初めての魔物を食べる
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吟遊詩人の館を飛び出し家へ帰る途中、
後ろからダッシュで追いかけてくる人
がいた。
「カナタよ、ジョブカードを忘れとるぞ!」
後ろから走ってきたのはロッド爺だった。
「あっ、忘れてたよありがとうな
ロッド爺ちゃん」
ジョブカードを受け取りすぐ帰ろうと
するカナタをロッド爺は止めた。
「ちょっと待ってくれ、儂も一緒に家について行くから慌てるんじゃない」
なにやら、ロッド爺はカナタが料理人に
なったお祝いにみんなで隣町に夕食を食べに行こうと言う事だそうだ。
「え、本当に良いのか?」
カナタは不思議そうにロッド爺に言う。
「なーに、心配せんでも大丈夫じゃ」
ロッド爺はポケットから金貨を取り出して見せた。
この世界のお金は、
銅貨1枚、10ルピ
銀貨1枚、100ルピ
金貨1枚、1000ルピ
白金貨1枚、10000ルピとなっている。
白金貨は主に貿易で使うぐらいで
ただの村人は一生に一度見る事すら
ない大金であった。
「わかった、今すぐ家に帰って外に行く支度をするよ」
カナタとロッド爺は走って家に帰った。
「ただいま!!」
家では母さんと兄弟が玄関で待っていた。
しかし、兄弟と言っても血が繋がって
いる訳ではない。
双子の姉 リゼと弟のタルは1年前の魔物の
襲撃で両親を共になくした。そのため、
マリーが引き取って家で生活している。
「おかえり、兄ちゃんは料理人になれたのか?」タルは聞いてくる。
「もちろん、料理人になれたぜ!!」
「あら、やっぱり父さんの血が流れているのね」母さんは笑顔でこっちを見る
「あれ、何でロッド爺ちゃんまで家に来てるの?」リゼは後ろにいるロッド爺
ちゃんに気づいて問いかける。
「ああ、今日は料理人になれたお祝いに隣町で夕食をご馳走してくれるんだよ」
「「本当に!!やったー」」
「こら、やったーじゃないでしょ!
ありがとうございますでしょ」
すぐにマリーから叱られる。これは
いつものお決まりである。
今は隣町の料理屋に来ている。
「ロ、ロッド爺ちゃん、なに頼んでも
いいの?」リゼは店に入ってからずっと
緊張していて、口数がとても少ない。
「ああ、遠慮せず自由に頼んでくれ」
ロッド爺は気前よく何でも頼んで良いと
言ってくれた。
タルとリゼは牛肉100%のハンバーグを
頼み、マリー母さんは白身魚のソテーを
頼んだ。
すると、カナタがロッド爺に質問をした。
「このテールラビットってなんの動物?」
カナタは初めて見る動物の名前に何を
頼んだらいいか分からなかった。
「ああ、それは魔物だよ」
ロッド爺が軽く言った言葉に子供たちは
驚いていた。
「魔物って食べれるんだ!
折角の機会だからテールラビットの香草焼きを食べよう」
カナタをテールラビットの料理を頼んだ。
するとタルが
「兄ちゃん、魔物なんて食べたらお腹
壊しちゃうからやめなよ」
リゼも
「魔物なんかよりハンバーグの方が
絶対美味しいよ!」
タルとリゼは魔物を食べるなんて想像
出来ないだろう。
しかしカナタは、
「いや、俺は料理人になるんだ!
初めての物を食べる良いきっかけだし
テールラビットを食べるよ」
しばらくすると料理が運ばれてきた。
テールラビットの肉はそこらの鶏肉と
変わりなくとても美味しそうだった。
「「「「「いただきます!!」」」」」
五人は料理を食べ始めた。
「な、なんだこれは美味しすぎる!
こんな食べ物は食べたことが無い!!」
カナタはテールラビットの美味しさに
つい声を大きくしてしまった。
「はっは、どうじゃ魔物にも美味しい物はいくらでもおるのじゃよ」
ロッド爺はカナタに魔物の美味しさを
知ってもらえてご満悦な様子。
「あらあら、そんなに美味しかったの?」
母さんもカナタの表情を見て満足だそう。
「ホントかよ兄ちゃん、俺にもくれよ!」
タルはあれだけ魔物を食べるのを拒否していたのに今ではこれだ。
「カナタお兄ちゃん、私にも少しください。」リゼも控えめながら食べたそうだ。
食事は1時間もかからず終わった。
五人の合計は1200ルピ、金貨1枚と
銀貨2枚だった。
「ロッドさん、今日はほんとに
ありがとうございました。」
マリーは店を出てきたロッド爺に
お礼を言っていた。
「いやいや、そんな大した事じゃないよ、まぁカナタよこれからは料理を
もっと覚えて、頑張って店を出せるようになれよ」
「ああ、絶対今日より美味しい料理を
作ってみせるさ!」
「「ロッド爺ちゃん今日はありがと!」」
こうして、カナタの忙しい5歳の誕生日は
終わり、またいつも通りの生活が始まる。
読んでくださった皆さん本当にありがとうございます!!