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私達の王さまになりなさい!  作者: 宇井琉尊
第一部 第一章 夢の中の少女と落ちこぼれの少年
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覗かれた少女で拘束とその後

気が付くといつものテーブルに着いていた。目の前にはシルクがいる


「あれが、命ちゃんと志乃ちゃんですか。話しには聞いていたけどどっ

ちも可愛いですね」


シルクはくすくすと口元を隠しながら笑っている


「・・どっちも無防備すぎる・・俺だって男だぞ・・」


やや疲れた感じで溜息をつく。ここに来れたと言う事は眠れたと言う事

だ。正直、徹夜を覚悟していた所だった。


「逆にシンイチ様だからあそこまで出来るのではないですか?」

「それは、俺が男としてみられて無いってことかい?」

「さぁそれはどうでしょう?」


何だか答えをはぐらされた気がする。とそこで、少し気が付いた事があ

った。


「なぁシルク?君は今俺の状況を知っているかのように喋っているが今

までは無かったよな・・・どういう事だ?」


今までは、どちらも現実での出来事は感知できないでいた。だからこそ

、ここでの会話に困る事はなかったし、お互いの話を聞けて楽しかった

のだ。でも、シルクは今、俺が説明をする前にどういう状況か分かって

いるかの様に喋っていたのだ。


「・・・・失敗してしまいました。ここでシンイチ様に会うとどうして

も気が緩んでしまいます」


悪戯が見つかった子供の様に困った表情をする。


「内緒ですって言っても聞いては下さらないのでしょ?」

「あぁ・・さすがにな」


プライベートな事まで知られてしまう状況では、さすがに理由を知りた

い。


「・・・実は・・今私はシンイチ様と剣の共有部分に無理やり私の居場

所を作っている状態なのです。ですので、私は剣の共有部分からシンイ

チ様の様子をみる事が出来るのです。もちろん、覗き見をするつもりは

なかったのですが、シンイチ様の精神が強く反応した所為で私の精神も

引っ張られてしまって・・・」

「・・・・・・」


シルクの説明を聞いて驚いた。夕方会った時に薄々は感じていたが、今

の説明で確実になった。シルクは今精神だけの存在になっている。


「それは・・・」

「大丈夫です・・こちらから覗くような真似はしませんし・・数日間の

辛抱です」


シルクはこちらの声を遮って説明を続ける。


「・・・数日間・・なんだな・・」

「はい・・どちらにしても数日間の辛抱です」


言いたい事、聞きたい事は沢山ある。でも、シルクの顔からはこれ以上

の追及を完全に拒否している。


「・・分かった。でも、これだけは言わせてくれ。シルクはどう思って

いるか分からないけど、俺はシルクの事をとても大切に思っている。俺

が“心刀の儀”を失敗した時や学校で苛められている時に救ってくれた

のはシルクだ」

「私は、助けてなどいません。ただ、話を聞いていただけです」


シルクの言う通り、直接的に助けて貰った事はない。なぜなら、シルク

と会えるのは夢の中だけなのだから。


「でも、シルクにとってはそれだけかもしれないが、俺にとっては重要

な事だったんだ」


周りの期待に応えられなかった自分。俺を庇ってくれる人達に少しでも

何かを返したいと思いがむしゃらになっていた。まだ、中学に上がった

ばかりの少年では心にかなりの負担だった。だからこそ、自分の事をあ

まり知らず、踏み込み過ぎずただ話を聞いて貰える事は非常に有り難か

ったのだ。


「だから、正直悔しいよ。シルクが俺を助けてくれたみたいに俺もシル

クを助けたい。それが出来ない事がすごく悔しい。俺は、いつでもシル

クの味方だ。だから・・・だから、言える時になったら言って欲しい。

その時は全力で助けてやる・・・それだけは覚えといて欲しい」

「・・シンイチ様・・」


シルクの表情が一瞬崩れそうになる。言うか言わないか迷っているのが

こちらでも分かる


「あ・・」


その時、空間がブレ始め終わりの時間になった事を知らせる。


「・・・待っている」


どうすれば良いか迷っているシルクを見ながら、ただ一言だけ言う。


「はい・・・」


小さく、頷いたシルクを最後に現実世界へと帰って行く。

目を開けるといつのも天井が見えた。でも、夢の中のシルクの会話と遅

くまで寝れなかった事での寝不足で頭がまだ覚醒しない。いつもより暖

かい布団の中でぼ~と天井をみる。


「あ~~~」


無意味に声を出しながら温かい布団で二度寝しそうになり、重たい頭を

振って起きようとする。今日も早朝のバイトがあるのだ。


「・・・ん?」


布団から起きようと身体に力を入れるが腕を誰かに抑えられているかの

ように動かす事が出来なかった。


「・・・・んっ・」

「・・・・ぁ・・」


一瞬混乱してさらに力を入れたらすぐ近くから聞き慣れた、いや良く知

っている声だが聞き慣れない甘い声が聞こえてさっきとは別の意味で身

体に力が入った。それと同時に今自分がどういう状況だったのかを思い

出した。


「・・・・これは・・やばいだろ・・」


両隣りに寝ていた命と志乃は、寒いのだろうか少しでも温かくしようと

俺の身体に強く抱きついていた。しかも、座りが悪いのかもぞもぞと動

いている。動かせない身体を諦めて首だけ周りを見る。視界の端で壁に

掛けられている時計が見え、いつもより早い時間に起きている事が分か

った。どうやら、二人がもぞもぞと動いた事で目が覚めてしまった様だ。


「・・お~い・・命・・志乃・・・起きてくれ~」


いつもより早い時間だと言え、もう少ししたら起きないといけない時間

だ。俺の理性が保つまでに二人とも起さないといけない。男の朝はいろ

いろな意味で危険なのだ。


「・・・んぁ」

「・・ふぁ・・・」


漫画や小説なら中々起きずにアクシデントが起こるシチュエーションで

はあるが、そこは、神楽家の次期当主とそれに仕える忍だ。一言声を掛

けるだけで目が覚める。と言っても、いつもより油断しきっている表情

で小さく欠伸をしたり目を擦ったりしている。最近じゃなかなか見られ

ない光景だ。


「ほら、少し早いけどもう自分達の部屋に戻りなさい」

「・・おはよぅ・・ございます・・おにぃさま」

「・・・おはよう御座います。進一様」


命はまだ眠そうに布団の中に潜り込もうとしているが、志乃はしっかり

と目を覚ましたようでいつもみたいにしっかりと挨拶をする・・・少し

、顔は赤かったけど・・


「おはよう・・・ほら、命。いい加減布団から出て来い~・・・志乃す

まんが・・」

「分かりました」


志乃が布団から出て、二度寝しそうになっている命を布団から引っ張り

出す


「・・・ひゃぁわ!」


温かい布団の中から春先の寒い外に出されて、命が今度は完全に目が覚

める。


「・・・・おはようございます・・お兄様」


やっと覚醒した頭で自分の状況を理解した命が今度はしっかりと挨拶を

する。顔は耳まで赤くなっていたが・・・


「おはよう・・・それじゃぁ今日も一日頑張ろうか」

「・・はいっ」

「はい」


まだ、恥ずかし気にしている二人の頭を軽く叩く。それが合図に二人と

も自分の部屋に帰って行った。


「・・俺も・・準備しよう」


二人がいる間は決して布団を上げる事が出来ずにいたので、いそいそと

着替える事にした。

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