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私達の王さまになりなさい!  作者: 宇井琉尊
第五章 決着
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決着の後始末

 一歩でも踏み外せば崖から落ちてしまいそうな山をクロムは体を引き

摺りながら歩いていた。自分の神気も底を着いてしまって影移動が上手

くできないのだ。しかも、斬られた傷から血が止まらずこのまま何もし

なければ死んでしまいそうであった。


「はぁ・・・あの少年とはもう会うことはないでしょう・・」


さっきの言葉は全部去勢を張っていたものだった。あの時既にこの傷で

は生き残る事ができないと自覚していた。でも、だからこそあの少年に

自分と言う存在を植え付ける事にしたのだ。自分が死んでいるにも関わ

らずいつ襲撃にあうか常に緊張して、毎日自分の存在に恐怖する。死ん

でいるのに、生きている。


「ふふっ・・・残念なのはその姿を私が見れないってことですね」


取り敢えず、誰にも気づかれない所に行こうと足を踏み出した時に


「こんばんは、今日は月が綺麗ですね」


誰もいないと思っていた場所に、場違いな少女の声が聞こえて来た。


「ぐっ!」


その少女の声に危険を察してすぐに空っぽ寸前の神気を集めて影の中に

移動しようとしたら、両腕に激痛が走った。


「何ですかこれは・・」


全く気付かなかった。それ程速かった。自分の腕が斬られていることに

気付かなかった。


「あらあら、逃げなくてもいいじゃないですか?」


先程聞こえて来た少女がいつの間にかすぐ傍にいて斬られた腕を持って

いた。


「後でゆっくりとお話をしましょう?」


黒い髪を後ろで軽く纏めている少女が、あの少年と同じような刀を持っ

たまま微笑んでいるのを最後に私の意識はなくなった。


「相変わらず速いですね」


黒ずくめのクロムの両腕を斬り取った少女、神奈雫の後ろから兵藤健一

が出てきた


「健一君もさすがですね」

「いやぁ~まだまだですよ」


健一は照れながら雫の後ろで氷の中に閉じ込められているクロムを見る


「圧縮が足りん。進一も健一もだ」


クロムを抵抗なしに閉じ込めた地面から氷の塊を大太刀で難なく切り裂

き、その氷の塊を肩に持ちながら神童克己が言う


「ははは・・・はぁ~今回のはそこそこできたと思ったのに・・・克兄

には敵わないね」


がくりと肩を落としたまま健一は克己の後を付いていく


「さてと・・・剣山の様子が違うと思ってここまで来たのは良いけど何

が何だか分からない状況・・・進一様の神気が昔と同じ頃に戻ったと思

ったらまた元に戻り、犯人だと思われる人物を取り敢えず捕まえたは良

いけど・・・・それよりも・・・・そんなことよりも・・」

「あの~雫姉さん?何やら黒いものが漏れ出していますが・・・」

「・・気にするな巻き込まれるぞ」


ブルブルと体を震わせている雫に声を掛けようとする健一を克己が止め

た。


「あの二人の女は誰ですかっ!!!ちゃんと後で説明して貰いますから

ねっ!!!」


進一達がいるであろう方向に向かって雫の叫び声が響いた。


「それで、その後は?」

「はい、衰弱が酷くそのまま・・・」

「そうか・・・すまない。下がってよし」

「はっ!」


部屋からすーっと消えて行った存在から意識を戻して机の上にある書類

に目を通す


「先程の人は風見の人ですか?」

「えぇちょっと調べて貰いたい事がありまして」


部屋に入ってきた芽衣は布団から出て机に向かっている人に溜息を付き

ながら声を掛ける


「“血刀の集団”雫ちゃん達が捕まえたのはそのうちの一人だったので

すよね?」

「えぇ・・残念ながら満足に聞けないまま亡くなりましたが・・」


純一は芽衣の言葉には返すが視線は机の上から離れない


「その紙は・・・」

「その血刀の集団の最近の行動記録です。これを見る限りこの数年間で

だいぶ動きが活発になっています。しかも・・・」


純一はその資料と世界地図を照らし合わせて線を引いいていく。


「これは・・・徐々に日本に近づいている?」


芽衣の言葉に「はい」と答えてそのまま日本地図まで取り出す。


「調べて分かった事ですが、あの手の襲撃は日本でもあったようで・・

・その件も合わせると・・・ここです」


地図に点を打ったり線を引いたりして出来た地図を見ると


「ここは神鳴家本家がある場所?」

「はい、正確には神鳴家本家が祭っている皇山ですね」


純一は地図を片付けて芽衣を見つめる


「おそらく血刀の集団の目的は此処で間違いないでしょう。それに龍人

族の宝剣を進一が持っている。あの計画と関係がなければ良いのですが

・・」

「ダメですよ。二人して出ていくことは許しません。進一君にもちゃん

と伝えてくださいね」

「お見通しですか」

「えぇ、幼馴染を何年続けて居ると思っているのですか?」


純一はこの家を出ることも考えていた。多分、進一はこれ以上ここに迷

惑をかけないようにすると思ったからだ。でも、そんな考えは芽衣には

お見通しでしかも、進一の説得までしないと行けなくなってしまった。


「でも、あの計画の前に封印を解いてしまって・・・大丈夫ですか」

「封印を解いたと言っても一時的なものみたいですし・・それにあの封

印を解いたら進一にどういう影響が出るのかが分かったと思えば良かっ

たかと・・ですが、計画は繰り上げで進められるそうです」

「そうですか・・・・出来ることならちゃんと成人してからして欲しか

ったです」

「えぇ・・」


思う事は本当の親である純一と同じ気持ち。芽衣は本当に進一の事を自

分の息子と同じように思っている。だから心刀の義の時に聞かされたこ

の計画を最初反対したが、後には進一の為になると思って了承したのだ

。だから、罪滅ぼしという訳ではないが、それまでに進一が周りの重圧

から押し潰れないように守ろうと決めていたのだ。


「進一・・・これからが大変だぞ・・」


怪我でまだ目を覚まさない息子の部屋の方を見ながら呟いた

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