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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeα-
37/344

-Episode36-

 まずはプールへの道を帰った時と同じように通っていく。もしかしたらあの時怜が立ち止まった場所にずっといるんじゃないかって思ったけれど、そんな都合のいいことは起こらなかった。プールに一度たどり着いてから、僕は怜を探し回ろうとする。しかしプールにたどり着くころには足が限界を迎えていたのだ。足が震えて歩くことすら難しい。元から体力がなかった分、ここまでの道のりを走って来たのが仇になったのかもしれない。

「今度、自転車でも、買わないとな……」

 僕は自嘲気味に呟いて、足をパンパンと叩く。感覚をごまかして、若干過呼吸になりつつあった肺の調子を整えてから、また走り出して怜を探す。こんどは完全に手探りだ。何度も息切れを繰り返して、何度も立ち止まって、何度も立て直して探し続ける。学校、病院、商店街――。町の主な箇所は大体回ったはずだけれど、彼女は見つからなかった。だんだん嫌な予感が頭の中をよぎるようになる。交通事故や行方不明。考えたくないようなことばかりが浮かんでは消していく。――そんなとき、誰かと肩がぶつかった。

「いっつ……ん? 朔? どうした?」

 迅が、僕と同じように息を切らせながら声を掛けてきた。

「いや、ちょっと人を探してて……迅は?」

 一瞬迅にも協力をお願いすることを思いついたが、彼には怜が見えないのだから、頼むことはできない。

「俺も、まぁ……人探しだ」

 迅はちょっとためらった後に答える。迅も誰かを探しているらしい。そういえば楓の姿がない。探しているのは彼女なのか。

「じゃあな、朔。お前の探し人、見つかるといいな」

 迅は余程急いでいるのか、話題を切り上げて僕が進んできた道へ走って行った。僕もこんなところで立ち止まっている時間はない。僕は二、三度深呼吸をしてから、迅が走ってきた方向へ走り出した。

 迅が走ってきた方向には、閑静な住宅街が並んでいた。僕は近くの木にもたれかかって休む。もうそろそろ体力が限界に来ていた。むしろ限界を超えていた気もするが。ふと、木の上に鳥の巣があるのを見つける。既に眠っているのか、鳥の鳴き声は聞こえない。そんなことを考えていると、気に寄り掛かっているせいか僕自身まで眠くなってきてしまう。まだ、駄目だ。寝ている場合じゃない。僕は気にもたれかかるのをやめ、頬を数回叩いてから歩き出した。さすがに走ることはもう出来なかった。しばらく歩いていると、足元に何かが落ちていることに気付く。拾い上げて見てみると、どうやらそれはロケットペンダントらしかった。蓋は簡単に開くようで、僕はそっと開けてみる。中には、写真が一枚入っていた。その写真に写っている人物を見たとき、僕は一歩も動けなくなってしまった。写真は折りたたまれて入っており、大きさは大体ハガキぐらいの写真だった。場所は屋上で、そこには少女が一人、映っている。怜にとてもよく似た、いや、怜そのものであるかのような、黒髪の少女だった。この写真の人物は――怜なのだろうか。それとも別人――だとしても、ここまでそっくりであるならば双子の線しか考えられない――なのだろうか。ただ、今はそんなことどうでも良かった。写真に写っている彼女の表情が――どうしてか彼岸花のような、とても悲しい表情に見えたのだ。……ふと、空に今まで浮かんでいた星空が消え、真っ暗な闇になる。ということは、近くに怜がいるのだ。僕は今までの疲れなど忘れ、辺りを走り回った。怜にかけられた魔法、いや魔法ではない何かは、大体半径百メートルを暗闇にする。僕は何度も暗闇と星空の間を行き来しながら走り回っていた。やっと怜がどの方向にいるのか、そしてどの方向へ向かって移動しているのか分かったとき、反対側から誰かがやってくるのを見つけた。

「……朔!」

 迅だ。彼も何か手がかりを見つけたらしい。確信をもって次の交差点を右に曲がる。……あれ、そこは僕も曲がろうとしていたところだ。僕も迅の後に続いて角を右に曲がる――。

「な、なんだよ、これ……」

 迅の声で、僕は我に返る。目の前の景色が信じられなかったからだ。見渡す限りの、黒。大柄な男性の姿を模した、たくさんの黒が、こちらを睨んでいたのだ。顔らしき部分にある白い二つの点が、僕と迅を交互に見つめている。僕はその薄気味悪さにたじろぐだけだったが、

「――どけっ!」

 迅が自分に喝を入れるような声で叫ぶと、彼の周り、主に手や足に橙色の光のようなものが集まっていくのが見えた。彼はそのまま、黒へ突っ込んでいく。僕が止めようと声を上げる前に、黒は迅に襲いかかっていく。刹那、橙色の光が一筋の線を描く。それと同時に、彼に襲いかかろうとしていた黒の動きが止まった。そして、ぼろぼろと崩れ落ちていく。

「突破するぞ、朔!」

 迅は、僕の方を見ながら言った。僕には何も出来ることはない――けど。

「うん!」

 彼の言葉に大きく頷いて、黒の中へ身を乗り出した。

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