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違えぬよう…。  作者: 櫻井 満月
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はじまり

連載とか無謀でしかないですが、

短編にはできないくらいのネタが出てきたので、書きます…。


R15タグは念のためつけています。

読んでいただけたら嬉しいです。


割れんばかりの歓声に包まれる街。

帝の凱旋を喜ぶ民の声。

帝の帰還を祝う舞を踊る踊り子たち。

白い花を手に恋人や夫の姿が見えるのを今か今かと待ちわびる女たち。

民は祝いの品を持ち我先にと善見城への道を走り急ぐ。

酒を酌み交わし、帝を讃える男たち。

祝いの宴の支度に大わらわの女官たち。

大臣たちもどこか浮き足立つ。

恭しく頭を垂れ、帝からの言葉を待つ神官たち。

善見城と街には笑顔が満ち溢れていた。


国は夜通しお祭り騒ぎ。

家々の明かりは消えることがない。


帝の凱旋とともに、帝の再婚の噂も流れる。

帝は戦で助けた美女にぞっこんで、国に連れ帰ってきたと。

その美女を帝は新しい皇后に迎えるのだと。

長い間前の皇后を思っていた帝には後継ぎの皇子が一人しかおらず、

やっと、帝の眼鏡にかなう美女が来たと民は安堵する。

優しい帝に、つかの間の幸せを。

我ら民藁に慈しみをくださる偉大なる帝に安穏を。

そう願う民は多かった。


戦の勝利から時おかずして、

祝い事がもう一つ。

帝の婚儀が執り行われる。

民からの絶大なる信頼を勝ち得た帝は、類稀なる美姫を横に、

幸福そうに民たちに笑いかけるのだ。

その後の自分の命運をまったく知らずに…。


時は経ち。

帝と皇后の間には男の子が生まれ、

すくすくと育っていた。

義母兄である、第1皇子も弟をとてもかわいがった。

弟も兄に懐き、兄がそばにいないと泣き叫び、兄をこう。

誰が見ても仲の良い兄弟だった。


弟皇子が5歳の誕生日を迎えたその日。

宮殿では盛大な宴が開かれた。

この国では5歳になると帝の直系の男子には皇位継承権が生まれる。

帝の世継ぎが増えたことの祝いの宴だった。

帝も兄王子も、大臣たちも女官も民も、

すべての人間が弟王子を祝った。

国が栄えることを期待し、国の明るい未来を信じて…。


その夜。

善見城は焔につつまれた。

街のあちこちから火の手が上がり、民は逃げ惑う。

「帝は??

 帝はいずれに??」

兄皇子は父王を探して宮殿中を走る。

奥へ奥へ、父の寝室へとかけていくが、父の姿は見当たらない。

おかしい…。

こんなにも激しい火の手なのに、父王は一向に姿を見せない。

皇子の胸に過る不安。

城内に火の手が上がることすらおかしいのだ…。

不安を胸に皇子は父の部屋にたどり着く。


そこで皇子は見たのだ。

継母が美しい顔を狂喜に歪め…、

父の胸に短剣を突き刺しているのを…。

「な……に………?」

皇子は絶句する。

足が動かず、その場に固まったように立ち止まる。

母であった女は涙を流しながらもう一太刀振りかぶる。

「兄様の敵じゃ!

 私の愛しい兄様を殺した恨みぞ!」

そう言いながら…。

皇子は気づく。

そうだ…この女はかつて父が滅ぼした都の姫だったのだと。

兄に嫁ぐはずだった女…。

未来を奪い取られた女…。

女は、昔の愛しい男の影と今の夫の心とで…。

壊れていた…。

「私のあなた…。

 なぜご自分で城に火をつけられた?

 私があなたを殺すのを、なぜうけいれたのです?」

女はもう届かぬ声を父に投げかける。

「あなた…。

 私のあなた…。

 お慕いしております…。」

その時だった。

大勢の足音が宮殿内に響く。

そして、迷わず帝の寝室を暴く。

咄嗟に皇子は身を隠す。

父王と自分しか知らない隠れ穴へと。

女は足音の方を振り返る。

その人物を見つめると驚愕に目を開く。

「あ…あに…さ…?」

そして女は殺された。

「女とは無様だな…。

 甘くささやかれればすぐに目的を忘れる…。」

皇子はその男の顔を知っていた。

6年前に父が遠征した都の長の長男。

母であった女の兄だった…。

男は部下に指図する。

「第1皇子を見つけて殺せ。」

すべての兵士と指示を出した男が部屋から立ち去るのを確認し、

王子は姿を現す。

「ち…ちち……う…え…。」

父王に近づき、亡骸を抱きしめようとする。

「……!?」

皇子の足を誰かが触る。


父を殺した女だった。


男の一太刀では絶命しなかったらしい。

だが、その傷はすでに致命傷であることは確かだった。

「みか…の…

 …かど…のおそばに…。」

女は必死に皇子に懇願する。

愛しい夫のそばに行かせてほしいと。

「あなたはっっ……!!」

母に問いかけたいことは多かった…。

だが、今自分ができることはただ一つ。

皇子は母を父の横に寝かせてやった。

母は王子の頬に手を置き、

「桃李さま…ごめんなさい…。

 だれかに…帝を殺されるくらいなら…と思ったのですが…

わたくし…を…うけいれてくださり…ありがとう…。

 一族の…ちを…。」

そこまで言って母は力尽きた…。帝の手を握り永遠の眠りについた。

皇子は二人の亡骸を一度きつく抱きしめると、一筋の涙を流し、

善見城を去った。


その後皇子の姿を見たものは誰一人としていなかった。


読んでいただいてありがとうございます。


今後、1話か2話分しか書き溜めれていないので、

更新遅いかもしれません…。


登場人物とかは作者の好きな題材引っ張ってくるので、

関係性とか違和感あるかもしれませんが、今後お読みいただき、

ご指摘ありましたらなんでも言っていただければと思います。

書きたいように書きますが、

読んでいただく方に不快感がない文を目指したいです。


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