12話 貴方は悪くない……
「ちょっと待ってよ~」
彼は魔王様にいじられてすぐに応接室を出てしまった。
「私も失礼します」
「あ、そうだ」
「なんですか?」
「償いの件だけど、いい物件を紹介するのはどうかな?もちろん無料で」
「どういうことですか?」
「彼との関係、ギルドの宿じゃあ、周りを気にしちゃうだろうし」
「き、気が早いですよ‼」
私は顔を真っ赤にして応接室を後にしようとしたが
「よろしくお願いします」
小さな声でそういった。
「任されたよ‼魔王としてはね、成り立てだとしても六魔将には幸せになって貰いたいからね」
私は応接室を後にした。
「遅かったな」
「ちょっと‼挨拶くらいしなさいよ‼」
「そんなことより、知り合いだろ」
そんなことって……魔王をなんだと思ってるのだろう、今の見た目は、ごついけど中身は私と同じくらいだし、それに知り合いってだれよ?
「ルナ……」
「お姉ちゃん……」
「ごめ゛んね゛ぇぇぇ」
姉は泣き出してしまった。
「泣くことないじゃない」
「だってぇぇ、ぐす、私が誘ったくせに、ぐす、妹の面倒も見れないなんてぇぇ、姉失格だよょょ」
「だってお姉ちゃんは仕事で忙しかったんだから」
「そうだげどざぁぁ」
「もう恥ずかしいから泣き止んでよ、私はもう大丈夫だから」
そういって姉の涙を手で拭ってあげる。
「……ぐす……ぐす……」
姉は昔から過保護だった、仕事に出かけるときも私が家から追い出すまで仕事に行かなかったし、怪我をしようものなら大変なことになっていた。
「あ、あの妹を助けて頂き有難うございます、いったいなんとお礼をしたらいいか」
「たまたまだ」
姉も落ち着いたみたいだ。
「で、でもなにかお礼をしないと気がすみません」
「気にするな」
「ですか、あっそうだ、私の体でどうですか?」
「「へ?」」
思わずユートと言葉が株ってしまった。
何を言い出すかと思えば、この人は……
「だ、ダメよ、そんなの‼」
「なんでよ~、いいじゃない~この人だって男なんだから~」
「わ・た・しがいやなの‼」
姉はきっと経験豊富だ、もしもせっかく見つけた運命の相手が実の姉の虜になってしまったら大変だ。
「もおいいから、仕事があるでしょ、戻っていいから」
「あるけど、でも~」
「は・や・く」
「わかったから~、暗黒騎士さんお礼はまた後日ということで」
姉はユートに挨拶をすると帰っていった。
良かった、脅威はさった。
「ねぇ?」
「なんだ?」
「本気にしないでよ」
「……ああ」
何よ今の間‼確かにお姉ちゃん綺麗だけど、今朝までベットにいた、私というものがあるでしょ!?
「なんだか、喧嘩を止めに来たときと印象が違うな」
「あれが素だよ、でもあのまったりとした感じの方がうけがいいんだってさ」
「なるほど」
お姉ちゃんも大変だ。
自分では事務仕事だって言ってるけど、本当は人間界に行って情報収集や他のギルドや国の人接待もやっているはずだ、たぶん。
だからあんなことを平気で言えるのかもしれない。
「またなんか来たぞ」
「今度はなにッ……」
そこにいたのは前は仲良くパーティーを組んでいた女の子の3人だった。
「ルナ……謝って許されることじゃないのは分かってるんだけど、せめてもう一度話がしたくて」
「あんたは少し席を外してくれる?」
あまり聞いていても楽しい話じゃないし、ユートには悪いけど。
「そうか、では食堂で待っている」
「食べちゃっててもいいよ」
「そうか」
本当は一緒に食べたかったけど、私の中でもけじめはつけたい。
「私たちザコルに『今後ルナに近づいたら、俺の仲間とお前らを襲う』って脅されてて」
そう予想道理のことを言うのはサチ、このパーティーのリーダー役を担っていて弓使いだ。
「で?ザコルがいなくなったからって、今さら会いに来たわけ?」
「そんな言い方ないだろ‼」
言い返して来たのはマリン、男勝りで、剣士だった。
私達にナンパしてくるやからいればすぐにでも追い払ってくれた。
「でも本当のことでしょ?」
「そ、そうだけど、」
本当は私もこんなことは言いたくない。
「私達は逃げた、ザコルから、そして貴方から許してくれなんて言わない、ただ謝りたくて」
その言葉が聞きたかった。
いつも冷静で状況を把握するのが得意だったカエデ、私とは違い支援魔法が得意な魔女だ。
貴方達が悪くないのはもちろん知っている。
でもせめてもの謝罪。
いいわけなんて聞きたくない。
「ねぇ、ルナ?」
「なに?」
「もし良かったらだけど、私達ともう一度パーティーを組んでくれない?」
「そんなにすぐに元の関係に戻れると思っているの?」
「もちろん、そんなことは思ってないけど、もう一度パーティーを組むことで少しずつでも前の関係に近づけないかな?」
それも悪くないかもしれない。
私は別に彼女達を恨んでないし、すぐにでも元の関係に戻れると思う。
皆で楽しく出来ればそれも幸せだと思う。
「私の夢の話をしたことがあったよね?」
「運命の人に会うって話?」
「そう、それでね、見つけたんだ、いや見つけてくれたの」
「それって、さっきの人が?」
「うん、だから今はその人について行きたいの」
今まで自分のことを隠してなるべく人の迷惑にならないように生きてきた気がする。
でも彼と一緒なら……
「そっか……良かったね」
「サチもマリンもそんな顔しないでよ、さっきのは本心じゃないし、別に恨んでもいないわ、それに私だってパーティーを組めないのは残念だよ」
「「ルナ……」」
「これからはただの友達パーティーは組まなくたってお話はできるでしょ?」
「私達もっと強くなるよ、そしていつでも待ってるから」
「今日はもう行くね?これ以上は皆泣いちゃうと思うし」
そうして彼女達に別れを告げる。
私が彼女達とパーティーを組むことはもうないだろう。
彼女達がいくら魔人族だとしてもサキュバスの寿命は長い。
私は少なくとも彼が老いて、私よりも先に天国に逝ってしまうまで添い遂げるつもりなのだから。
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