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VRマシン・グリフ王国への道  作者: ai56go
グリフ王国
8/68

姉妹との出会

 城に来て、一ヶ月ほどが過ぎた。

 この城の町にも、ゴブリン狩りにもれてきた。


 初日は失敗して散財さんざいしたが、あれにりて、今は、計画的にお金を貯めている。

 まず、宿代が最低三ゴールドは必要だ。風呂あり部屋着付きの宿の場合は四ゴールド

 どうしてもお金がない場合は、ベットも布団もない板張りの待機所で夜を明かせばいい。代金は一人ニシルバーでよい。

 食事は、朝、晩二食でニGあれば十分足りる。とうぜん、初日のような暴飲暴食をしなければの話である。

 だから、一日三匹のゴブリンを倒せば、生活はできる。しかし、武器や防具を買わないといけない。十匹でも二十匹でもゴブリンは狩れるだけ、狩ったほうがいいのは当然とうぜんである。


 ただ、おいそれとはゴブリンに出会えない。収入を得るために、より深い森に入らなければならない。町で聞いた話では、さいわいこの森にはオークはいないようなので、少しは安心できるが……。



 昼なお暗い森の奥。


 俺とラナは、一歩一歩しげみを用心深く進む。

 ゴブリンに見つからないようにしながら、ゴブリンを探している。

 このあたりは、魔物が出没しゅつぼつするため、町人まちびとが近づくことは、まずない。

 多くの冒険者がこの森で狩りをしているだろうが、この広い森のなかでは、他の冒険者と合うことは、そうそうない。


   -----


 太陽が西に傾き、城の閉門時刻が気になりだしたころ。


「あわわわわ」

 冒険者というには、おさな無防備むぼうびな軽装の少女が、草むらにしゃがみこみ、声も出せないほどおびえている。少女の目線の先には、ゴブリンが、いつ襲いかかって来てもおかしくない獲物えもの身構みがまえで、少女をにらんでいる。


「ねえ、みて、ほらあそこ。 ゴブリン!」

 ラナがゆびす。

 俺もゴブリンを目視もくしした。

 そのゴブリンは、獲物を狙っているようだ、目線を一点に集中させて慎重しんちょうに前進している。

 こちらには気づいていないのだろう。かっこうの獲物だとラナはこっそりゴブリンに近づく。


 ゴブリンの獲物が少女と知ったラナは、すかさず呪縛じゅばく魔法をとなえた。

 すぐさまゴブリンは異変に気づき、周りを警戒けいかいする。ラナを見つけると持っていた石オノをラナへ向かって投げた。

「あぶない」

 目を魔法詠唱まほうえいしょうを優先するラナは防御がおろそかになっている。俺はラナの上におおいかぶさり、石オノを間一髪のところでかわした。


 ゴブリンは仲間がいたのだと勘違いし、森深くへ逃げ去って行く。


「ラナ、大丈夫か?」

「コウヘイは? あ、さっきの女の子は?」

 二人が無事とわかると、さっきの少女の安否あんぴが気になる。ラナを残し、草むらをかき分け少女のもとに、

 俺はけつけた。


 恐怖におびえた目をしているが、目立った外傷はないようにみえる。

 大丈夫?と声をかけようとした瞬間。

 少女はしだいに大粒の涙をこぼし、顔面蒼白だった顔をゆがませて、大きな声で泣き出した。

「う、う、わーーーーーん」

「お、おい」

 よほどこわかったのだろう。

 俺は困り果てた。オロオロとしながら、っ立ていることしかできなかった。


「このものがァー」

 そう声を張り上げる女剣士が草薮くさやぶから突如とつじょあらわれる。


『えっ?』とは思ったが、今の状況を理解した。

『草むらにしゃがみ込み泣き叫ぶ少女の前に、短剣片手に立っていれば、それは暴漢そのものだ』と。


 女剣士が、剣を振り上げ、俺に向かって振り下ろす。

『え?』

 まさか襲ってくるとは考えていなかった、無警戒むけいかいだった。とっさに短剣を両手で持ち上げ、短剣のツバで、女剣士の一刀いっとうを受け止める。


『軽い』

 予想外の力だった。

 よく見ると、分厚く大きい剣とは不釣り合いな細い腕、色白いろじろの肌にひんが漂う容姿、女剣士をするのは不似合ふにあいいな体型である。

 目を吊り上げ、憎悪むき出しのその女剣士に、

「え、いや、ちがう。ちがうよ」

 俺は勘違いだと、言葉足らずに説明するが、話を聞こうとはしない。

 戦いたくはないが……、

「違うの。 この人は私を助けてくれたの」

 少女が、女剣士の腰にしがみつき、必死に止めようと後ろに引っ張る。

 俺をにらむ女剣士は、剣の力をゆるめる。


 俺に攻撃する意志が無いことを理解すると、

 中腰になって少女の目線に合わせた。

「大丈夫?どこも怪我けがしてない?」

 少女の手や足、背中をくまなくさすってたしかめる。

「うん、大丈夫」

 ケガのないことにホッとすると、今度は、おこり出す。

「危ないから、はぐれないように、すこし距離をあけてついてきなさいって、あれほど言ったでしょ。どうして約束が守れないの」

 目をげ、口調くちょうがしょうしょう乱暴になる。

 少女はもじもじするばかりで、答えようとしない。

「なんで、はぐれるんの」

 大きな声を出して詰問きつもんする。しかし、俺に襲いかかったいかりとは別人のようにやさしいおこり方だ。


 少女は、

「おしっこ!」

 と赤面した顔で、大声をあげた。

「ば、ばか、大きな声でなんてこというの、はしたない」

 俺の顔を一瞬見て女剣士も赤面して、少女をしかった。

 女剣士は、しばらく少女を抱きしめて、無事だったことを心から喜んでいるようだった。


 そのあと、女剣士は俺の前で両膝りょうひざを土につけ、ひざまずき、祈るようにしゃした。

「妹を助けてくれた恩人に、勘違いとはいえ、侮辱ぶじょくし、その上、剣を向け殺害しようとした罪をどうぞお許しください」と謝罪をべた。

 丁重ていちょうに謝罪する女剣士に、慣れない雰囲気を感じ、

 「いや、別に……、いいよ」

 と、気まずそうにしか返事が返せない。


 女剣士は、黙ったまま動こうとはしない。

 を胸元で組み、こうべれている。

「別にいいよ。気にしてないから」

 再び、ごく自然な、俺なりのゆるしの言葉を口にした。


 そのつもりだったが、

寛大かんだい配慮はいりょをもって、侮辱した罪、殺害しようとした罪をどうか、お許しください」

 と、同じセリフを口にする。

 女剣士の行動が理解できない。

 俺は、女剣士を見ていることしかできなかった。

 それを見ていた少女も、女剣士の横に並んでひざまずき、「お許しください」と、言う。

「だから、許すって言ってるだろ。やめてくれよ」

 心の中では、『俺が意地の悪いことをしているみたいじゃないか』と、二人の行動が悪意あくいにも感じだした。

 しばらく沈黙がつづき、再び

「「侮辱した罪、殺害しようとした罪を、お許しください」」

 と、ふたりして口にする。


 どう見ても、この女剣士に悪気わるぎがあるようには見えないのだが、

『俺の許し方が、気に入らないと言いたいのか?』

 許し方がおかしい。と文句もんくをつけられるのも筋違いと不快ふかいに感じ、

「許すから、あとは好きにしてくれ」

 不満な口調で、その場をおざなりに放置ほうちして、歩き出した。

 俺と女剣士のやりとりを見ていたラナは、女剣士を気にしながらも、俺のあとを追う。

「コウヘイちょっと。あの人たち置いていくの?」

 俺も気がかりだが、

「しかたないだろ。許すって言ったのにめないんだから。ほっとけばそのうちめるだろ」

 俺はあゆみをめなかった。

「私ちょっと聞いてくる。ここで待ってて」


 少し離れた場所から草薮くさやぶしに、ラナの行動を見ていた。

 何を話しているかは聞こえないが、時折ときおりラナの笑い声が聞こえる。

『俺の悪口でも言っているのだろうか?』ラナならあり得る。


「分かったわよ」

 そう言いながら、ラナが戻ってきて、女剣士に聞いた話を教えてくれた。

「彼女達、大きな農園に生まれたらしいんだけど、両親が貴族の家にとつがせたいと、教育には熱心だったらしいの。あの謝り方は格上の人への謝り方なんだって」

「貴族かなにかしらないけど、こんな草むらで冒険者に使ったってしかたないだろ」

「彼女なりの最大限の謝罪の仕方なんじゃないかなぁ」

『まぁすじは通る』と心の中で納得なっとくはした。

「それで、儀礼プロトコルっていうのがあるらしくて、そのルールに従わないと行けないみたい」


 なんでも、その儀礼プロトコルのっとった謝罪では、反省と謝罪と、質問に答える意外の言葉は口にしてはいけない。そして謝罪を受ける側も儀礼プロトコルのっとらないといけないらしい。


わずらわしい』



 俺は再び、女剣士と少女の前に姿を現した。二人は、同じ姿勢で、ずっとたようだ。

 少女には、今の姿勢が辛いのだろう。体重を右足、左足へと交互にうつしている。スカートの内で太ももが、ピクピクと痙攣けいれんしているようにも見て取れた。


「「侮辱した罪、殺害しようとした罪を、お許しください」」

 再び同じセリフを口にする。


「俺は、両名が犯した、侮辱した罪、殺害しようとした罪を許す」

 と、ラナに教えてもらった言葉を口にした。

「「このご慈悲じひを神に感謝いたします」」

 そう言い終わると、少女は、おしりを地面につけ、へばりこんだ。

 女剣士はしばらくの間、深々と祈りをささげたのちに、自分の膝に付いた小石を手で払い、そして、少女の膝の小石をやさしく手で払う。


 二人の健気けなげ可憐かれんなしぐさに、

 何一つ悪くないのに罪悪感を覚え、気まずい気持ちになる。


 やるせない気持ちで、ただ、二人を見ていることしかできない。


 そんな俺と、目が合った女剣士は、神妙しんみょうに頭を下げる。

「いやほんと気にしてないから、あはは」と笑顔を作った。


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