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かわいい女神と異世界転生なんて考えてもみなかった。  作者: 相生蒼尉
第2章 大草原編

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第56話:女神が竜に対して丁寧に接する場合

 評価や感想、ブックマークも、ありがとうございます。

 あと、新作を掲載中です。「賢王の絵師」、よろしかったら読んでみてください。



 今回は、オラ、強くなりてえ、です。



 さて。

 前門の赤竜。

 後門の青竜。

 しかも、赤竜さんはお怒りです。

 加えて。

 セントラエムはその力を大きく失った状態。

 ノイハはこの場にいるだけで、ひたすら消耗中。

 おれにも、ほとんどできることはない。

 この場の最適な行動は、何か・・・。

 失敗すれば、死。


「青竜の。何をしに来た」


「赤竜の。何をしておる」


 おや。

 これは、ひょっとすると・・・。

 青い竜は、敵対的では、ないのか?


「知れたこと。侵入者の処分よ」


「知らぬな。ここは、まだ、我らの領域ではなかろう」


「そうすると、止めに来たのだな」


「こちらが止める前に、人族に炎熱息を止められておったが、の」


「・・・ならば、これはすでに争いの場。止めるものでもなかろう」


「ならぬな。人族の領域にて、人族を襲い、人族に反撃されたのであろう? これ以上は、恥」


「・・・人族とはいいながら、こやつは『背負い者』よ。我らの領域に近づくことを見過ごせまい?」


「人族のみならず、神族も敵に回す気よな、赤竜の。たとえ『背負い者』とはいえ、我らの領域ではないところで、打ち滅ぼしてよいなどということはない」


 うん。

 どちらかというと、青い竜は、おれたちに手出しをさせたくないようだ。

 キーワードは、「領域」だな。

 セントラエムと赤竜とのやりとりでも、何度も出てきた。

 青い竜としては、「領域」ではないところで、おれたちに手を出すのは、いけないと考えている。

 赤竜は、ほとんど「領域」の近くで、どうせ「領域」へ入り込むのだから、先にやっちまってもかまわない、と考えている。

 危ないところだ。

 おれたちに手を出すこと自体は、否定されていない。

 おれたちは、どこからが「領域」で、どこまでが「領域」でないか、知らない。

 とりあえず、ここは、「領域」ではない。

 でも、このままだと、そのうち、「領域」とやらに入っていた可能性がある。

 それは、知りませんでした、では済まされないことのようだ。

 今は、二頭の竜がにらみ合って、そのまま動かない。

 だからといって、おれたちが自由に動ける訳ではないけれど。

 どうする?

 口をはさむか?

 ・・・なんか、下等な存在が話しかけるな~、みたいな展開もあり得るよなあ。

 でも、「領域」には立ち入らない、という宣言をする必要もある気がする。

 いや、その「領域」っていうのも、気になるから、絶対に行かない、みたいな話になるのはおもしろくないし。

 あと。

 『背負い者』って、ところか。

 これは、守護神がついている者、という意味で、おそらく間違いない。

 しかも、守護神がついている者は、竜の敵だと、考えられている。

 そんなつもりは一つもないのに、勝手に敵視されている。

 ・・・いや、既に蹴り飛ばしてしまったか。


「我の炎を二度も防いだ『背負い者』だぞ。ここで消しておくべきだ」


「赤竜の。そなたは我らの中で最も索敵範囲が広い。だから、一番に気づいてここへ来た。だが、ここはあくまでも「領域」ではない。相手が、どのような存在だろうと、我らの力は「領域」においてふるうべきものだ。ところかまわず暴れてはならん」


「むう。だが、ほれ、我はその人族から傷つけられたぞ。これでもやり返してはならんというか」


「白竜のが、そなたが先に炎熱息を吐いたと言っておったわ。やられたからやり返しただけの人族を責めるなど、竜王のすることではない。黒竜のも、赤竜のを止めてくれと、我を行かせたのだ。まあ、いくら『背負い者』とはいえ、人族相手に炎熱息を吐いたとは考えもせなんだが・・・」


 どうやら、竜は、あと二頭。白い竜と黒い竜もいるらしい。しかも、白と黒は、青と同じスタンスで赤竜を止めようと考えているらしい。

 ・・・なんか、赤いのは、けんかっ早いタイプなのか?

 索敵範囲が最大で、敵を見つけたら、一番に襲う、みたいな・・・。


「それだけこの『背負い者』は脅威ということよ。どのみち、『竜を倒して王となる』とか言い出して、我らのところへ来るのだ。今、ここで消し去ればよい」


「そういう『背負い者』がこれまでにいなかったとは言わぬが、この者がそうなるという訳ではあるまい」


 ああ、これは、もう。

 話しかけた方がいいよな。

 おれはセントラエムの柔らかさをあきらめて、よっ、と立ち上がる。

 そして、できるだけ大きな声で。

 竜語スキルを意識して叫ぶ。

「おれはっ、竜を倒して王になるつもりはありませんっ!」


「なっ?」


「なにっ?」


 あれ?

 なんで?

 二頭とも、驚いているんだけれど・・・。

 青い竜が、首をひねって、はっきりとおれを見た。

 爬虫類の顔なので、驚いているのかどうか、判断できない、よな。

 驚いている反応に間違いないけれど。

 まあいい。

 驚いて止まってるんだから、勝手に続けよう。

「おれたちにはっ、敵対する意思はありませんっ! さっきのは、殺されそうになったから反撃しただけですっ! もちろんっ! あなたたちを倒して王になるつもりはありませんっ!」


「そなた、竜語が分かるのか・・・」


 おれの言葉に、言葉を返したのは、青い竜の方だ。

 驚いているポイントは、そこか。

 言語の問題ね。

 なるほど。

 竜語を話す人族ってのが、驚きだった訳か。

 こっちとしては、通じない言葉で話しかけたら、余計な混乱につながると思ったんだけれど。

「竜語はスキルとして身につけましたっ!」


「そうか。では、我らの話も、分かっておるのか?」


 青い竜は、じわじわと高度を下げて、おれたちの前に音もなく降り立った。

 続けて、赤竜も降りてきたが、こっちはどしんっと音と衝撃付きでの着地だった。

 近くに来ると、ああ、小竜鳥は、やっぱり小さいんだな、などと、ちょっとだけ現実逃避をした。

 竜は、でかいよ?

 恐竜に翼がついてて、魔法が使えて、しゃべるって・・・。

 驚異的な存在だよな、まったく。

 近くに来てくれたのは、話がしやすくていいのだけれど。

 セントラエムは、おれの左斜め後ろで、そっとおれの左腕に触れている。

 ノイハがまばたきすらできずに固まっている。

 早めに話が終わるといいなあ・・・。

「ここが「領域」ではないので、戦うべきではないという話ですよね」


「そうだ」


「いや、お前たちは「領域」に入るにちがいないから、ここで消し去るという話だったろう」


 青い竜はおれの言葉に同意して、赤竜はおれの言葉にちがうと言う。確かに、赤竜は、赤竜が言ったように話していた。

「そもそも、「領域」って、何でしょうか? それが分からないので、こっちは判断できない」


「ふむ。「領域」が何かを知って、どうするつもりなのだ?」


 青い竜が質問に質問を返す。

 どう考えても、赤竜よりも話ができる。

「簡単にいえば、「領域」とやらに行く必要があれば行くし、行く必要がなければ行かない、という、それだけです。ただ、今は「領域」がどのようなものかも分からないから、行く必要があるのか、ないのか、判断できない、ということです」


「「領域」とは、我らが護る場所よ」


「赤竜の・・・」


「かまわんだろう。「領域」とは、魔の領域。我ら竜族の護る向こう、魔族と魔物が暮らす領域のことよ。魔界、ともいうのう。『背負い者』の人族よ、それで、「領域」へ来るのか、来ないのか」


 赤竜がおもしろそうに、そう言った。

 いや、表情じゃ、分からないんだけれど、そんな感じがした。

 どうやら赤竜は、戦闘でも、対話でも、強引で、やりたい放題らしい。

 分かりやすいのはこっちとしては助かる。

 現状は、こんな感じか?


『 赤竜王があなたに話しかけてきました。

 魔の領域「魔界」へ入りますか?

 はい  いいえ              』


 正直なところ、興味は、ある。

 魔の領域はファンタジー、オブ、ザ、ファンタジーにちがいない。

 行けるものなら、一度は行ってみたい。

 興味はあるけれど、今、すぐに行きたい訳ではない。

 でも、いつか、行かないとも限らない。

 何と答えるべきか、難しいような・・・。

 それと、もう一つ。

 必要なことが、ある。

 これは、アコンの村では叶わない、おれの願い。

 なんとか、ここでの交渉で、実現可能な状態にしたい。

「今のところ、「領域」というところに行くつもりはありません」


「今のところ、か」


「ほれ、青竜の。やはりここで・・・」


「赤竜の・・・いい加減せんか」


「いずれは「領域」へ来るのだろうに・・・」


 なんか、赤竜の方は、おれたちを始末したくて仕方がないみたいだ。

 とにかく『背負い者』ってところも、キーワードらしい。

 それが、守護神である神族への嫌悪か、転生してきた人間への嫌悪かは、分からないけれど。

 本当は一人ひとり、違うはずなんだけれど、そういうものだと、一人ひとりを見て判断できる方が実は少ない。そもそも、その、一人ひとりを見て判断する力も、なかなか身に付かないものだ。おれだって、自分のそういう力に自信はない。

 とりあえず、青い竜のおかげで、このまま赤竜に攻撃されて死ぬ、という状態からは脱しただろうと考えられる。


「今のところ、ではない状態とは、どういうものなのだ?」


 青い竜は目を細めた。

 何かを見極めようとしているのだろう。

 例えば、善悪。

 例えば、真偽。

 ここは、長くなっても、一気に話した方がいいだろう。

「今は、まず、何よりもおれたちの村に帰りたい。さっきの、炎熱息から身を護るために、村を護る女神の力も全て、ここに集めてしまったからです。村のことが心配です。一つはそういう理由で、今のところ、「領域」というところに行く気はありません。

 それから、まだまだおれたちの村は生きていくためにやらなければならないことが多い。食料の確保や防衛、交易など、おれたちの村が、みんなが安心して暮らせるようになるまで、まだまだ数年はかかるはず。だから、そういう面でも、今のところ、行く気はないのです。

 しかし、魔の領域に、おれたちの暮らしを豊かにできる何かがあるというのなら、それを手に入れるためにおれは全力を尽くしたい。だから、そういう何かがあるのなら、いつかは「領域」へ行くかもしれません。

 もう一つ。

 これはお願い、なのですが。

 おれたちの村は、一人ひとりの力を高めようと訓練を続けているのですが、それは、おれ自身の修行にならないのです。だから、おれの修行として、あなたたちに相手にしてほしい、という願いなのですが、そのために、一部とはいえ、「領域」に立ち入りたい、という思いがあります」


「ほほう。やはり『背負い者』よの。今すぐ相手を・・・」


「赤竜の。話の一部だけを都合よく受け入れるのをやめよ。相手の話をよく聞かぬから、白竜のも、黒竜のも、赤竜のには小言しか言わんのだ」


「むう。我が愚かだと言っておるな」


「分かっておるなら、少し黙っておるがいい」


 ・・・赤竜が、すねてるよね?

 そう見える気がするんだけれど?


「今のところ、ということはよく分かった。それに、赤竜のが、そなたらに多大な迷惑をかけたこともよく分かった」


「んなっ?」


「「領域」のこちら側では力をふるわぬ、という我らの約定を簡単に破るから、このようなことになるのだ。仮に「領域」へ入ったとしても、まずは問答というのも約定にはあるのだが・・・」


「我らと話せる者など、おらぬではないか」


「今、目の前におるではないか」


「ぐぬ・・・」


 どうやら、赤竜は、他の竜たちからすると、困った奴らしい。


「そもそも、これらの約定は、赤竜の、そなたのために決められたものではないか」


「むむ・・・」


「今回の約定破り、どう始末をつけるのだ?」


「・・・ぐむう。それならば、もう、そこの『背負い者』から傷つけられたのだ。それでよいではないか」


 ここは。

 青い竜に正確に言っておいた方がいいよな。

「あ、それはですね、一度目の炎熱息を防いだ後に、全力を防いだら見逃してやろうと言って、二度目もなんとか防いだのですが、そこからさらに、これで消し去れると三度目の炎熱息を吐き出そうとしてきたので、やむを得ず反撃に出たのです」


「あ、こら、『背負い者』? 何を・・・」


「・・・ほほう。赤竜の。それは、本当か?」


「ぐ・・・いや、それはだな・・・」


 セントラエムが、おれの前にすっと進み出た。

 竜には見えていないらしいけれど。

 セントラエムが触れていた左腕から温かさが少しずつ失われていく。

「青竜王さま。お話に割り込む無礼をお許しください。私はセントラエム。転生者オオバスグルの守護神です」


「話すがよい。セントラエムとやら」


「話してはならん。神族が出張るところではない」


「赤竜王の。そう言っておる時点で、この者たちの言うことが真実であると思うんだがの・・・」


「ぐぐぐ・・・」


「さあ、話すがよい。神族には偽りは存在せぬと我らも知っておる。安心して申し述べよ」


「はい。赤竜王さまはここにあらわれ、一方的に話し、竜眼を使いました。竜眼に抵抗され、逆に能力を盗み見られると、スグルを脅威とみなし、炎熱息を吐きました」


「その、人族の、スグルとやらは、何も答えなかったのか?」


「はい。返答する間は与えられなかったと認識しております」


「問答はなかった、とな」


「いやいや、その神族と問答したぞ、確かにしたぞ」


「確かに、一度目の炎熱息を防いだ後、私と赤竜王さまは言葉を交わしました。消し去ってやるとおっしゃいましたので、ここはまだ「領域」近くで「領域」ではないと返しましたが、ここまで到れば侵略の意思あり、と。その後、私が初級神ではなく、中級神だと知ると、もう一度防げば見逃してやろうと全力の炎熱息に何度も火炎弾を重ねられ・・・」


「それはまた、赤竜の、そなたらしいことを・・・しかし、その攻撃を防いだとは真に中級神なのだな。そして、見逃すという約束を破り、三度目の炎熱息を吐こうとして、スグルにやられて血を流した、というのか」


「おっしゃる通りです」


「・・・竜族の恥」


「ぐはっ」


「しかし、それは、その、なんだ・・・アランガルドの神聖王を超える力をもつというのか? この、スグルが?」


「竜眼で確認されてはいかがでしょうか」


「・・・いや、やめておこう。こちらがそうすれば、そちらが同じことをするのを許すことになる。先程の話だとすると、我らの竜眼が通じず、逆に我らの力は筒抜けになるのであろう?」


「私自身、スグルからの力読みは、三度に一度、抵抗できません。竜王さま方といえど、防げるものではないかと思います」


「この若さで既にそこまでの強さがあるのか・・・。まあよい。今までの話をまとめると、先手は全て赤竜のであるということだな。さて、赤竜の。この始末、どうつけるつもりかの?」


「・・・くっ、殺せ」


 赤竜が、青い竜やおれたちから顔をそむけて、そう言った。


 えっ?

 そのレベルなの?

 殺されるレベルのことなの?

 そもそも、生命力40000超えをどうやって殺せと?


「これで戻ったら、白竜のと黒竜のに、どれだけいびられることか!」


 そこ?

 そこがポイントなの?

 いびられたくないから殺せと?

 確か、知力500超えてるはずだよね?

 知力って、思考力とは関係ないのかよ?


「あいつらの口の悪さは最悪だぞ。あんな罵詈雑言に耐えられる者などおらん!」


 子どもか・・・。

 子どもなのか、赤竜?

 それぐらい我慢しろよ、赤竜・・・。

 竜王じゃなかったのかよ・・・。


「どのように始末を付けたのかまで、全て合わせて伝えるとしよう。始末の付け方次第で、少しはそこも違いが出るだろうよ。まあ、始末を付けずに戻るのであれば、わしは赤竜のには付き合わぬぞ」


「ぐむむ・・・しかし、どう始末を付けたらよいのだ?」


「まあ、この手の始末の付け方は、やはり「三願」だろうのう」


「それしかないのか・・・」


 赤竜に対して、青竜の面倒見がいいこと。

 ・・・青竜がきて、間に入ってくれて本当に良かった。

 口には出さないけれど、青竜には恩を感じておこう。


 赤竜が、まっすぐにおれと向き合う。


「これまでの非礼を詫び、そなたの願いを三つ、叶えよう。ただし、我にできることしか、叶えられぬが、の」


 ああ、それで、「三願」か。

 七つの球は集めてないけれど、願いを叶えてくれるらしい。

 これ、結果オーライってことか、な?

 まあ、願い事を三つ。

 考えるとしますか。

 ・・・まあ、もう決まっているようなもんだけれど。









 新作「賢王の絵師」を掲載しています。

 よければそちらもご覧下さい。

 そんなに長い話ではないので、かわいい女神よりも先に完結します。


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