第80話:女神以外にも意外といろいろな存在に守られていた場合
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なんと80話に到達。
長い道のりでしたが、連続更新だとけっこうなペースですよね。
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6月中の更新は17時です。
7月からは0時更新にしますので、ご注意願います。
異変だ。
やれやれ。面倒な。
スクリーンに映る光点の動きを見て、これは異変だと感じたおれは、奥から木剣を取り出し、腰に差した。あまりにも、多くの光点が神殿へと集まっていたのだ。しかも、そのうちのひとつは男爵で、ほとんどの光点は敵対的な赤の光だった。
木剣を用意したおれを見たクレアも、何かあったと察して立ち上がり、治療のために並んで待っていた数人の住民をかばうように立った。
治療が中断されるという突然の事態に驚いた人たちは、クレアとおれに何かを言おうとしたのだが、おれたちの雰囲気に気圧されて、そのまま口をつぐんだ。
礼拝堂が沈黙に満たされた。
一瞬の静寂。
次の瞬間、静寂を打ち破るかのように、ぞろぞろと人間が入ってきた。
男爵と、兵士たちだ。それと・・・。
「あれ? あいつら、どこかで・・・」
「スグル、知り合いがいますか?」
「いや、あいつは確かナルカン氏族の・・・」
セントラエスは覚えていないらしい。
服が、羊毛から作られた服だ。今回、服装で見分けることの重要性がいろいろ分かった。
まあ、服装に限らずだけれど。それに、おれには記憶スキルがある。本気で思い出そうとすれば、すぐに・・・。
そう思っていたら、何かを叫びながら、その男が駆け寄ってきた。
「うおおおおっ、殺してや・・・」
危ない奴だな。
おれは木剣を振るって、そいつの足を折ると同時に、そいつがナルカン氏族の一員で、加えてエイムの兄で、いつだったか、ライムにぼこぼこにされた奴だったなと、思い出していた。
男は、足を折られた結果、床に倒れて、転がった。
ここの礼拝堂はただの広いスペースで、机とか、いすとかがある訳ではない。まあ、祈りを捧げるポーズが土下座にしか見えないのは何とも言えないのだけれど。
確か、こいつの名前は・・・ナイズ、だったはず。
「ぐああっ、この、殺してっ、やるっ」
「うるさいな」
そう思ったので、木剣を二度振り、腕を一本と鎖骨を折った。
ナイズは気絶して、その場で沈黙した。
適度な骨折の痛みは、うまく気絶させられるので重宝している。
さて、ここまでなら、ナイズのおれに対する個人的な恨み、ということで終わりになるのだけれど、どうだろうか?
おれは男爵と向き合った。
ただし、互いの距離は武器が届かない位置、だ。
「いきなり、なんだ、これは。失礼な奴を連れてきたもんだな、男爵」
「オーバ、そなたは・・・」
男爵が何かを言おうとして、兵士の一人がそれを遮る。
その動きが気になったので、よく見ると、これまた、見たことのある兵士だった。いや、兵士だということは分かっていたが、その時は確か、商人のフリをしていたな。
虹池から流れる小川沿いで会った、行商人に偽装した兵士長だ。生きていたのか。
「ガイズ、あの男に、間違いないか」
「ああ、あれは大森林の、オオバ。大森林の村の長だ」
「そうか」
・・・あれは、エイムの父親で、ガイズだな。
草原遊牧民族語で、そのやりとりをした後、兵士長は男爵を見て、スレイン王国語で話した。「スィフトゥ男爵。間違いありません。ガイズはあの男が大森林のオーバだと証言しています。私が大草原で出会ったのも、この男で、やはり大森林の者であるかと。その時にも、あの赤い髪の女が一緒にいました」
「・・・そうか」
男爵は重々しくうなずいていた。
兵士長が前に進み出て、銅剣を抜き、おれに突き付けるかのようにまっすぐに構えた。後ろにいた兵士たちも、おれとクレアを囲むように展開し、抜剣していた。
正直なところ、この状況で、剣を突きつけられる理由が思い浮かばない。
おれが、大森林のオーバだったとして、それが剣を突きつけられ、命を狙われる理由になるとは思えない。いったい、どこがこじれてしまったのだろうか。
「終わったな、オオバ。辺境都市までわざわざ死ににくるとは愚かな奴」
ガイズがにやり、と笑って言った。まあ、この場でおれの前には出て来ないだけの賢さは身に付いているらしい。息子よりは頭が回るようだ。
ガイズからは、どうやら深く恨まれているらしい。これで、命を狙われる理由のひとつは分かった。
・・・ナルカン氏族から裏切り者が出たと聞いてはいたけれど、ガイズとナイズだったのか。エイムも大草原に出たメンバーに入っていたはず。嫌な思いをしただろうな。
おれは遠くにいるだろうエイムのことをちょっとだけ心配した。
・・・まあ、エイムならすぐに気持ちを切り替えて、親子や兄妹だという関係をばっさり切り捨ててしまうんだろうけれどね。リイムとノイハをくっつけようと画策した時みたいに。
亡くなった英傑ニイムの薫陶を受けて育ち、政治的なセンスが一番いいのがエイムだ。大草原に残っていたら、ドウラの相談役として活躍していたことだろう。おかげでうちの村は助かるけれど。
「大草原から辺境都市に売られる子どもたちをかすめ取った大森林の長だな。誰にも気付かれずにこのアルフィに潜り込み、ここまでよく隠れ通したものだ。大人しく捕まれば命は助けるが、どうする?」
この兵士長の言い分はどうだろうか。
そもそも、たかがレベル4で、おれに何かできるとでも思っているのか。その部下の兵士たちも、似たり寄ったりか、それ以下だから、何人で囲んでも、おれとクレアにとっては脅威になどならない。
そして、言ってることが、おかしい。おれからすると、言いがかりでしかない。
ま、親切に草原遊牧民族語を使ってくれているみたいだけれど。
こっちはスレイン王国語で言葉を返すとしよう。
「こっちにはっきりと剣を向けておいて、後で命乞いとか、絶対にするなよ、行商人のフリをしていた兵士長さん。しかも、言いがかりにもほどがあるしな。大草原の氏族が売りに出す口減らしの子どもたちを辺境都市で引き取りたいなら、おれたちよりもいい物と交換すればいいだけだろう? おれたちが引き受けられたってことは、おれたちの方が辺境都市よりもいい物と交換しただけだ。安い代償しか用意できないくせに、自分たちが譲ってもらえないからといって、かすめ取ったなどと言うのは、恥知らずの一言だな」
「なっ・・・」
「しかも、おれたちが誰にも気付かれずにアルフィに潜り込んだ、だと? 笑わせるなよ? おれたちは堂々と姿を見せてこのアルフィに入ったし、ここの神殿を使う許可は男爵本人が出したものだ。それに、おれたちは隠れていたことなんか一度もないぞ。誰に隠すこともなく、堂々とここで暮らしてたって、はっきりしてるからこそ、おまえがおれたちを見つけられたんだろうが」
「くっ、よそ者のくせに・・・」
「よそ者だから、なんだ? お前は馬鹿か、兵士長。おれが辺境都市に何かしたのか? 何もしてないだろうに。それなのに、言いがかりを付けてきて、それでおれに大人しく捕まれだと? 捕まえたいのなら、始めから分かりやすく力ずくで来い」
「ぐっ・・・」
兵士長が怒りで顔を赤くする。
さて、これで兵士長は言い負かした。
あとは、和解の方向に・・・。
その次の瞬間、神殿の外から大声が響いた。
「オーバの兄貴っっ! 無事っすかっっ! 今、助けるっすっっ!」
フィナスンの声だ。
スクリーンで確認すると、20を超える青い光点、味方の色の光点が増えて、外の兵士たちと戦い始めている。フィナスンとその手下たちが暴れているらしい。
あいつら、こんなに堂々と男爵に敵対して、大丈夫なんだろうか?
これって、反逆になるんじゃないのか?
味方になってくれる気持ちは嬉しいけれど、あとあとまずいんじゃないのかなあ・・・。
怒号や悲鳴が外から聞こえてくる。
戦端は既に開かれているらしい。
・・・敵対という既成事実ができてしまった。
和解の方向性がどこかへ行ってしまった。
フィナスンは親切心や忠誠心みたいなもので、おれを助けようとしたんだろうけれど、これじゃ、ガイズや兵士長の思うつぼってところかもしれない。
「フィナスンか・・・」
男爵がつぶやいたが、フィナスンについては、兵士長は何も反応しない。そこではなく、戦端が開かれたという事実、その一点に意識があるようだ。兵士長が怒りを込めて叫ぶ。
「外に別働隊を用意していたか! 正体を現したな!」
「別働隊とか、知らないよ、そんなのは。もう、どうでもいいから、とっととかかってこい。馬鹿と話してもキリがない」
「くそっ、口ばかり達者な奴め! 男爵!」
「・・・待て、ロウェン」
男爵が兵士長を止めた。「オーバ、そなたは王都の者ではないのか?」
まだ言うのか、このおっさんは。
最初っから、一度たりとも、王都の者だなんて、おれが言ったことはないだろうに。
人の話を聞く気があるのか、まったく。
「いい加減にしろ、男爵。何回言わせるんだ。王都のことなど、おれには分からない。はっきりと、そう言っただろうが」
「そうか・・・では、そなたは、大森林の村長なのだな?」
「ああ、そうだ。おれは、大森林の村の長を務めてるぞ。だからどうした?」
「・・・そ、うか」
男爵が口をつぐむ。
おれには嘘をつく必要がない。男爵が知らなかっただけだし、聞かれなかったから答えなかっただけのことだ。ま、わざわざ教える気もなかったけれどね。嘘とは、ちょっと違う・・・言い訳だけれど。
「おれが大森林の村の長だと、どうするんだ、男爵?」
「今、このアルフィを東西で挟み撃ちにされる訳にはいかん。辺境伯の軍勢だけでも、苦しいのだ。大草原側まで狙われたら、ここは守れん」
「それで?」
「なぜ、だました?」
「だました? おれが、いつ? だました覚えはないな?」
「そなたが王都の者で、最後の最後には辺境伯との間に入って仲裁してもらえると、そう考えて、辺境伯と戦ったのだ。そなたが王都の者でないなら、王都の仲裁は受けられぬ。辺境伯とは最後までぶつかるしかない」
「おれが王都を通して仲裁するだって? 勝手な想像をふくらませて、それが違うとなったら、おれの責任になるのか? そもそも、仲裁してもらう前提で戦うのなら、始めから、辺境伯の要求をのめば良かったのに、断って事態を悪化させたのは自分だろう。それに、おれは最初から王都とは何の関係もないと言ってきたぞ。勝手に勘違いをしたくせに、おれの責任なのか? ふざけるなよ」
「もういいでしょう、男爵。裏切りの代償は身体で払ってもらえばいい」
兵士長が男爵を腕で押さえるようにしながら、兵士たちに叫んだ。「かかれ!」
だました覚えはないのだけれど、男爵の方にはだまされた覚えがあるらしい。互いに理解を深め合う時間が足りなかったのだろう・・・なんて、そりゃ、原因はおれが本当のことを話さなかったってところなのだろうと分かってはいる。いや、本当のことを話していたけれど、わざわざ教えなかった秘密があったということか。正直なところ、どうでもいい。辺境都市の支配者が男爵のままだろうと、辺境伯に変わろうと、その時の支配者とおれは交渉するだけだ。
神殿の外だけでなく、ようやく、神殿の中でも事態は動き出した。
決して、望んだ形ではない。
それだけは、分かってもらいたいところだ。
おれは、どんなことでも暴力で解決するような人間ではない・・・はずだ。今から何人も叩きのめしていくのだけれど。
さて、と。
戦況は、一方的、と言っていいのだろうか?
人数差からすれば、その一方的は逆になるはずなのだけれど。
逃げ惑う怪我人、つまり治療を受けにきた住民たちに襲い掛かる兵士たち。兵士のくせに、自分たちが守るべき対象を何だと思っているのやら。まあ、抵抗せずに降伏したら、何もしないようだけれど。
残念な話だ。
それで、クレアを怒らせてしまった。まあ、クレアの実力には何の問題もない。クレアに襲いかかってくる兵士たちは顔面への一発のパンチで昏倒させられている。一応、殺してはいないらしい。すれすれだと思うけれど。さらに、治療にきていた住民たちを襲っていた兵士は、どんどんクレアが沈黙させていく。
・・・本当に怒ってるな、あれは。
看護師さん的な感じで、治療に来ていた人たちにクレアはとても優しく接していたから、その人たちが襲われたら、そりゃ怒るよなあ。そういうところも、クレアらしくて、笑ってしまう。面倒見がいいんだ、クレアは。
ま、仮に殺したとしても、仕方がない、か。戦闘が始まってしまったのだから、命のやりとりになるのは避けられない。もしもの場合はあきらめてもらおう。
それで、おれはというと。
最初に、兵士長をあっさりと倒した。セリフ付きの重要人物だったのに、すぐに倒してしまった。まあ、それは、後ろで指揮するだけの口だけ兵士長ではなく、相当な武闘派だったということに原因がある。ま、それでもおれたちの相手にならないレベルだけれどね。でも、本人は自信があったらしくて、勇敢にも、一番におれの前へと飛び出してきたのだ。自信満々、堂々と、だ。だから、真っ先に、両腕と片足、さらに鎖骨をへし折って、気絶させた。
そこから先は、やや怯えた表情をしながらかかってくる兵士たちをひたすら打ち倒していった。たいてい、二、三本、骨を折れば気絶して倒れる。
兵士長が倒れたのに、兵士たちは引き下がらない。男爵の前だから、だろうか。
まあ、三人がかりだろうが、四人がかりだろうが、ひらりひらりと舞うおれの服を切ることすらできない、弱い相手の骨を折る簡単な作業中な訳だけれど。
怪我人の治療に使ってた礼拝堂で、どんどん怪我人が量産されていく残念な異常事態。
ひたすら、昏倒する兵士が増えて、かかってくる兵士が減っていく。
あれほど必死に、東の外壁を守っていた兵士たちが、町の中の神殿で次々に倒れていく。城を落とすのなら、中から落とすのがよい、とはよく言ったものだ。さっきの兵士長がどこかの間者だったとしたら、見事なものである。この怪我人の山のせいで、辺境都市アルフィは陥ちることになるだろう。
神殿の礼拝堂は混乱を極めつつあった。
そこに、登場したのはお姫様だ。
「やめてっ! お父様っ! オーバさまが何をしたって言うの?」
奥の部屋から飛び出してきたキュウエンは、おれを擁護し、男爵を非難する。
キュウエンの救援。
・・・失礼。
失言でした。
「キュウエンさま?」
「まさか・・・」
「亡くなられたと・・・」
「いや、生きているという噂も・・・」
兵士たちに動揺が走る。そりゃ、もう、びっくりしている。辺境伯の間者に襲われて、殺されたということで、辺境伯憎し、という兵士たちの怒りにつながっていたのだ。
どうやら神殿内の混乱はさらに加速したらしい。
まあ、動揺して戸惑っているその隙に、一気に五、六人は打ち倒した。
こんなことで動揺するなんて隙だらけだよな。まあ、兵士を100人くらい引き連れてきたんだ。殺される覚悟はしてんだろ。油断する方が悪いし、こっちの手加減で、生きてる分くらいは、マシ、だろう。
「オーバさまっ? もうやめてくださいっ!」
キュウエンが泣きそうな顔で言う・・・いや、涙はもう流れてるか。
いいや、やめない。
やめる理由がない。
女が一人、泣いたからって、戦いが終わる訳じゃない。
こっちとしては、降りかかる火の粉を払っているだけなのだから。仕掛けてきたのはあっち。
おれは、キュウエンを無視し、キュウエンの涙に動揺する兵士たちを次々と倒していく。隙だらけの相手を遠慮なく打ち倒す。
クレアが飛び出しそうなキュウエンを押さえて、下がらせる。
キュウエンの叫びは届くが、戦闘は終わらない。叫べば叫ぶほど、兵士の戸惑いが増して、隙が増える。お陰で楽に相手を倒せる。
おれの周りでは骨が折れる音がひたすら響いていた。
さらなる変化は外で起きた。
スクリーンに、新たな光点が三つ、フィナスンたちとは反対側から現れた。これまた、味方を示す青の光だ。しかも、膠着状態にあったフィナスン側とは違い、三つの光点が動くと一気に兵士たちの赤い光点が消えていく。三つの光点は、動きの速さがフィナスンたちとは段違いだ。王都の密偵である巡察使と、その仲間たち。一人ひとりがレベル10という手練れ。並みの兵士たちじゃ、相手になるはずもない。
・・・しかし、あいつら、容赦ないよな。スクリーンから光点が消える、というのは死んだということだ。
この前も、門衛が死ぬのだってお構いなしだったし。
まあ、その方が、この場合、たぶん正しい。
敵を殺して何が悪い、という話だ。
あっという間に、外では30人以上が死んだらしい。一人十殺。怪我人どころか、死人が増えてる。恨むなら、あいつらを恨んでほしいものだ。こっちはまだ手加減をして、殺さずに止めている。
神殿の外では、反対側が総崩れとなり、フィナスン側も、フィナスンたちが確実に優位に立っていく。この状況から考えると、王都の密偵たちはこっちの味方、というか、おれの味方だと考えられる。ま、光点が青いんだから、考えるまでもないか。
しかし、いったいどうして、味方をしてくれるのか? 理由が分からない。こいつらまで、おれを王都の関係者だと勘違いしているのだろうか? その可能性も0じゃないけれど・・・。
ついに、その、すばやい光点が三つ、神殿内に飛び込んできた。
入ってきた瞬間に、入口付近の兵士たちがばたばたと殺されていく。
「なにっ!」
男爵が驚きながらも抜剣する。
三人が神殿内に入った途端、入口付近の兵士たちが次々に切り捨てられたのだ。そりゃ、驚くだろう。ついでに、ガイズも切り捨てられた。残念ながらガイズはやっぱり弱かった。
おれの周りにも、軽く30人を超える兵士たちが倒れているが、骨折していても、気絶していても、別に死んではいない。痛めつけてはいるが、こっちは手加減しているのだ。入口付近にいて、おれに向かってこなかった奴の方が殺されてしまうとは、皮肉なもんだな、と思う。
しかし、あの三人は本当に手加減なし。容赦なし。そして、敵対する者の命に価値なし。
兵士長がレベル4の部隊じゃ、相手にならないのも当然か。
周囲の兵士たちがいなくなり、三人が男爵を取り囲む。
一対一なら、男爵にも勝利の目があっただろう。
しかし、三対一では、さすがに男爵でも厳しい相手だ。
七、八合、銅剣を交えてから、男爵の左肩は切りつけられて血が流れ、銅剣は叩き落され、喉には銅剣が突きつけられていた。むしろ、三対一でよくそこまで切り結べたと思う。実は男爵、かなり強い。
「やめろっ! 殺すなっ!」
おれが慌てて叫ぶと、三人はそこで初めて動きを止めた。
「お父様!」
叫びながらもがくキュウエンをクレアが押さえる。
神殿内での戦闘は、そのまま収束していく。
なんだか、一番いいところをかっさらわれてしまったような気がする。
王都の巡察使、なかなかやるな。
兵士長、男爵、フィナスン、キュウエン、王都の巡察使、これでもか、というくらい、どれだけ一気に姿を見せたんだか。
ここの神殿は待ち合わせ場所なのか? ハチ公前か? アルタ前か? はたまた銀の鈴か?
これでカスタの町のナフティが来たら、今回の関係者が勢揃いのような気がする。いや、ナフティだけが今は仲間外れでさみしい気持ちなのかもしれない。
騒がしかった神殿内は、ようやく静けさを取り戻そうとしていた。
6月中は17時更新。7月からは0時更新に変更します!!
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連続更新、いまだに継続中。明日も17時更新予定です。
よろしくお願いします。
掲載時間は決まっていませんが、活動報告でプチ予告編を掲載中です。
更新後、2~4時間くらいの間に載せています。
もうひとつの拙作、「賢王の絵師」
完結済みですので、安心してお読みください。




