22話 初見殺すようです
「なぁ俺の出番なくないか?」
ルナがどんどん魔法で魔物倒し、残った魔石や素材を集めながら言う。
「貴方の強さなら、逆につまらないと思うわよ?だからそこそこの魔物が出るまで待ってて」
「なんほど」
魔物のレベルなんて良く分からないけど、ルナがそう言うならそうなんだろう。
「うわぁぁぁ‼」
すると男の叫び声が聞こえる。
「あっちからね」
「行ってみよう」
声の聞こえた方向に行ってみると男女のパーティーが居た。
そしてその先には……
「フェンリルね……」
「強いのか?」
「最恐の初見殺しってところね」
「なるほど」
フェンリルは体長五メートルほどでだいぶでかい。
後からやって来た俺達に警戒しているようだ。
「た、助けて下さい‼彼が私を庇って大怪我を……」
助けを求める女の子の方を見ると背中に爪の後の様な深い傷がある。
「助けられるか?」
「なんとか」
「じゃあ奴は俺がなんとかするから、助けてやってくれ」
「大丈夫?」
「多分な」
正直言って怖いんだが……
一瞬で死んだらどうしよう。
取り敢えず傲慢の剣だな……
後から分かったことなんだけど、スキルは思っただけで発動したわけじゃなくて、発動相手がいないと発動しないらしい。
ユウト
種族 人間
職業 暗黒騎士 レベル42
攻撃 SS
防御 SS
俊敏 S
魔力 SS
運気 SSS
体力 SS
さすが初見殺し罪深いね。
人を殺しでもレベルは上がるのか……
上がり過ぎな気もするがレベル1が低すぎたのかな?
「ガルルル……」
「殺るき満々ですな……」
「ガルッ‼」
フェンリルの攻撃がやって来る、このままだと鎧ごと真っ二つかも知れないので取り敢えず魔剣で防ぐ。
ガチンッ‼
鋭い金属音が鳴る。
さすが初見殺しだな、流石にあの時の様にはならないか……
ステータス上昇のお陰か、攻撃はだいぶ見えるのでなんとかなりそうだ。
「こういうのは大体首を狙うのが定石だよな」
そう言って、足に力を込めて魔剣を構え、踏み込む‼
「やべっ‼」
ステータス上昇のことも考えずに思いっきり踏み込んだせいか、勢いが出過ぎて、首を狙っている暇なんてなかった。
スパッ‼
「あ……」
そこには左右に分かれた、フェンリルの姿が……
やっぱりチートじゃね?
「す、すごいあんな怪物を一瞬で……」
「す、すごいあんな傷を一瞬で……」
なんか同じようなことを漏らしているが気にしないことにしよう。
「ルナって結構凄かったんだね……」
「なっ‼今までなんだと思ってたのよ」
「発情期のサキュ」怒るよ?」
「ごめんなさい」
ルナは俺にサキュバスって言われるのが嫌いなんだ、気をつないと……
「「あの、有り難うございます」」
「気にするな」
「あなた達は……」
「ハンター成り立てで……」
「そう……運が悪かったわね……」
成り立てでしっかりと、初見殺しに会うなんて可哀想すぎだな。
俺も成り立てなんだけどな……
この世界にもアイテムボックス的なものはあるらしいけど噂程度のものらしい、恐らく転生者が持ち込んだんだろうな。
でも俺達はそんなもの持っていないので魔石を運ぶのも一苦労、先ほど助けたハンターに手伝って貰いフェンリルを町のギルドまで運んだ。
「おい、あれが噂の初見殺しじゃないか?」
「マジかよ、先を越されてしまったか……」
ギルドに入ると注目の的になってしまった。
確かにこんな大きな狼を抱えていたら目立ってしまうのは仕方がないけど。
「ようこそギルドSKモノルド支部へ、噂の初見殺しを討伐してくれたのですね、有り難うございます」
「いやたまたまだ」
「それでも駆け出しハンターの多い町では被害者が多かったので有りがたいです」
「そうか」
確かに世界各地にあるとされるスポット、それに対応するに当たって新人に死なれるのは厳しいところだろう
「それにしても左右に真っ二つなのは……」
「たまたまだ……」
「……そうですか……でもこれだと素材買い取りは少しですが下がってしまうかもしれません」
「かまわない」
確かに毛皮や装備に使うかもしれないのに左右に真っ二つは不味いのか……以後、力の制御に取り組もう。
「成功報酬が白金貨一枚、買い取りの方ですが断面が綺麗だったため下がらず金貨五十枚となりました」
「そうか」
日本円で150万か、本当だったらパーティーとかで挑むんだろうし妥当なのかな?
魔石の買い取りの方は次の用な感じだ。
小魔石 銀貨一枚
中魔石 金貨一枚
大魔石 金貨十枚
微妙な大きさの違いで価値は変わってくるらしいけど、今回の魔石これらに含まれない特殊な魔石で金貨五十枚だった。
合わせて200万、前世じゃ高校生だし触れる機会もない金額だ。
ルナに半分渡そうとしたら『貴方が倒したんでしょ?』と受け取ってくれず、ハンターの二人には金貨を何枚か渡そうとしたんだけど、妥協して一枚だけ受け取ってくれた。
「どうする?まだ魔物退治でもする?」
「う~ん」
この森の中でも規格外のフェンリルがあんなだったし、魔剣のステータス補正がなくてもあまり面白いものではないだろう。
「色々知れたし、もういいかな」
「そう言うと思ったわ、後は町の中でもぶらぶらして帰りましょう」
「まかせる」
ルナと町の中をデートしたけど、魔王のところの方が品揃えも良いので本当にぶらぶらしただけだった。