表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私達の王さまになりなさい!  作者: 宇井琉尊
第一部 第一章 夢の中の少女と落ちこぼれの少年
2/38

夢?中で

自分は夢の中で不思議な体験をしている。内容は、綺麗な銀髪の少女と

テーブルを挟んでおしゃべりをする。たったそれだけだ。自分と同じ歳

に見えるが、出る所はしっかりと出て、メリハリのあるプロポーション

の良い少女。綺麗と言うよりは可愛らしい雰囲気の少女と言う事で思春

期にある現象とは言えるのだろうが、何だか違う様な気がするのだ。

夢であるという事は理解できる。でも、会話をしている時は現実みたい

に感じるのだ。

そんな事を急に言われて誰が信じるのかと自分でもそう思う。現に、お

世話になっている妹みたいな娘に恥を忍んで相談した事があるが


「・・・お兄様はそのような人がタイプなのですね」


と、少し残念そうに言われた事がある。何度も違うと説明しても


「・・いいのです・・お兄様も男の方なのですから・・」


と聞く耳を持ってくれなかった。その時にもうこの話は誰にもしないと

誓ったものだ。


この銀髪の少女が出てくるようになったのは、中学に上がる頃からだ。

その頃は、神鳴家の直系として産まれ、病気で前線に立てなくなった父

親の代わりに神鳴家を継いでいこうと決心していた頃だ。そして、神鳴

家の相続の儀式“心刀の儀”を成功間違いなしという周りの期待を裏切

って失敗して落ち込んだその日の夜の夢に泣いている銀髪の少女と会っ

たのだ。


「何か考え事ですか?」

「ちょっとね・・・君と初めて会った事を思い出していた」


今日も今日とてその銀髪の少女と向かい合っていた。銀髪の少女は首を

少し傾げた後、少し頬を膨らませてむくれた様な表情になった。


「・・・私の事は名前で呼んで下さいといつも言っていますのに・・」


拗ねてますよ~と表情からでも分かる様な態度を取るが、子供っぽいの

とは違い品がある。


「・・・あぁ・・すまん、シルク。どうしても、君みたいな可愛い子を

名前で呼ぶのは慣れないんだ・・」


可愛いなぁと少し見惚れていたのを誤魔化す様に少し早口で言う。


「まぁお上手・・そうやってシンイチ様は他の女性にも同じことを言っ

ているのですか?」


くすくすと口元を隠しながら微笑む。どうやら冗談として受け取ったみ

たいだ。


「ははっ・・俺はモテた事なんか一度もないから、こういう言葉はシル

クだけにしか言ってないよ」

「ほら、そう言う御冗談ばかり・・・」


本当の事なんだけどなぁと頭を掻く。

お世話になっている家の子で俺にとっては妹的な存在の少女や、昔自分

に仕えていた少女、そして幼馴染の少女。この子達からは好意と呼べる

ものを感じることはあるが、他の一般の人から見れば・・


「・・俺は、落ちこぼれだからな・・」


俯きながら小さく呟く。

数年前にあった神鳴家の相続の儀式“心刀の儀”を失敗してしまった俺

は、世間一般から落ちこぼれのレッテルを張られている。悔しいし、言

い返したいと思う事は何度もあるが我慢している。だって失敗は自分の

責任なんだから・・


「シンイチ様・・・・」


声が聞こえたか、それとも俺の表情から何か感じたのかシルクが少し悲

しそうな顔で見てくる。シルクはなぜかこの話になると決まって悲しそ

うな顔をするのだ。


「あぁ・・ごめん、ごめん」


少し重くなった雰囲気を変える為にわざとらしく声を上げる。何か明る

い話題がないかと頭を捻っていると、夢の空間自体がブレ始めた。


「っと・・今日はここまでみたいだな」

「その様ですね」


この空間のブレは、夢の終わりの合図。どちらかが夢から覚めそうにな

るとこの現象が起こる。


「まぁ・・最後は湿っぽくなってしまったけど、今日も楽しかったよ」


椅子から立ち上がりながら笑顔で手を出す。


「私は、シンイチ様とお話が出来るだけでいつも幸せですよ」


シルクも笑顔で手を出して握手をする。

何度かつまらない事で喧嘩してこの空間に来る事が苦痛になってしまっ

た時に、分かれる時は必ず笑顔でという約束をしたのだ。だから、帰る

時はいつも笑顔で握手なのだ。


「じゃぁまた明日」

「それでは、また明日です」


握手をしたままこの空間から離れるのを待つ。徐々に視界が白くなって

目の前が見えなくなっていく。完全に見えなくなっても握手をしていた

柔らかい手の感触はずっと残っていた。夢なのに・・・現実みたいな柔

らかい感触だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ