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私達の王さまになりなさい!  作者: 宇井琉尊
第一部 第一章 夢の中の少女と落ちこぼれの少年
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あかねの疑問

胸に燻っていた黒い感情をゆっくりと吐きだして残りの弁当を食べる。

さっきまで美味しかった弁当は少しだけ味気のないものに感じてしまっ

た。


昼食時以降は特に何事もなく、いつも通りに学校を終え、バイトを終え

て家まで帰って来た。玄関でただいまと挨拶をしてそのまま自分の部屋

を開けると部屋の中には、命、あかね、雫の三人が並んで座っていた。


「ただいま・・・どうした?」


何で勝手に人の部屋に入っているのかとかいろいろ聞きたい事はあるが

、取り敢えず命とあかねがかなり不機嫌そうな顔で待ってましたという

感じだったので素直に聞く事にした


「お帰りなさい進一さん」

「お帰りなさいお兄様」

「お帰りなさいませ進一様。すみません勝手にお邪魔させて頂いており

ます」


少し固く挨拶を返して来る二人に対して、雫は申し訳ない様にしている


「まぁ気にしないで下さい・・雫さんは二人に?」

「えぇ・・生徒会の仕事が終わって家に帰ろうとした時に二人に捕まっ

てしまって・・何やらすごく真剣のようでしたのでそのままここで進一

様のお帰りを待っていた所です」

「・・二人ともあまり他の人に迷惑を掛けたらダメだろ」


少し困った表情をしている雫の両隣に座っている命とあかねに注意をす

「・・いえ、別に迷惑というわけではなく・・むしろ、進一様のお部屋

に入る事が出来てうれしいと言いますか・・」

「ん?」


少し顔を赤くして俯いてしまった雫が何か言っているが声が小さくて何

を言っているのかが分からない


「ゴホンッ!・・・いえ何でもありません。それで、命ちゃんにあかね

ちゃん結局何の話なの?」


咳払いをして姿勢を改めて整えた雫が二人に顔を向ける


「雫さんに一つだけ聞きたい事があります」


意を決したようにあかねが口を開く


「私は神鳴学園に入学してまだ二日目で、何も知らないただの小娘の戯

言として受け取って貰っても構いません。ですが、これだけは聞かせて

下さい・・・神鳴学園の生徒の持っている“あの思想”はなんなのです

か」


あかねの言葉を聞いて「やっぱりかぁ」という気持ちになった。健一の

説得のお陰で理解はしたのだろうが納得はしていないらしい。紅ちゃん

らしいと言えばらしい。


「私もびっくりしました。私のクラスに千堂家の方がいるのですが、そ

の方が“落ちこぼれのDクラス”とか“名誉あるAクラス”など言われ

るのですから・・」


あかねの後に命も不思議そうに聞いている。命の場合あかねみたいに怒

りの感情は無く、ただ単に不思議がっている感じだ


「なるほど・・その事ですか・・」


二人の言葉を聞いて雫は少し考え込む。多分いつかは言われるだろうと

思っていたのだろうけどさすがに入学二日目で聞かれるとは思っていな

かったようだ。


「でも、どうして私なのですか?進一様に聞かれれば良いですのに」


ふと顔を上げた雫がさも当然の様にこちらを見てくる。確かに同じ学園

に通っている兄がいるのだわざわざ雫を呼ぶ必要はない。だけど、あか

ね達がどう思っているのかが何となく分かるので肩を竦める事しかでき

なかった。


「・・・その話は後でします。雫さんの話を聞いて確信してからです・

・正直、信じたくない事なので」

「・・・分かりました。あくまで生徒会長の私の意見だと思って聞いて

下さい」


あかねの真剣な表情に何かを察したのか雫が説明をし始める


「命ちゃんとあかねちゃんはクラス分けがどうやって行われるか知って

いますか?」

「はい。入試の時に説明がありましたから」

「確か、神気の総合量と出力数の総合値で決まるのですよね」

「そうです。最も優れている人達からA~Dクラスに振り分けられます

。例外はありません。これは、授業を円滑に進める為です。言葉は悪い

かもしれませんがもし、Aクラスの中にDクラスの人が交じってしまう

と、Dクラスの人が足を引っ張ってしまって他のクラスの人達の迷惑に

なります。ですので、同じクラス同士授業を進めそのクラスにあった戦

い方を学んでいきます」

「・・・それは、入学式の日のミーティングで聞いています。同じレベ

ルの子同士で高め合う・・それは理解できます。でも何であんな考え、

他のクラスの人を見下すような態度になるのかが分かりません」


あかねは正義感が強い。目の前で苛められている子がいたらすぐに助け

ようとするし、間違っている事をしている人を見かけると大人だろうと

容赦はない。そんな、あかねにとっては人を見下す環境がある事が許せ

ないのかもしれない。若しくは、自分がそう言うグループに入ってしま

っている事が・・


「確かにそうですね・・・でも良く考えてみて?あかねちゃんから見て

、その千堂家の子は強い?」

「えぇ~と・・・確かに強いとは思うけど負ける気はしないです」


あかねは、なぜ雫がそんな質問をするのかが分からないまま曖昧に答え

る。


「なら、もっと具体的に・・その子が全力で攻撃してきたとしたらあか

ねちゃんは防ぐ事ができる?」

「できます」


今度は、しっかりと自信を持って答えた。


「それが答えです」

「え?」


雫のその言葉を聞いて二人とも不思議そうな顔になっている


「同じAクラス同士でもそんな差があるのです。それがクラス別になる

とその傾向が著名にみられてきます。単純な力比べではあかねちゃんや

命ちゃん、志乃に勝てる人は一年では今の所いない。他の・・Bクラス

の人から攻撃されても全然脅威には感じないでしょ?」

「・・・・」


やっと理解したのかあかねは呆然と雫を見ている


「あと、クラスに合った戦い方を学ぶという事ももう一つの原因かな」

「・・・それは?」


何も言えなくなっているあかねの代わりに命が聞く


「それも、今までの話の流れと一緒なんだけど、Aクラスに勧めている

戦い方をDクラスの人に勧めても意味がない。それは理解出来るわよね」

「はい」

「だから、AクラスにはAクラスのDクラスにはDクラスの戦い方を教

えるの。そして、戦闘に有利なAクラスは人外戦の時のアタッカーとし

てDクラスは戦う事をせず他のクラスのフォローに回るのが通常です。

一方は光が当たる花形、そしてもう一方は日が当たらない裏方・・差が

出てしまうのはしょうがないのです」

「・・・・」


雫の説明を聞き終えて二人とも押し黙る。多分、健一も同じような事を

言ったのだろうけど、生徒会長であると同時に自分達の姉みたいな人の

説明に納得せずにはいられないのだろう


「じゃぁ・・じゃぁそしたら」


呆然と雫を見ていたあかねがゆっくりとこちらを見てくる。・・訂正。

少し睨んでいる


「朝、進一さんが言っていた、学園で自分には関わるなという事はもし

かして・・他の人達から見下されている自分を私達に見られたくないか

ら・・」

「それはち・・」

「そうだ。俺は二年Dクラスだ。Aクラスにはもちろん他のクラスから

も見下されている。そんな姿をお前達には見せたくなかったんだ」


雫が何かを言いそうになるのを遮って睨んでいるあかねの目を見返す。


「・・・自分の考えが間違っていて欲しいと思っていたけど・・見損な

いました。進一さんはもっと強い人だと思っていました」

「買い被りだ。俺はもっと意地悪く卑しいんだよ」

「・・・そうですか・・・すみません。わざわざありがとうございまし

た。すごく勝手ですが帰らせて貰います」


両手を強く握り顔を俯いている為表情は見えないが、相当怒っているよ

うな雰囲気だ。あかねは、そのまま誰も見ないまま部屋から出て行った。


「ちょっとあかね!」


その後を命が慌てて追いかけて行った。部屋に残ったのは雫と俺の二人

になった。

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