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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
201/344

-Episode90-

 急に空に雷鳴が鳴り響き、空が光る。いつの間に雷雲が近くにやってきていたのだろう。僕はそう言いながら、虚ろな目をしている杣を見下していた。

「……朔君?」

 怜に軽く肩を叩かれ、僕は振り向く。そこには複雑そうな心境の怜の表情があった。

「私が言えたことじゃないとは思うんだけど……その、今、朔君、死ねばいい、って言ったよ、ね?」

 彼女は僕の言っていたことが信じられなかったらしい。僕は笑顔を作ったまま、

「ごめんね。ちょっと汚い言葉だったかな。怜のおかげで取り返しのつかないことにはならずにすんだけど、ちょっと頭が混乱してるのかもしれない」

 と言った。

「……う……」

 ふと、少し離れた所から迅の呻き声が聞こえてきた。どうやら目を覚ましたようだ。僕は彼の傷が思ったよりも深くないことに安堵した。怜がなぜか僕の方から顔を背けたが、どうしてだろう?

「ここは、まだ裏通り……? そうだ! 杣! もうこんな……ん?」

 迅は周囲の状況を確認しながら、少しずつ今何が起こっているかを認識する。

「朔? ――えぇと、何かあったのか? 随分ひどい顔をしてるが……」

 迅が僕の顔を見てそう言った。

「え、そうかな? ごめんね、ちょっとショックから立ち直れてないのかも」

 僕は笑顔のまま、迅に応答する。

「え、いや、そうじゃなくて……まぁいいや。それより朔、杣は――!?」

 迅は僕の後ろにいる杣を見つけ、彼女に駆け寄る。

「杣、大丈夫か!? ……朔、何があったんだ!? 優奈ちゃんもいないみたいだし……」

 何も知らない迅は、何も分からないまま、僕達に何があったかを聞いてきた。僕が苦笑いをすると、

「……? 朔、本当にどうしたんだ?」

 迅がまるで不気味なものを見ているかのような表情で言う。

「杣がね……優奈を殺したんだ」

 僕はなるべく悲しみを表に出さないようにしながら、迅に答える。すると彼は聞いてはいけないことを聞いてしまったかのような表情をして、僕に謝る。僕はそんな迅を見ているうち、一つの思いつきが生まれた。

「ねぇ迅、好きな人と別れるのって、つらいよね?」

 僕の質問に、迅は一瞬何を聞いているのか、という表情をしたが、ほどなくして彼は答える。

「確かに、つらいと思う。俺はまだその別れを経験してないから、分からないけれど、きっとつらくてどうしようもなくなるってことぐらいは、今の朔を見てれば分かるよ」

 僕に同情するように、迅は言った。そうか、やっぱり迅も親しい者、好きな人との別れはつらいのか。なら、

「じゃあつらい別れはないほうがいいよね」

 僕がそう言うと同時に、再び雷鳴が鳴る。そろそろ雨が降り出すだろうか。そんなことを思っていると、

「朔? 何を言ってるんだ?」

 迅が疑問を抱いて質問をしてきた。

「いやさ、なんだか優奈が力を貸してくれているような気がするんだ。本当に気のせいなんだろうけどね」

 僕が彼の質問に答えると、迅は更に不可解な表情を浮かべた。

「朔……多分少し疲れてるんだよ。その、優奈ちゃんのことは本当にすまない。そのことについては、これからゆっくり考えよう。だから今は、ここから出――」

 迅がよく分からないことを言っているので、僕はそれを遮って言う。

「ここから出る? 迅が? ――なんで? 杣と別れたいの?」

 僕の単純な質問に、迅は僕をまるで僕じゃない何かを見るような目で見つめていた。

「朔、何を言っているんだ……?」

 先程と同じ質問を繰り返す迅に、僕は溜め息を吐く。もう一度同じことを答えるのは性に合わないので、

「好きな人と別れるのは嫌なんだよね? なら、迅はここにいるべきだよ」

 僕の考えをなるべくまとめて彼に話す。ふと、横から怜が口を挟んできた。

「待って朔君! 今、朔君は何を考えているの……? 私、今の朔君の考えていることが読めない……! この私がだよ!?」

 怜はどうやら自分でも僕の表情から考えていることが読めることに自信を持っていたらしい。再び雷鳴が鳴る。

「そっか、怜にも調子のよくないときがあるんだね。僕はそこそこいい方かな」

 怜を慰めながら、僕は杣に向き直る。そろそろ彼女が正気を取り戻すかもしれない。彼女が動けないうちになんとかしなければ。

「――おい、何する気だ……!」

 迅は複雑な表情を浮かべつつも、僕の前に立ちふさがり、僕を睨みつけた。多分この位置じゃ駄目だな。もう二歩後ろに下がってもらわないと。

「さぁ……」

 僕は迅の質問を曖昧に流しながら、二歩ほど前にでる。彼は何かに気圧されたのか、僕と同調するように二歩後ろに下がった。――今か。

「優奈、おいで」

 僕がそう言うと、急に雷鳴が轟き、雷が――落ちた。

「――!」

 一瞬で、迅と杣の間に落ちた雷は、僕と怜には感電しないまま、二人を黒焦げにした。もう生きてはいないだろう。

「よかったね、迅。これで二人とも一緒だ」

 僕は既に人ではなくなった二つの炭に、挨拶をした。

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