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かわいい女神と異世界転生なんて考えてもみなかった。  作者: 相生蒼尉
第3章 辺境都市編

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75/132

第75話:女神が利用できるものは利用する方針だった場合

感謝感激、総合評価1600pt突破!!!

着実に増えてきているのでとても嬉しいです。

毎日連続更新継続中。六月中は17時更新です。七月から0時更新に変更する予定。

こんなに連続更新ができるとは自分でも思っていませんでした。

お友達に紹介していただけたら嬉しいです。

読者拡大希望です。

評価やブックマークもよろしくお願いします。




 スィフトゥ男爵は、行動を始めると、早かった。

 さすがは優秀な領主である。

 それに、使えるものは何でも使う。もったいない精神が強過ぎる。

 直属である兵士たちはもちろん、神殿を訪れる住民たちには女神をダシに手伝わせ、貧民区の者たちには食事を提供することで働かせ、麻服の者たちにはキュウエンの敵討ちだと訴えて協力させて、どんどん籠城の準備を進めた。

 辺境伯が攻め寄せるであろう東の外壁の高さは3メートル程度だったが、その外側に幅3メートル、深さ5メートルの空堀が掘られた結果、実質的な城壁は8メートルもの高さと同じになっていた。

 もともとの予定は深さ3メートルだったが、辺境都市で暮らす者たちは、都市を守るために懸命に働き、深さが予定以上になったのだ。

 空堀は門の前にも掘り下げられたので、そこには数本の丸太を束ねた橋がかけられていた。

 また、空堀の底にはいくつもの逆茂木が仕掛けられており、不用意に堀に落ちると重症、もしくは戦死、ということになることは明白だった。

 東の外壁の内側には大量の土が積まれた。その土は外壁の上に運ばれ、矢避けとなるように、ところどころに遮蔽用の土壁として固められていた。それに加えて、外壁の上には大量の石が並んでいた。石を集めたら麦がもらえるというので、辺境都市の子どもたちは夢中で石を集めていた。

 辺境都市は断崖絶壁をともなう危険な渓谷の通り道をふさぐように造られた城塞都市である。北は絶壁、南は断崖であり、南北の守備には気を配る必要がない。しかも、辺境伯が攻め寄せるのは東と決まっている。なぜなら、西に広がるのは大草原であり、そこは既にスレイン王国の版図ではないのだ。

 だから、東の外壁の防衛を強化するのは当然の選択であり、強化前と比べて、何倍も強固な防壁として機能することは間違いがなかった。


 神殿は相変わらず、多くの人々が訪れた。

 しかし、開放するのは午前中のみとすることで、午後からの時間をおれとクレアは生み出した。

 キュウエンの存在は秘匿しなければならず、その護衛としてクレアが神殿に残った。クレアは、ケーナやライムのように、一度仲良くなった相手となら、ずっと一緒にいることをのんびり楽しむことができる。竜族の寿命が長いからだろうか?

 それに、クレアには仲良くなった相手のために役立とうとするところがある。これも竜族の習性なのか?

 ケーナのために自生している麦を手に入れてきたり、ライムのためにナルカン氏族のテントを守ったりしたのがそれだ。

 ライムのためにクレアが戦闘行為をしたと聞いて、ドラゴンタクシーを戦いに使ってはならないという青竜王との約束を思い出して、かなりまずいと思ったのだが、特に問題は起こらなかった。見逃してもらえたのか、それとも、クレアはおれが召喚した竜ではないからか、はたまた、クレアの意志で戦ったからなのか、青竜王が介入してこない理由はよく分からない。

 まあ、クレアがいてくれれば、神殿のことは何の心配もいらない。

 おれは工事が進められている東の外壁の門を出て、山地の森へ入る。男爵と面識を得たせいか、尾行してくる見張りは付けられなくなっていた。

 森の中では、高学年セントラエスにくわしく教えてもらいながら、薬草を採集する。

 なぜ、くわしく教わるのかというと、神殿に戻ってから、キュウエンに教えるためだ。キュウエンには薬草と製薬、それに投薬にも、精通してもらわなければならない。セントラエスの教えだと言えば、陶酔した目でキュウエンが薬作りに没頭するので、実はちょっと怖い。

 薬草を中心にさまざまな素材を集めたおれが森から神殿に戻ると、クレアと、キュウエンと、おれの三人で薬をひたすら作る。籠城戦が始まったら、必ず、大量の薬が必要だ。それに、外壁の改修などで、怪我人は増えている。

 薬はあればあるだけ、とにかくたくさん必要だった。

 防衛のための作業で食事が得られる状況になったため、貧民区での炊き出しはとりあえず必要がなくなってしまい、できることが薬作りくらいだったというのも本当のところだ。

 キュウエンはとにかく一生懸命、薬について学んでいる。イズタに刺されたあの日以降、神殿から外に出ていないのは不憫に思うが、死んだとされている以上、勝手なこともできない。

 一方、神殿はスィフトゥ男爵からは都合のよい場所と考えられているようで、夜中に、麦の入った大きな袋がたくさん運び込まれた。兵糧置き場にするつもりらしい。まあ、使っていない部屋は倉庫代わりになっても問題はないし、そもそも、おれたちは男爵から借りている立場だから、文句も言えない。


 ある日の午後、締め切った神殿に一人の男が入ってきた。

 製薬作業の途中だったが、クレアが立ち上がってキュウエンを隠し、キュウエンは慌てて男に背を向ける。死んだことになっているキュウエンを見られるのはまずい。

 おれも、男とクレアたちの間に立った。

「すまないが、お祈りや治療は午前中だけにしてるんだ」

「・・・話が、ある」

 ・・・なんだ?

 何か、おかしい。

 これまでにない、タイプの対応だ。

 会うのは初めてのはずなのだけれど、向こうは、おれのことをまるでよく知っているかのような、短い一言で話す。いや、すでに辺境都市ではかなり有名になってしまったので、おれが相手を知らなくても、あっちがおれを知っているということは当然あるだろう。でも、この感じは・・・どちらかというと、仲間に話しかけるような・・・。

「・・・神殿に用があるのか、おれに用があるのか?」

「おまえだ」

「・・・分かった」

 おれは、男から目を離さないようにしながら、倉庫代わりにされた部屋を指した。「あの部屋だ」

 男はうなずいて、そっちへ移動する。

 とりあえず対人評価で、確認。

 ステータスの職業欄が見えた。

 ・・・なるほど、そういうことか。

 相手が隠していることが分かる力ってのは、やっぱり便利過ぎる。

 しかし、姫さんや男爵、フィナスンたちが探し求めていた相手が、わざわざ、おれをご指名とは。

 おそらく、こんな状況になってしまって、混乱しているのだろう。

 獣脂の入った小皿に火をつけてから、おれは男に続いて倉庫代わりにされた部屋に入る。

 男から見えない位置になったことで、クレアは、キュウエンを奥の部屋に行かせて、そのまま警戒態勢だ。番犬・・・というか、最強の番竜になっている。あれなら、三代目の大怪盗がやってきても、キュウエン姫は救い出せないに違いない。

「その扉、開けたまま」

 男は冷静に言葉を選んでいるように感じる。短く、とにかく短く、ほとんど言葉を発しない。声色や口調など、特徴を掴ませないようにしているのだろうか。

「・・・分かった。なら、立ち位置はこのままだ。おれにも、守りたい者がいるからな」

「かまわん」

「それで、何の話だ?」

「方針変更で、いいんだな?」

 ・・・さて。

 この男が言っている方針変更とは何か。

 この場合、方針が何か分かっていないと、それが変更なのかどうかも、もちろん分からない。

 聞き返したとしても、さっきからこいつは最低限の言葉しか、発していない。

 でも、まあ、思考加速スキルのおかげで、考える時間はある。

 こいつは、おれに向かって、方針変更でいいのか、確認している。

 それは、おれの行動が、こいつが知っている方針とは違う動きだ、ということになるはず。

 今のおれは、完全に男爵の協力者で、辺境都市の防衛を固めるために協力している。そのことについて、それが方針変更という言葉につながるとすれば、男爵に敵対する方針の変更か、もしくは男爵や辺境伯に対する中立の方針の変更か、どちらかだろうか。

 おれにわざわざ確認する、ということは、おれに変更だと言われたら、それに合わせて行動するつもりがある、ということか。

 でも、そもそも、全てがこの男の罠だという可能性も捨て切れない。

 そうすると、不用意な言葉は、危険かもしれない。

 ・・・これまで通りのやり方が結局一番かな。

 あとは、まねをする訳じゃないけれど、言葉は短く、情報は少なく、がいい。

「いいか、よく聞け」

 おれは、そう切り出した。

「おれたちは、王都とは、何の関係も、ない」

 男は、黙って、おれを見つめている。

「だから、おれは、おれが、やりたいように、やる」

 嘘は、ひとかけらも、必要ない。

「その結果、男爵や、辺境伯が、どうなろうと、かまわない」

 ただ、真実のみを、ぶつける。

「おまえに、言えることは、それだけだ」

 方針変更だとか、知らないことは言わない。

 おれの言葉を勝手に受け止めたらいい。

 おれはまっすぐに男を見据えた。

 男もまっすぐにおれを見続けた。

 キュウエンのいる奥への入口に、不動の姿勢で立っているクレアから、咬みついてきそうなくらいの威圧が押し寄せてくる。

 敵に回る者は、容赦しない、というクレアの意志表示だろう。

 沈黙は、男の吐いた息で途切れた。

「分かった」

 男はおれから目を反らす。

 おれは、部屋から出て、男に道を譲った。

 男はおれの前を横切る一瞬だけ、ちらりとおれに目をやったが、何も言わずに、そのまま出口へ向かった。

 本物の王都の密偵である、スレイン王国の巡察使は、それ以降は振り返ることもなく、神殿を出ていった。

 おれの言葉を、どういう風に誤解したのかは、分からない。

 方針変更だと受け止めたのか、受け止めなかったのか。

 おれたちの意味を、おれとクレアと理解したのか、自分とおれと理解したのか。

 どんな解釈をされたとしても、嘘ひとつない内容で、おれは、おれの真実だけを伝えた。

「じゃ、セントラエス、頼んだ」

「・・・分かりました。では、『分身分隊』」

 セントラエスが分身を生み出す。

「どこで、誰と、何を話すか、確認を頼む」

 無言でうなずいたセントラエスの分身は、神殿の壁を抜けていった。

 幸運だったと思いたい。

 一度、その存在を個別に確認したら。

 おれのスキル構成だと、居場所と能力の特定は簡単にできる。

 いるかどうかも分からなかった、いたとしても、どこにいるかも分からなかった王都の密偵が、自分の居場所を自ら教えてくれたのだ。この機会を逃す必要はない。

「周りの連中が勘違いを続けたら、まさか、本物が釣れるとはね。しっかし・・・どいつもこいつも、おれの言うことを信じないってのは、いいんだか、わるいんだか、悩むところだよ・・・」

「結果として、利用できるのですから、いいのではないでしょうか」

 セントラエスの方が冷静で、狡猾なような気がして、おれは少しだけ複雑な気分になった。

 最強の間諜であるセントラエスの働きによって、王都からの密偵は、巡察使の男以外にも、あと二人いることが分かった。辺境伯と男爵の争いは、王都からすると、けっこう重要な案件なのかもしれない。


 夕方には、また別の事件が起こった。

 兄貴、という声が聞こえて、キュウエンを奥に隠し、おれたちは神殿の扉を開く。

 フィナスンが手下と一緒に入ってくる。

 フィナスンの後ろに続いて入ってきた手下たちは、二人がかりで一人の男を捕まえていた。

 ・・・千客万来とは、こういうことなのかもしれない。

 王都の密偵の次は、辺境伯の間者。

 両腕を掴まれ、押さえつけられるように捕まっている男の背後には、ぷかぷか浮いているソリスエルがいた。なんとなく、ソリスエルは気まずそうな顔をしている気がする。

「こいつが、神殿の周りをうろうろして、中に入ろうとしてたっす」

 ああ、やりそうだな、確かに。

 イズタは、辺境伯の密偵なんだから。

 しかも、キュウエン暗殺未遂事件の真犯人だ。

 フィナスンには見えないソリスエルが困ったような顔をしながら、おれにぺこりと頭を下げた。

「兄貴、こいつ、姫さんを刺した犯人じゃないっすかね?」

 ・・・フィナスンの第六感、恐るべし。

「・・・どうしてそう思う?」

「ただのカンっす。ただ、これから夜になるって時に、神殿へ潜り込もうとするのは、あやしいっす。神殿が気になっているというのは、姫さんのことと関係がある気がするっす。姫さん抜きで神殿が気になるとしても、結局は敵方っす」

「なるほどな」

「・・・ちがう。おれ、敵じゃ、ない」

 片言、よりは少しだけマシ、というくらいのスレイン王国語で、イズタは弁明する。

 ・・・まあ、キュウエン暗殺未遂は犯人確定なので、弁明は通用しない。イズタの守護神ソリスエルがはっきりとそう言ったのだから間違いない。神族は基本的に嘘をつかない。

 だからといって、イズタも自分が辺境伯の密偵である、と正直に言う訳にはいかない。

「・・・はなせ。おれ、敵じゃ、ない」

 がつん、とフィナスンがイズタを殴る。

 珍しく、フィナスンがイラついているように見える。

 ひょっとすると、イズタは、言葉がきちんと通じないから、辺境伯との間も、うまくいかなかったのではないだろうか。

 確か、ここに転生してから十年は生きたと聞いている。それにしては、言葉が、うまく使えてない。スキルなしだと、言語の獲得と習熟は、こんなものなんだろうか?

 その結果として、思わずつぶやいたりする時には、日本語が出てしまうのかもしれない。

「いいか、よく聞け。おまえが、辺境伯の間者、密偵だってことは分かっているし、男爵の娘、キュウエン姫を刺したことも分かっている」

「な・・・ちがう。おれ、ちがう」

「よく聞け、と言っている。いいか、おれには全部分かってる。ごまかしても無駄だ」

「おれ、敵じゃ、ない」

「落ち着け。いいか、よく聞けよ」

 フィナスンが首をかしげて、クレアを見る。

「・・・クレアの姉御。オーバの兄貴は、何て言ってるっすか?」

「私も、ほとんど分からないわ。勉強はしたけど、この言葉、難しいのよ」

 共通語スキルをもつクレアでも日本語を獲得できないのは、そもそもこの異世界には「日本語スキル」が存在しないのだろう、と考えている。

「どこの国の言葉っすかね?」

「・・・オーバが女神と話す時の言葉だと聞いたことがあるわ」

「女神さまの言葉っすか・・・」

 フィナスンとクレアのやりとりがある程度伝わったのだろう。イズタが目を見開いた。

 そして、驚きを隠さずに、おれの方を見た。

「よく聞け。落ち着くんだ。冷静に考えれば分かるはずだ」

「・・・久しぶり過ぎて、言葉の意味がはっきり分かったことすら、気づかなかったのか・・・」

「落ち着いたか?」

「・・・日本語だ。落ち着いて、よく聞けば、間違いない。日本語だ」

「落ち着いたら、顔に出さないように努力しろよ。いいか、お前が、辺境伯の間者で、しかも男爵の娘を刺したことは、分かってる」

「・・・おれじゃない」

「いや、犯人はおまえだ。嘘もごまかしもいらない。ただし、分かっているのは、おれだけだ」

「・・・おまえだけ?」

「まだ、そのことを誰にも伝えてないからな」

 イズタは目を細めた。

 本当のことを口に出すか、どうか、悩んでいる表情のような気がする。

 まあ、別に言わなくても、犯人だということに間違いはない。

 守護神である女神ソリスエルがそう言ったのだから。

 女神は、嘘を言わない。

 ・・・屁理屈でうまくごまかすことは、実際にあるのだが。特に、うちのセントラエスは。

「おれが気になってたのは、キュウエンを刺したってことだ。一般的な日本人なら、そんなに簡単に人を刺せない気がするからな。それとも、こっちで十年も暮らせば、それくらいは気にならないのか。まあ、そんなことはフィナスン・・・ああ、おまえを捕まえてる手下たちの親分のことだ・・・フィナスンは証拠なんか必要なくて、たぶんそうだってだけで、おまえを殺すし、この町を守るためなら何でもする奴だからな、言葉と態度に気をつけろよ。まあ、このままじゃ、どのみち殺されるのは間違いない。それに、言葉がろくに通じないんじゃ、言い訳も通じないしな。だったら、助かりたければ、辺境伯を裏切って、男爵に寝返るしかない」

 イズタはおれから視線をそらさない。

 おれの言っていることを聞き漏らさずに、真剣に考えようとしている。

 生き抜くために。

 いい。その目だ。

 何がなんでも、生き残るという目だ。

 ・・・だから、キュウエンを刺せたのかもしれないな。

「・・・寝返るといっても、こっちの世界の支配者ってのは、甘くない。辺境伯がそうだったように、ここの男爵だって、使えない奴は受け入れない。辺境伯を裏切っても、男爵に受け入れてもらえないんじゃ、生き残れない。何かいい方法でもあるのか?」

「おまえの固有スキルだよ。辺境伯に取り入ったのも、そのスキルを使ってやったんだろう? 辺境伯が喜んだのなら、男爵だって喜ぶはずだ」

「・・・なんで、おれのスキルを知ってるんだ?」

「そういうことは聞き流した方が長生きできるぞ、たぶん。まあ、わざわざ教える気はないけれど」

「ふん・・・。このスキルは、使えるようでいて、それほど役に立たないんだ。結局、銅を欲しがる辺境伯の願いに応えられたのは、最初のたった一回だけで、あとはずっと、期待を裏切り続けたからな」

 挑戦的な視線が、イズタからおれに向けられる。「他の誰も持っていない、貴重なスキルだという話だったのに、ここまで役に立たないんじゃ、男爵に寝返って取り入るなんて不可能だ」

 まあ、そう思うよな。

 これまでの十年、かなり苦労したんだろう。

「おまえが、そのスキルを使えないのは、スキルとステータスの関係について、よく知らないからだ」

「スキルとステータスの関係だと?」

「おまえのレベルは2。生命力、精神力、忍耐力は全て最大値が20だ。人族は通常、レベル×10の生命力、精神力、忍耐力を持つ」

「平均20のステータスか」

「そうだ。他の能力値はそうじゃないけれど、今の内容には特に関係ないから説明は省く。スキルの中には、使うと生命力や精神力、忍耐力を消耗するものがある。おまえの固有スキル「鉱脈自在」も、使うと何かが消耗するんだろうな。それで、固有スキルは、その消耗が16ポイントになる」

「16ポイントだって? 20しかないおれには、苦しい数値だな」

「そうだな。ここから先は想像だが、おそらく当たりだと思う。おまえが鉱脈を探し出そうとするときは、それまでの移動中の行動で、生命力や精神力、忍耐力が既に消耗して15ポイント以下になっていたから、肝心な場面で「鉱脈自在」が使えなかったんじゃないかと思う」

「・・・確かに、思い当たることが多い。逆に、一度、銅の鉱脈を見つけたときは、別に疲れるようなことがない時だった」

 やっぱり、当たりか。

 低レベルの転生は、固有スキルが使いにくくて、うまくいかないようだ。

 そういうスキルの選択させ方に問題はあると思うけれど、そこは今の問題じゃない。

 イズタが固有スキルを使えるようにする方法は、ある。

 簡単なことだ。

「おれが、このスキルを使えない限り、男爵に取り入ることはできないだろう? これまでずっと、うまく使えなかったんだ。これからだって、使えないはずだ」

「そのスキルが使えるようになる方法はあるし、それはシンプルなことだ」

「あるのか? どうすればいい?」

「レベルアップして、ステータスを30にすればいい。それだけのことだ」

 おれは、単純な解決策をイズタに示したのだった。




王都の巡察使、転生者のイズタなど、

第三章の重要キャラが続々と。


明日も17時更新予定です。

よろしくお願いします。


今のところ、毎日のように、

活動報告でプチ予告編を掲載中です。

更新後、2~3時間くらいで載せてはいますが、

不定期です。

どこまでできるかはちょっと・・・。


もうひと作品、「賢王の絵師」

完結済みですので、安心してお読みください。

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