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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeα-
98/344

-Chapter41-

「楓は……今、ちょっと用事があって、俺と一緒にはいないんだ」

 俺はとりあえず弥奈に口裏を合わせておくことにする。少し話が一区切りついたところで、どうして楓のことを知っているのか尋ねようとしたのだが、

「そう、ですか……。あの、杣さん、っていう方から、聞いたん、です、けど……杣さんと、瓜二つな姿をした、楓さん、という方が、困っている、という話を、聞いたものです、から……」

 弥奈が先にその理由を言ってしまった。杣は知らない間に弥奈に楓のことを離していたらしい。それにしもて楓が困っていることとはなんだろう? 彼女の病気のことだろうか?

「私の魔法、少し、特殊、なんです」

 弥奈はきょろきょろと辺りを見渡し、人気がないことを確認してから俺に囁く。

特殊、ということは俺と似たような魔法なのだろうか。限られた条件でしか役に立たない魔法。まぁ、ほかの魔法も限られた条件でしか役に立たないとは思うが、俺の魔法に関してはその条件がさらに限定されていく。そういうことかと尋ねると、彼女はふるふると首を振って、

「逆、です……どんな条件でも、使えます」

 と、言った。そんな魔法、あるのだろうか? 朔と怜という少女が使っていた水の魔法も、汎用性はあるが、どんな状況下でも使えるものではないだろう。そんな魔法は、世界に一つぐらいしか……一つ?

「まさか、君の使える魔法って……!?」

 俺は驚きを隠せず、少し大きな声を出してしまう。辺りに人気がないおかげで、俺の声は聞かれることはなかった。一つだけ、どんな状況下でも使える魔法があるのを聞いたことがある。「虹魔法」と教科書には記載されていたはずだ。虹を扱う魔法ではなく、虹のように、どんな魔法でも使うことのできる、夢のような魔法。それを扱える人は世界に一人しか存在しないという、見つかればその存在が重要機密や一つの国家にさえ値してしまう程大きな力を持った魔法使い。それが、目の前にいる、フードを被った少女……?

「そんな、まさか……」

 俺はまだ信じられずに、その場で狼狽する。そんな様子を見てか、弥奈は急に慌て出して、

「す、すいません、驚かせて、しまって……」

 何度も頭を下げながら弥奈は謝る。どうして謝っているのか分からなかったが、俺はとりあえず頭を上げるように頼む。

「急にこんな話、信じる方が、無理、ですよね……でも、事実、です」

 弥奈は、言葉の最後は少し強い意志を持った目で言う。どうやら、彼女が虹魔法の使い手であることは間違いないようだ。

「まぁ、信じるよ。……で、俺にそれを明かしたってことは、何か理由があるんだよな?」

 弥奈が本物の虹魔法使いならば、何の用もなく一般人である俺に素性を明かすのはどう考えても危険だ。虹魔法使いというのは存在そのものが強大過ぎて、様々な組織や人間から狙われる立場にある。今この瞬間にも、誰かから狙われているという可能性も否定できないのだ。

「あ、はい。楓さんの病気……ですよね? 私、彼女の病気を、治せるかも、と思いまして……」

 その言葉に、俺は耳を疑った。彼女の病気を、治せる? そんな夢みたいなことあるわけが――。

「虹魔法、で治せるのか?」

 俺は彼女に話しかける。全てを自在に操れる魔法が、虹魔法――ならば、原因不明の不治の病さえ治せるのだろうか?

「分かりません、ですが……普通の病なら、治せます」

 彼女は真剣な眼差しで、俺の方を見て言う。虹魔法にはもう一つ、特別な点がある。本来魔法は無から有を作り出したとき、それらは時間経過で消滅してしまう。しかし、虹魔法は無から有を作り出しても消滅することがない。これが虹魔法の真骨頂であり、最も恐れられている点であり、最も虹魔法使いが狙われる理由であった。

「……どうして、楓の魔法を治そうとするんだ?」

 俺にとって、楓の病が治ることはとてもありがたいことだが、あまりにも突然の状況の変化に疑問しか抱けない。

「どうして、ですか……治したいから、では駄目、ですか?」

 弥奈は心細そうに話しかける。駄目じゃない。駄目じゃない、のだが……。何と言えばいいのだろう。ずっと追い求めていたものが、はるか先にあったものが、急に目の前に現れた時のような、喜びと困惑が入り混じったような感覚に襲われる。

「ま、ありがたい話ではあるさ。ただ、楓がこの場にいないから、どうしようもないっていうのが現状だけどな」

 俺は早めに話題を切り上げて、話を終わらせようとする。彼女もそれを察したのか、

「す、すいません……。そう、ですよね。もし今度機会があれば、連絡をください。すぐに行きます、から」

 早めに別れの挨拶を告げ、連絡先を言わずに立ち去ってしまった。もしかして、彼女は結構慌てんぼうなところがあるのかもしれない。俺はそんなことを思いながら、すでにその場を去ってしまった弥奈の話を考えていた。

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