日本三家と神鳴学園
国立人外討伐育成学園第一校“神鳴学園”。そこが俺達の通う学園の名
前だ。
今の世の中じゃ人間じゃない生き物、いわゆる“人外”が人を襲うとい
う事は珍しくない。世界各地でも脅威とみなされ、対策を講じて来た。
ここ日本では、昔から妖退治など縄張りにしていた神鳴家、神童家、神
楽家が率先として取り組み対人討伐組織を設立した。通称“斬気”。人
外を斬る事に特化した三つの家が作ったという事で名付けられた。最初
は人外と人間拮抗は保たれていた。しかし、その人外を倒すためにはあ
る一定の特殊な波動が必要だった。次々に現れている人外に対してその
波動を持っている成人以上の人数は数を減り、逆に十代の少年少女に多
くみられてきた。その為、人材不足となり未成年の前線投入が国間の間
で認められ問題になった。しかし、戦う術を知らない素人を前線に立た
す訳にはいかない。そう言う事で、国々ではその特殊の波動を持つ子供
を集めて育成する学園を作ったのだ。その日本の第一校目がこの“神鳴
学園”だ。今じゃぁ一県に一校あり、素質のある学生を次々と入学させ
ている。もちろん拒否は可能だ。だけど、選ばれるという事は名誉であ
る事と就職は確実という事から、推薦を貰った人達は大概は入学の決意
をする。
話は戻るが、この“神鳴学園”は日本初という事で“斬気”を作った
三家が中心になって作った。だから、国立と言ってはいるが、実際の所
は神鳴家、神童家、神楽家の三家が実権を握っている。だから、神鳴家、
神童家、神楽家の本家の人達は一般の人に注目を浴びるのだ。
・・・・・なぜ、そんな事を改めて言うのかとすれば
「きゃぁぁ!命様~~」
「かわぁいい!!」
「こっち向いてください~!」
学園に着いた瞬間、女子生徒を中心に命に襲いかかって来たのだ(俺か
ら見れば)。一応庇おうとしたのだが、呆気なく吹き飛ばされて命と志
乃は呑みこまれてしまった。一応、志乃が守っているが敵意がない分対
応に困っているみたいだ。
「あれが、神楽家の命様か・・」
「思っていたよりずっと可愛いな」
女子生徒の周りから男子生徒の声も聞こえてくる。さすがに、女子の中
に飛び込んで行く勇者はいないようだが、皆命を見ている。神楽家の次
期当主と言うだけならまだしもその容姿がとてつもなく美少女だったら
誰でも目は奪われるものだ(兄目線抜きで)。
「・・・よぉ、想像通りになったな」
命と志乃を中心に少しずつ体育館に進んでいる集団を見ていると肩を叩
かれた。
「そうだな・・・って何でお前がいるんだよ」
振り向けば、兵藤健一が立っていた。こいつは俺と同じ年でこの学園の
二年生だ。今日は授業が無いから来なくても良い筈なんだが・・
兵藤家は元々神楽家分家の武藤家が二つに分かれた内の一つだ。なぜ、
武藤家が分かれたのかと言えばただ単に派閥争いだ。関係修正の目処が
立たないまま二つに分かれたのだ。兵藤家と遠藤家の二つに
「俺だって来たくて来たんじゃないよ・・まぁ命ちゃんを見られたのは
ラッキーだったけど。ってか何?めっちゃ可愛いんだけど!・・・ぐっ!」
鼻の下を伸ばしながら命を見ていた健一が急に脇腹を抱えて蹲った。
「おい・・・あぁ」
一瞬何事かと振り向けば原因が分かった。健一の大きな身体に隠れて見
えなかったけどその後ろには新し制服を着た少女が一人立っていた。
「おはよう、紅ちゃん」
健一を叩いたと思われる手を摩っている女子生徒に笑顔で声を掛ける。
「お、おはようございます。進一さん」
びくッと身体を強張らせて挨拶を返してくれる。少し俯いた顔が徐々に
紅く染まっていく。
遠藤あかね、武藤家が分かれたもう一つの家系。名前があかねという事
となぜか俺が声を掛けると顔を紅くする事から俺は紅ちゃんと呼ぶよう
にしている。ちなみに、歳は命と同じだ。
「健一が連れて来たのか?」
今だに蹲っている健一に声を掛ける。
「・・あぁ・・お前らが早く出れば任せたものを・・もしかして先に行
ったのかもと思って学園に来てみればいねぇし。ずっと探していたんだ
よ」
なるほど、あの命の準備と写真とで随分時間を取られたからなぁ
ちなみに、兵藤家と遠藤家は神楽家本家とご近所で健一とは、一緒に学
園に行ったりしている。
「探してたって・・・何か用か?」
何か約束していたかと記憶を探るが、何も思い出さない
「いいや、俺じゃなくてこいつが用があるだとよ。俺はただの道案内」
そう言って、紅ちゃんを指差す。
するとますます、顔を紅くして縮こまってしまう。
少し赤みがかった髪をリボンで結んでいる。身長は命より少し高めで胸
は平均ぐらいだが、身体のバランスがすごく整っていてる。
「どうかしたの?」
そんな女性がパタパタと、制服を叩いたり、延ばしたりしている。
「制服がどうしたの?・・・大丈夫だよ。似合っているよ・・可愛いよ?」
そう言った瞬間、これ以上紅くならないと思っていた顔が急激に赤くな
った。
「え?」
「すみません、ありがとうございました!また、後で会いましょう!!」
心配になって手を伸ばした瞬間、パッと頭を上げて早口言葉を言いなが
ら体育館に入っていった。
「・・・なんだったんだ」
宙ぶらりんとなった手を見ながら呟く。
「・・多分、お前じゃ一生分からねぇよ」
まだ、蹲っている健一が言ってくるが、何の事だが分からない。
命達も体育館の中に入っていき、校庭には手を指し延ばしたままの男性
と、校庭に蹲っている男性の二人しか残ってなかった。