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危険なお嬢様

初サイドです。


 二人とも、結構体力作りから頑張ってんぜ。そう伝えてやっても敢えて無視して紅茶をすする蝶湖。晩飯後に時間合わせて月詠家に寄ってやったというのにつれないじゃんか。

 仕方がないから、正面、顔の真ん前まで出ていって言ってやった。


「まだ拗ねてんのか、ガキだねえ」


 ツンと澄まし顔で何も言おうとしないのは、コイツが完全にへそを曲げている証拠だ。ああ、面倒くさい。


「そういやー、うららちゃんは、なあ」


 そこまで口出すと、カップに口をつけたままピクンと耳が跳ねる。しっかりと聞いてんじゃん、やっぱホント面倒くさいヤツだ。


「正直、ビックリするほど馬の扱いが上手いわ。あれ、なんで?乗馬したことあんのかねえ?」


「いいえ、乗馬の経験はないはずだけれど……」


 ストーカーか、こいつは?

 俺の心の中の突っ込みが聞こえたのかどうか知らないが、眉をひそめて嫌そうな顔をした。


「別にわざわざ調べた訳じゃないから」


 調べたな。


 まあ、蝶湖が我が儘自分勝手の王様なのは今に限ったことじゃない。よそじゃあ氷の女王だのクールビューティーだの、言われてるみたいだが、そいつはただ単に色んなものに執着心がないからだ。別に自分でコントロールしてるわけじゃない。

 ガキの時に一回だけ爆発寸前まできたけれど、それもほっときゃ自然に治るだろうと俺は思っていた。けど案外周りは過保護だったようで、結局蝶湖の希望が通りやりたいことをやり通した。

 そういやあと、ふと思い出す。


「お前が可愛がってた、はるとってヤツ、天道って名前じゃなかったっけ?」


 また無視をする。ビンゴかよ。


 コイツよりいっこ下のはるとは、負けん気が強く、自分より後に入ってきたくせにあっという間に剣道が強くなった蝶湖(こげつ)にやたら懐いていたっけ。

 確か、その道場に通うのをあっさりと辞めて、完璧な蝶湖になり始めたあたりで、なんかあったような気もする。

 それが、うららちゃんと関係あるのかないのかは知らなかったが……

 まあ、あったんだろうな。


 うららちゃんが絡んだ時の執着がハンパないのは、その時からかと思うと、ちょっとそのしぶとさに拍手を送りたくなる。

 あの、他人はどうでもいいと切って捨ててた蝶湖が、少しは成長してんのかね?


 だけど、その固執も度が過ぎるとあんまり良いことは起こらない。


「あんなあ、そろそろお前も練習しに馬場へ来いよ。いくら普通に乗れるからって、油断してると負けちゃうぞっ」


 俺にしたら最大限の優しさを込めて言ってやったが、まだ無視を続ける。っていうか、さっきよりも酷い気がするわ。


「うららちゃんだって、もう怒ってないし。なあ」


 おっと、ピクッと動いた。でももう一声ってとこだな。

 怒ってない、ホント。むしろ気にしてる。けどお前が近づかなくなってからさあ、


「なんかな、部活であの二人にちょっかいかけ始めてるヤツらがいるんだけど……」


「はあっ!?初、お前何やってんの?」


 うわっ、地が出た!ホント久々に湖月が出てきた。何年ぶりだ?

 これ、面白いけど確かに結構ヤバいかも。そりゃあ朔も満も気にするだろ。


「初っ!」


 どういうことだと、視線だけで問い詰める。だから、コイツは王様だって言うんだよ。


「や、男どもはアレだよ。普段から部に出てくるヤツらは遠巻きに見てるだけだから気にすんな」


 チッ。あ、舌打ちしたよ、コイツ。


「見るだけでも気にくわない」


 嫉妬か。


 何これ、ヤバすぎる。おかしいだろーよ、こんなの。完全無欠の蝶湖様どこいった?

 じゃあ誰がちょっかいかけてるんだと言わんばかりに首をクイっと動かして続きを促す。口で言え、口で!


「いや、さあ。男じゃなくって……」

「女か」


 うん。まあ、そう。


 っ、はぁあ。と大きくため息をついた。


「なんで、うららが、他の女たちから余計な手出しをされなきゃいけないんだ?」


 そこは二人って言ってやれよ。雫ちゃんどこいっちゃったんだ。


 けど、そりゃあ、やっぱり……


「俺のせい、かな……?」


 スパーン!とめっちゃいい音が響いた。俺の頭に。蝶湖の平手がっ!


「痛っ!お、ちょいっ!止めて、バカになる!」


「安心しろ、お前は生まれたときから大バカだ」


 なんなの、コイツ。だって仕方がねーじゃん。



 中等部から入部可能ってなってるけど馬術部に入れるのは馬術競技の成績を残してる生徒か、家の名がちょっとばっかり知れたヤツらだけだ。

 そんな名前だけのヤツらでも大体は馬に乗れる。だから、例え幽霊部員と言えど部に名前を残しといたんだけど、も


「そん中でも、特に満や俺たちに粉をかけてくるヤツらがいただろ?」

「そんなのは山ほどいただろう。今更だ」

「あー、もう。中でも五月蠅いのいたじゃん。二年の服部ってさ、取り巻き侍らせてたの、いたろ?あれがねえ」


 横目で蝶湖が俺を睨み、テーブルを指で叩く。


「俺が二人を手取り足取り教えたり、満たちが様子をみにきたりすんのが気に入らねーんだとさ」


「手取り足取りってふざけんな!」


 えーっ、そっち!?


 折角うららちゃんの危機を教えにきたのに話にならない。なんてこった。



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