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私達の王さまになりなさい!  作者: 宇井琉尊
第二章 金髪少女の探し物
18/38

金髪騎士を背負って

「・・・・」


家への帰り道を無言で歩く


「・・・・・・・」


あの二人組の男達と対峙しただけでいつも以上の疲労が身体に負担を掛

けている


「・・・・・・・・・・」


誰よりも鍛えているつもりでいた。朝のバイトから夜のバイト、時間が

空けば幼馴染である次期当主達との修行。心刀の義を失敗してからそれ

に代わるものを獲得しようと無我夢中で追い求めた。だけど、あの男達

とたった少しだけ対峙しただけで今まで積み重ねて来たものが足元から

崩れ去った。


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


今になって震えだし始めた手を握りしめて歩くのを止める


「・・・・いい加減出て来いよ」


家に帰る為には少し遠回りをしていた道に、自分の声が通って行く。


「・・・・・・・」


そのまま、じっと動かず待つ。

一分か、それとも十分かある程度待ってから反応がない事を確認してま

た歩き始めようとする


ジャリ


「・・・・いつから気付いていたの?」


すぐ後ろから声が聞こえた瞬間首筋に剣を当てられていた。


「お前が姿を消してからずっとだよ・・・騎士様」


両手を上げて争う意志がない事を伝えながら答えを返す

“斬気”の隊員が来た時から今まで逃げたと思わせといてずっと自分を

監視している気配があった。さすがに敵ではないと思うとはいえ家に着

いてこられるのは何かと拙いと思いこうやって遠回りをしていたのだ


「・・・それで、いつまでこの体勢でいないといけないんだ」

「・・・・御免なさい。敵ではない事は何となく分かるのだけど・・」


いい加減疲れて来た両手を見せびらかす様にぶらぶらと振ると若干間が

あってそれから剣が首から離れて行った。


「・・・それで、何か用か」


油断をせずにゆっくりと身体の向きを変えて騎士をみる。歳は俺とそう

変わらないように見える。先程の戦闘でみた西洋のドレスの上に銀色の

装甲を付けた綺麗な金髪の女性がそこにはいた。しかし、良く見ると銀

の装甲は所々傷付いておりドレスも所々破けていた。


「さっきのお礼と一つ聞きたい事があるの」


そう言ってその場に膝を着く


「先程は助けて頂き感謝します。本当だったらその場でお礼をするつも

りだったけど、あまり多くの人に見られる訳にはいかなかったから・・

・」

「・・頭を上げてくれ。助けられたのは偶々だしそれが仕事だから当た

り前の事をしただけだ」


外国のしかも美人の女性を道路に膝を着かせている事に少し居心地が悪

くなる


「・・・でも助けて貰って、はい、さようならって訳にもいかないの・

・じゃぁ落ち着いた時に改めて礼をさせてね」


こっちの雰囲気を読んでか女騎士は立ち上がりまっすぐとこちらをみる


「だから、礼はいらないし今言って貰ったからそれで十分だ。・・・ま

ぁいいさ、それで聞きたい事って言うのは?」

「ここ一帯で最も強い人がいるのは何処?」

「知っていると言えば知っている・・・だけどそれを聞いてどうする?」


今の日本で強いと言えば三家の一族達だ。しかもそれがここ一帯という

事であれば神楽家しか考えられない。目的が自分の家だと分かり少し警

戒を強くする。自分だけならまだしもあそこには、病気の父親や自分達

を引き取ってくれた芽衣や命、志乃まで居るのだ。


「さっきの行動力や機転の速さをみてもしかしてと思ったけど、そんな

態度をとるという事は貴方、関係者か身内でしょ?」

「・・・・・」

「・・・そう構えないで。ただ、頼みたい事があるだけだから」


またしても、地面に膝を着いて真剣な目でこちらを見てくる。


「・・・・分かった。でも、そこで少しでも変な態度を取れば俺の命に

掛けてでもお前を倒す」


そんな女騎士の態度に悪意を感じなかった為家に連れて帰る事を決心す

る。それでも、あの人達に何かしたら容赦はしないとくぎを打つ事は忘

れない


「・・・感謝します・・・」


膝を着いたまま頭を下げた女騎士はそのまま前へと身体が傾いて行った。


「おい!」


慌てて抱きかかえるが女騎士はもう意識は無かった。相当無茶してここ

まで来たのだろう。大きなけがはパッとみて見当たらないから疲労の所

為だろうと判断する。


「・・・・・おいおい。俺も一応疲れているんだぞ」


すやすやと安心したように眠る女騎士の顔を眺めつつこれからの帰りの

道のりを想像して気が重たくなった。

如何にも重たそうな剣と装甲を付けた女性。このままここで寝かして置

く訳にも行かず、背負って帰るしか方法は無い。少し遠回りをしていた

から距離もまだある。


「・・・・・はぁ」


溜息と同時に疲れている身体に鞭を打って歩き始める。

すやすやと背中に背負った女騎士の規則正しい寝息を聞きながら歩く事

数十分やっと家の門が見えて来た。時間的にもう朝の新聞配達のバイト

に出ないといけない時間になってしまっているがどうやら今日はいけな

いらしい。


「・・・・・・・」

「・・・・はやいな」


門の前には鬼がいた。もちろん本物じゃなくて比喩的表現ではあるけど

も・・


「・・・お帰りなさいませ。朝帰りとは随分な身分になりましたね」


鬼(志乃)がちらりと背中に背負っている女騎士を見てこちらを睨んで

来る


「ははは・・こんな恰好で信じて貰えない事は十分分かるけど、一応神

楽家のお客様の筈だと思われる人だ。芽衣さんと一応父さんを起してく

れないか。そして出来れば俺は朝のバイトに行きたいんだが・・」

「それには心配いりません。進一様がいつもの時間になっても帰ってこ

ない事でみなさん既に起きております。後、バイトの件ですがそれも本

日はお休みという事になっています」

「・・・・はい」


有無を言わせない気迫を漂わせている志乃にただ素直に頷くことしか出

来ない


「・・・それで、いつまでその様な格好でいるのですか」

「いや・・まぁさっきから起そうとしているのだけど・・・離れん」


冷やかな目でこっちを見ている志乃の視線に耐えながら声を掛けたり揺

すったりしても中々この女騎士は目を覚まさない。そして、振り落とさ

れないように腕に力を入れてしまうものだからお互いの身体がさらに密

着する事になって自分では動けない様な状況になってしまった。・・理

由は聞くな・・甲冑は固いが身体は柔らかい。そして、女性特有な甘い

匂いがすぐ近くでする状況で、男しかも徹夜明けの状態ではいろいろと

大変なのだ


「・・・・・」


志乃の視線が強くなり冷や汗が止まらない。前面の地獄と後面の天国だ。


「・・っ!」


その志乃の視線が女騎士に移った瞬間、女騎士は素早く背中から飛び降

りて剣を構える。さすがは騎士という所か・・志乃が殺気を当てた瞬時

に反応したのだ


「敵!・・どこ!」

「目が覚めたようでなによりです」


志乃は何事もなかったように今だ混乱している女騎士に声を掛ける


「・・?はい?・・どうも・・ありがとうございます?」


女騎士は目の前の志乃に混乱したまま頭を下げる


「・・・・・・」

「・・・?・・・?」

「あぁ~ここがお前が探していた場所だ」


お互いに無言で見つめ合っている二人の間に入る。(正確には志乃が無

言で女騎士を睨んで、女騎士はなぜ睨まれているの分からず混乱してい

ただけなのだが)


「ここが・・・」


女騎士が改めて周りを見渡す。


「はい。ここが日本で三家と呼ばれる家系の内の一つ、神楽家本家でご

ざいます。本来なら規則に沿った手順を踏まえて欲しいのですが、進一

様が直接連れて来た人を帰す訳にはいきませんので、特別に当主に伺い

をたててきます。それまではここでお待ち下さい」

「一応は門前払いを覚悟でしたが、急な訪問にこのような対応助かりま

す。」

「・・では、失礼します。」


志乃は軽くお辞儀をして家の中に入って行った。一応俺も家に入って着

替えなどしたいが今だ頭を軽く下げている女騎士をほっといて自分だけ

家には入れない。まぁ一応監視役として一緒に外で待つ事にした。

そして、数分後芽衣さんの許可を貰って家の中にやっと入る事が出来た。


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