探し物の正体は
「私も一つ聞きたい事があるのですが」
水晶の中のシルクを守るように立つリアラがこちらをみてくる
「シンイチ、貴方は先程私に聞きたい事と言う事があると言っていまし
た。それは何ですか」
「あぁ・・」
多分わざとなのだろう。夢で逢う時とは違う夢の中では下ろしていた銀
髪を綺麗に纏めているシルクの姿をみて確信する。
「あの時に聞きたい事はもう解決したが、今新たに聞きたい事が出来た
。その宝剣は、死んだ人を生き返らす事が出来るものなのか?」
あの時は、リアラに本当に日本に来た事がないかと言う事を聞きたかっ
たが、今はその事よりこっちの方が気になる。
「・・確かにその様な効果があると言われている事は確かです。私のこ
の剣みたいに魂と同化させる事が出来ればそれは可能なのですが、普通
の人間には無理です。この剣は龍族の身体の一部を武器にしている物な
のですが、その宝剣は龍そのものを武器にしたものなのです。だから、
ただの人間がその剣と同化しようとしたら龍に魂を乗っ取られてしまっ
て暴走をしてしまいます。そう言った危険を防ぐために姫様が管理して
いたのです。でもなぜその事を?」
「あぁ・・もしかしたらとは思っていたんだ。でも、その事を認めると
いう事はとても勇気がいる事だったんだ。でも、今の答えで腹は決まっ
たよ」
その事を認めるという事は、蘇った記憶は間違いじゃなかったという事
になる。本当ならあり得ない事だが、その宝剣がそう言った事が出来る
のであればもう腹を括るしかない。
「リアラ、おめでとう。君が探していた人は見つかったよ・・四、五年前
、俺はそのシルクとここで逢っている」
その言葉に、リアラはもちろん芽衣さん達も驚いた表情をする。
「・・・そして俺は・・・・あのクロムに一度殺されているんだよ」
再び驚いた表情になる三人を見ながら考える。リアラが探していた男は
自分だった。その事は解決したが、自分が記憶を無くしていた事、シル
クの事、その宝剣の事いろいろ考えないといけいない事が一気に多くな
ってしまった。でも、この事を良く知っているのは自分ではない。
「すみません、芽衣さん。ちゃんと説明しないといけないんだけど、少
しだけ時間を下さい」
だから、一度シルクと話す必要がある。
「・・・・分かりました。でも、明日中にはちゃんと説明して下さいね」
芽衣さんは、いろいろ聞きたい事を我慢して、我儘を許してくれた。
「分かりました。でも多分、遅くても昼ぐらいには話せると思います」
どうせシルクとは寝ている時にしか会えない。
「・・あっ・・後、寝ている時は起さないようにして下さい」
シルクと話しをしている時に起されたら堪ったもんじゃない。だから、
一応注意をする。
「・・・何をするのか分かりませんが、無理だけはしないで下さいね」
「・・はい」
やる事はただ眠って夢の中でシルクと話をするだけだ。全然危険はない
。それよりも、今まで黙っていたシルクをどう説得するのかが一番の問
題だ。
「シンイチ・・・何をするつもり?」
「・・・シルクと話してみるんだよ」
リアラが俺が何をするつもりなのか不思議そうにしていたが、俺の言葉
を聞いて更に困惑した様な表情になった。
目を開けると目の前にはテーブルがあって、シルクが向かい側に座って
いた。それはいつもの光景だったが、いつも会っている時の髪型ではな
く、水晶に閉じ込められている状態の髪型になっていた。
「・・・俺が、何を聞きたいか分かるか?」
「えぇ・・分かります。」
声を掛けると肩をピクリと動かして恐る恐るこちらを見てくる。
そんな小動物を思い出させる態度をみて、どうしたものかと苦笑するし
かなかった。
「・・・何んで笑っていられるのですか・・私はシンイチ様をずっと騙
していたのですよ」
「騙していたってことはないだろ・・ただ、黙っていただけじゃないの
か?」
「それは・・・・ですが」
「それに俺は別にシルクを怒りに来たわけじゃないんだ。何年の付き合
いだと思っているんだ。シルクが今まで言えなかったという事はそれな
りの理由があったんだろ?」
確かにシルクは過去に会っていたいた事を黙っていた。でも、だからっ
てシルクを怒る気にはならなかった。なぜなら、今まで夢の中で一緒に
過ごしていたシルクは理由もなく人を騙す様な人ではないと分かってい
るからだ。
「でも、それは本当の理由を知らないからで・・・本当の事を聞けば・
・きっと・・」
「・・俺は、シルクを信じている。だから全部話してくれ。俺はそれを
聞きに来たんだ。確かにちゃんと聞かないと分からない事かもしれない
・・でももし、シルクが本当に俺を騙していたとしても、今までの関係
が嘘であったとしても・・・それはとてもショックな事なんだけど・・
・それでも俺はシルクとこれからも一緒にいたいと思う。だから、全部
話してくれ」
「・・・・」
俺の言葉を聞いて、シルクは黙り込む。シルクが何んでそこまで頑なに
話してくれないのか分からないが、ただ信じて待つ。緊張で喉が渇くよ
うな気がするけど、生憎ここは飲み物など気の効いた物は出て来ない。
「・・・分かりました・・・ちゃんと全てを話します」
時間的にどれだけ経ったか分からないけど、シルクは決意をした様な表
情で話し始めてくれた。