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17話 私の名前はエミリア

 私の名前はエミリア、人間界にある4つの国の1つ一番魔界に近い西のウェストニア皇国領の外れにあるウェモストという村に生まれた。


 そこは決して大きなもの村ではなかったけど、魔界に行く途中の商人がよく通るので、貧しい村ではなかった。


 私は、生まれつき人の魂の色を見ることができた。

 村の人は「魔眼だ‼、魔眼だ‼」良く言ってくれる人もいれば、悪く言う人もいた。


 でも、村の人が騙されないように商人を見極めていたら、そんなことをいう人はいなくなっていて、皆が仲良くなっていた。

 お父さんもお母さんも、そしてお兄ちゃんも喜んでくれた。


 私はお兄ちゃんが大好きだった、いつも遊んでくれて、ずっと一緒に居てくれる。

 そんなある時お兄ちゃんに彼女が出来たらしい、村長の娘さんらしくて、村で一番可愛い子だった。

 ちょっぴり嫉妬してしまったけど、それよりも兄ちゃんが誇らしかった。


 兄ちゃんとの時間は少なくなっていった。

 夜は一緒に寝てくれるけど、昼間は彼女と一緒いる。

 そんなある時その彼女が私のもとにやって来て、遊びに誘ってくれて、それからは3人で遊んだり、散歩に出掛けたりした。

 もちろん時と場合によっては空気を読んだりもした。


 でもやっぱり寂しいさを感じてしまうときはあった、村にはちょうど同年代が居なかったからってのもあるけど、それでも優しい二人には幸せになって欲しかったから、私は少し我慢した。


 でも寝るときだけは一緒、これだけは譲れない。



 そんなちょっぴり寂しかったけど、幸せな毎日を送っていたとき、村に一人の男がやって来た。


 私はこの時、これが悪夢の始まりだとは思っても見なかった。



「お兄ちゃんあの人は誰なの?」


「なんか魔界の人らしいよ」


「魔界の人?」


「そう、普段は専用の市場で商人をやっているらしいけど、その市場を抜け出してきて安く売ってくれるんだって」


「なんか怪しくない?それに……」


 今まで見たことのない色をしていた。

 基本的に皆は白い色をしていて、悪い人は黒く濁っていたりして分かるけど。

 この人は紫色だった。

 一体何をしたらあんな色になるんだろう。


「なんか色が変なの……」


「そうか……エミリアがそう言うなら僕も警戒しておくね」


「ありがとうお兄ちゃん」


「まかせろ‼」


 やっぱりお兄ちゃんは分かってくれる。

 相談すればすぐに解決してくれるし、最高のお兄ちゃんなの。


 その人が来てから、数日がたった夜のことだった。


「エミリア、今日はお母さんとお父さんと寝てくれるかい?」


「な、なんで……やだ‼お兄ちゃんと寝るの‼」


「ごめんエミリア、セシリーが心配なんだ」


 セシリーというのはお兄ちゃんの彼女、実は例の男は村長の家に泊まっているらしく、セシリーはちょっかいを受けているらしいの。


「私もセシリーお姉ちゃんは心配だけど……」


「頼むエミリア」


「今日だけだからね、それで何もなかったら帰ってきてね」


「ありがとうエミリア、行ってくるよ」


「行ってらっしゃい……」


 この時無理にでもお兄ちゃんを止めるべきだったと、後悔している。



 その後お母さんとお父さんと寝ることにしたけど、何故か胸騒ぎがして、眠れなかった。


「やっぱりお兄ちゃんの所にいく‼」


「何を言っているのエミリアもう遅いのだから止めなさい、お兄ちゃんは大丈夫よ」


「お父さんはついにエミリアが一緒に寝てくれるって聞いて嬉しかったんだぞ、今日は大人しく寝てなさい」


「いや‼」


「「エミリア‼」」


 私は家抜け出して村長の家に向かった。


「あれ?」


 皆の話では夜遅くまで酒を飲んでるって聞いたけど、村長家は静かだった。

 その時二階からかすかに声が聞こえた気がして、気になった。

 何故か家のドアに鍵は掛かっていなかった。


 二階上がると聞こえる声はドンドン大きくなっていった。

 喋り声ではないみたいだけど……


 私は壁一枚くらいなら向こう側にいる人の魂が見える。


 見えた色は白、これはセシリーお姉ちゃんのだった、そしてもう1つは紫色……じゃあお兄ちゃんのは?

 ドアに手をかけ中を除くと、

 例の男にお姉ちゃんが犯されていた……


「いやああああっいやっああんっあっ」


「ん?なんだ?ガキじゃねぇか、この家にはまだ()()()()()いたんだなw」


 何を言っているんだろうこの人は、お兄ちゃんはどこなの?

 良く見るとベッドの横にお兄ちゃんが寝てくれるのが見えた。


「お兄ちゃん?なんで床で寝てるの?風引いちゃうよ?」


 この時私は分かっていた、すでにお兄ちゃんが死んでいるを、何故なら生きてる者にはあるはずの魂の色が見えなかったのだから。


「いやあ、エミリアちゃんっあ、あん、逃げてぇ、あっいやっああんっあっ」


「ふぅ、楽しませては貰ったし、奴等の好きにさせてやるか」


 そういってその男は、お父さんが貴重な物だと自慢していた魔道具の通信機に似ている物を取りだし何かを話始めた。


「あーわりぃな、失敗だ、好きにしていいぞ、え?そんなことはねぇよ?ちゃんとバレないようにしてたって」


 失敗?バレる?なんのことを言っているのだろう。


「……ちゃん……リアちゃん、エミリア‼」


「はっ‼お姉ちゃん……」


 疲れているみたいだし、気分も悪そうだ。


「逃げなさい、この村から出るの‼」


「お兄ちゃんは?」


「貴方が一番分かっているでしょう‼」


「……分かってるけど……お姉ちゃんは?」


「私は最後まで貴方のお兄ちゃんといるわ……」


「おいおい、兄弟愛、姉妹愛を見せ付けるんじゃねぇよw」


 通信が終ったのか男が会話に入ってきた。


「幼少趣味はねーけど、お前も黙らせた方がいいみたいだな」


「エミリア早く、こいつはどうにかするから」


 そういってセシリーお姉ちゃんは男にしがみついて邪魔をする。


「ちっ‼話しやがれ、クソ‼」


「お姉ちゃん……」


「早く‼」


「くっ……」


 その後のことは良く覚えてない、ただ走って、走って走り続けた。

 村長の家を出たときにはすでに村は混乱状態で、とにかく逃げることしか出来なかった。

 森中には入ってはダメだと言われていたけど、今はそこに逃げ込むしかなかった。


「はぁはぁはぁ」


 どれだけの時間走っていただろうか?あるいはそんなに時間はたっていないのかもしれない。


「はぁはぁあっ‼」


 何かにつまずいて転んでしまった。

 地面には何かの模様があるけど、よく分からない。


「なにこれ‼」


 すると急に地面が光だし、私の体を包み込んだ……



「何が起きたの?」


 気がつくとそこは建物のなかだった。


「ここはどこ……」


 そこは何もない部屋地面にはさっきと同じような模様、そしてドアが1つ。

 そして近付いてくる()()の魂。


「いや……」


 ガチャ


「部屋でゆっくりしてたのに行くなら行くって言えよな~ってなんだお前‼なんでここに?」


 私はその小さな体をいかして、男の股の下をくぐり抜け、部屋を出た。


「とにかく逃げないと」


 部屋でるとそこは長い廊下でたくさんの部屋があった。

 そしてどの部屋も見たことのない魂の色ばかり。

 誰も居ない部屋も見つけたけど、鍵が掛かっていて、入れない。


「どこ行ったガキ‼」


 幸いそこの建物は曲がり角がたくさんのあり、すぐには見つからなかった。


(どうして見たことのない色ばかりなの、村の人は皆白だったのに)


 もうずいぶんと探したが白い魂が見える部屋はなかった。


「あっ‼」


 少し先は行き止まりだった。


「どこだ?迷路みたいな構造にするなよ」


 今戻って1つ前の角を曲がっても間に合わない。

 残り少ない部屋に賭けるしかない。


「いた……」


 そこには少しだけ黒い靄が掛かってはいるが、その奥底は、綺麗な白だった。

 助けを求めよう。


「あとはこの先だけだな」


 まずい、このままだと助けを求める前に捕まってしまう。

 ドアに手を掛けると、鍵は空いていた。


「ルナ、来てくれるのは嬉しいんだけど、今日は休ませてくれないか?」


「同じ色だ……」


 中にいたのはお兄ちゃんより少し大人びた青年で、やっぱり村の人と同じ色だった、しかもさっきの黒い靄はなくなっていた。


「助けて欲しいの……」


「どうしたんだい?」


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