5話
5話
次の日。前日は完全に高校生としてのプライドを崩された1日であったが、今日はどのような日がまっているのであろうか…。
『晴香ちゃん、そろそろおっきの時間でちゅよ。』
いつものように叔母さんが晴香のことを起こしにくると、これまたいつものようにおむつの濡れ具合を確認して、またしてもいつものように、晴香のプライドをボロボロに崩してしまうところから、今日の1日が始まるのであった。
そんな中、晴香は少しずつこの屈辱でしかない生活に慣れ始めていた。しかし、そんな晴香も今日は新たな屈辱を知ることだろう。
『晴香ちゃん、今日は近くの公園に行こーよ!実はね、今日友達と遊ぶ約束したんだけどね…その時私の家に従姉妹の小学生が来てるって言っちゃったの。そしたら、みんなが見たいって言うから連れてくることになっちゃったの。だから、晴香ちゃんに頼めないかなぁー。って思ったけど、もちろんいいよね!?』と、朝ごはんを三人で食べているときに、半ば強引に晴香を誘う。
『えーと…。ぅん…。私はいいんだけど…でも…やっぱり…。』と、前日のお漏らしを気にしている様子だが、早苗と叔母さんからすれば、ここで断られては困るのであえてそんな気持ちには気づかないように振る舞う。
『晴香ちゃん、行ってきてあげないかしら…?やっぱり、高校生の晴香ちゃんが中学生の女の子に対して小学生のふりするのはちょっと恥ずかしいかもしれないけど…。少しの間だけだし…。私は、ちょうどお昼頃に買い物行かなきゃ行けないの。晴香ちゃんを一人残して買い物に行くのも良くないし、だからと言って買い物に晴香ちゃんを連れて行っても、疲れるだけでしょうから…早苗と遊んで置いてくれると私的には助かるわ。』と叔母さんも早苗に賛同する。
これ以上反対しても仕方ないと思った晴香は『じゃぁ…。私行きます。』と叔母さんに言うと、早苗に対しても『早苗ちゃん、私小学生のふりすればいいんでしょ…?』と聞く。
『うん。晴香ちゃんには小学生のふりしててほしいの。だから…私のことも、早苗お姉ちゃんって呼んでほしいなー。あ、もちろん帰ってきたらいつも通りで大丈夫だから…!』と、さりげなく晴香にお姉ちゃん呼ばわりさせようとする。
『ぅん。じゃあ、その時は早苗お姉ちゃんって呼ぶね。いつから遊びに行くの?』と、“お姉ちゃん”と呼んだ時には頬を赤く染めながらそう聞くと
『えーとね、10:30に公園集合だから…。朝ごはん食べたら支度してすぐに出るようになるかなぁー。あ、私はお昼ご飯も友達と食べる約束なんだけど、晴香ちゃんも行くよね!ママ、晴香ちゃんもお昼食べてきていいよね?』と、勝手に決め付けてそういう。
『そうねぇ…。晴香ちゃん1人で食べるのもかわいそうだし、そうしましょうか。』と叔母さんも言う。
しばらくして、公園に行く準備をし終える。そして、早苗に手を引かれて公園へと歩いていく。早苗の財布には千円札が3枚入れてる他に、晴香の替えのおむつとおしりふき、などが入っている。数十分歩くと公園が見えてくる。そして、数人の中学生の中に一際目立つ二人、バスケのキャプテンをやってるだけあり身長が周りより頭一個分大きい早苗、そしていかにも可愛い格好をした小学生(本当は高校)の晴香が混じっていた。
『この子が、小学生の晴香ちゃんかー。やっぱり、可愛いねー。えーと、今3年生だっけ?』
『それにしても大きいねー。やっぱり早苗と血が繋がってるんだね。とても3年生には見えないよー。私最初は中学1年生くらいに見えたもの。まぁ、早苗のいとこならこれくらいないと納得しないけどね。』などと、他の少女達が口を揃えて晴香の感想をいう。
『ほら、晴香ちゃん。早くお姉さん達にご挨拶して頂戴。みんな、早苗お姉ちゃんのお友達だけど、挨拶もできない悪い子ちゃんとは遊んでくれないってよ。』という。
こくんと頷いた晴香は“なるべく子供っぽく”を意識して(実は、そんなこと意識しなくても晴香の子供っぽさは、天性のものだが)挨拶をすることにした。
『こんにちは、はるかです。きょうは、おねえちゃんたちにめいわくかけるかもしれないけど、なかよくしてください。』と、小学3年生よりももっと幼い感じで挨拶をしてしまった晴香。
しかし、みんなの反応は意外にも
『可愛いーー。今時の小学生ってみんな口も悪いけど、晴香ちゃんは真面目そうなのね。』などと、受けは良かったのである。しかし、裏を返せばそれだけ信じられてしまったということだ。それは、はるかにとっては、この事実が言いようもなく屈辱なことだったのである。