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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeα-
38/344

-Episode37-

 僕が迅のもとへ駆け寄ると、黒い何かはまるで退路を断つかのように僕たちを囲う。よくよく見れば大柄の男性の容姿をしている黒だけでなく、女性や子供の容姿に近い黒もいた。

「朔……水の魔法、使えるか!?」

 迅が寄ってくる黒を手足にまとっている橙の光で倒しながら僕に聞いてくる。実際、あれは僕が使っている魔法じゃないだけに、上手い答え方が見つからない。僕がへどもどしていると、闇の中から伸びてきた黒に腕を掴まれた。それは強く僕を引っ張ってくる。

「うわっ!?」

 思わず声を上げ、その引っ張る力に対抗しようとする。……が、予想以上に力が強く、じりじりとたくさんの黒がいる方向へ引きずられていく。体力が空に近い状態では、ろくに腕を払うことも出来ず、僕はたくさんの黒に両腕を掴まれていた。

「朔っ!」

 迅が僕のいるところへ飛び込んできて、その勢いで回し蹴りをする。すると周りにいた黒はたちまち崩れ去り、僕を掴んでいた黒も消えた。

「しっかし……キリがないなこれじゃ。どれくらいの量がいるのかも分からないし」

 迅が溜め息交じりに言う。地面を見ると、ぼろぼろに崩れ去った黒が再び一か所に集まり、また一つの形を形成しているのが見えた。確かにこれではキリがない。戦闘行為では何の役にも立てない僕なのだから、この状況を打破する考えくらいは思いつかないと。

「ぐっ! しまった!」

 ふと、迅の声がして顔を上げる。そこには黒い手に腰を掴まれている迅の姿があった。迅は手足を使って後ろにいる黒を蹴るも、腰の手は崩れ去ることなく迅を引きずっていく。

「迅!」

 僕は迅にまとわりつく手を引きはがそうと、黒い手を掴む。しかしその手は信じられない程強い力で迅にしがみついていた。知らない間に僕の足にも黒い手が伸びて来ていて、状況は悪化する一方だった。僕の足が引っ張られたとき、よろけた僕はさっき拾ったロケットペンダントを落としてしまう。地面に落ちた衝撃で、ロケットの蓋が開き、写真が落ちた瞬間――。

 周囲の黒達が、まるで何かを嫌うかのように、そのペンダントから離れたのだ。さっきまで僕を掴んでいた手も、迅を掴んでいた手も消えていて、黒達は距離を取りながら僕たちを囲んでいた。近づいてくる気配はない。

「な、何が起きたんだ……?」

 迅は戸惑いながら状況を確認する。僕は落ちたペンダントに近づき、それを覗き込む。空が真っ暗だから分からなかったけれど、ロケットの中には鏡があり、そこには月が写っていた。もしかしてこいつらは、月の光が苦手なのだろうか?

「迅。今、月はどの位置にある?」

 僕は迅に月の位置を聞く。迅は少し戸惑いながらも空の斜め上を指差し、

「あそこにあるぜ。なぁ朔、それと今の状況と、どんな関係が――」

 迅の言葉を聞き流し、僕はペンダントを拾う。一度鏡から月が消えたが、迅の指差した方向に鏡を向けたら元通りに月が映った。僕はそれを、くるりと回転させて、僕たちが進もうとしていた方向へ向けた。瞬間、月の光が当たった黒がまるで立ち退くように道を開けた。それと反対にそこ以外にいた黒は先ほどまでのように僕らに襲いかかろうとしていた。

「迅、あっちに逃げるんだ!」 

 僕はもう残っていない体力を限界を超えて絞り出し、僕が作った道の先へ走り始めた。後ろを振り返っている余裕はないが、迅が付いて来ているのは足音で分かる。途中足が止まりそうになった僕を、迅は僕の背中を押してサポートしてくれた。しばらく走ると、空き地のような広い土地に出た。月の光が強く当たっているこの場所なら、あいつらはやって来れないだろう。ふと、空き地に置かれた鉄柱の影に、誰かがいるのが見えた。もしかしてその人もこうして逃げてきたのだろうか。迅にあそこに誰かがいることを指差して伝えると、

「……ん? 鉄柱の影、でいいんだよな? 誰かがいるなんて言われても、俺には何も見えないが……」

 迅は目を凝らしてその先を見ながら、そんなことを言う。そんなはずはないんだけどなぁ。そう思ったとき、人影がこちらに気付く。そしてそれは、こちらに向かって歩き、いや走り、いや飛びつ――。

「朔くうううぅぅぅん!!」

 僕のみぞおちに鈍い衝撃が走った。僕は今飛び込んできた少女が誰だか、見当がついていた。一瞬だけ見えた空色が、彼女だと証明している。

「お、おい朔、大丈夫か?」

 迅が心配そうに声を掛ける。今なら迅が見えなかった理由もわかる。彼女にはそういう事情があったからだ。

「う、うぅ……急に変なのに追いかけられて、怖かったよう……」

 彼女は半泣きで僕に抱き着いてくる。僕はちょっと戸惑ったけれど、意を決して地面についていた手を彼女の肩に置く。彼女がちょっとだけ体を震わせたのが手を通して伝わった。

「無事でよかった……怜」

 僕は、涙を流している彼女に笑顔を見せて、言った。

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