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VRマシン・グリフ王国への道  作者: ai56go
グリフ王国
6/68

初陣

「今日は疲れたから、宿で寝ましょ」

 あぐらで座っていたラナは、手をひざにあて立ち上がり、町中まちなかに向かって歩き出す。

「……」

「どうしたの?」

 神妙しんみょうにしている俺を見て、ラナが不思議そうな顔をする。

「さっきはゴメン」

 俺は、昼間のゴブリンのことを謝罪した。

「なにあやまってんの?」

「いや、昼のゴブリンにトドメさせなかったし、ラナ怒らせたから」

「バカじゃないの。そんな細かいこといつまで気にしてるのよ」

 ラナなりの気配りなのか、それとも本当に気にしてなかったのか、

 そんなことを考えながらポカンとなる。

「何してんの、早く来なさい」

「はい」

 今にも怒り出しそうなラナに、返事を返し、ラナの横にならんだ。


 その後、宿に入り、風呂に入り、宿の部屋着に着替え、ベットに入った記憶はある。



「もう出発するから早く着替えて」

 疲れていたのだろう、前後不覚に眠っていたようだ。

 開けてある窓からは、の光が差し込む。ラナはもう服を着替え、出発できる準備が整っている。

「おう」

 爽快そうかいな目覚めだ。俺はベットから飛び出した。

 部屋着を脱ごうとしたが、服の下が裸だったと気づいた。

 よく見るとここはツインルーム、ラナも俺の寝ている間に着替えたのか?

 目が、自然とラナを見てしまった。ラナも、俺が着替えるのを突っ立ったまま見ている。

 減るもんじゃないから別に裸になってもいいんだけど、でも女子の前で裸になるのはマナー違反なんじゃないかなぁと顔を赤くして、どうしようかとモジモジしながら考えをめぐらせていた。

 俺の考えていることに気が付いたのか、ラナから、

「顔洗ってくれば。あとついでにお風呂場で着替えるといいよ」

 とアドバイスがでる。

 俺は面目無めんもくない気持ちで、「はい」と小声で返事をした。



 町は活気に溢れている。

 宿の玄関げんかんを出ると、生き生きと町人が行きう光景が目に映る。

 冒険者、大工、行商人。

 木材をせた荷馬車、作物さくもつを載せた荷馬車。

 歩道に、車道に多くの人がにぎわいを見せている。


「今日は、お城の方に行ってみましょ。きっと冒険者を募集してるわよ」

 そう言いながら、前を歩くラナ。


 途中、屋台やたいで、パンにベーコンやら野菜やらを詰めた朝食を買うことにした。

 ラナが代金を払っている横で、俺は店番みせばんのおばさんに、

「冒険者募集しているとこありませんか?」

 と聞いてみた。

「あなた達、新顔の冒険者? なら、この先に町の紹介所があるから、そこに行くといいわよ」

「城では募集してないんですか?」

「してることはしてると思うけど、資格がないと雇ってくれないわよ」

 そのおばさんの話では、

 ゴーレムの城攻めに遭遇そうぐうして以来、国を挙げて、魔物退治に乗り出している。しかし、その話を知った地方の者が、にわか冒険者となってこの城に集まるようになり、

 玉石混淆ぎょくせきこんこうの中から優秀な冒険者を選ぶのは、骨が折れるということで、今では免許制になっているということらしい。


 俺はお礼を言い、ラナと二人、パンを食べながら、教えてもらった方向に歩いた。

 塩加減がすごくおいしい。そういえば、昨日の朝からなにも食べてなかった気がする。



 おとずれた紹介所では、

 笑顔を振りまく優しそうな若い女性が受付をするのだが、俺達が昨日城に来たばかりの新顔と知ると、

「申し訳ありませんが、今すぐ紹介できる仕事はありません」

 と残念そうな顔で、やんわり紹介を断られた。

 おどろいてラナが聞く。

「クエストとか、ミッションとかあるでしょ?」

「そういうのは、成功報酬ですし、早いもの勝ちの椅子取りゲームみたいなものですから、雇い主やといぬしと冒険者の間で、よくトラブルになりまして、この紹介所では取り扱わないことになっています」

 と、ラナが考えていたような仕事がここには無いことを教えられた。

 残念そうな顔で黙り込んだラナの横で、俺は、

「他に仕事を紹介してくれるところはありませんか? いつ頃、仕事を紹介してもらえますか?」

 と、なんでもいいから仕事が欲しいことをアピールした。


 困った顔をした若い女性は、

「あくまで私の意見ですが」

 と前置まえおきしてから、いろいろとはなしてくれた。

「最近は、雇い主やといぬしに迷惑をかける冒険者が増えたので、新顔の冒険者には、まず仕事は無いですね。城も免許制になってからは新顔の冒険者には仕事を依頼しません」

「こういった町ならクエストがあるはずでしょ?」

 ラナが、再び同じことを聞いた。

「路地裏に行けば、クエストを口利くちききする人がいるみたいですが、同じクエストを多くの冒険者に依頼するから、大抵たいていは、どこかの冒険者にさきされて報酬がもらえないみたいですから、やめておいたほうがいいですよ」

「「……」」

 俺とラナは黙り込んだ。

 とぼとぼと紹介所をあとにしようとすると、

「当分は、森のゴブリンを駆除くじょして、その駆除した数を宝石換金所で記録してはどうですか?」

 と助言をくれた。

 駆除した数は、実力の証明になり、仕事を紹介するうえで有利になると、教えてくれた。


 冒険者といえども、らくして大金を稼ぐ手段がないことを教えられた。

 厳しい世界だと実感させられる。


「とりあえず、森に行ってみましょ」

 町では仕事が無いことを知ると、ラナは明るく振る舞いながら、城門の方へと俺を誘う。


 町は、冒険者で溢れている。中には冒険者というより、ならず者と行ったほうがいいような素行そこうが目につくやからもいる。


 歩きながらラナが世間話せけんばなしを始めた。

「今朝、宿の使用人に聞いたんだけど、ほら、この前にゴーレムに城壁こわされたでしょ。あれから、城は厳重体制げんじゅうたいせいになったんだって。以前はこんなに冒険者いなかったんだけど、いい稼ぎ口があるって、いろいろと冒険者が集まってきて、 ほら、冒険者って自由業でしょ、どこの町から来たかもしれない冒険者が増えて、高い報酬ほうしゅう要求ようきゅうするわりには、いざとなると逃げ出す。そういった冒険者が増えて困っているんだって」


 壊れた城壁付近には、多くの工夫こうふが足場を組んで作業をしている。滑車を使って、大きな石を積み上げている。

 活気ある声が町へと聞こえる。



 城門を出ると周りには畑が広がり、畑の所々(ところどころ)に農場主に雇われたと思われる冒険者が立っている。

 ラナは独り言のように、

「最近は、たまにゴブリンを見かける程度らしいんだけど、それでも城外の畑を荒らされるのは困るから、刈り入れまでの少しの間、冒険者雇ってるんだって」

 と言いながら、眉間みけんに不快感を表し、ある冒険者に目をやっている。

 目線の先には、地べたに座り、木の影に隠れ、朝から酒を飲んでいる冒険者がいた。


 平穏へいおんな毎日なんだろう。その冒険者はたるみきっている。

『こういうやつが冒険者の価値を下げているんだな』

 一瞥いちべつする俺の視界しかいには、そろりそろりとその冒険者に近づくゴブリンが、わずかに見えた。

「おーーい、ゴブリンだ。魔物だ」

 その俺の声に気づいた冒険者は、俺が指差す方に顔を向ける。

 ゴブリンは気づかれたことを知り、冒険者におそいかかる。

 手探りで、剣と盾を探し、身構えるが、不意打ちを食らい防戦一方になる冒険者。

 俺は冒険者の加勢へとける。

 見張り台の男が異変に気づき警鐘けいしょうを打ち鳴らす。

 間隔かんかくをとって警護けいごをしていた他の冒険者も駆ける。


 そのあいだも冒険者は、必死にゴブリンと戦う。

 ゴブリンは、体は小さいが、すばしっこい。冒険者の剣がなかなかかすらない。

 ゴブリンは、するどい歯とつめを持っている。体格差にまかせてつかみ、ねじ伏せようとすれば、鋭い爪で皮膚は切り裂かれ、強力なあごで骨まで噛み砕かれる。見かけによらず手強てごわい。

 十秒ほどの出来事であった。ゴブリンは、素早く森へと逃げ去った。


 その冒険者は、腕に深い切り傷を負い、ふくろはぎにはゴブリンにまれた跡が生々しく残っている。痛そうに顔をゆがめ、手でおさえている。

 仲間が応急手当てをして、町に連れて行く。


 終始しゅうしを見ていた俺とラナ。

 ラナは、何事もなかったように森へと進むが、俺の心境しんきょうは大きく変わった。

「なあ、ラナ。しばらく土方どかたで食いつながないか?」

「はぁー、何言ってんのよ」

「いや、俺この服装だろ」

 自分の着ている服を、指でつまんで見せた。

 薄いぬのでできた服を。

「武器だってこれだし、もう少し装備ととのえてからのほうがいいよ」

 そう言いながら、右手に持って短剣を見せるコウヘイを、ラナは、ジトっとした目で見据みすえ、

「土方なんて安いでしょ。寝て食べるだけのお金しか稼げないわよ。武器買うだけのお金貯めようとしたらおばあちゃんになっちゃう」

 と、俺を相手にせず、森へと歩く。


 さっきの酔っぱらい冒険者の傷を見てしまうと、恐怖心で、森に入りたいとは思わなくなった。

 森の中には、多くのゴブリンがひそんでいるだろう。待ち伏せされてたらどうするんだ。大勢のゴブリンに囲まれ、助けを呼んでも森の中だ。誰も来ない。ここは慎重になるべきだ。


 そう考え、俺は立ち止まった。

 俺のことに気がつき、ラナがこしに手をやり、ため息をつく。

「コウヘイは、やる気がないだけなんだから。実力はあるんだから」

 脳天気に言うラナに、

「あぶないだろ。ケガしたらどうするんだよ」

 真剣に危ないからやめようと説得せっとくする。

「私が治してあげるわよ」

 治癒魔法ちゆまほうには自信ありと得意気な口調で言うが、

 治るケガならいい、魔物を相手にするんだ。死角からゴーレムが巨石きょせきを投げてきて直撃して即死することだってある。

「死んだらどうするんだよ」

「はいはい、私が治してあげるわよ」

 ややあきれた顔つきで、ラナが投げやりにいう。

「うそだ!」

 俺は森に行くのを、かたくなにこばんだ。


「コウヘイの臆病者。私一人で行くわよ」

 あきれていたラナが、とうとうおこりだした。

 ブツブツと独り言をいいながら、大股で、一人森へ歩きだす。

 めようと腕を掴んだが、「はなして!」と強い口調で手を振り払い、森へ進む。

 お前は無鉄砲なだけだ。慎重しんちょうさがたりない。

 と言いたいところだが、このままラナ一人を森に行かせるわけにはいかない。俺も渋々とラナの後を歩きだす。


 随分ずいぶん歩いた。木のえだおおいかぶさるようにえ、辺りは不気味に薄暗い。町の人はここまで来ないのだろう。いつの間にか道は、荷馬車どころか人すら通らない獣道けものみちになっている。


「あ、あそこ」

 ラナがつぶやくように、俺につたえる。

 二百メートルほど離れたところにゴブリンが見えた。

『一匹』

 いや、少し離れたところにあと二匹いる。

 ゴブリンもこっちに気づいているのだろう。俺達のほうゆびしている。


 ゴブリンの方から近づいてくる。

 二対三では、形勢は不利だ。

「逃げよう」

「なにバカなこと言ってるのよ。恰好かっこうの獲物でしょ」

 俺とは正反対に強気なラナ。

 そう言いながらも、俺の前にいたラナは、俺の後ろへと身を移す。

「なに俺の後ろに隠れてんだよ」

「バカねぇ。私の魔法、支援系よ。後ろに下がるのが当然でしょ」

 確かにそうだけど、俺一人でゴブリン三匹とやりあうのか?

 ゴブリンは俺を獲物とみているのだろう。いかついた顔つきで、石オノを身構えて、一歩一歩近づいてくる。

 体格差では、俺の方が有利なのかもれないが、どう考えても勝てる気がしない。

 逃げるようラナを説得するのだが「絶対大丈夫」と言い張り、話がまとまらない、その間もゴブリンは近づいてくる。


 もうこの距離だ。逃げたところで投げた石オノに当たって倒されのがオチだ。

 俺も覚悟を決めた、両手で短剣を構えた。……。が、両手で持つほど重くもない。短剣を右手に持ち直し、前へ突き出す。左手がやけに物淋しい、左手に持つのに丁度ちょうどいい棒きれでも落ちてないかと考えるのだが、じわりじわりと近づくゴブリンから目が離せない。目をらすと、ゴブリンが飛びかかってきそうだ。


 二歩、三歩の間合いまで距離がせばまると、ゴブリンが石オノを振り上げ突進してきた。

 一匹目が振り下ろす石オノをかわし、左手でそのゴブリンの首をつかみ盾代わりにする。二匹目が振り下ろした石オノは、俺の左手のゴブリンに食い込んだ。すかさず二匹目のゴブリンの横腹を短剣で突き刺した。


 致命傷を負った二匹のゴブリンのおもみが、左手にかる。


 左手の力任ちからまかせで後ろへ突き飛ばすと、二匹のゴブリンは勢いよくちゅうい、地面に転げ倒れた。


『軽い』

 ゴブリンってこんなに軽いのか?


 ゴブリンの動きが、コマ送りのように見える。動体視力というのだろうか?


 残りの一匹が「グルグル」とうなりをあげ、威嚇いかくを続ける。

『これなら勝てる』

 俺は心の中でたかをくくった。

 最後のゴブリンが襲ってくる。

 振り下ろした石オノを軽くかわし、鋭い刀光とうこうがゴブリンを切り裂いた。両断とまではいかなかったが致命傷だろう。ゴブリンはうつ伏せに地面へと倒れ込んだ。


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