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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
202/344

-Episode91-

 ぽつぽつと、雨が降り始める。雷が激しくなっていく中、僕はこれからどうしようか考え始める。黒い異形が今までここにやって来なかったのは奇跡に近い。

「怜、怜の魔法で上まで連れてってもらえないかな? そこから高い建物に移った後に長い橋でも作って、裏通りの外まで出られると思うんだけど……」

 僕は怜に声をかけたが、返事がない。一体どうしたのだろうか? どうやら放心状態に見えるが……。ふと、二つの死体が光となって、空へ飛んでいく。

「――綺麗だね、怜。でも、この光さ、僕はあんまり見覚えがないんだけど……人が死んだときって、こうやって光になって消えていくものなの?」

 僕は再び怜に尋ねる。やはり返事はなく、僕は軽いため息を吐いた。

「なんとか自力で脱出方法を見つけなくちゃいけないってことか……少し骨が折れそうだな」

 僕は周囲の建物の様子を確かめながら考える。弥奈のおかげで、周囲の建物は瓦礫ばかりだ。少し離れた位置の建物はある程度残っているが、高さがまちまちである。あれを飛び乗って移動するなんてアクロバティックな真似は、迅でもない限りできそうにない。そんなことを考えていると、

「ねぇ、朔君……」

 背後から、怜の声がする。

「ん? どうしたの怜?」

 我を取り戻したのか、怜が僕に話しかけてきた。

「あ、そうだ、この建物をつなぐように階段を置けないかな? そうすればそれなりの高さの建物まで登れると思うんだけど……」

 せっかくなので僕は怜に頼みごとをしてみた。

「え、うん……」

 怜は僕の言葉に少し戸惑ったものの、僕のお願いを聞いてくれて、階段を作ってくれた。やっぱり怜の水の魔法はすごいな。すぐにこういうのが出来るんだから。

「ありがと、怜。じゃ、上まで登ろうよ」

 僕は早速階段を上ろうとする。すると、怜が僕の手を掴んで、

「朔君、ほら、弥奈ちゃんが倒れてるよ? 助けないと……」

 僕は怜に促され、倒れている弥奈の方を見る。……僕は少し間を置いてから、

「そうだね、助けないとね」

 と言って、彼女を背負う。少し重いが、彼女の身長や体格が幸いして、僕でもなんとか運べそうだ。そうして登っていると、何度か滑って転びそうになる。その度に怜が支えてくれるため、僕はその度に怜にお礼を言った。怜が作ってくれた階段の一番高い所にまで登ってから、僕は弥奈を降ろす。

「よし、ここまで登ればあの黒い異形達も追ってこないだろう。怜、これから橋を作って――」

 僕がそこまで言ったとき、一瞬冷気のようなものが胸に通ったような気がした。何が起こったのかと胸の辺りを見ると、胸に小さな穴が空いている。それは丁度心臓部を穿っていた。

「……え?」

 僕は口から熱いものがこみあげてくるのが分かる。今、何が起こった? 何が起きた? 僕の心臓を何が貫いた?

「――違うよ……こんなの……朔君じゃないよ……」

 後ろから、怜の涙声が聞こえてきた。振り向くと、彼女は大粒の涙を大量にこぼしている。

「――怜?」

 僕は怜の名前を呼ぶ。少しずつ頭がぼやけてくる。――もしかしなくても、僕は死ぬのだろう。なぜか悲しさやつらさはない。むしろ安らかささえある。そんな感情を抱きながらゆっくりと倒れていく内に、脳内に奇妙な景色が映る。病院のようなベッド、花瓶、白いテーブル。意識がもうろうとしているのか、どこか薄暗い感じを受ける。僕の口には何かがくっついており、どこか息苦しい。体は動かない。腕に何かがくっついているような気がする。僕がその景色をもっと見ようと、目を見開こうとした時、ガラスの棒が折れたような音が聞こえる。その瞬間、奇妙なは急激に歪み、僕の意識も次第にその歪みの中に引きずり込まれていく。僕はその激しい衝撃に、ひどい嫌悪感を抱く。まるで自分が別の何かと一体化するような感覚。自分が自分でなくなる感覚を、一体誰が好くのだろうか? 僕はその異常な歪みに抵抗し続ける。景色の歪みは次第に暗闇の中に消えていき、世界には僕しかいないかのような錯覚に陥る。――僕は怜に心臓を撃ち抜かれて、死んだのではなかったのだろうか? 死後の世界は永遠に一人ぼっちなのか? ぐるぐるする頭の中で必死に考えを巡らせていると、誰かが僕を呼んでいるような声が聞こえてきた。

「誰?」

 僕が聞いても、声は返事をしない。同じ言葉を繰り返しているような気がする。僕は耳をすませて、その声を注意深く聞く。女性の声だ。しかも聞き覚えがある。それどころかよく聞いている声だ。この声は――。

「……お兄ちゃん……」

 優奈の声だ。僕ははっと真っ暗な周囲を見渡し、優奈の名前を呼ぶ。

「優奈!? どこにいるの!?」

 その声は、歪みの中から聞こえていくようだった。優奈の声が聞こえてきたことで、僕は深く考えるのをやめてしまっていた。僕は優奈の声に誘われるまま歪みの中に取り込まれていった。

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