学園のランク
いつもより少し遅めに学校に着いて、いつも通りの雰囲気の中授業を受
けて昼休みになった。いつもと違うとすれば、休み時間の度に来ていた
健一がまだ一回も俺のクラスに来なかったぐらいだ。
「ガツガツガツ!」
昼休みになり、教室で命が作ってくれた弁当を食べようとした時に、健
一が俺のクラスに飛び込んで来た。
「ガツガツガツ!」
そして、そのまま俺を学食へと連れて行き、スペシャル定食という唐揚
げ、海老フライ、コロッケの揚げ物やサラダ、汁物が付いた腹が減って
いる男性生徒には一番人気のメニューを目の前で勢いよく食べている(
朝の約束通り俺の奢りだ)
「・・・一緒に食べないんじゃなかったのか」
命の美味しい弁当を食べながら、まるで野生の様に食べている健一に声
を掛ける。
「ふぅっとふぁいと、ふぇっふぇやうぇない!」
「・・・呑みこんでから喋れ」
さすがに口の中の物を飛ばすという事は無かったが、何を言っているの
か全然分からん
「・・ごくっん!・・食ってないと、やってられない!と言ったんだ」
口の中なものを綺麗に呑みこんで改めて言う
「あぁ・・・そうじゃないかと思ったけど・・やっぱりか・・」
その言葉で健一が何を言いたいのか分かってしまい溜息をつく
「それにしても、いずれ分かるとはいえ早すぎじゃないか?」
「あぁ俺も今日はさすがに大丈夫かと思ったんだが・・命ちゃんやあか
ねがいる教室にはあの千堂千穂がいたんだ」
「あぁ・・あの千堂家か・・」
千堂家、最近急激に力を伸ばしている一族だ。今では三家の内神鳴家の
分家に認められる程成長している。だが、何もない状態から今の地位ま
で上り詰める事が出来た事を誇りに思てっというより思い過ぎて自分よ
り低い立場の人間を見下す傾向が強いのだ。
「それで、ぶつかったのか?」
「いいや、ギリギリだったが止める事が出来た・・・後数秒俺が遅かっ
たら正面からやり合っていたね」
健一の話によると、健一が命達のいるAクラスの様子を見に行ったら、
千堂千穂が別のクラスの人と話していたらしい。命達はそのグループの
話には全然興味がなかったらしく教室に顔を出した健一の所へ行こうと
した。その時に、千堂千穂から“あの言葉が”出た。命達三人は最初聞
き間違いだと思ったらしいが、その言葉は止まる処か大きくなり、しま
いには笑い声にまでなった。そう言う事が許せないあかねはもちろん、
命や事情を聞いていた志乃でさえ言葉を失う程だったらしい。健一があ
かねが飛び込んで行こうとするのを全力で止めて、説明をしたのだが納
得できる筈もなくチャイムが鳴ってその場は落ち着いた。でも、あかね
の性格を知っている健一が次の休み時間になるとすぐに一年Aクラスに
飛んで行くとあかねが千堂千穂に言い寄ろうとしていた。何とかあかね
を落ち着かそうとするも熱くなっているあかねは止まらない。またして
もチャイムに助けられる事になるが、健一はそれから休み時間になる度
にあかねを落ち着かせていたらしい
「それは・・・ご苦労さん」
「おう・・・疲れた・・」
ちなみに、あかね達はさすがに理解したらしく千堂千穂と顔を合わせな
い場所でご飯を食べているらしい
「おやおや、神鳴家の落ちこぼれのDクラスの進一が、Aクラスの兵藤
家次期当主にまた、媚を売っているみたいだな」
後少しで美味しい命の弁当を食べ終わるという時に一番聞きたくない声
が聞こえて来た。目の前に座っている健一も「またかぁ~」という表情
をしている
「甲斐様、こいつはこうでもしないとここにはいられないんですよ」
「まぁ食堂一食ぐらいしか売れる媚しかありませんけどね」
最初に声を掛けて来た男子生徒の取り巻きがこっちを見ながらニタニタ
と笑っている。
「神道家の次期当主様が一体何の用だ」
健一が溜息を付きながら一番最初に声を掛けて来た男子生徒に声を掛け
る。
神道甲斐二年Aクラスで健一とはクラスメイトだ。神道家、元々は神童
家から分かれその後神鳴家の分家となった一族だ。だから、神童家と神
鳴家の武術を習得している。今現在では、兵藤健一に一歩及ばない成績
だが追い抜くのも時間の問題と言われる程才能がある。ただ
「いいやべつに、次の授業の連絡をお前に言いに来ただけだ。そしたら
、Dクラスの奴としかも落ちこぼれと有名な進一と一緒じゃないか!こ
れは、何か怪しいと思ってな」
そう言って、見下した目で見てくる。
ここ神鳴学園のクラス分けには基準がある。人外に対抗できる特殊な波
動通称“神気”の総量と出力数で決まるのだ。その神気の総合が高い順
からA~Dクラスに分けられる。神気の総量が多いほど長く戦え、出力
数が高いほど攻撃力が高くなる事から、DクラスよりCクラスが、Cク
ラスよりBクラスが、BクラスよりAクラスが強いという意識が全学園
生徒に植えつけられていて上のクラスは下のクラスを見下す傾向がある。
そして、特にこの神道甲斐はその傾向が強く、健一とこうやって話して
いるのを見るとすぐに突っかかって来るのだ。
「何もねぇよ・・ただ、財布を忘れて幼馴染に借りただけだ」
「ふん、信じられん」
健一が何を言っても聞く耳を持たず、連絡事項を言い去って行った。
「・・・・」
神道甲斐が去って行くまで何も喋る事が出来なかった。口を開けば自分
でも何を言ってしまうか分からなかったからだ。自分が言われるのは構
わない。でも、それが幼馴染や家族だったら我慢が出来ないのだ。でも
、それを爆発させる訳にはいかない。だから、嵐が去るのをじっと我慢
するしかなのだ。
二年のDクラスの中でも一番上のクラスから目の敵にされているのが自
分だ。理由は単純だ。Dクラスで神鳴家の落ちこぼれとして有名な人物
が、学園の中だけじゃなく日本中から注目されている生徒会長神奈雫、
副会長神童克己、兵藤家次期当主兵藤健一と仲が良いからだ。
「・・・・ふぅ~」
胸に燻っていた黒い感情をゆっくりと吐きだして残りの弁当を食べる。
さっきまで美味しかった弁当は少しだけ味気のないものに感じてしまっ
た。