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私達の王さまになりなさい!  作者: 宇井琉尊
第四章 真の力
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赤い鎌とトラウマ

「・・・成る程、やはりその剣は危険ですね・・」

「!!」


終わったと思っていたらクロムの声が聞こえて慌てて武器を構える。あ

の攻撃をどうやって防いだのか分からないが、マントがボロボロになり

ながらもそれでもしっかりとクロムが立っていた。


「もういいでしょ・・・・遊びはお終いです。フィナーレと行きましょ

う・・・今宵の月は赤く染まる・・・貴方達にこの赤い月が止められま

すか?」


今までの巫山戯た態度が完全に消えて、物凄い威圧感がクロムから放た

れた。しかも、今まで黒かった鎌が赤く輝いていた。


「さぁ、ファイナルステージです」


クロムは素早い動きでリアラの方へ駆け出した。どうやら、最大の攻撃

を持つリアラから無力化するつもりのようだ。


「させるか!」


神鳴流体術“矢・・”


「シンイチ様ダメです!」


矢足でリアラの方へ行こうとすると同時にシルクが声を上げた。と同時

に背後から何かの気配が出てきて、慌てて体を前に倒す


ザシュ!


「くっ・・!」


左肩に何かで斬られたような熱い感覚が起こり、そこから血が吹き出し

た。


「シンイチ様!」


シルクが慌てて向かって来て止血をしてくれる。


「おや、躱しましたね」


クロムは鎌を振り下ろしながら感心した様に言ってくる


「お前何をした!」


リアラはクロムの鎌を避けながら声を上げる。


「それはもちろん・・・秘密ですよ」

「貴様!」


クロムの馬鹿にしたような態度で逆上したように斬りかかるリアラだっ

たが、クロムとの腕はほぼ互角。どちらも決定打を打ち込む事ができな

いでいた。


「私と互角・・・いえ、剣術では私のほうが不利ですか・・」


クロムが徐々に圧されながら考える仕草をする。

今までリアラがクロム達に一方的にやられていたのは、襲撃後休みなし

で日本にきた為、体力、神気共に消費していたからだ。


「私は銀龍の末裔!宝剣を・・なにより姫様を守る為の剣!此処で貴方

を倒してみせる!」


ギンッ!


と、剣と鎌が弾き合ってリアラとクロムの間合いが開いた。すかさずリ

アラは剣を上に構えてさっきの一撃を打つ姿勢を取った。


「切り裂け!」


剣から何かが放たれ空間を切り裂きながらクロムに向かっていくが、ク

ロムは鎌を持ったまま動こうとしない。


「私に二度同じ技は効きませんよ」


そう言って、赤い鎌を一振りする。すると、鎌とその何かがぶつかった

瞬間、音もなく消え去ってしまった。


「なっ!」


俺はその光景をみて驚いてしまった。いや、俺だけじゃない。シルクや

リアラも同様に驚いている。


「確かに身体能力では貴方達には勝てないでしょう。ですが、私にはこ

れがあります。影から影へ移動できる黒い鎌、そして、斬れば斬る程切

れ味が増していく赤い鎌。この鎌が真っ赤に染まる時、この鎌に斬れな

い物はないと言われています。もちろん神気を使った技でも・・・それ

が、私が持っている魔剣“血塗られた影”です」


クロムは自分の武器を自慢するように高々と上げた。その鎌は赤かった

刃の部分だけではなく全体的に赤くなっており、元々赤かった刃の部分

はまるで血で染まったように赤く輝いていた。


「仕切り直しです」


クロムは鎌をその場で振り下ろした。鎌から赤い三日月型鎌擊が放たれ

てリアラの方にっ向かっていく


「っ!」


リアラは一瞬剣で打ち返そうと迷ったが嫌な予感がして避ける事にした。


「中々勘がいいですね」


ズバッ!


という音が聞こえてきそうなぐらい有り得ない切れ味で地面や大きな岩

、そして山までも切ってしまった。


ズッズズ!


山が斬られた事で土砂崩れみたいに崩れてしまった。幸い斬られた部分

が少しだった為そこまで被害はないが有り得ない光景を見て呆然として

しまった。


「いくら魂と繋がっていて、錆びない壊れない刃溢れしないと言われる

その剣でもどうなることか・・・元々鎌は死神の象徴です。剣だけでな

く魂も奪ってしまうかもしれませんね」


 その光景をみて俺は無様にも体を震わせて座っていた。シルクが施し

てくれた止血の御蔭で血は流れていない筈なのに体の中から血の気がな

くなっていく感じがする。


「シンイチ様?」


シルクがそんな俺の様子に気付いて声を掛けてくるがそれに応える事が

出来ない。


“あれは・・・あの時の・・・”


思い出すのは自分が死んだ時の事だ。シルクが逃げてクロムを倒せない

と分かって自分も逃げようとした時に、間合いの外に居たクロムが鎌を

振り下ろして瞬間俺は斬られた。痛みを感じる暇もなく体に力が入らな

くなって行く感じ。まだクロムが逃げたシルクに追いつける可能性が残

ったまま何もできずに、助けると言って十分に役割を果たす前に力尽き

るその無力感・・・その恐怖!ちっぽけな勇気を持って、自惚れた結果

得られたのは逃げたシルクの姿と圧倒的な死への恐怖心だった。数年経

って幼馴染たちとの修行や斬気でのアルバイトを経験してある程度はコ

ントロールできるようになってきた。だが、自分が一度死にかけた技を

見せられると体が勝手に震えだし動かなくなってしまう。


「動け・・・動けよ・・・俺はこの時の為に頑張ってきたじゃないか・

・・」


自分の体を抱きしめるように動く震える手を動かそうとするが全く動か

ない。記憶がなくなっていても、心の何処ではシルクを完全に逃がすこ

とが出来なかったと思ってひたすらがむしゃらになって修行をした。


「なんでだよ・・・・・この時の為じゃねぇかよ・・・」


なのに、自分の体なのに動くことが出来ない。顔を上げるとリアラが必

死になってクロムの鎌を避けて、こちらに来ようとするクロムを牽制し

ている

「大丈夫です・・・落ち着いてください」


ふわりと優しく包み込むようにそして俺の視界からクロムを閉ざす様に

前からシルクが抱きしめて来た。


「・・・シルク・・」

「・・はい。ここにいます」


シルクの優しい声にホッとするが体の震えは止まらない


「怖い・・・怖いよ。記憶が戻ってから・・・あの斬撃をみてから体の

震えが止まらない・・情けないな・・・此処でアイツを倒すと言っとき

ながらこの体たらくだ」


シルクに震える手を見せつけるように動かす。


「情けなくなんてありません。誰にでも恐怖はあるのです」


シルクはそんな震える手を両手で握りしめて胸に抱き寄せる。


「あの時、襲われた時に私を助けてくれたくれたのはシンイチ様です。

私と同じような歳の子供が私を守る為に大人に向かって挑んでいく。私

にはそれがとても眩しく見えました。」

「あの時はただ自惚れていただけだ。当時俺の周りには俺より強い奴は

いなかったから」

「でも、その自惚れのおかげで私は生きています」


シルクは握った俺の手を離して頭を胸に抱え込む様に抱きしめる。


ドクンッ・・ドクンッ


「聞こえますか?感じますか?貴方が助けた命はここにあります」


戦闘中、しかもクロムがいつ攻撃してくるか分からない状態にも関わら

ずシルクの心臓はあまり乱れていない


「私にだって恐怖はあります。もちろんリアラにもです。ですが、今は

何も恐怖していません。なぜだか分かりますか?」

「・・・分からない・・・死ぬのが怖くないのか?」

「いいえ、怖いです。自分が死ぬのも、リアラが死ぬのも、シンイチ様

が死ぬのも怖いです。ですが、ここにはリアラがいます、シンイチ様が

います。なのに何故怖がらないといけないのです?」


それは信頼の言葉だった。リアラがいるから、俺がいるから何も怖いこ

とはないと・・・


「俺には・・その言葉は重すぎる」


震えて動かない体、正直その言葉は今の俺には重すぎた。


「いいえ、シンイチ様なら大丈夫です」


なのにシルクは根拠もない言葉を掛けてくる。


「君に何が分かる!」


あまりの無責任な言葉に自分の情けなさを棚に上げて声を荒げる。


「分かります。シンイチ様は襲われていた少女を助けてくれる優しい人

です。シンイチ様は自分の命が尽きようとしている時に他の人の心配が

出来る人です。シンイチ様は困っている人を放って置けない人です。シ

ンイチ様は守りたい人の為に悪役になれる人です。シンイチ様は強くな

るために努力出来る人です。まだまだあります。貴方と出会って数年間

、貴方の中に数日間、私は貴方をずっと見てきました。その私が大丈夫

だと言うのです。シンイチ様が自分を信じなくてどうするのですか?」


迷うことなくいうシルクに俺は言葉を掛けること出来なかった。


「恐怖は誰にでもあります。恐怖に打ち勝つ事はとても難しい事です。

ですがシンイチ様なら大丈夫です。恐怖に打ち勝つことができる強い人

だと分かっていますから」


そう言って、にこりと笑うシルクに呆気にとられる


「・・・なんだそれ・・結局根拠が何一つないじゃないか・・」

「そうですか?シンイチ様なら大丈夫と言う事が根拠です」


自信満々に言うシルクをみていつの間にか体の震えが消えていた。


「ははっ・・そうか、俺なら大丈夫か・・ならその言葉信じてみるよ。

あと、その為に一つ教えてくれ」


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