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私達の王さまになりなさい!  作者: 宇井琉尊
第一部 第一章 夢の中の少女と落ちこぼれの少年
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しっかり反省中

美味しそうなご馳走が並んでいる部屋とは別の部屋に皆が座っている。

正面には、父さんと芽衣さん。その両脇に、命、志乃、雫、あかね、克

己が俺達を囲むように並んでいる。なぜか、健一は俺の横で正座をさせ

られていた。


「・・・なるほど、そう言う事か・・」


この部屋に連れて来られて皆から状況を説明して貰い納得した。


「はは・・進一あんまり皆に心配させるんじゃないよ」

「まったく、この親子は心配ばかりさせるのですから」


少し重たくなった空気の中父さんが口を開く。怒っている訳じゃなくて

やれやれっという感じだ。その横では、芽衣さんが父さんとこちらをみ

て溜息を吐いている。


「ん?芽衣さん・・それはどういう事だい?」

「純一さんと進一君がすごく似ているという話です」


首を傾げる父さんに芽衣さんが諦めた視線を向けている。


「俺は、父さんよりは無理をしてないつもりなんだけど・・」


今は調子が良いのか、布団から出ている時間が多いが、父さんは病に掛

かっていていつもは布団からあまり出る事が出来ない。っと言っても「

暇だから・・・」とか「あまり、寝ていても身体に悪い・・」とか言っ

て布団から抜け出す度に芽衣さんに怒られているが・・・そんな父さん

をみて来たこっちとしては、普段からあまり心配を掛けなようにと注意

しているつもりなのだが・・


「いいえ、進一様は考えが足りません。どこに、倒れたその日にそのま

まバイトに行く人がいますか」


小さく呟いた言葉をしっかりと聞き取り、志乃が責めてくる


「だから、大丈夫だとメモを残して行っただろ?携帯も忘れていたし、

近くに誰もいなかったんだから」

「!!!」


近くに誰もいなかったという言葉を聞いて、隣に座っている健一がびく

りと肩を震わす


「そもそも、なんで健一が傍にいなかったのよ!アンタが傍にいるって

言ったんでしょ」


あかねが怒りながら健一を責める。

実は、倒れた後保健室で検査をした所、どこも異常はなかったらしく顔

色も良くなってきていたという事で過労じゃないかと保健師が判断した

のだ。その事を、ミーティングが済んだ命達に連絡して一度皆が集まっ

たそうだ。いつまで経っても起きない進一を皆が心配そうに囲んでいた

らしいが、いつまでも保健室に居座っている事ができない。安静にして

いれば問題がないと言う保健師の言葉で皆それぞれ出て行ったのだ。雫

と克己は生徒会の仕事を命と志乃は家に連絡をしに、あかねは一時は健

一と一緒に俺の様子を見ていたらしいが、家から急に連絡があって席を

外した。保健師も職員会議があると言う事で健一に後の事を任せて出て

行ったらしいのだ。残ったのは健一一人だけ。健一も別にさぼった訳で

はないのだが、ただ待っているだけの時間が退屈だった上に喉が渇いた

為まだ目が覚めないだろうと思い散歩がてら少し遠い自動販売機まで買

いに行ったのだ。その時に俺が目が覚めてバイトに向かったのだ。健一

が戻ると命と志乃、あかねがベッドの所でメモを読んで固まっていた。

帰って来た健一に迫ってくる三人を宥めながら俺が居なくなった事に気

付きすぐに雫と克己に連絡を取った。普通に考えれば家に帰るのが当た

り前な事だから、家に帰る道を急いで追いかけたが俺は見つからなかっ

た。健一がそこで俺がバイトだと言う事を思い出してあのファミレスま

で走ったが、俺は一足早く帰っていた。家にも帰ってきてないと言う事

で克己と健一は街の中を走り回った。まさか、ケーキ屋に並んでいると

は思ってなかったらしく、店の中までは確認しなかったのだ。そして、

家の門の前で俺をみつけたと言う事だ。

だから、俺から目を離した健一は皆に責められているのだ。


「・・・・すまん」

「・・・あぁ」


何て言えば分からず取り敢えず、自分の所為で責められている健一に謝

る。健一もどう言えば分からないのかただ頷くだけだった。


「それで、お兄様はお身体の調子は本当によろしいのですか?急に倒れ

たと言う事でしたが・・」

「あぁ・・それは大丈夫だ」


心配そうに聞いて来る命に笑顔で応える。夢の中のシルクの話じゃぁ一

時的なものだったらしく今は本当に何ともない。シルクの事はどうせ誰

も信じてくれないので話していないが・・・


「その言葉信じますよ進一様」

「信じてください」


確認の意味で聞いて来る雫に頷く。自分のしてしまった事を十分に反省

した。心配を掛けた皆に改めて頭を下げる。


「なら、今日の所はこれまでだ。進一も分かったな」


今まで黙っていた克己がそう言って締めくくる。その瞬間、重い雰囲気

が軽くなる


「じゃぁご飯にしましょうか」


芽衣さんが立ち上がったのをきっかけにそれぞれ動き出す


「では、私達はこれで失礼します」


雫達が一斉に玄関に向かう。


「別に食べて行っても良いのよ?もう暗いし」


芽衣さんが台所に向かいながら声を掛けるが


「ありがとうございます。でも今日はそれぞれありますから」


と、丁寧に断る。

まぁ、あかねと健一は分家の人で雫は神鳴家、克己は神童家だからそれ

ぞれ立場があるのだ。


「紅ちゃん、ちょっと待って」


玄関に向かうあかねを呼び止めて買って来たケーキを差し出す


「まぁ本当は入学式祝い何だけど・・心配を掛けたお詫びも兼ねて」

「ありがとうございます」


すごくうれしそうに笑顔でケーキを受け取ってくれた。その光景をじー

と見ている人がいた。


「・・・すみません。入学式のお祝いのつもりでしたので・・その・・

・雫さんの分はありません」

「分かっています。ですが、心配を掛けた事には変わりはありませんの

で何かしら償いをして貰います。そのつもりでいて下さい」

「はい・・」


と頷くしか他ない。まぁ心配を掛けてしまった事は事実なので、皆には

何かしらお詫びをしないといけないとは考えている。

皆を玄関の外まで見送ってから部屋に戻る。美味しそうなご馳走の前に

皆が集まっていた。最後の一品を持ってきた芽衣さんが席について


「いただきます」


皆で一緒に食べ始めた。入学式の事や明日からの事を話しながらご馳走

を食べる。偶に、さっきの事で文句を言われるが、笑顔で話す事が出来

た。ちなみに、俺が買って来たケーキは評判は良かったが、芽衣さんも

ケーキを作っていたらしく、皆して必死になって食べた。その後、入学

式のビデオを見て父さんが「自分も行きたかった・・」と溢していた。

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