタシアさんの猫、コテツを見つけたのって何をしたんですか?私はリエラを呼んで探そうとしたのですが、探そうとした瞬間に既に場所が分かりましたよね?」


 「あぁ、その件ですか、ただの探知魔法ですよ。あと、動物の性質からどこに行くのかを絞り出して、居なくなったのに気づいた時間を割り出して、その中でも引っかかった小さな動物を見つければ」


 「見つけられた、と」


 「いなくなったのが猫ならとても簡単で、学校に猫を連れている人なんてアナスタシアしかいないでしょう?人間だったらそこまでの探知はできません。今のレイラの探知だと、姿形は判別出来て、個々の判別は無理」


 「そこまでの精度なら十分だろう。物も判別できるのか?」


 「そうだね…スキャナーみたいな感じで物体の形状も分かるあの…ドラマで機械からの視線あるでしょ?それと似ている感じ」


 「それだけじゃなくて性質を計算してあんなに出来るんですか…すごい」


 レイラの能力って役に立つけどどれも自分から相手に接触しなくちゃいけないからまずはそれを治さなくちゃいけないのが当面の課題だな。


 「アナスタシアは実家通いだったよな、あの時一緒に寮に行ってないから」


 「そうだねー、コテツを連れている理由もそれを見ても何も言わなかった先生の理由もどっちとも分かるんじゃない?」


 「アニマルテイマーの可能性もあるのではないでしょうか?」


 「でも、それなら他にも色々連れているんじゃないの?鳥とか鼠とか、未熟ならその可能性も捨てきれないけどね」


 寮の話題で思い出したが、主人公も寮通いでさらに言えば特待生クラスに所属していた。それなのに出席していなかった、特待生クラスは他のクラスとは違い、20人規模の小規模なクラスだ。


 今回の初等部の新入生は約600人、その中から学力含めた能力(スペック)など総合的に見て将来的に期待を持てる生徒が特待生クラスに入る事が出来る。その証として特待生だけが身につける専用の服の着用が義務付けられている。当たり前だが、常に学園内ではそれを着て過ごす訳ではなく、休日や授業がなかったり、講義がなかったり、講習を受けておらずに自由時間にしているなら私服で過ごす事を許可されている。


 そもそも特待の正式名称は特別待遇の省略しているから簡単に言えば同年代の中では超人と言える人の集まりだ。


 「さて、ラス1貰うけどいい?」


 「あぁ、せっかくだから4つに分けないか?」


 「レイラはもういいや、もうお腹いっぱい」


 「私ももう大丈夫ですお二人でどうぞ」


 最後のパンも平らげてバスケットを片付けると貴重品とタブレット端末を持って登校する。当たり前のようにレイラは外に出て高速で両隣の服のすそを引っ掴んで、両方の意味ではなさずに教室までついていくことになった。


 その間、特待生の制服というのもあって多くの人から目線を集めて、レイラの緊張がさらに膨らみ腕の力が高まり、昨日のように青い顔をしたリラの回復を美奈がしている間、抱きかかえるようにバイブレーション中のレイラを連れて教室へ向かう。


 昨日と同じ席に座って、3人でレイラを落ち着けて、先生を待つ。

次回4月中旬予定

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