54話 追い出されるようです
「仮に俺が見つけてきたとしても無償で渡すのは納得できないんですけど」
「……この国の騎士として働くと言うなら考えてもいいぞ?」
俺は行動を制限される訳にはいかないからな……
「すみません……事情があって、誰かの下につくわけにはいかないんです」
「そうか……そうなると君はこの国にはいられなくなってしまうのだが」
「え?それはどういう事ですか?」
この国に居られないって今関係ないことだろ?
「ん?兵士から聞いてないのか?」
「いえ……なにも」
「君は勇者に手を出したという事で国家反逆罪に問われている」
はぁ?あの野郎あることないこと言いやがったのか……
「それは冤罪です‼」
「仮に冤罪だとして、この国を救っている勇者と無名の冒険者の話……皆はどちらを信じると思うかね?」
こいつら始めから罪がどうこう関係なく聖剣が欲しいだけか、それで戦力になるなら使ってやるってことか……横暴もいいとこだな。
「分かりました……俺も国を敵にはしたくないので、聖剣は献上させてもらいます」
「それは良かった、しかし、騎士にならないというなら、勇者に危害を加える可能性がある輩をこの国にはおいて置けないのでな、今すぐにとは言わないがこの国からは出ていってもらえると助かるのだが」
あの勇者……絶対に許さない。
「分かりました」
俺は近くにいた兵士に聖剣(偽物)を渡し、その場を後にしようとしたら……
「おいおい、勇者に危害を加えたのに、それだけで終わると思っているのか、お前は?」
また悪徳大臣ですか……
「まだ何か?」
「その鎧も置いていけ」
「……あ?」
おっとちょっとヤンキーみたいな声でちゃった……でもキレそうなのは本当。
「それは冤罪だと言っていますし、無償で聖剣もお譲りしましたし、それで十分では?」
「それは残念だな、エイミー様がどうなっても良いのか?」
あの勇者どれだけやれば気がすむんだよ……
「エイミーをあんたらがどうにかできるとも思いませんけど?」
「まあ、傷つけたりはできないだろうが、お前のように国から追い出すことはできるぞ?勿論他の国からもな、戦力が減るのは痛いが最近は強大な魔物は出てきてないからな」
「はぁ……分かりました、がこれ以上俺に関わらないと約束して下さい、それなら条件を飲みましょう」
「いいだろう」
俺はその場で鎧も脱ぎ捨てその場を後にした……
夕方に呼び出されたこともあり、既に当たりは暗くなっていた……
「今日は一度宿に戻って明日出ていくか……」
正直この国にはもういたくなかった、似非勇者に会いたくないし、面倒ごともごめんだ、エイミーには悪いが……
「ん?」
気がつくと周りを黒いマントを羽織った集団に囲まれた。
さしずめ暗殺部隊といったところか。
「何のようかな?」
「お前には死んでもらう」
「ほう……」
「やれ‼」
「仕方ないか……」
相手は四人、まあ人数は正直関係ないが、俺はステータス画面から漆黒の鎧のアイコンをタッチした。
すると襲い掛かってきた連中は皆吹き飛んだ。
「な、何が起きた!?」
「わ、分かりません」
「悪いが……今機嫌が悪いんだ、こんな夜中に俺を襲った事を後悔するんだな」
そうして俺は暗殺部隊を一人のこらず殺した、正当防衛だから仕方がない……俺は何事もなかったかのように宿に戻り寝た。
これですぐにでもこの国から出ないと行けなくなったな。
俺は次の日来たときとは逆側の門からこの国をようとしていたら、例の門番に出会う。
「あんたこっち側の問番もやってるんだな」
「ん?誰だお前、見ない顔だな?」
あ……鎧なかったんだ。
「白い鎧の中身ですよ」
「え、お前が!?悪い、悪い、流石に気がつかないよ」
「色々あってなこの国から出なくちゃいけなくてな」
「そうか……なら南のサウザーン王国かセントラルをおすすめするぜ」
サウザーンにセントラルかどんなところなんだろうか。
「セントラルは色々な国から人が集まったでかい都市だ、国ではないから、ここよりはましかもな」
おっさんも色々あったのかもしれない。
「サウザーン王国は……魔導師ギルドってあっただろ?」
「ああ」
そういえば結局どんななのか聞き忘れていた。
「魔導師になるための学園がある、年に関係なく魔法を学びたいやつなら入れるから、良く見るとお前は若いようだし、興味学園祭あれば行くのもありかもな」
「なるほど」
あんたと多分同い年くらいかそこらだと思うけどな。
俺は魔力のステータスは高くなったがスキル以外で魔力を使う場面もなく、力の持ち腐れ状態だったので、サウザーン王国の方に行くことにした。
報酬のお礼で奢れなくなったからと、馬車代や必要なものを一式揃えてもらってしまい、少し申し訳ない気がする。
「色々ありがとう」
「きにするな、俺も昔は冒険者だったんだ、困ったときはお互い様だ、今さらだが、俺はクリスって言うんだ、お前は?」
「俺は……ユウトだ」
「いい名前だ、頑張れよ」
「またどこかで」
そうして、俺はウェストニア公告をあとにしサウザーン王国に向かった。