7話
7話
前日は高校生としてのプライドを粉々に壊され、晴香は一時的に幼児退行をしてしまった。
『はるかちゃん。おっきの時間でちゅよ。』いつものように叔母さんに赤ちゃん扱いされることから始まるが、今日の晴香は様子がちょっと違う。(それもそのはずだが)
『はるかちゃん。おむちゅ濡れてないか見せてね〜。ほーら。あら。濡れちゃってるわねー。やっぱり、はるかちゃんはまだまだ赤ちゃんなのね〜。』と言われた晴香だが、ちっとも恥ずかしそうにしない。それどころか、おむつを交換された時は気持ちよくなったおかげで笑顔さえ見せている。
“あら、はるかちゃん今日は幼児退行してるのかしら?…。好都合だわ。”と心の中でニヤリと笑う叔母さん。
『さあさあ、もう朝ごはんのミルクは出来てまちゅよー。それとも、おっぱいがいいのかしら?(もうでないわよ笑)』
『あら。ミルクがいいのねー。ほーら。ちゅぱちゅぱ吸えるかなー?あら、おてて使えないはるかちゃんでも、ミルクは上手に飲めるのねぇー。』
なんて、聞きもしてない晴香に対して(実はこういうことをされていて無意識のうちに幼児退行してしまったのは誰も知らないが)このような会話を繰り返して朝が過ぎる。すると、段々と晴香自身も一時的な幼児退行が治ってきたので、恥ずかしさを感じるようになる。
『はるかちゃん。今日は早苗いないから叔母さんと二人で遊びましょ?はるかちゃんのために行きたいところ考えておいたのよ。きっとはるかちゃんも喜ぶと思うわ』と、いきなりなので戸惑う晴香だが、
“わたしのために?叔母さんが?うぅー。あんまり外出したくないけど仕方ないわ”
『…。(コクンと頷いて)行きます…。』赤ちゃん扱いしてくる叔母さんに対してどう反応していいのか戸惑いながらも答える。
『あら、本当?叔母さん嬉しいわ。じゃあ、叔母さんが準備してる間、はるかちゃんはお昼寝でもしててね。おねしょしちゃって怒らないからね。』とさりげなく晴香をいじることを忘れない。
そして、20分後。ミルクには弱い催眠効果のある薬を溶かしてあるのでどこでも浅い眠りにつける晴香が部屋の真ん中で寝ている。そして、叔母さんも準備を終えて晴香を起こす。
『はるかちゃん。はるかちゃん。おっきして。おむちゅ取り替えたら、早くお出かけするわよ。』と、おねしょをしていることを決めつけて(実際にしているのだが)そういうので余計晴香は恥ずかしく感じる。が、その通りなので素直におむつを交換して、スカートの後ろからおむつをチラチラ見せながら、車に乗り込む晴香。
30分くらい車で市街地を走ると、大きな建物が見えてきた。そこは、一年中やっている温水プールだった。
『はるかちゃん。見えたわよ。あこそ。ほら、プールって見えるでしょ?はるかちゃん、昔はプール大好きだからちょっと遠くまできて温水プールきちゃったわ。』という。
確かに、プールは好きなのでワクワクしながら(自分がスカートの下に何を履いているかは忘れている)答える
『叔母さん。はるか、プール大好き!』
『そう。喜んでもらえて私も嬉しいわ。』
いざ、プールの受付まで来ると。
『子供1人と、大人1人です。』
『かしこまりました。お子様は完全におむつが取れていますか?もし、取れていなければ、こちらの水遊び用おむつを着用の上、ご利用ください。なお、サイズはs〜スーパーBIGサイズまでとなっております。』晴香のスカートが異様に膨らんでることに気づいた係りの人が聞く
『あら、そう。じゃあ…。スーパーBIGサイズを三枚ください。』そう言って会計をすませると、晴香の反応も見ずに手を引いて更衣室に入っていく。
中では、小さな子が何人かいるが皆水遊び用おむつは履いていなかった。そんな中一回り大きい晴香は…。
『さ、はるかちゃん。今のおむちゅを脱ぎ脱ぎして水遊び用にはきかかえまちょうね。』と、周りにも聞こえる声でわざと幼児に言うような言い方をする。が、当然晴香は小柄とはいえ幼児には見えない。
『いや…。晴香はお漏らししないもん。おむつなんてはかないもん。』と、小声で叔母さんだけに聞こえるように反論するが、
『じゃあ、これは何かしら?』と、今まで履いてきたおむつに指を指す。そこには、我慢しきれずに、車の中でちびらせたおしっこのシミがある。
『普段からおむちゅないとスカートもパンツもビショビショにしちゃう子が、プールの中ではお姉さんになれるわけないでしょ。さ、いうこと聞いてね。』最後は優しく話すことで晴香はついつい叔母さんのペースに飲まれてしまう。さらにいまの晴香では、叔母さんのいうことの方が正しかった。
『…。』渋々了承する晴香。
そんな晴香にはお構いなく、晴香を裸にすると水遊び用おむつを晴香に履かせる。そして、その上から子供用の水着を着せると、お尻だけおむつの部分が膨らんでいるのでおむつしていることが一目瞭然であった。
『さ、できたわよ。じゃあ、晴香ちゃんも着替えたことだし早くお水でぱちゃぱちゃしようね。』と、晴香を抱っこしてプールまで連れて行く。はるかにしてみればこれだけでもとても耐え難いものであった。
晴香を、子供用の浅いプールで遊ばせて(もちろん、いろいろな理由をつけて晴香を半強制的にそこで遊ばせているのだが)それを眺めてニコニコしている叔母さん。その光景は一見、親子の幸せな、そして貴重な時間に見えるかもしれない。しかし、本当のところは、とてもいびつで歪んだ晴香への“愛”である。それは、叔母さんが“早苗にできなかった事を晴香で代わりにしたい”という、ことでもあった。
そのうち、晴香が全身をピクッと震わせた。
晴香は、お漏らしをしてしまったのだった。もちろん、“トイレに行きたい”と思ってからすぐにその場で(オムツの中に)してしまったのだが、それはこれまでの叔母さんの成果と言えるかもしれない。そんな様子を見逃さなかった叔母さんは、
『はるかちゃん。こっちきなさい。』と全てを見通していることを思わせるような口調で晴香を呼ぶ。
『叔母さん…なんですか?』またしても叔母さんにしか聞こえない声でそう聞く。
『はるかちゃん。おトイレいこっか。そろそろちっちでちゃったでしょう?そのままじゃ気持ち悪いもんね。』と言って、晴香を抱っこしてトイレまで連れて行く。そこで、晴香のオムツ替えをついに、プールのトイレでしてしまったのだった。これは、晴香にとっては“自分は、おむつが必要なんだ。自分はおむつなしでは生活できないんだ”と無意識のうちに確信してしまうのだった。
その後も、何度かオムツ替えを外で済まし、大勢の人に“晴香がおむつを当てている”という事実を知られた晴香はついに、完全な幼児退行の道を歩んで行くのだった。次の日からは、段々と赤ちゃんのようになっていった。
こうして、晴香の非日常生活は幕を閉じた。その代わり、“晴香は赤ちゃんのような生活”こそが、日常生活になったのであった。