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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeγ-
302/344

-Episode16-

「あの……色々話が急すぎて分からないんだけど、質問しても大丈夫?」

 僕は舞にそう言った。話の内容が唐突過ぎて、理解が追いつかない。

「別に構わないけれど、なるべく質問はまとめてお願いするわ」

 舞は周囲を見渡しながら答えた。何かを探しているようにも、何かを警戒しているようにも見える。

「さっき、時間を操作されてるって言ってたけど……そんなの、誰にも分からないんじゃないかな。確かに時間に空白があるような感覚はあるけど、そんなの、記憶が曖昧になれば誰だってそう感じる時はあるんじゃないかな」

 とりあえず、僕はまだ完全に彼女の意見を信用したわけではないことを伝える。完全に否定するのは、魔法での一件があるから出来ないが、普通に考えて、普段生きている常識の外の考えなんて、ちゃんと説明してもらわないと納得できるはずがない。

「まあ、記憶が曖昧であれば、あんたの言うただの思い違いの可能性もあるわね。少なくとも、あんたたちにはあり得るのかもしれない」

 舞は一度その場に滞空して言った。あんたたち――つまり僕達にはあり得ると言ったということは、彼女にはあり得ないと言っているのとほぼ同意だ。

「まぁ、仮に舞さんがとんでもない記憶力の持ち主だとするけど――。でも、どうして時間を操作しているなんて考えたの? 仮に僕が舞さんみたいに記憶力があったとしても、僕は誰かに気絶させられたとか、急に意識を失う病気や発作にかかっているとかって考えるよ」

 時間を操作するなんて何かを超越しているようなことを考えるより、僕の考えの方が思いつきやすそうだが。

「時間が飛んでいるだけなら、それでも大丈夫でしょうよ。でもあたしは、もう一つの現象を知っているのよ。むしろその現象の方が本命」

 彼女は僕の意見に耳を傾けつつ、最初の唐突過ぎるカミングアウトより段階的に話し始めた。

「あんた、時間の巻き戻りって信じる?」

 一呼吸おいて、舞はそう言った。どちらかと言えば僕は信じないが……。彼女がこのタイミングでそう言ったということは、

「経験したの? その時間の巻き戻りを」

 僕は少しずつ絡まっていく頭の中の糸を必死でほぐしながら、舞に質問をする。

「一言で言えば、そのとおり。それも一度じゃないし、時間が巻き戻っているのは間違いないわ」

 彼女は自信を持ったような声で言うが、彼女の話には違和感がある。

「時間が巻き戻っているなら、その間の記憶だって巻き戻るんじゃない? 時間が巻き戻るってことは、僕達がこうして今話していること自体もなかったことになって、どこかの時点に戻るわけだから……時間が巻き戻ってることを知覚することなんて、不可能だよ」

 僕が反論した内容に、舞はいくらかむすっとした表情を見せた。

「――あたしもそれは思うのよ。本当に時間が巻き戻っているなら、あたしがこんな風に考えるはずはないって。まあ、このことは杣が『そういうものだよ』って言っていたから、違和感があってもこれ以上考えていなかっただけなんだけど」

 不意にソマという名前が出て来て、僕は首を傾げる。どうやらソマという人物が鍵になっているようだ。

「杣の話では、あたしは死なない限り自分の記憶を維持し続けることができるらしいわ。実際実感として記憶が残るから、その話は容易に信じられたわけだけど」

 ――正直、ここまでの話を、全てただの舞の妄想であると言うことはできた。ソマという人物なんて僕は知らないし、たとえ彼女の記憶力がかなり優れていたとしても、それは僕自身が覚えていられることではない。だから、僕が彼女の話を信じられる要素がどこにもないのだ。……が、僕の頭の中、そのさらに内側の辺りで、何かが走るような感覚を覚えた。彼女の話を無下にするべきではないと、本能か何かが警告しているのだろうか。それとも、僕自身の記憶の中にも、舞と同じように時間が巻き戻される前の記憶が残っていて、舞とそのことについて話すことで、その記憶が呼びさまされようとしているのか?

「――ま、信じる信じないはあんたの勝手よ。あたしをただの頭のおかしい女だって思うなら、別にそれでも構わないわ。――ただ、あんたはあたしの言う二つの条件を飲んでくれればいいの」

 話題を打ち切るかのように舞は言った。……僕としては色々と不完全燃焼だが、情報を詰め込み過ぎても理解できるとは限らない。とりあえず、僕は提示される二つの条件に耳を傾けた。

「一つ目は、あんたは何があっても絶対に生き延びること。二つ目は、なるべく怜とは関わらないようにすること」

 一つ目の条件は僕も死にたくないしいいとして、二つ目の条件が気になる。なぜ舞はそこまで怜を嫌うのか。……まさか、怜が時間を操作している?

「……どっちなの? 条件を飲むのか、飲まないのか」

 条件をのまなかった場合、最悪この場から落とされてしまいそうだったので、僕は慌てて首を何度も縦に振った。

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