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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
197/344

-Episode86-

 急に聞こえてきた雷鳴と共に、一瞬だけ全身が硬直するような感覚を体験する。突然のことに驚いた僕が目を開けると、そこには、氷塊ではなく、優奈がいた。

「優奈! どうしてここに!?」

 僕は優奈が無事だったことへの安堵と、彼女が僕を助けてくれたであろうことへの感謝と、どうやって屋根の上まで上がって来たのかという疑問が混ざって、こんなことを質問していた。

「さ、朔君ごめん……! 本当にごめんなさい……!」

 怜が半泣きになりながら僕の方へ駆け寄ってくる。

「いや、いいよ、僕はほら、このとおり無事だし……わざとじゃなかったなら、謝る必要はないよ」

 優奈のことが解決したため、ある程度心の余裕ができた僕は、怜をなだめる。

「う、うぅ……でも」

 怜は僕を傷つけかけたことにかなり責任を感じているらしい。……僕としては怜にはあまり責任を感じてほしくないのだが……仕方ないのだろうか。

「お兄ちゃん、それに怜さんも、探したんだからね!」

 僕が怜について考えを巡らせていると、優奈が話に入ってきた。むしろ探していたのは僕たちのほうなのだが、おそらく優奈も解放された後に僕たちを探していたのだろう。

「それより優奈、今のって……」

 僕は先程聞こえた雷鳴について、優奈に聞いてみる。すると、

「お兄ちゃんと怜さんを探してたら、少しずつコツを掴んできたの!」

 少し自信ありげに答えてくれた。まだ彼女が幼いからなのか、優奈は覚えるのが早い。

「それより、今のって、あの人のせいなんだよね?」

 優奈は杣の方を指差して言った。杣は一旦怜への攻撃をやめているみたいだが、いつ動き出すか分からない。僕が杣の動きに警戒しながらゆっくりと近づいていくと、

「朔君、しゃがんで」

 杣が、それだけ、言った。たったそれだけの言葉だったのに、僕はなぜかその言葉に威圧され、言うとおりにしゃがんでしまった。その瞬間、僕の頭髪のすぐ上を影が通り過ぎる。

「また私を――!?」

 再び怜を狙ったらしい杣だが、怜は途中で言葉を切ってしまった。途中に稲光と雷鳴が鳴ったのが原因だとは分かるのだが。

「お姉さんが誰だか分からないけど、お兄ちゃんと怜さんを傷つけようとするなんて駄目だよ!」

 いつの間にか、優奈はそんなことを言えるだけの勇気を持っていた。僕が少し感動していると、

「朔君、避けて!」

 今度は怜が僕に叫んだ。ずっと杣の威圧する声のせいでしゃがんでいた僕は、怜の声のおかげで体が少し自由になり、しゃがんだ状態のまま前のめりに突っ伏す。先程よりも少しひどい姿勢になったが、すぐに避けるにはこれしかない。その直後に、僕の頭上を何かが飛んでいく音が耳に入ってきた。

「くっ……」

 杣は一番近くにいる僕にしか聞こえないくらいの大きさで呟く。音が止まないことから、おそらく怜は大量の氷塊を杣に飛ばしているのだろう。僕としては避けたかった状況ではあるが、起きてしまったらもう引き返すことはできない。

「なんとかしてこの状況を収めないと……」

 僕は伏せたまま体を回転させて、周囲の状況を見れるようにする。今は杣が防戦一方なように見える。優奈は自身の魔法の危険性を理解しているのか、攻撃をする気配はない。雷を撃ち込まれた人は、ほぼ間違いなく感電死すると考えていいだろう。その辺がしっかり理解できるのが、優奈のすごいところでもある。杣もどうやら何度か攻撃に転じているみたいだが、その度に優奈が避けているみたいだ。

「杣さん! このままだと明らかに杣さんに勝ちの目はないですよね!? だからもうこんなことやめてください!」

 僕は杣に呼びかけてみる。しかし、不利な状況であるにもかかわらず、杣は攻撃の手をさらに強めてきた。防御が多少手薄になっているため、少しのかすり傷を負い始める。僕が再び声を掛けようとした時、上空から誰かが降ってきた。

「大丈夫か、杣!」

 両手両足に橙色の光を纏っている少年――迅が、杣を襲っていた氷塊を着地時の衝撃で吹き飛ばしつつ、杣に言葉をかけた。

「迅……なぜあなたがここに……」

 杣はどうして彼がここに来たのか分からないようだった。寝そべっていたおかげで僕は他の皆より早く上空にいる弥奈の姿を確認できた。彼女が迅をここまで運んだのだろう。

「なぜって、そりゃ俺は杣の彼氏だからな!」

 少し恰好をつけて、迅はそんなことを言った。

「だからさ、俺に教えてくれないか? 今、杣が怜と争っている理由とか、杣が優奈ちゃんをさらった目的とか……力になれるかもしれないしさ」

 迅は二度呼吸をした後、杣の方を向いて言った。――言われた杣は、少しだけきょとんとしたような顔をする。そして、ほんの少しの沈黙の後、杣は言った。

「――ごめん」

 その言葉の後、杣の影が迅を貫くのを見た。

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