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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeγ-
327/344

-Episode40-

「まずい……!」

 フードの男を見つけ、そして彼がこちらに一瞬顔を向けた瞬間、僕は背筋に寒いものが走るのを感じた。

「怜、逃げないと!」

 僕がそう言ったときには、フードの男は僕のすぐ隣に来ていた。狙っているのは僕か。

「朔君!」

 怜の言葉と同時に、僕の目の前に亀裂が走る。――これは氷の壁か。そういえば怜の魔法は水の魔法だったな。

「なっ……」

 氷の壁を見た時、ふとフードの男が小さな声を漏らした。

「朔君、私が壁を作っておくから、その間に逃げよう!」

 怜は僕の手を取って走り始めた。僕は勿論その提案に賛成なのだが、一瞬だけ彼の漏らした声が気になり、足が止まる。

 「朔君?」

 怜もその様子が気になったのか立ち止まる。いや、しかし、立ち止まっていては彼が再び襲ってくるだけだ。

「ごめん、なんでもない。それより早くここから逃げないと――」

 僕がそう言う寸前で、バリ、と後ろの氷壁が割れる音がした。

「あ、壁が……! も、もう一回!」

 怜は再び氷の壁を張ったらしく、後ろで壁がひび割れる音がする。僕の手を引く怜に、僕は今度こそ怜に従って一緒に逃げる。

「――って、ちょっと待って!」

 僕は自分の足に急ブレーキをかけて立ち止まった。

「優奈が付いて来てない!」

 周囲を見渡しても、優奈の姿がない。一体どこに行ったのか。まさか、フードの男に掴まってしまった?

「え? え、嘘!? さっきまで私の後ろに付いて来ていたのに!」

 怜も優奈がいないことに気付き、驚いて周囲を見渡した。僕はフードの男の方を見るが、彼の近くにも優奈の姿は無い。

「朔君、私はあのフードの人の動きを止めておくわ! 朔君はその間に優奈ちゃんを探して!」

 怜はそう言うと、フードの男の周りに氷で巨大な壁を何重にも張った。これであの男を閉じ込めておくのか。

「ぐっ……!」

 男は何発も氷の壁を殴る。だが、彼の周りには強固な氷の壁が出来ているため、なかなか脱出が出来ないでいる。

「お兄ちゃん!」

 ふと、横の方から声が聞こえてきた。見ると、通りの間から、優奈が声を掛けていた。

「こっち、なんだか道が続いているよ! こっちは道も複雑そうだし、その男の人が撒けるかもしれない!」

 どうやら、優奈は僕たちがまっすぐ逃げようとしているときに、より効果的に逃げられる方法を探していたようだ。……なんというか、この場で一番冷静なのは優奈なんじゃないか?

「ゆ、優奈ちゃん!? ……まぁ、確かにそのとおりね! 朔君、優奈ちゃんのいる方向へ逃げるよ!」

 怜はそう言うと、優奈の方めがけて走っていった。もちろん僕も怜の後を追って優奈のいる通りの方へ走っていく。

「……あれ、ここって……」

 逃げている途中、周囲の壁がひどく無機質で、機械が剥き出しになっているのを見ると、裏通りを思い出された。

「どうしたの朔君? 裏通りって?」

 怜が僕の表情を見ていたのか、そんなことを聞いてきた。

「ああ、この場所……黒夜が出る、裏通りみたいなんだよ。というか、多分ここが裏通りだ」

 僕がそう言うと、怜は驚いて口を手に当てていた。

「裏通り!? ど、どうしよう朔君! 黒夜って一体何のことだか分からないんだけど、裏通りは危険がいっぱいだってテレビでやってたよ!」

 テレビでそんなことやってたのか。裏通りってそんなによく知られているものであったのだろうか?

「朔君、時代は情報社会だよ。どんな情報も、インターネットを調べれば出てくるものなのよ!」

 怜は胸を張って言う。

「いや……裏通りの話なんてどうやって出るの……?」

 僕は怜のその情報源について疑問を持っていた。さすがにインターネットでこんなローカルな場所の情報なんて手に入るのだろうか?

「朔君、今の情報網をなめないほうがいいよ! 今やインターネットを開けば分からないことはないよ!」

 怜は強く断言していた。

「ま、まぁいいけど……」

 とりあえず、怜が裏通りが危険であることを知っているだけ良かった。その危険度を知っているなら、僕が詳しく説明しなくても怜が裏通りをむやみに歩き回ったりはしないだろう。

「お、お兄ちゃん、私がここに連れて来てなんだけど、ここ、結構不気味な雰囲気だよね……?」

 優奈が、僕の隣で服の袖を引っ張り、心細そうに話しかけてきた。

「大丈夫、優奈は心配しなくても大丈夫だよ」

 僕は兄として優奈を安心させる。……僕も黒夜が出てきたとき、僕自身は何もできないから僕も心配なのだが、そんな姿を見せる訳にはいかない。

「さ、朔君、あれ……!」

 不意に怜が遠くの方を指差して言った。まさかフードの男が追いかけてきた? そうならないように怜たちはたくさん角を曲がっていたと思うのだが――。

「しまった、そっちか――!」

 僕は視界に入ったコールタールのような物質を見て、そう言った。黒夜が、僕達を襲うためか、こちらに近づいて来ていたのだ。

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