53話 返り討ちにするようです
「お、お前……いったい何を……それにスキルも発動しねぇ……」
「「どういうこと？」」
勇者様は、どうやら俺が無傷なこととご自慢の聖剣の力が発動せず、だいぶ驚いているようだが、剣の腕はどうなんだろうか？
「正々堂々と剣の腕で勝負しようじゃないか」
「くっ……」
随分と焦った顔をしているみたいだが、俺はその顔が見たかった。
「まさか……本物の聖剣だったなんて……」
「え？じゃああれが失われた聖剣ってこと？」
「私、聞いたことがあるわ、失われた聖剣には全てが討ち滅ぼす力があると……」
失われた……ね、魔界に攻めこんだ勇者が死んで、そのまま魔王城の宝物庫に……って感じかな？
「失われた聖剣がどうした、俺がこんなやつに剣の腕で負ける負けがねぇだろ‼」
……少なくとも一回……伸びてますけどね……
そう言って勇者は俺に向かって走ってくるが……
遅いな……
俺はエミリーと戦って仲間がこれなら、勇者はどれだけ強いんだと期待していたのだか、聖剣の力に頼ったただの成り上がりだったか……
「死ねぇぇ‼」
「つまらんな」
ガキンッ‼
勇者の聖剣は勇者の手を離れ地面に落ちる。
「そん……な……」
あれほどの能力だ……おそらく真面目に剣の腕を磨くなんてことを転生者か召喚されたのか知らんがするわけがないか。
「これで終わりだな」
「……」
「「嘘……」」
勇者は何も喋らない……そして我らが勇者様がやられた姿を見てお仲間は驚いているようだ……二回目だろと思ってはいたが、ただ一人を除いては違った。
「良かった……」
エミリーは安堵の声をあげ、こちらに駆け寄ってきた。
「いくら貴方が強くても、あのスキルでやられちゃうかと思ったよ」
「たまたまだな」
「私の時もその力使ったでしょ？」
「……」
「顔をそらさないでよ……まあいいわ」
よし……勝った。
「アイツ……動かないけど……いいのか？」
「分かんないけど、多分大丈夫じゃない？」
抵当だな……
「私達、もう行くから、カイトのこと宜しくね」
「任せて」
「しばらく動きそうにありませんしね」
そうエミリーが二人に手を振るとエミリーは俺の背中を押す。
「お、おい」
「さっさと行きましょ、カイトが正気にもどったら、貴方も面倒でしょ？」
「わ、分かったから、押すなって」
俺はそのまま訓練所を後にした……
「あーあ、折角のデートだったのに」
「一通り食べ終わった後だったから、良かっただろ？」
「そうだけど……じゃあ今度は約束してた魔物狩りデートだね！」
……それってデートなんか？
「楽しみにしてるよ」
「あ、そういえば……一回のデートでいきなり彼女認定ですか？」
なっ……覚えていたのか……
「あれは言葉のあやというか、流でついというか……」
「ふふ、冗談だよ、彼女にできるといいね？」
そう言ってエミリーは笑うが、どっちも冗談になってないんだよね……
「おいおい、会ったばかりの男にそんな事言って良いのか？」
「ん～分からないけど、なんか貴方とは会ったばかりな気がしないんだよね」
「こんな鎧着てるのにか？」
「私ね、今はもう力がほとんど残ってないけど、魔眼が使えたの、その能力は相手のオーラみたいなのを感じとるものなんだけど」
エミリアも使えたな……魔眼もちなんて沢山いるんだろうけど。
「それでなんとなく貴方に懐かしさを感じる気がするの」
「それは……喜ぶべきか？」
「私と仲良くできるんだから喜ぶべきじゃない？」
「それは喜ばしいことだな」
二人で笑いながら帰り、会う約束して今日は家まで送った。
「ありがと、じゃあまたね」
「ああ」
それからエミリーとは毎日のように会う約束した、約束通り魔物の狩り方を習ったり……エミリーに言われた通りに気配を消したらすぐに見つかった……後はおすすめのお店を一緒に回ったりもした。
そもそもスポットの場所を知っていれば嫌でも魔物に会うみたいだけど……俺は知らなかったし……
そんなある日の事だった……
「貴様が聖剣泥棒の冒険者か？」
「は？どういう事ですか？」
「貴様がこの国の管理下にある聖剣を持っているとの情報が入ったのでな、王城まで連行する」
さっぱり話が見えてこない……聖剣を盗んだって何の事だよ……
下手に暴れる訳にも行かなかったので俺はおとなしく王城まで行くことにした。
「お前が聖剣を盗んだ冒険者か？」
「あの……盗んでないんですけど……」
俺は王様らしき人の前に連れてこられ、話をすることになった、一応聖剣も腰に刺してるけど……偽物だけど。
「勇者様から聞いた話によるとその能力が備わった聖剣は我々ウェストニアの物のはずだ、だから盗んでないにしろ譲渡して貰おう」
「これで合ってますか？」
試しに腰に刺していた偽物を抜き取り見せる、すると周りの兵士やら大臣っぽいやからから、おおーという声が上がる
「なるほど聞いていた通りの見た目だな」
こいつら本物知らないのか？
「あの……聖剣っていつなくなったんですか？」
「もう百年ほど前になるらしいが、王城から盗まれたのだ」
それがなんで魔王城にあんねん。
「貴様‼王様が渡せと言っているんだ、黙って渡さないか‼」
うわ……でたよ、良くある悪徳大臣みたいなのおるな……
「まあ待て、譲渡してくれるというなら、悪いようにはしない」
「何か報酬でも頂けるんでしょうか？」
お、王様のほうは話が分かるみたいだな。
「ん？何故もともとあったもの帰してもらうのに報酬が必要なんだ？」
「は？……」
適性が無いと言われた俺は六回の「遡行」を経て最強を目指すもよろしくお願いします
