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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeγ-
303/344

-Episode17-

「そう」

 ちらとこちらを向いて、僕が首を縦に振っていることを確認した舞は、小さく呟いた。

「じゃ、これで今回の話は終わりね」

 続けて、舞はそう言った。だが、これからどうするのだろう。あのフードを被った人物が辺りを徘徊しているとあっては、僕は怖くて家にも帰れない。

「舞さん、あのフードの人については、どうしたらいいかな?」

 少なくともあの人から逃げられるだけの手段を持っておくか、あの人が来ても壊せないくらいの頑丈さを持つ場所に逃げ込むかはしておきたい。そんなことを考えていると、

「別にあいつのことは気にしなくてもなんとかなるでしょ」

 と、あの人物のことを軽視していると感じられる返答が返ってきた。

「なんとななるって……そんな、拳で壁を破壊するような危険人物なのに? そもそも、あんな人を放っておいたら、町の住人とかが危険だよ!」

 僕が彼女の意見に反対すると、

「まあそうね。でも、あたしとその住人達は何の関係もないわ」

 舞はそんなことを言っていた。

「ちょ、ちょっと待ってよ! そんなの……」

 町人を見捨てるような発言に僕が反論しようとしたところで、彼女は炎を噴射させて今対空している場所から移動し始めた。急に加速したので、舌を噛まないように口を閉じる。

「別にあたしだって目の前に人がいるなら見捨てたりはしないけど……町の人全員を救うなんて、ゲームの中の勇者や全知全能の神様じゃあるまいし、そんなことできやしないわ」

 舞は僕の言葉を聞いていたのか、町の人たちのことについて話していた。確かに僕が考えているのは理想論でしかないし、そんなことがほぼ不可能であるのは分かるが……それでも、僕はやっぱり、何も知らない人たちが傷つくと分かっていてそれを見過ごすことはできない。

「……一つ、いいかな?」

 僕は意を決して、舞の方を向き、言う。

「何? もしかして町の人たちを全員助ける気?」

 舞は挑発するかのように僕の方を向く。助けられるなら、僕は町の人を助けてあげたい。でも、僕にそんな力はないし、僕一人じゃそんなこと不可能だ。それに舞の協力も得られそうにない。だから今はその話をしている場合じゃない。僕が話したいのは、別のことだ。

「う、腕が……しびれてるんだ。このままだと、落ちて死ぬかも……」

 僕はもう感覚がなく、そして動きもしない腕をちらと見ながら言った。

「――はぁ!? ちょ、ちょっと待ちなさい……今降りるから……」

 舞は慌て始め、下へ降下し始めた。

「お、お願いします……」

 僕は下を噛まないように気を付けながら言う。……あ、やばい。そろそろ落ちるかもしれない。

「ったく、落ちそうなら落ちそうって言っておきなさいよ……!」

 苛立っているのか、舞は文句を口にしていた。いや、そもそもあんな上空で話をしているのが悪いんじゃ……。

「あんた、あたしが悪いみたいな顔してんじゃないわよ!」

 随分と感情の起伏が激しいのか、彼女は僕に叫ぶ。……なんだか理不尽だ。とりあえず舞はちゃんと僕が落ちても安全な位置まで落ちてくれた。とりあえず手を離して、僕は手を離す。

「あいてっ」

 少し高い位置にいたため、僕は地面に落ちるとき、すこしの痛みと共に小さく声を出した。周囲を見渡すと、まだあの通りにいることが分かった。

「ふう。どうしたものかしら……このままこいつをこの場所に置いていくわけにもいかないし……じっとしていたらあいつが来る可能性も……」

 舞は独り言を呟いているようだった。どうやら一人で話している気らしいが、小さい声を出すのが苦手なのか、ささやきさえ近くにいる僕に聞こえてしまう。

「……何?」

 僕は舞に鋭くにらまれ、萎縮してしまう。

「な、何でもないです……」

 僕は腕を振って否定しようとしたが、腕が上がらず声だけで言うことになった。

「別に……いいけど」

 舞はそっぽを向いてしまった。どうすればいいんだろう。僕は何も悪くないし。どうやら彼女は予想外のことが起きると、色々と考えをまとめたり冷静になったりするのに時間がかかるみたいだ。

「とりあえず、腕が回復するまで休憩してもいいかな?」

 僕はしびれきって動かない腕を動かそうとしながら舞に言う。

「あんた、足は動くでしょ? 腕を回復するだけなら、歩きながらの方が安全だと思うわ。……ええ。そうね。とりあえずこの場所にじっとしているわけにもいかないし、移動しましょ」

 ようやく考えがまとまったのか、彼女は普段のような冷静さを取り戻した。確かに足は何の問題もない。まあこの場所にじっとしていたら危ないし……移動した方がいいか。そう思って僕が立ち上がった時、

「――いた」

 上から、何か声が聞こえてきた。上を見上げると――。

「あ、あいつは――」

 僕が上を見上げた先には、フードを被った男が、屋根の上から僕めがけて飛びかかってきていた。

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