夢の中の少女の秘密
目を開けると目の前にはテーブルがあって、シルクが向かい側に座って
いた。いつもみている夢の光景だ。いつもと違うとすれば、シルクの顔
が悲しげに曇っている事だろう。
「・・・・どうしたんだい?」
目の前に座っているシルクが少しの刺激で消えてしまいそうな感じがし
て、出来るだけ優しく声を掛ける。
「・・・・シンイチ様・・」
びくりと肩を震わせて恐る恐るこちらをみてくる。まるで、怒られてい
る子供の様な仕草だった。
「・・すみません・・まさか・・こう言う事になるとは思ってもいなか
ったのです・・」
弱弱しく頭を下げるシルクにいつもの元気の姿は無かった。そもそも、
なんでシルクがいきなり俺に謝っているのかが分からない。
「謝る前に説明をしてくれないか?何が何だか訳が分からないんだ」
いつまでも頭を上げないシルクの頭をポンポンっと軽く叩く。
「・・はい・・シンイチ様がここに来る事になった原因は私にあるので
す」
シルクの言葉を聞いて思い出した。生徒会室に向かおうとした瞬間に急
激な胸の痛みを感じて倒れてしまった事を。
「・・あぁ・・今俺が気絶している事は分かった。けど、それがどうし
てシルクの所為になるんだ」
確かに、いつもなら夜の夢の中でしか会えない(昼寝などした時には一
度も会った事がない)筈のシルクと会っている事に不思議な感じはある
がそれがどうしてシルクの所為になるのかが分からない。
「前にもご説明したように、ここは正確には夢の中ではありません。剣
の精神が眠る場所を私とシンイチ様で共有している場所です。一つの剣
を二人で共有していたのでそこまで負担がなかったのですが、私の所為
でシンイチ様の方に急激に負担が掛かったので、シンイチ様は倒れてし
まったのです」
「それは・・・大丈夫なのか?」
正直、シルクが言っている事は理解できない。でも、最初にこれだけは
聞かないといけない。
「はい、心配はありません。さっきは急な事だったので対応ができませ
んでしたが、今は余裕を持って制御する事ができています。ですから、
先程の様にはならないと思います」
シルクは、安心させるように自信を持って言う。確かに、さっきみたい
な痛みが急に来ない事は有り難い。でも
「それは、ありがとう。でも、そうじゃない。俺の事なんかは置いとい
て良い。俺が聞きたいのは、こういう状況になっているシルクの方は問
題ないのかと聞きたいんだ」
この空間を作っている剣の共有部分。剣とは一体何なのか?とか詳しく
聞いたことはないが、その空間を維持するためには二人いれば大丈夫な
ものだった。でも、何らかの原因で二人ではなく一人、つまり俺一人に
負荷が掛かってしまったという。という事は、シルクが剣の共有を出来
なくなったという事だ。考えられる事は、シルクの身体に何かしらの事
があったという事だが・・・
「それは・・・大丈夫です」
シルクは、完璧な笑顔を向けてくる。が、他の人が見れば騙されるかも
しれない完璧な笑顔だけど・・・俺には必死に何かを隠そうとしている
様に見える。
「本当に?」
「本当です」
もう一度しっかりと目を見て確認するが、シルクの目は揺らぎがない。
何かの決意を感じられた。
「・・・正直、シルクが何かを隠しているのは分かっているよ。何年一
緒にいると思っているんだ。でも、俺からはこれ以上は聞かない。シル
クから言ってくれるまで待つよ。それでいいかい?でも、よっぽどの事
があった時は、無理やりでも聞くからね」
シルクが何かを隠しているという事は確実だ。それも、自分の本当の身
体の事で。でも、それと同時に俺には教えてくれないという事も分かっ
てしまった。だから、もう俺からは何も言う事は出来ない。シルクは馬
鹿じゃない。いろいろ考えての判断したのだから、その判断を信じよう
と思った。
「ありがとうございます。正直私も迷っています。これからどうするべ
きか・・・ですから、少しだけ時間を下さい」
少しほっとした後、本当の笑顔を向けてくれた。
その笑顔に少し見惚れていたら、空間がブレ始めた。
「どうやら、シンイチ様が目覚めるみたいですね」
「・・・そうか」
このブレは今までは、どちらかの目覚める合図だった。自分達も実際に
起きてみるまで分からなかった。でも、シルクはすぐに俺の目覚めだと
気付いた。若しくは、俺の目覚めしか考えられないようなそんな感じだ
った。
その事で何かを言おうとしたが、結局何も言わずに頷くだけにした。
「・・では、また後程会いましょう」
「あぁ」
ブレが大きくなり視界が白くなり、現実世界へと戻っていった。




